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第四話 『地下牢からの救出劇 相手はイケメン 剣士シオン』

「う……シ、シオン……」


 マーシャは気がついたようだ。私は胸をなでおろす。正直とっさのことで手加減が不十分だった為、彼女を殺してしまったのではないかと不安になっていたのだ。


「マーシャ、お前は下がってろ……」


 シオンはマーシャを支えながら強い口調で言葉を掛けた。


「でも! 私はまだ!」


「下がれ! お前ではあいつに勝てない。なぜならあいつは実力の半分も出していない」


 シオンの言葉にマーシャは目を見開く。彼はどこかで私の戦いを見ていたのか……。手を抜いていたことがばれている……。


「あらゆる面でお前の上を言っている。魔力を込めた鞭でお前の一撃を払う技。お前の必殺技を返す技。お前のダメージも深刻だ。お前に無理はさせられない。それに……」


 シオンがこっちを見た。笑みを浮かべている。


「彼女が魔王の一味なのか、なぜそこのゴブリンを助けに来たかどうかよりも、私は、彼女と戦ってみたくなった」


 シオンは笑みを浮かべながら、帯刀した剣をゆっくりと引き抜くと、刃先を私の方に向けた。片刃の剣だ。


「マーシャ。下がるんだ。此処はシオンに……いや、シオンでなければだめだ……」


 初老の兵士はマーシャに語り掛け、半ば無理やりに肩を押すようにしてその場から遠ざけた。それと同時に他の兵士も武器を降ろし、少し距離を取った。


「一騎打ちと行こう。私は白洋の騎士団、団長シオン・ストール。お前は?」


「私はリサ。リサ・ビアンカ・ノエルです」


 シオンにつられて私も自己紹介する。


「リサか、君が勝てばそこにいる魔物を好きにしていい、私が勝てば、洗いざらい君の知っていることを吐いてもらうぞ」


 シオンはそう言って剣を両手で握ると、自身の顔の辺りまで腕を上げ、肘を軽く曲げながら剣先が私に向くように構えた。


「行くぞ! はあぁぁぁぁっ!」


 シオンは声を上げながら私目がけて走ってきた。速い! 私よりも早く距離を詰め、剣を振り下ろそうと構えていた。


「っ!」


 私は体をひねり、後ろに飛び、手の甲で相手を殴るような動きで鞭を振った。


「うごっ!」


 鞭の先端が見事シオンの左頬に命中、シオンの体が大きくのけぞった。でも彼はすぐに体勢を整えた。なるほど、あえて左側に体をひねって、ダメージを最小限に逃がしたのね。


「宙にいるあの体勢から、良い攻撃を打つ。やはりただ者ではないな」


「あなたもね、かなり早いわ。今度はこちらから行かせて貰うわ!」


 私は鞭を強く握ると腕を左から右に向けて払うように鞭を振るった!


「舐めているのか? こんな単調な技、効かん!」


 シオンは叫ぶと、剣を両手で握り腕を勢いよく振り上げた、私の鞭を切り落とそうとしているようだ。でも甘い!


 私はシオンが腕を振り下ろし、彼の剣の刃が鞭に命中しようとした瞬間、腕を左に動かす、そして次はシオンの腕を飛び越えるように右腕を大きく振り回すように右上へと掲げた。


「なっ!」


 私の腕の動きに会わせて鞭が一瞬左に行き、シオンの剣の刃に命中する前に飛ぶように逃げると、今度はシオンの腕を飛び越えるようにして頭上に舞った。


 チャンス! 彼は大きく隙を見せる、私は続けて右腕を勢いよく真下に振り下ろし、シオンの頭を狙った!


「うがあっ!」


 私の振るった鞭はシオンの右のこめかみから斜めにまっすぐ降り下ろされシオンの顔を勢いよく叩いた。


 でも、これで終わらない。私は鞭を真下から勢いよく突き上げるように振るい、シオンの顎を叩きつけた! シオンの顔が勢いよくはね上がり後ろにのけぞった。


 まだまだ追撃は止めない、今度は腕を左腕にあげるとそのまま右斜め下に向かって剣で切り裂くようにして腕を振り、シオンの左頬を叩いた……。


 違う、早さに乗った鞭はシオンの頬を切りつけた。鮮血し、体が大きく沈みこむシオン。これで止めね。


 今度は腕を大きく振り、鞭を宙に舞い上がらせると、鞭で宙に三角形を描くようにシオン目掛けて鞭を振るった。 一度に頭、腹、顎を打たれたシオンはその場に膝をついた! でも……。


「しまった!」


 最後の一打を放とうとした瞬間、シオンは左手で私の鞭をつかんだ!


