第一話 『再会と異変』
「やっぱ、俺はラスボスのデザインが納得できん!」
俺の目の前に座る卓也はそう言うと、自分の太腿を軽く叩いた。
「俺も同じ気持ちや、まぁ俺は中盤から気に入らんな」
貴明はそう言うと、軽くため息を付き、握るハンドルを人差し指で軽く叩いた。俺達は今、貴明の運転する車の中にいる。
あの後、俺達は映画を見に行った、今日公開したばかりの映画で、俺たちが生まれる前から今でも続くシリーズ物のリブート作品だ。
そして、二人は映画館を後にしてから、ずっと映画の感想と言う名の討論会をくり広げている。無理もない、二人、特に貴明はファンクラブにも所属しているほどの大ファンだ。
思う所があるのだろう。
「しょーじきついていけんわ……」
俺は欠伸をしながらそう言うと、手に持った端末に……ゲーム機に目線を落とし、操作する。すると
『今がチャンス! アースクエイク!』
と、リサの必殺技を叫ぶ音声が、二人が議論を止め、カーオーディオから流れる音楽も次のトラックへと切り替わる無音のタイミングの時に響いた。
「お前、まだオークエしよるんかい! よーもつな充電」
貴明はルームミラーで俺を一瞬見て尋ねてきた。
「まだ、イチャつきたらんのかよ、お前は……」
更に、深くため息を付く貴明。ほっとけ!
「まぁ、でもしゃーない。好きな子とイチャつきたい気持ちは誰にでもある! そうやろター君?」
「ター君、言うな!」
貴明のため息に続き、卓也は後部座席に座る、俺を見ながら広角を上げ、二人で俺をイジる。悪意を感じるわっ!
そう思いながら俺はぐっと身を乗り出すと卓也の頭に手を置いて、グルングルンと撫で回した!
「うっ、鬱陶しい!」
卓也はそう言うと、腕を振るう。俺はその様子を笑いながら、どかっと後ろに深く腰掛ける。その時だ、北の空が一瞬だけパッと光輝いた……ような気がした。
「おい、今の……」
俺は二人に尋ねようとするが、二人共気がついていないのか、そのまま感想を言い合っていた。
「ん? すまん、武久、なんかあった?」
貴明は、ルームミラーに、視線をうつしながら、俺に尋ねた。
「ん、いや、何でもな…っぬおっ!」
俺は貴明の言葉に返事をした、その時だ!
「どうした!?」
突然。貴明が急ブレーキを踏んだのか、俺達の体は前のめりになりバランスを崩した。
「すまん、人が倒れとるからブレーキ掛けたんよ!」
貴明はそう言うと、車を路肩に寄せ、シートベルトを外した。卓也もシートベルトを外し、車外に出た。もちろん俺もだ。
俺が車外に出ると貴明は横断歩道上にうつ伏せに倒れている人物に近づいていた。
「大丈夫ですか!?」
貴明は身を屈め、その人物の、金と茶髪の中間色のような綺麗で長い髪の女性の肩をゆすり声をかけていた。
「救急車、呼ぶか?」
卓也はそう言いながら、ポケットからスマホを取り出す。いや、たしか今日の救急って……。
「そうや……な……いや、待て! 今日の救急。確か、そこの鷲ヶ谷病院やろ! このまま載せたほうが早い!」
「わかった、念の為検索するわ!」
「いや、貴明の言うとおり、今日の救急病院は鷲ヶ谷病院や!」
俺はスマホを触りながら貴明に向かって叫ぶ、すると貴明は倒れる女性を支えるようにして立ち上がった。
「よっしゃ、じゃあ俺はこの人連れて行くから、武久! すまんけどお前、後から病院着てくれ!」
貴明の言葉に俺は頷くと、彼女を乗せようと準備をしている卓也のもとに急ぎ、後部座席のドアを開けた。
そして、女性を抱えて歩いてくる貴明を助けようと、手を伸ばしたその時だ! 意識を失っている女性の体に俺の手が触れた瞬間、電流が走った!
「え……リ…サ……?」
そして、俺の目の前がぐるぐると回り始め、俺は人の名をつぶやきながら、友の俺を呼ぶ声を聞きつつ意識を失った……。
「っ!」
俺が意識を覚醒させると、そこは黒や紫といった禍々しい色の雲がひしめきあい、真緑に輝く光が雲の合間から稲妻のようにスパークしている空間にいた。
「なんやここ……」
俺は周囲を見ながらつぶやく、まるでここは俺の夢の中でリサと一緒に魔王と戦った空間と同じだった。
「おいおい、俺はまだ夢見てんのか?」
気を失って、夢の続き……はは、笑えねー。
「彼奴等に弄られるのも納得するしかねーな」
俺は軽く息を吐き、つぶやいた。その時だ、雲の合間ならスパークしている光が激しくなると、一つに集まり始めた!
