第九話 『強敵登場! 氷鬼フォーシール』
「ゲコゲドンの反応が消えたから来てみれば……なるほど……ゲコゲドンでは勝てないはずだ……」
和風の甲冑を身に纏い青色の皮膚を持った、前髪を逆立てた銀髪、額から伸びる一方だけが掛けた金色の二本角、そして顔を隠すように白い仮面をつけた男はそう言うと俺たちを睨んだ。
まずい、なんていうパワーだ……睨まれただけで吹き飛ばされそうになった……。
「ウォーシール! まさかこいつがいきなり来るなんて……」
リサは目を見開きながら、目の前に立つ男を見て声を震わせた、リサが声を震わせるなんて……どんだけヤバい奴なんや……。
「気を付けて、こいつは今は一番上は魔王だけど魔王に組みいる前はゲコゲドンたちのリーダーをしていたやつよ……種族はオーガ」
リサはそう言うと、土姫を構えた。
「先手必勝! 行くぞ! カイゼル・パンチ!」
貴明が叫び、ウォーシールに飛びかかると同時に。俺達も飛び出した、そして俺達は互いに自分達の武器を振るった!!
貴明の炎の拳は奴の顔面を、俺は相手の動きを拘束する影縫斬を、卓也は真っすぐサンダーブレードを使いウォーシールを切った! だが……。
「ほぅ、自ら向かってくるか。こちらとしても持ち場を長くは空けておけないのでな、手間が省けると言う物だ!!」
「まずい! みんな避けて!」
リサの声が響いた! するとだ、なんと、俺の影縫斬を食らったのにもかかわらずウォーシールは動き、視線を貴明に向けると睨み付けた。不味いっ!?
俺は後ろに一歩下がろうと重心を後ろにかけた、しかし、それよりも素早くウォーシールは貴明の左腕を掴むと、卓也に向かって貴明を投げ飛ばした!
二人はそのまま激突し、声を上げながらその場に倒れる。次は俺だ! そう思い、刀に魔力を込めるが、奴の動きが素早く俺は何もできないまま、奴が振り向きざまに放った裏拳を受け吹っ飛んだ!
「ター君!」
「だ、大丈夫だ!」
口では大丈夫といったが、かなりヤバかったギリギリ刀の腹で奴の拳を受け止めたから良かったものの、間に合ってなかったら俺は多分、中庭に落ちていた……。
「ほぅ、さすがはアロタロス……様を倒した勇者……ならば!」
ウォーシールはそう言うとズボンのポケットから巻物のような物を取り出し、それを宙に放り投げた。すると、巻物は青白い炎を上げながら燃えあがった。
収納魔法か! 不味い、十中八九奴の武器が収納されている……斧か剣か……そんな事を思っていると、大剣が現れ、奴は大剣を右手で握ると、床に突き刺した。
巨大な出刃包丁のような大剣で刃には無数の棘がついている異様な形をした大剣だった。
「見た目も相まって鬼かいな……」
俺はウォーシールの姿を見ながらつぶやいた、その時だ、リサが前に飛び出した。魔導書をめくりながら。
「あれを振るわせるわけにはいかない! タウラス・スラッシュ!」
リサが叫ぶと魔導書が光輝くと同時にリサの身体も赤い光を放つと、体から煙が発生した! ゲームにはなかったぞそんな技⁉
「一人で突っ込んでくるとは……今の貴様なんぞ我が剣を使う必要ない、拳で砕いてやる!」
ウォーシールは拳を握ると、走っていくリサに向かって真っすぐ振り下ろした! なぜ避けない!
「リサ! 躱せ!!」
俺はよけようとも防ごうともしないリサに向かって叫ぶ、しかしリサはお構いなくウォーシール目掛けて走る、そしてウォーシールの振り下ろした右腕はリサの体に命中した!
不味い! そう思ったとき、ウォーシールの拳がリサの体をすり抜けた。いや違う、奴はリサの身体から発生した煙をぶん殴ったのだ。
証拠にどうやったのかは分からないがリサはウォーシールの背後に回り込んでいた。そして
「気が付くのが遅い! 喰らえっ!!」
背後に回り込まれたことに気が付いたウォーシールは振り返ろうとする、しかしリサは右足をぐっと踏み込んで、がら空きになったウォーシールの背中目がけて土姫を横薙ぎに振った!