「素晴らしい連撃だ。意識を飛ばされてしまった。だがこれで私の方が有利だ!」


 まずい! 私は鞭を引く。しかし、彼が鞭を強く握ると緑色の魔力光が発生、私の鞭は切り裂かれてしまった。


「おどろいたか? 私は魔法戦士。風の魔法を得意としている」


 シオンはそういうと左手に持っていた私の鞭の切れ端をその場に捨てた。


「これで君には武器がない、できるのは魔法による攻撃と素手のみ。私の方が少し有利だな!」


 シオンは剣を両手で構えると一気に距離を詰めてきた。甘い!


「なにぃ!?」


「あら? 私の武器は鞭だけといった覚えはないのだけれど?」


 私は腰のベルトから一本の武器を抜き、シオンの振り下ろした剣を弾いたのだ。鞭は基本的に打撃武器だ、打撃は無効な魔物もいるし、超近距離になると不利になるため。


 私はとある国に行ったときに作ってもらった三十センチ程しかない短い『タントウ』と言う反りのある片手剣とムチを併用している、ちなみに名前があり『ツチヒメ』という。


 基本は鞭だけど、打撃が利かない魔物もいるからね。それに、接近されたら鞭だとどうしても不利になる、マーシャにやったみたいに魔力を流して棒みたいにしたらいいのかもしれないけど、それなら鞭にわざわざしない。


「くぅ、短剣で防ぐとはなかなかやるな。だが! 短剣ではこの技は防げまい」


 シオンは叫ぶと後ろに下がる。そして剣の刃に左手を添える。するとだ左手が光輝いた! 魔法剣⁉ 彼は剣に風の魔法を纏わせようとしている。


「受けてみろ! 我が太刀筋を!!」


 シオンはそういうと私にまっすぐ剣を振り下ろした!!剣の刃から放たれる、風の魔法を帯びた斬撃。やはり彼は強い、これだけの魔力を扱える魔法戦士はそうはいないはず。


 私はツチヒメを逆手に持つと。一気に私に向かってくる斬撃に向かって走った!


「はあっ!」


 私は走りながら勢いよく右腕を払うようにして、格闘術で言う所の、裏拳だ。あれをするような勢いで右腕を振るい、私に向かってきているシオンの斬撃を切り裂いた!!


「なっ!」


「これで止め! はあっ!!」


 私は飛び上がると当時に、ツチヒメを逆手から順手に持ち替える、そして目を丸くし、私を見上げているシオンの額に向かって、刃を返し、反りの部分だけのツチヒメを勢いよく振り下ろした!! 


 東の国でのサムライと言う剣士が言うにはミネウチと言う技らしい。


「ぐがあっ‼」


 顔が勢いよく沈むように下がると彼は勢いのまま冷たい牢屋の床に倒れ……なかった! 彼は膝をついて何とか耐えた……。


「ぐっ……」


 シオンは剣を支えにし、ゆっくりと立つ。


「残念だが……降参だ……。私の力では君には勝てない、君の力の半分も出せなかったからな……皆も、武器を降ろせ。お前たちが束になったところで彼女を倒すことはできん」


 立ち上がったシオンは、悔しさとも怒りとも取れない、どこか嬉しさのようなものも感じ取れるような表情を見せると、腕を上げ、今にも武器を構えてこちら側に迫ろうとしていた兵士たちに向かって重く、静かに言葉を放った。


「しかし!」


「構わん。シオンの考えは正しい」


 シオンの言葉に異を唱える、若い兵士たち。でも、その間から静かな声が響いた……兵士長とも思えない貫禄がありどこか重みのある声の方を私は見た。


「村長?」


「シオン、その娘をわしの部屋に連れてこい。お主でもかなわないその娘の力、そしてこの状況下において微動だにせず、睡眠を続けるゴブリンとの関係を聞きたい」


 村長の言葉にハッとする。急いで魔物の子の方を見ると彼は大口を開けたまま眠っていた。


 正に『爆睡』と言う状況にふさわしかった。この状況で寝むれるなんて図太いとかそのレベルを超えているわね……。


「リサだったな……こちらに来てもらうぞ?」


 シオンの問いかけに私はゆっくりと頷くと、シオンと共に出入り口に向かって歩いて行った。

第四話 『地下牢からの救出劇 相手はイケメン 剣士シオン』を読んでくださりありがとうございます。

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