第四話 『再会と友の怒り』
「で、ここから歩いて何分くらいかかるんや?」
俺は走りながらリサに尋ねた。するとリサは走りながら首を横に振る。
「ごめんなさい、具体的な時間と距離は分からないの……靄がかかったみたいになって……」
リサは申し訳無さそうに言う。その時だ
「大丈夫! 車がある! 俺の車で行ったら良い! あの車で!」
貴明はそう笑顔で返すと、玄関から出たすぐの真ん前にある車を指さした。こいつの大好きな色の屋根は黒でボディは赤のツートンカラーの車た。
「なぁ、こいつ自分が初めて買った車やからって自慢したいだけやろ」
卓也は足を止めると、俺やリサに向かって眉間にシワを寄せて言うが、その表情とは裏腹に声は嬉しそうに……。
「せやな……ちょっとコイツ調子に乗ってるな」
俺も同じような表情と口調で卓也のボケに乗る。すると
「ええやん! 調子に乗ったって! 歩いていって体力消耗するよりええやろ!?」
車のドアを開けようとした貴明は振り返りながら突っ込んだ。口調とは裏腹に笑っている。誰かが軽くボケ、それに誰かが乗り、誰かが突っ込む。
高校の頃からしている、俺達の奇妙な遊びだ。
「なんか、肩の力抜けたわ。よっしゃ、さっさと行くぞ!」
俺も車に近寄ると後部座席のドアを開ける。卓也も、俺と反対側の助手席側の後部座席のドアを開け、乗ろうとしたが
「あれ? 卓也、助手席乗らんのか?」
貴明が車に乗り込もうとしながら、卓也に尋ねた。
「リサが隣の方がナビしてもらえるから、ええんちゃう?」
卓也はそう言うと、貴明を見たあと何故か俺を見てニヤついた。こいつ、俺達を弄る気か……。
「貴明いいよったやん、女の人はおかんくらいしか隣に乗せて走ったことないって、いい機会やで? あんな美人、隣に乗せて走れるなんて」
やはり、貴明をいじる作戦だ、この状態でこいつは……。
「いや、ター君に悪いから遠慮するわ。」
「ほしたら。ター君に運転させる? ター君もリサ隣に乗せて走りたいよな?」
「嫌やし! ついこの前免許取ったばかりの初心者になんか運転させられるかぁ! ター君はな、自分の車買ってからがんばれ!」
二人はそう言いながら俺に向かって、言った。
「だぁぁぁっ! さっきからター君、ター君、うるさいわあっ! いい加減にしろ! 悪意を感じるわっ!!」
俺はそう言うと、地団駄を踏む。本当は車の屋根をバンバンと叩きながら言ってやりたいがまぁ、許してやろう。
「っと、こんな茶番はこの辺にして、リサ。どうしたん?」
卓也はそう言いながら、足を止め動こうとしないリサに向かって尋ねた。
「そこから離れて! 何かが来る!」
リサが叫ぶと、強力な魔力の塊がこちらに接近してきていることに気が付いた。
「マジかよ!」
俺が声を荒げると同時に、皆は弾かれたかのように、飛び上がり、車から距離を取った その時だ、頭上から魔力と共に、何かの砲撃が飛んでくると、着弾した!
「みんな、大丈夫?」
リサは俺たちに声を掛ける。とっさの事で散り散りに飛んだため、皆バラバラ位置に着地していた。ちょうど貴明の車を囲むようにだ。
「あぁ、大丈夫や……ってリサどうし……あっ!」
右隣りからしたリサの言葉に俺は頷くが、リサから返答はない、俺はゆっくりとリサの方を見た。
そこには軽く口を開け、まさに啞然と言うべき表情をし、一点を見つめているリサと、彼女の前にあるとあるものが目に映った。
「どうした? 何があった……敵でも出てきた……あっ!」
俺達の様子がおかしいと思ったのか、様子を心配する卓也の声が聞こえる、すると卓也も俺たちが目にしている光景を目にしたのか、俺達よりも大きな声を出した。
「くっそ、何処からや、てかなにがあった?」
貴明の声が聞こえ、俺は車の正面に着地し、ゆっくりと立ち上がっている貴明を見ると、空気を一気に吸い込んだ。そして
「貴明! 振り返るな!」
振り返ろうとした貴明に卓也は声を上げて叫ぶ。必死の形相で
「そうや、ぜっったいに振り返るなよ! 押すなよ、押すなよ! ちゃうからなぁ!」
「二人の言う通りよ! ぜっったいに振り返っちゃ駄目だからね!」
俺もリサも卓也同様、貴明の動きを止めようとする。
「なんやねん……みんなして……どうした……」
「ダメェぇぇっ!」
「よせぇぇぇっ!」
俺達はほぼ同時に貴明に向かって叫ぶ、しかしそれも虚しく、貴明は、振り返ってしまった。
「……おい、どういうことだよ……」
貴明は呆然と立ち尽くしながら炎上しているものを見る。
そうなるのも無理はない。なぜなら、今の俺たちの目の前には屋根は拉げ、ガラスはひび割れ、赤と黒の綺麗なツートンカラーも今では焦げて黒いのか、炎の光が反射して赤いのか分からなくなっている、貴明の愛車があった。
「デ〇ズルー〇ス!!」
貴明の自身の愛車を叫ぶ、悲痛な声が木霊する。
「お、落ち着け……六象光輪斬が使えるならこれくらいの炎、簡単に、鎮火してやる……」
「そ、そうよ。私もこのくらいの炎なら消せるから……ねっ、落ち着いて……」
燃え上がる車に向かって走り出そうとした、貴明の前に立ち、奴の動きを止めながら言う、リサも俺と同様に、魔導書を道具袋から取り出しながら貴明を制止した。
戦闘が終わり、刀は消失したが魔力を込めたら出てくるのは分かる……俺は刀を召喚しようとした、その時!
