第十三話 『決戦!!ミノタウロス キレた! アンタなんかフルボッコ!』
「リサ!」
マーシャとルキウスが同時に叫ぶ。
「クックックッ、油断したな」
ミノタウロスが、背を向けた私に対して、光弾を放ったようだ。やりやがったわね。
「大丈夫?」
「ええ、問題ないわ。」
マーシャが立ち上がり、駆け寄ろうとするが、私は笑顔をマーシャに向けた。ギリギリで障壁魔法を使った私、衝撃が結構痛かったがダメージはなかった。
あの角度、私ではなく、マーシャとルキウスを狙ったものだ。
私はミノタウロスを睨みつけるとゆっくりと足を進める。するとだ、三度、ミノタウロスは光弾を私に……ではなく、マーシャとルキウスに向かって放ってきた。私の左ギリギリをすり抜けるような角度で……。
「はあっ!」
私はその光弾の前に立つと左手を握りしめる、勢いよくその光弾を殴り飛ばした!!
「くそっ!」
ミノタウロスは光弾を吐き私の跳ね返した光弾を相殺した。だが、距離が近くミノタウロスは自分の放った光弾の爆発に巻き込まれ、顔を大きく仰け反らせた。それを見た私は思わず吹いてしまった。
「き、貴様、俺を笑ったな!?」
顔に火傷を負ったミノタウロスは鼻息荒く、私に言う。
「ごめんなさい、おかしくてつい……。」
「もう怒った! 貴様を粉々に切り裂いてくれる!!」
ミノタウロスがそう言うと、私がはたき落としたはずの斧が彼の両手に現れ彼はそれを手に握ると、私に一気に接近した。速さが増している!
「ぬらっ!」
ミノタウロスは私に向かって左腕の斧を勢いよく振り下ろした。さっきよも早くなっているけど遅いわ!
私は体を左に滑らせるように動かし、攻撃をかわす。そして彼の左頬に向かって鞭を勢いよく振るった。鞭がミノタウロスの左頬に命中し、彼はバランスを崩す。
「なめるな、小娘がぁぁぁぁっ!」
彼は姿勢を直すと、左手の斧を横薙ぎに振るった。私は勢いよく屈み前方に出る。そして私が傷つけた×字の傷がある中心部を勢いよく左手で殴り飛ばした。
ミノタウロスの口からくぐもった声が聞こえ、後ろによろめくが足を踏ん張って耐え、右腕を勢いよく振り下ろした!
彼の手に握られる、斧は勢いよく私に迫る。私は鞭の先端を左手で持つと魔力を流す、そして迫る斧を弾き返そうと構える。
これは受けられない! 斧から一瞬だけ感じた彼が身に纏う魔力とは違う力、私は構えを解くと、右側に転がるようにして彼の攻撃をかわした。
そして、彼の振り下ろした斧は勢いを殺すことなくそのまま地面に命中、何かが爆発したんじゃないかと思うくらいの轟音と共に、地面は砕け、砂埃が舞った。
危なかった、もうちょっとで切られるところだったかも……。それにしてもすごい威力、避けたと思ったのだが、衝撃波を食らってしまった。
っ! 二人は……。私は立ち上がると急いでマーシャとルキウスの方を見る。そこにはかわしたと思われる二人が立っていて埃を払っていた。
良かった……私はほっと胸をなでおろすとミノタウロスを睨む。これ以上時間はかけられないわ……リミッターを解除して一撃で倒す。
「くそ! あれもかわすだと……ならばこれでどうだ!!」
魔力をためていた私に向かってミノタウロスが言う、そして彼は私に向かって口を広げた。光弾を撃つつもり? させない!
私は鞭を左腰に納めると溜めていた魔力を右手に集める。そして、勢いよく地面に向かって右腕を振り下ろそうとした。
その時だ! 彼の口からは光弾……ではなく、黒い何かが勢いよく放たれた。魔力? 違うこれは!
