第四十六話 第二部完『さようならリサ いつかどこかで』
「う……どこだ此処は……」
俺は目を開きながら周囲を見渡す、確かアロタロスを倒して、空間が崩壊していたからリサが魔法を唱えて……。
「あ、ター君大丈夫だった?」
リサの声が響き俺は意識を取り戻すと起き上がり周囲をみる。すると、そこは綺麗な小川の流れる草原のような場所だった……。
「ここは……?」
「たぶんだけど、私達の世界とター君たちの世界とのはざまよ……」
リサは屈み、上体のみを起こしている俺に視線を合わせながら言うと、指を伸ばした、すると川の向こう側に薄らとだが同じような草原が見えた……おい、これって……。
「三途の川みたいで、縁起が悪いんだが……」
貴明の声が聞こえ、俺は振り返る、すると景色を見ながら立ち上がる貴明の姿があった、その隣には卓也もいる。良かった全員大丈夫みたいやな……。
「別に三途の川じゃないわよ……アロタロスを倒したおかげで、あの空間が崩壊したのよ、それで、私達の世界とター君たちの世界の狭間に移動できたのよ」
リサはそう言って立ち上がる。なんか貴明にあたり強いな……。
「じゃあ、俺達は向こうに行けば帰れるんか?」
卓也の言葉にリサが頷く、すると俺達の体が光り輝くと、姿が元に戻った。そして、卓也の懐からサングラスが、貴明のポケットからペンライトが飛び出ると、それは宙に浮いた。
そして、それらも勢いよく光り輝くと、その光は徐々に人の姿を象り始めた。
そしてその光はデモンとカイゼルになる、いや違う、光がなったというより力が解放されて二人が元の姿を現した。と、表現するべきか……。
「どうやらすべて終わったみたいだな」
そんな事を思っていると周囲を見渡しながらデモンが静かに言った。
「ええ、これでたぶん、ター君たちの世界に落ちた虚無のエネルギーの力の影響は無くなったはずよ」
リサはそう言うと俺に笑いかける。ああ、そうか……もう、この現実感のない物語のような現実は終わりなのか……つまり…。
「お別れ……と言う事だな……」
貴明が静かに言う、俺が言おうとして飲み込んだ言葉を……言ってしまったら、此処までの出来事が終わってしまうと思い俺が飲み込んだ言葉を貴明は躊躇しなかった。
「ああ、そうなるな。君達には迷惑をかけた……」
「いや、気にしなくていい、あ、いや待て。全部終わりじゃないだろ? アロタロスにラビュルスの斧を渡した、飲み屋の女を装ってあいつに虚無のエネルギーを触れさせる元凶を作ったやつらを潰さないと終わりじゃないはずだ……だったら手伝うぜ」
俺はリサに向かって言う。いや、手伝うというのは出まかせだ。俺はこの夢のような現実を捨てたくはないんだ……。
証拠に俺はめちゃくちゃ早口でリサに話したからだ……。
「それは君たちの仕事じゃないでしょ? いや、ラビュルスの斧がアロタロスに渡るきっかけを作ったのは君だから責任を取って手伝ってもらう必要はあるけど……」
「じゃあ」
「冗談よ、君は君の元通りの生活をしないとダメでしょ?」
リサは俺の手を握りながら言う、我が儘を言う子供を窘めるような口調と表情で
「それに、此処からは俺達の戦いだ、君たちを巻き込むわけにはいかんからな」
「せやな、言っちゃ悪いがこう言う事はこりごりや、正直夢だと思いたい……」
カイゼルの言葉に卓也が答える。その言葉を受けた、リサ、デモン、カイゼルの三人は苦笑していたが……。
「俺も同意する……こういう、授業中にテロリストが襲撃してきてカッコよく倒しました的な展開は結構憧れてたけど、実際に体験するのはきついな……」
貴明はそう言うと、申し訳なさそうな表情をしながら頭を掻いた、するとだ貴明の姿が透けたのだ!