「何や!?」
俺は声を荒げる、するとその光の中から巨大な腕が真っ赤な色をした腕がヌッ!と現れると俺に向かって伸びてきた。
「ぬおっ!」
俺は後退りすると、一気に振り返り、走り出す、なんて夢や冗談やない! そう思いながら全力疾走する。しかし、それも虚しくグワッと俺に向かってくる腕は手を広げる。
そして、俺は掴まれそうになった。その時だ。
「うあわっ!」
俺は意識を覚醒し、飛び起きた!
「あ、あれ? ここは……?」
俺は周囲を見渡しながらつぶやく、見慣れない白い殺風景なものが広がっていた。
「あ、起きましたか?」
そうしていると、目の前のカーテンが開き、白衣……ではなく、若干赤みがかった白いナース服を身に纏った女性が俺に声を掛けてきた。
「点滴も終わってるね、もう大丈夫よ」
ナースはそう言うと俺のそばに近寄り、針を抜き、処置をした。
「君を連れてきてくれた友達は外のロビーで待ってるわよ」
ナースは、出ていこうとする俺の方を振り返ると優しく言った。
俺はその言葉に軽く頷き、お礼を言い、病室を後にした。俺が病室を出ると、すぐ左端にあるベンチの側で誰かと話している二人の姿があった。
「わかりました、後日ご連絡することがあるかもしれませんので、そのときはお願いします」
俺が三人に近寄ると、貴明と卓也の前にいた男が帽子のつばを握りながら軽く頭を下げ、その場を離れた。
「あれ、今の警官やん。なんかあったんけ?」
二人と話していた男、警察官が離れたことを確認した俺は、二人に向かって歩きながら尋ねた。
「おお、武久。目ぇ覚ましたか」
貴明はそう言うと卓也と共に笑いながら俺の方に歩いていった。
「急に倒れたからビビったぞ」
「あー、すまんな。なんか頭がフラってなったわ」
「ホンマに、オークエばっかしてイチャイチャしてるからやぞ」
卓也は俺の言葉に口角を上げながら言う。言い返したいが、あんな夢を見てしまった手前、言い返すことができない……。ここは話題を変えなくては……。
「そういえば、なんで警察なんか着てたんや?」
俺は、話を逸らそうともう一度、二人にした質問をした。
「こいつが撥ねたって勘違いされたんよ」
「女性だったんだが、怪我してたからな。俺がこの辺で撥ねて病院に直接連れて来たと思われたみたいでな、警察に通報されたんよ!」
卓也の言葉に貴明が追加で話す、どこか納得いってないような表情で……
「まぁ、しゃーないやろ。素人判断で動かずに、救急車に連絡するなりして対応聞けって医者にも怒られたしな」
卓也はそう言って苦笑いをすると、俺らはそのままロビーにある総合受付に向かって歩き出した。
「なるほど……そういや、倒れてたひとは?」
しばらく歩いた後、俺は二人に尋ねた。二人は足を止めると俺の方を振り返った。
「結構傷が酷いらしい……手術は終わったけど、意識回復するまではしばらく入院やと」
「ほー」
卓也の言葉に俺はいつもの調子で返事する。
「じゃ、帰るか」
「へー」
貴明の言葉に俺は頷くと、そのまま玄関に向かって歩き出したが貴明が唐突に足を止めた。
「おまえ、治療費払ったか!?」
「あ、忘れとった!」
貴明の言葉に俺は踵を返すと、ロビーにある総合受付に行こうとした、その時だ!
「うおっ!」
急に地震が発生、真下から突き上げるようにとよく表現されるが、全然違う、真下どころか真上からも衝撃があった。
「と、とにかく屈むぞ」
卓也の声に俺達は頷くと身を屈める。そうしていると、突然、病院内の電気が消えた!
「て、停電か!?」
貴明の一オクターブ上がった声が聞こえる。しかし、すぐにパット電気が付くと同時に地震がおさまった。
「お、おさまったか……」
俺は呟きながらゆっくりと立ち上がる、貴明、卓也も同様に立ち上がった。
「結構すごかったな……」
卓也の言葉に俺達はゆっくり頷いた。
「あぁ、それにしてもあれだけの地震があったのに静かやね……」
貴明は周囲を見渡しながら言う。たしかに、ここは病院。もう少しバタバタしていてもおかしくはないが……。
「ん? あの看護師おかしくないか?」
周囲を見渡していた貴明が俺の背後をさす。俺はその方を見る、すると背後の病室からナースが出てきた。ゆっくりとした足取りでだ。
「ほんまやな、てか、あのナースさっき俺の点滴抜いてくれた人や」
俺は右に左と歩行が定まってないナースを見ながらつぶやく。するとだ、俺たちの声が聞こえたのかナースはこちらを見た。
「みづげっだあっ!」
俺と目があった瞬間、ナースは枯れたような声で叫んだ! すると、姿が変化した! 右腕が肩にかけて肥大化し緑色のまるで怪物のような右腕に変化した!
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