「ぐっ!」
ウォーシールはくぐもった声を出しながら鮮血と共に、前方に倒れた。
「っ! 大丈夫二人とも……」
リサはそう言うと、魔導書をしまい気を失っている貴明と卓也に近寄り二人に回復魔法をかけた。俺もそのままリサに駆け寄った。
「今の技は一体何なんだ……」
俺は刀を構えウォーシールの動きに警戒しながらリサに尋ねた。
「今のはマーシャの技よ」
リサはそう言うと回復を終えたのか、俺の方を見て笑った。マーシャ、向こうの世界で出会った仲間で、金牛騎士団の団員の女性だ。
「マーシャの? あれでも……その魔導書って魔法しか使えないんじゃ……」
「あら? 私もパワーアップしているのよ。確かに君と会ったころはこの本には魔法しか記せなかったわ。でもね、今はスキルであれば使えるようになったの」
リサはそう言って魔導書を開きながら立ち上がった。マジかよ、滅茶苦茶強くなってるじゃん。
「いてて、油断しちまったぜ……」
「お前また太ったやろ……貴明さんは痩せましょ。彼女出来んぞ!」
俺とリサが話をしていると、意識を戻した貴明と卓也の二人は立ち上がった。リサが回復してくれたのか、目立った外傷はなかったが、意識が途切れたためか元の姿に戻っていた。
「っ! あの技喰らってほぼノーダメかよ……」
何かを感じ取ったのか、貴明は振り返りながらカイゼルに託された魔道具を起動し、カイゼルの魔力をその身に纏った。卓也も同様にサングラスをかけデモンの魔力を纏った。
「火と水の魔力を応用した技か……良い技だが所詮は人間の考えた技……オーガである俺には通用せん!」
ウォーシールはそう言うと、ゆっくり立ち上がる。やつの右手から魔力が集まっているのか、青白い光とともに煙のようなものが立っていた。
「っ! な、なんだ……急に寒くなったぞ」
俺はそう言うと、思わず腕を抑える、恐怖からくる悪寒じゃない……このあたりの気温が急激に下がったような、そんな感覚が走る。
急に気温が下る……まさか! 氷魔法!?俺はハッとし卓也と貴明の方を見た、その時だ、なんと貴明はすでにウォーシール目掛けて飛びかかっていた!
「何するか知らんが、ちょっとヤバそうなその技は俺が止める! 武久ぁ! お前も手伝え!」
貴明は叫ぶと両腕に炎を灯した、するとリサも魔導書を開いて、ウォーシールに右手を向けていた。
「ター君! 行くよ!」
リサがそう叫ぶと、魔導書が光り輝くと同時に彼女の手のひらに火の玉が現れた。この魔力はカイゼルの技……四天王の技まで記されたのか よしなら俺も!
「喰らえ! カイゼルパーンチッ!」
貴明はウォーシールに向かって炎の拳を振り下ろした、よし! 今だ!
「カイゼル……貴方の力を貸して……魔炎砲!!」
「行くぞ……龍光斬り!」
リサの掌から、炎の塊が飛び出し、俺はそれに並ぶように龍光斬りを放ちウォーシールとの距離を詰めた! そして、刀を強く握りカイゼルの魔力を流し
「喰らえ! 魔炎斬!!」
俺は両腕に力を込めると刀を大きく振り上げ、炎纏う刃共に縦にまっすぐ振り下ろした! 俺、リサ、貴明の炎がウォーシールに向かって突き進む、その時。
「俺の氷結魔法をこの程度で抑えられると思うなよ……凍てつけ……コキュートス!!」
ウォーシールは静かに叫び、右腕を床に向かって叩きつけた! すると奴の掌から床を伝う様に、蜘蛛の巣のような氷が飛び出し、俺たちの炎と激突、勢いよく爆発し、周囲に蒸気が立った。
「ぐおっ!」
「くっ! すごい衝撃……」
リサはそう言うと、後ろに下がり距離を取りながら、体につく今の衝撃で粉々になり霜のようになった氷を払った。
リサの様子を見る感じ、大したダメージはなさそう……ちょっと待て、あれだけの衝撃があったんだ、あの距離にいた貴明は⁉
俺はそう思い未だ蒸気の立つ前方を睨んだ。するとそこには一つの影が、右手を伸ばし何かをぶら下げる様にしていた。そして蒸気がゆっくり晴れると、そこには……
「た、卓也ぁっ!」
奴に首を掴まれ、体を宙に浮かされている卓也、そして床には体中から出血し、奴に踏みつけにされている貴明の姿があった。
「一瞬のスキをついて俺の体を切りつけようとするとは大した奴だが……甘かったなっ!」
ウォーシールはそう言うと卓也を俺たちの方に投げつけると、左手に持った卓也の剣も放り投げた。そして次は踏みつけにしている貴明を俺たち側に蹴り飛ばした。
「二人とも大丈夫!?」
リサは叫び二人に近寄ると回復魔法をかけた。あのやろう……人の友達をここまで傷めつけやがって……
「カイゼルとデモンの力を使っているとは言え、まだ完ぺきではないようだな……」
ウォーシールは床に突き刺さったままの自身の大剣を引き抜くと、刃先を俺達に向けてニヤリと笑った。
「そこにいる六賢者も力が安定していないのか本来の力の五%も出せまい」
ウォーシールの言葉に俺は目を見開きリサを見る、リサは二人を回復させながらもしまったという顔をする。なるほど、強くない気がしたのはそう言うことか……。
「最後は主を倒した勇者ター君だったか? 貴様の強さは厄介だが……一人ではどうもできんだろ……今の状態の貴様らを叩き潰せば……我らの邪魔ものはいない!」
ウォーシールが叫ぶと、奴の大剣の刃先が冷気を纏い、奴の周りが急に凍り始めた! なんて魔力だよ……。
「くっ! 舐めるなよ!!」
俺は刀を強く握ると魔力を流し、リサ、卓也、貴明の前に出た。
「ター君⁉何しているの⁉」
「リサは回復に専念してくれ、六象光輪斬をフルパワーでぶっ飛ばせば、腕くらいは飛ばせる!」
リサの声に俺は、ウォーシールを睨みながら言う、本当はうまくいくかもわからんのだがな……ここはやるしかない!
「ふん、その体で何ができる……俺の技を受け止められるとでも思っているのか……いてつけぇつ!!」
ウォーシールはそう叫ぶと大剣を縦にまっすぐ振り下ろした!?俺も魔力を込めた刀を縦にまっすぐ振り下ろそうと、一歩前に踏み込んだ!
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