「ゲコゲコ、これで貴様らの足は奪ったぞ……」
突然、声が聞こえ俺たちは声のした方を睨む。入り口付近の庇の上に、体が真緑の姿をした赤いマントを羽織った、丸々と太ったドラゴンとカエルを足したような魔物がいた。
そして、奴の周りには機関銃のようなものを腕から生やした赤いロボットが二体と、緑色に輝く、両肩から砲台が生えたロボットが立っていた。
「ゲコゲドン!」
リサは頭から生える金色の髪を櫛で整えている、緑色の魔物の名前を叫んだ。
「その奇妙な道具がなければ貴様らはあの方の所にたどり着く前に体力を消耗される……こちらの作戦勝ちだ、だが……この場で仕留めれば俺はあのお方に褒めていただける」
ゲコゲドンと言われた魔物はそう言うと櫛をペチンと叩き、右腕を上げた。すると奴の周りにいたロボットたちが自身の武器を一斉に俺たちに向けてきた。
くるっ! ロボットたちの指が引き金に掛かったその時だ! 目の前にいる貴明の身体から魔力が放たれるとそれは、巨大な炎の柱となった。
「あかん、相当キレてるぞあれ」
卓也のつぶやきに、俺とリサはゆっくりと頷いた。
「貴様らが、俺の車を……許さんっ!」
貴明は、ゲコゲドンたちに向かって叫ぶと、庇に向かって一気に飛び上がった!
「ゲコ? それがどうした? そんなに荒々しく怒ったところで、ただの人間に何ができる? 奴をハチの巣にするゲコ!」
ゲコゲドンは貴明に向かって言うと、大声で笑う。すると、奴の周りにいたロボットたちは俺たちに向けていた銃口を貴明に向け一斉に攻撃した!?
「あぶない!」
リサは魔力を込めた右腕を突き出しながら、ロボット軍団から銃弾や砲撃を浴びせられる貴明に向かって叫んだ。
「いってぇぇんだよ、ボケぇっ!」
上がる煙の中から、貴明のセリフと共に右腕が飛びだし手前にいた、機関銃を持ったロボットの頭を掴むとそのまま握りつぶした。
「許さねぇぞ!」
「ゲコ、多少はやるらしいが、その程度大したことはない!」
ゲコゲドンが叫ぶと口に魔力が込められる。そして奴は貴明に向かって炎を吐き出した!
「鬱陶しいぃ!」
貴晴は叫び、左右にいる残りの機関銃を持ったロボットと、両肩に砲台を付けたロボットの体を掴んだ。
そしてそれらを自分側に寄せると、なんと、そいつらを盾にして防御、炎に包まれたロボットたちはそのまま勢いよく爆発した。
「あっちゃー、相当ブチぎれているな……」
その様子を見ながら卓也は頭をかき、その言葉に俺達も同意するように頷く
「なんて奴だわばっ!」
ゲコゲドンもその様子にひいたのか後ろに下がろうとするが、突然、爆炎の中から人影が飛び出し、それは奴のたまたま前方に伸びていた右腕を殴り飛ばした!
その瞬間、離れてもわかるほどの、何かが割れるような乾いた音が響いた。
「うっわ」
卓也は天井に膝をつき、右腕を抑えているゲコゲドンを見ながらつぶやく。奴の右腕はくの字を描くように、本来の関節では曲がらない方向に曲がっていた。
「どうしたよ、カエルやろう。もう終わりか?」
貴明はそう言うと、ゲコゲドンの首元のマントの結び目を掴むと、奴の巨大を軽々と利き腕ではない右腕で持ち上げた!
「俺の怒りを……思い知れ!」
貴明はそう言うと魔力を込めた左腕をゲコゲドンの腹に突き出し勢いよく殴りつけると、そのまま、奴を上空に放り投げた!
「こぉいつで……止めだぁぁっ!」
貴明は上空を見ながら叫ぶと、貴明は自身を抱きしめる様にぐっと身を屈め、魔力を体の一点に集め始めた!
「魔炎砲……もとい……カイゼル・ブラスタァァァァァァァッ!!」
そして、一気に胸を開いた! そして奴の体全身から圧縮された魔力が……炎の塊が一気に飛び出した!
その炎は上空に殴り飛ばされ慌てふためくゲコゲドンの体に命中すると、奴の体を焼き尽くし、大爆発した!
「特撮ヒーローかよ」
と、爆散するゲコゲドンを見ようともせず、振り返る貴明を見ながら卓也は呟いた。
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