第八話 『敵地での戦闘 ゲコゲドン再び』
「悪いが一気に倒させてもらう……カイゼル・トルネード!!」
貴明は叫ぶと、左手に魔力を集め、それをゲコゲドンに向かって放り投げるように突き出す。すると、炎の渦がゲコゲドンを襲った! よし、それなら……
「突疾風オロチ!」
俺は風の魔力を刀に込めると、突き出すタイプのオロチを放つ、刀の刃から風の魔力を纏ったオロチの追加斬撃が無数に飛び出しゲコゲドンの体を切り裂いた!
「よし! 次は俺が!」
卓也はそう言い、剣を構えた、その時だ!
「待って! みんな躱して!!」
リサが突然声を荒げた、するとだ、ゲコゲドンの方から異様な、禍々しい魔力を感じると当時に、漆黒の巨大な稲妻が俺と貴明の方に向かって突っ込んできた!
「まずい!」
俺と貴明は突っ込んでくる稲妻を躱そうと飛び上がる、しかし、それは急に動きを変え俺たちの方に突っ込んできた! そして俺たちはその稲妻の一撃を食らい大きく吹き飛ばされた!
俺達が吹っ飛ばされたのは目的地にしていた礼拝堂の中だった。吹き飛ばされた割にはダメージが少なく、俺達はゆっくりと立ち上がった。すると
「ター君!」
「貴明、大丈夫か⁉」
卓也とリサが礼拝堂の中に侵入しながら俺たちに声を掛けてきた。
「ぎりぎりデモンの魔力で防いだから大丈夫や」
「俺もギリギリ、ガードしたからちょっと焼けたけど、思ったほどダメージは受けてないぞ」
俺は稲妻の迸る刀を見せながら、貴明は平然とした様子で二人に言う。その時だ、ゲコゲドンも俺たちを追いかけるように礼拝堂に侵入してきた。
「ちぃ、さすがは四天王とそれを倒した勇者だな……模造品ではだめか……」
ゲコゲドンは俺たちを睨みながらつぶやく、すると奴の胸元にぶら下がっている地蔵と藁人形を合わせた様な装飾品の傷が入った……まさかあれって
「ミガ・ワーリイシか⁉」
俺と貴明は顔を見合わせるとそれに気が付いたリサよりも早く叫んだ!
「なんやそれ……」
卓也は小さな声で俺達に言い、リサは言葉にこそ出さないが俺たちを特に貴明を何で知っているの? と言いたげな表情で見た。
「オークエに出てくる、序盤にしか手に入らん装飾品だ。面倒な素材を複数集めてやっとゲットできる、一回の戦闘につき一度だけ戦闘不能になる攻撃を防いでくれるレアアイテムや」
貴明はオーブクエストをしていないためよく分かっていない卓也に説明をする。
「しかもそれだけじゃない、五十パーセントの確率で受けたダメージの半分を相手に返す裁きの雷が発動するんだ」
俺は貴明の説明に続いて追加説明を卓也にする、つまり俺たちが食らったあの稲妻は裁きの雷だったのか……。
「でもおかしいぞ、あれって一回の戦闘につき一度だが消費アイテムじゃないやん。あれ壊れたぞ……」
貴明はそう言うと、ゲコゲドンがぶら下げているアイテムを指さした。たしかに、そうだが……。
「あいつ模造品って言ってたわよね……まさか!」
「そうだ、これはミガ・ワーリイシの模造品。噂で聞いていたり、調べた文献から俺が作ったアイテムだ! 本物程、旨くはいかんがな……」
ゲコゲドンは叫ぶとミガ・ワーリイシを引きちぎるとその場に投げ捨てた。そして床にぶつかると砂のように消えて行った。
「そう、あのアイテムは文献にしか載っていない稀少なアイテムよ、この世界の住人であるター君と貴明さんが知っているの?」
リサは土姫を構えながら貴明を見ながら言った。すると貴明は軽く笑うと、自分のこめかみを指で二回ほど叩いた。
「カイゼルの記憶……さ。きっと彼も知っていたんだろうな……」
「嘘つけ。何回やっても何回やっても地獄の鉱石が落ちないって嘆いてたのは誰や?」
リサに聞こえないように静かに言った俺の言葉を受けた貴明は誤魔化す様に口笛を吹きそっぽを向いた。吹けてないけどな。そう思いながら、目を細めて貴明を見た。その時だ!
「ぬおっ!」
俺達の間を割くように、鋭い何かが飛んでくるが、それは俺たちに命中することなく、宙を切ると、それはもとに戻った。
「うっへぇ、あの大きさは気持ちわりぃ……」
鋭い何かはゲコゲドンの舌、だった。そして、その舌が戻っていく様子を見ながら俺は思わずつぶやいた。
「ゲコゲコゲコ、無駄話か? 俺のアイテムの攻撃を防いだくらいで、いい気になるな!」
ゲコゲドンが叫ぶと奴の鶏冠のような髪の毛が開くように逆立ち、無数に針のようなものが飛んできた!
「くっ!」
俺達は武器を振るい、迫ってくる針のような物を弾き落とすが、それでもお構いなくゲコゲドンは針を飛ばし続けた!