私は思わず、目を閉じ、口を覆う。これは煙幕だ。こんなものも口から出せたの? そう思っていると一瞬空気が動いた。そして
「マーシャ!」
「キャアッ!」
突然、マーシャとルキウスの声が聞こえる。まさかあいつ⁉
私は煙幕を払うと、すぐにマーシャとルキウスの声がした方を睨む、ゆっくりと煙幕が晴れていきそれは見えた。
そこには、ルキウスを踏みつけ、マーシャの両腕を持ち、彼女の体を持ち上げながらこちらに向けているミノタウロスが立っていた。
「動くな! 動けばこいつらの命はない!」
ミノタウロスは笑いながら言う。こいつは私の神経を逆なですることばかりしてくれる……。私は足を一歩踏み出した。その時だった。
「があっ!」
ルキウスの声が響いた、どうやら体重をかけたようだ。こいつ……
「動くな、と言ったはずだが……」
ミノタウロスは右足を上げると、再びルキウスを踏みつけた! いい加減にしてよ……。
「リ、リサ……俺たちの事はいい……こいつを倒すんだ」
ルキウスは声を荒げて言う。
「そうよ! 私たちにかまわないでこいつを倒して。貴女なら倒せるはずよ。」
マーシャも叫ぶ。二人とも……でも……
「余計なことを言うな!!」
ミノタウロスはそう言って、ルキウスを二、三度踏みつけるとそのまま彼を左端に蹴り上げる、そして次は斧を地面に突き刺すと左手で持ち上げているマーシャの頬を右手でビンタしたのだ! マーシャの悲鳴が漏れ、力を失った。
「ふん、仲間を人質に取られて、何もできんまま死んでいくがいい!!」
ミノタウロスの薄汚い笑い声が聞こえる……耳が腐る、彼は斧を拾い、私に向かって投擲してきた。でも……。
「な!」
「にぃっ……」
ミノタウロスとルキウスの驚いた声が聞こえる、無理もない。私はミノタウロスの投げた斧を掴んだのだ。しかも柄の方ではなく刃の方を。魔力を込めればこの程度の斧の刃など紙以下だ。
「う、動くなよ! 今度こそこの女の顔面を潰すぞ!」
ミノタウロスの狼狽える声が聞こえる。鬱陶しいわ
「あら? 女と言うのは誰の事かしら?」
私はミノタウロスに尋ねた。彼の傍で、マーシャを抱えながら。
「なにぃ? っ……ば、ばかな……なぜ俺の腕がぁぁぁぁぁあっ!!」
「馬鹿な……いつのまに……」
私はミノタウロスの斧を掴んだ瞬間、次の行動に移っていた。ミノタウロスが動くなよと言ったときにはすでに彼の傍まで来ており。マーシャを掴んでいる、そのきったない左腕を彼の斧で斬り落としていたのだ。どうやらルキウスは見えていたみたい。
「ぐぅぅ、ゆ、許さん……俺の左腕を斬り飛ばしやがって!」
私はマーシャを地面に寝かせると、斧をミノタウロスの方に放り投げ、今度は右腕を切り裂いた。
「許さないですって……それは私のセリフよ……私の仲間を散々いたぶってくれたお礼、今ここでしてあげる!!」
もう限界だ! ありったけの魔力を込める。
「これは白洋の村の人の分!」
私はミノタウロスに接近すると左手でミノタウロスのあごを殴り飛ばした!
「これは金牛の町の人の分!」
さらに力を籠め。右手で腹を殴りつける。
「ぐごはっ……まだだ……この程度でやられるものか!」
ミノタウロスは口を開ける、光弾を撃つ気ね……させない! 私は飛び上がりながら右ひざを大きく上に突き出し、ミノタウロスのあごを蹴り上げ、その威力を利用して後ろに飛ぶ。
光弾を放とうと口を開けていたミノタウロスは勢いよく顎を蹴られたため口が閉じ、光弾は彼の口腔内で爆発、煙を上げた。
「今のが、散々痛めつけられた、マーシャとルキウスの分よ。そしてこれが……」
私は右手に魔力をためた。
「な、なんだその魔力は……まさかお前!」
「これが服を切り裂かれたり、色々な目に合った私の怒りよ! 喰らえっ!!アースクエイク!!」
ありったけの怒りを込め。勢いよく地面を右手で殴りつけ、魔法を唱えた! 私が一番得意としている土属性魔法の中でも、十八番ともいえる一番得意な技よ!
大きく地面が揺れると地面が勢いよく隆起する。そしてそれらはミノタウロスに向かって一斉に迫り、隆起した土は棘のようになり、ミノタウロスの体を貫いた!
「あの糞ぶたがぁぁぁぁぁっ!!」
ミノタウロスは誰かの名を断末魔に、私の放ったアースクエイクにより貫かれながら勢いよく爆発! 四散した!!
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