第五話 『再会と敵地へ』
「お、おつかれさん……」
俺は声を震わせながら、元の姿に戻り屋根から着地した貴明に声を掛けた。
「顔真っ赤やで相当キレてるやろお前」
卓也も貴明に声を掛ける。しかし貴明は返事をせずそのまま車に向かって走った。そして、左腕を突き出すと、その拳圧で炎を弾き飛ばした。
そして、完全に焼けこげ、辛うじて露出した骨組みのお陰で車だと分かる。それをぼんやりと見つめていた。すると、唐突に屈むと何かを拾い上げた。
「あれって、エンジンか?」
俺の言葉に卓也は頷く。そして
「あれだけ残ってたんやな……」
卓也は腕を組みながら言った、すると、突然奇妙な『ア、ア……』と言う唸り声のような物が聞こえた。貴明の方からだ……。
「泣いてるのか……あいつ……」
俺は静かに言った。するとだ、貴明はエンジンを両手でつかむとそれを目の前に持ってきた。
「なにが言いたいんだ!」
貴明は大声でエンジンに向かって叫んだ……。
「いや、あの……お前が自分で出しただけやん」
卓也が冷静に突っ込むと突然、悲壮感漂う音声が流れ始めた。
「やめぇや」
卓也はその音楽を知っているのか、小声でつぶやいた。
「ア、アリガトウ……タ、タカアキ……」
デ〇ズルー〇スは薄れゆく意識の中、初めて言葉を発した……
「ってやかましいわボケ、なに勝手にナレーション風に話してるんや! 二部はター君視点やろ」
突然発した貴明の言葉に、いらだった様子で突っ込む、卓也。すると
「え、貴明さんの車がしゃべった……もしかして、貴明さんとの友情!」
リサが涙ぐんでいるのか、鼻をすする音が聞こえた。
「いや、リサさん。あんたも乗りええなぁ!」
卓也がリサを見ながらさらに突っ込んだ。
「まぁ、無理もない、親に出してもらったとは言え、半分はあいつがためた金で初めて買った車や、変なことしてしまうのもわかる」
俺は卓也の肩に手を置きながら、首を横に振りながら言った。
「まぁ、せやな、それ思うと一瞬くらいネタさせてやっても罰は当たらんな」
卓也がそう言うと、貴明は満足したのかスマホを取り出し、音声を止めるとエンジンを抱いたまま俺たちの方にやってきた。
「俺は、もう、何もない……生きる希望も……幸福も……」
貴明はエンジンを抱きしめながら何かを呟いている、すると卓也が貴明の方に向かってズカズカと歩いていき、勢いよく額を叩いた!
「やかましいわ!!」
「あいたぁぁっ! なにすんねん!」
貴明は額を抑えながら卓也に向かって叫んだ。
「ネタしすぎや! いい加減にしろ」
卓也の言葉に貴明は口を尖らせながらスマンと言うと、お互いに笑い出した。
「落ち着いたんか?」
俺とリサは二人に向かって歩きながら貴明に向かって尋ねた、すると貴明は俺の方を見ながらゆっくりと頷いた。
「完全に落ち着いたわけやないけど……悲しみと怒りが混ざり合って不思議なことが起こりそうになってるけど、何とか大丈夫や」
「やからネタすんな言うてるやろ」
「しゃーないやろ! ネタでもせんと、心の平穏が保てんのよ!」
卓也の言葉に貴明は目をひん剥いて、叫ぶ、抗議をするように。
「さぁ、いくぞ! 残りの奴らぶん殴って弁償させてやる。金の都合上入れられんかったオプション全乗せして弁償してもらう。俺の保険なんかで新車なんか買わんぞ!」
貴明はそう言うと拳を握りしめた!
「でもお前、新しい車買っても一年、下手したら半年ですぐにいい車が出るから買うタイミングが難しいって言いよったやん。いい機会やから車変えたら?」
「それとこれとは話が違う、ほら行くぞ!」
貴明は卓也の言葉に手を振って答えると、そのまま一人歩きだした。
「おい、一人で行くなって!」
俺は貴明に向かって叫ぶが、奴の耳に入っていないのかずんずん進んでいく、俺と卓也はため息をつくと奴を追いかけた。
「おいおい、切れてるんは分かるけど、一人で先行しすぎやで……」
「武久の言う通りや、ちょっとは落ち着けってどうした?」
俺と卓也は先を歩く、貴明の肩を掴みながら言った、しかし、貴明の様子がおかしく口を金魚のようにパクパクと開けていた。
そして、俺の方を向きながら指を前方に向ける、俺は眉間にしわを寄せながら貴明の指先を追った。
すると、その先には、走っている途中と思われるのに動きを止めている車や、足を止めている通行人、野良猫さえも動きを止めていた。
「なんじゃこりゃ……」
俺はその光景に、つばを飲み込み、静かに呟いた。
「これは魔王の放った魔法……いえ、虚無のエネルギーのせいよ……」
驚いている俺たちの背後からリサの声が響き、俺達は振り返った。するとリサは俺たちの方に向かってゆっくりと歩き出した。そして、先頭に立ち俺たちの方を振り替えた。
「さっきそこの建物を襲った地震。あれはあいつが、虚無のエネルギーをこの辺りにはなったから発生したの」
リサはそう言うと、鷲ヶ谷病院を指さした。
「あれはリサを狙ったものじゃなかったのか?」
「ええ、違う。完全に四方八方に魔法を放ったはずよ。おそらく六発。六芒星の点になる様に……だからその影響で、この世界はおかしくなっているんだと思うんだけど……」
リサがそう言うと急に周囲の空気が変わる。張り詰めたような重いようなそんなものに……。
「ま、話はあとにしてまずは動き出そうか……」
卓也はそう言うと、サングラスを取り出しそれを掛けると、デモンの力を身に纏い、近くにあった小石を拾い上空に放り投げた!