「まずい! 礼拝堂がぶっ壊れる!!」
貴明は周囲を見ながら叫ぶ、ゲコゲドンの放つ針により、天井やガラス、隅に置かれた椅子などが破壊されて行っていた。だが……
「あれ?」
突然、ゲコゲドンの放つ針の勢いが無くなっていき、飛んでこなくなった。
「なにがあった!」
卓也は周囲を見渡しながら言う、するとゲコゲドンと目が合うと卓也は奴を悲しそうな目で見ると、急に口を手で覆った。
「だ、だめだ……わ、笑うな……笑うんじゃない……」
と、肩を震わせながら言い始めた。俺たちは首を傾げながらゲコゲドンを見た。その瞬間、まず貴明が噴き出し、それにつられて俺とリサも大笑いし始めた。
「な、なにがおかしい!!」
髪の毛が綺麗さっぱりなくなり、丸みを帯びた頭を晒しながらゲコゲドンは俺たちに声を荒げた。
「は、禿げとるやんけ……」
「まさか、じ、自分の髪の毛をと、飛ばしていたの……?」
「それがどうした!?まだ俺には魔法が使えるでゲコ!」
ゲコゲドンはそう叫ぶと両手に魔力を集め始めた。
「遅い! 一気に決めるぞ」
俺は刀に魔力を流し、大きく振り上げながら叫ぶと、皆俺に返事をしながら頷き、貴明と卓也は走り出した。
「それはこっちのセリフだゲコ! まずはお前ら二人を叩き潰す!」
ゲコゲドンが叫ぶと奴の両手に冷気が纏う。氷魔法か⁉
「させない!」
リサはそう言うとここに来て初めて魔導書を開いた、あらゆる魔法が記されそれを自由に発動できる魔道具だ。
「土の精霊たちよ、眼前にいる邪悪なるものの動きを拘束せよ……バインド!!」
リサは魔法を詠唱すると、右腕をゲコゲドンに向かって突き出した、空間や床から土の魔力で形成された弦のような鎖のような物が飛び出した。
そして、それらはゲコゲドンの体に向かって一直線に飛んでいき奴の体にまきつき、奴の体を拘束した。
「今だ、いくぞ、卓也!!トオゥッ!!」
貴明はそう言うと上空に飛び上がった、それを見た卓也も眉間にしわを寄せながら飛び上がる、そして貴明は空中で一回転した。
「カイゼル……キイィィィック!!」
貴明は叫びながら左足をもがいているゲコゲドンに向かってピンと伸ばし突き出した、すると奴の足が燃え上がった。
「サンダァァァブレェェェェドッ!!」
対する卓也も、剣に魔力を集めると、勢いよく縦にまっすぐ振り下ろした! 貴明の蹴りと、卓也の斬撃がゲコゲドンに命中、ゲコゲドンは声を上げながら体勢を崩した。今だ!
「龍光斬り! オロチ……縦一閃!!」
俺は龍光斬りで体勢を崩したゲコゲドンに突撃すると、そのまま刀を縦に構えオロチの中でも最も威力があり、追加斬撃の数が多い縦に振り下ろすオロチを放った!
刀の真っすぐ振り下ろす斬撃に続き、両端から八つの斬撃がゲコゲドンを食らう様に飛び出し、奴の体を切り裂いた!
「バ…カ……な……」
ゲコゲドンはそう言うとその場にあおむけに倒れた、すると奴の体から虚無のエネルギーが放つ特有の禍々しさが消え失せ奴の肉体は砂のような粒子になりその中から一人の成人男性が現れた。
「こいつがゲコゲドンと同調してた奴か……」
俺は呟くと刀を鞘に納めた、するとリサが後ろから走ってくると、屈んで倒れている男に触れた。
「うん、大丈夫……ゲコゲドンの力の影響もないし、傷もおっていない。アロタロスを倒したら元に戻るはずよ」
リサは立ち上がると俺に向かって軽く笑った。そうかそれならよかった……。
「よし、じゃあ次行くか……」
「ええ」
俺はリサに向かって言うと、彼女もうなずきリサと共に近くにあった通路から礼拝堂の外に出た。そうしていると背後から貴明の声が聞こえ、俺達は足を止め、振り返った。
「お前さ! あそこはダブルキックのタイミングやろ、俺とお前のダブルキックで決めて、最後にター君が止めを刺す、最高のシチュエーションやろ!」
そこにはこちらに向かって歩いてきている貴明と卓也がおり、貴明が一方的に卓也に文句を一方的に言っていた、対する卓也は目を細めて貴明を見つめていた。
「何の話をしてるんや」
俺は貴明に向かって尋ねる、すると奴は俺の方に顔を向けてよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。しかし
「もうその話はええねん、ほらさっさと次のボス倒しに行くぞ」
卓也は話しだそうとした貴明の言葉を封じる様に言う。すると貴明も悔しそうな表情をするが納得したかのように息を吐いた。
「せやな……リサ、次の敵はどこにおるか分かるか?」
「ええ次の敵は下だと思うわよ……どこかに階段は……」
俺の言葉に返事をするリサ、しかし突然深刻そうな顔をした。そして
「まずい! とてつもない魔力を持った奴がこっちに来ている!」
リサは俺達に向かって叫んだ、するとだ上空から物凄い魔力を放ちながら何かが俺達の方に突撃してきた!
俺達はその落下の衝撃に身体を大きく後方に弾き飛ばされた!
「ぐっ! 大丈夫か……」
俺は着地するとリサの体を支え、卓也と貴明に言う、二人も無事着地できており、落下してきた何かを睨んだ。
そして、その何かは立ち込める砂埃を払うと姿を現した。そこには筋骨隆々の大男がゆっくりと立ち上がっていた。
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