するとだ、その石は俺たちの頭上にいた、小型の球体上のドローンのような物の中心を射抜き、破壊した!
そして、それが合図だったかのように、近くにあるコンビニや、車の中からぞろぞろと畏敬の人々が現れた、病院でのナースたちと同じように体の半身が魔物になったような人たちが
「こいつら動けている……この世界の人間じゃないのか?」
俺はそう言うと一歩前に出ながら、刀を召喚するとそれを握り魔力を解放した。
「こいつらは、アロタロスが連れてきた魔物よ。でも、この世界じゃ実体を保てない、さっきのデモンやカイゼルのようにね、だからこの世界の人間を使って実態を手に入れているの」
「なに? じゃあ、間違ってぶった切ってしまったらその人間も死ぬんじゃ……」
俺は刀を引き抜こうと構えるが、リサの発言に躊躇してしまった。するとリサは軽く笑った。
「大丈夫よ、倒しても波長が合ってないから魔物と分離されて魔物側だけが倒れてこの世界の人たちは軽く気を失うだけで済むわ」
リサはそう言うと土姫を構えた。
「ん、ちょっと待て、だったら俺がぶっ飛ばした奴と合体した人はどうなんだ? あの人も魂の波長が合っていたはずだ。あいつが死んだってことは……もしかして……」
貴明の発言に、俺、卓也は生唾を大きく飲む。すると、リサは再び笑った。
「それは安心してあいつ、逃げたから……たぶん、敵の本拠地に行けばいると思うわ」
リサの言葉に、俺達はホッと息を吐くように胸をなでおろす。おそらく一番不安であったであろう、貴明はその言葉に降格を上げニヤリとし、前髪をかき上げた、すると奴も体が炎に包まれて姿が変化した。
「あれ? お前、道着変わってるやん」
その姿を見た卓也が、貴明に尋ねた。卓也の言う通り貴明の姿が変わっていた、紺色の道着は黒になり、腕当ては手甲のように立派なものになり赤く輝いていた。
「もしかしてさっきブチギレたときにパワーアップした?」
俺の言葉に貴明はゆっくり頷いた。
「それにしてもお前ら二人はええな、姿が変わって。俺なんか刀だけやで」
俺はそう言いながら刀を構える。するとその場にいた三人がえ? っという表情をし、固まった。
「いやお前も随分、立派な鎧纏ってるで?」
「マントまでつけてうらやましい」
卓也と貴明の言葉に俺は疑問を浮かべながら、自分の姿を見る。すると俺も二人同様姿が変わっていた。銀色の鎧に赤いマントを羽織った姿に。
「これって……」
俺はこの姿に覚えがあった。それはリサと一緒に冒険していた時に俺が着ていた鎧だったからだ。
「やる気でた、いくぞ皆!」
俺は自分の姿を見てニヤリとすると、刀を引き抜き、魔力を込めた。六象光輪斬が出せたなら四天王の技も使える……風の魔法で蹴散らしてやる……。
「あなたたち二人はこちらの世界のカイゼルとデモンと言っても差し支えないレベルで魂の波長が一致していて合体している、だから、ダメージはダイレクトに体に伝わるわ。だから下手をすると死んじゃう可能性があるから、十分に気を付けてね!」
リサの言葉に、二人は『おう!』と声を合わせて叫んだ。そして、俺達は一気に迫りくる魔物に向かって走り出した!
「喰らえ! 風迅斬!」
俺は声を上げると、刀を大きく振り下ろした! 刃先から、突風が吹き荒れ、それは目の前にいる体の半身がゴブリンやオークのように変化した魔物に命中し大きく吹き飛ばした!
「ちっ!」
しかし、吹き飛んでいく奴らの背後から、ドローンが飛び出し、俺らに向かって底から伸びている機関銃のようなもので俺たちを発泡した!
俺たちは舌打ちをしながら後ろに下がるが、魔物たちが俺達めがけて、飛びかかってきた!
「鬱陶しい! ライトニングブレイカー!」
「カイゼル・ボール!」
二人は、同時に叫ぶと貴明は左手に、卓也は剣を左手に持ち替えると右手に魔力を込めそれを同時に放った!
卓也の手からは五本の指、一つ一つから稲妻が飛び出し魔物たちを貫き、貴明の左手からは炎の玉が飛び出し魔物たちに命中すると周囲を巻き込みながら爆発した!
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