「! 貴明お前透けとるぞ! 大丈夫なんか?」
卓也が声を荒げて言う、だが、そう言う卓也の姿も透け始めていた。その時、俺達の背後に一台のボートが現れた。そうか……もう……。
「どうやら、時間切れみたいね……」
リサが呟くように悲しげな表情で言う。
「これに乗って向こう岸に渡れって事みたいやな……」
貴晴はボートを見ながらつぶやくように言う、するとデモンとカイゼルが二人の目の前に近寄る、別れの挨拶って事か……。
「卓也、君のお陰で俺のやり残しに決着を付けることができたありがとう……君の傍にいてくれる女性を大切にするんだぞ……」
デモンはそう言うと、卓也に右手を伸ばす。対する卓也も軽く笑ってデモンの手を握った。
「貴明、君と出会えてよかった、君の知識あれのお陰で俺はもっと強くなれるだろう……ありがとう」
カイゼルは貴明に笑うと、貴明もそれに答えるように互いに握手をする、そして貴明と卓也はボートに向かって歩きだした。
すると、貴明は振り返りリサ、カイゼル、デモンの三人に頭を下げると再びボートの方を向き、ボートに向かって足を進めた。
「ター君、本当にこれでお別れだね……君ともう一度で会えてよかった」
「俺もだ、あの時のことは夢だと思っていたから……まさか現実で好きな人に出会えるなんて思ってもみなかった……」
「本当? うれしいな」
あ~、ヤバい。きっと俺の顔は真っ赤なのだろう……背後からする二人の視線……絶対ニヤついている……後でぶん殴る……。
「でも俺はこれで最後だとは思えない……またどこかで……会える気がするから、だからさよならは無しだ。リサ、またどこかで会おう」
俺はそう言ってリサに右手を伸ばす、するとリサは俺の腕を引っ張ると俺の体を自身に引き寄せた、その時!
「え?」
俺の頬に温かいものが一瞬振れる。そしてすぐにその感触は消えた。
「私もさよならは言わない、またねター君!」
リサの声にハッとし、俺は彼女を見る。すると頬を染めた彼女は笑っていた。太陽のような笑顔で。ああ、そうか、俺は今彼女にキスをされたのか……糞照れるぜ……。
「ああ! またなリサ!!」
俺はそう思いながら、目いっぱいの笑顔で、手を挙げるとそのままボートに向かって走り出すと、すでにエンジンをかけているボートに乗り込んだ。
「よし、行くぞ」
俺が乗り込んだ事を確認した貴明は静かに言うと、そのままゆっくりとボートを前進させた!
「リサ! またな!!」
そして俺は、振り返り、未だ川岸に立つリサに向かってもう一度手を振ると彼女も手を振り返した。
俺とリサは何度も手を振り合う、彼女の姿が小さくなろうが見えているうちはずっと……そう思っていると、急に背後にのみ霧が発生し彼女の姿が見えなくなった……。
ああ、そうか、もう向こうの世界とのつながりが消えて元の世界に、俺達の世界に入ったのか……。
「満足したか……」
体の向きを変え、座りなおす俺に低い貴明の声が響いた。
「もしかして、怒ってる?」
「いんや? そんな事ないぞ?」
「うおっ! キレとるやんけ!」
俺はボートの端を持ちながら貴明に向かって叫ぶ、なぜならこいつは俺の言葉への返事のつもりなのか、ボートが揺れる様に操作した!
「危ないな!」
「はっはっは、このくらいで勘弁してやるわ!」
「ったく……」
俺は呟くよう言って座りなおす、するとポケットから、一枚の白い布が落ちた。布? いや違うこれは……。
「あっ!」
布を広げ、その正体に気が付いた俺は思わず声を発した、なぜならそれはリサに初めて会ったときに彼女が俺の汗や傷を拭ってくれたリサのハンカチだったからだ。
「しまった、渡しそびれた……」
俺はハンカチを見つめながら静かに呟いた、すると、突然周囲に霧が発生、その瞬間、俺の意識は徐々に遠のいて行った………。
「……おい、起きろ……」
どのくらい、意識を失っていたのかは分からないが、俺は肩をゆすられ、貴明と卓也の声を聴きながらゆっくりと目を開けた。
「あれ? ここって……貴明の車の……中か?」
俺は周囲を見渡す、するとそこは貴明の車の中だった。
「おはよう、目が覚めたか? つっても俺等も今起きたところやけどな……」
貴明はそう言って背筋を伸ばすと、後部座席のドアを閉め、運転席に回った。
「ここは……コンビニか……」
俺は座ったままで首を振り、周囲を見渡す。すると車はコンビニの駐車場に停まっていた。あの、病院の近くのコンビニに……。
「てか俺ら何してた? なんか映画見て飯食った後から思い出せん」
「俺もや、てか今何時や?」
貴明と卓也はそう言うと、貴明が運転席に乗り込み、シートベルトを付けながら車のエンジンをかけ時間を確認した。
「二十三時前や」
二十三時前……確かリサを病院に運ぼうとした時間くらいか……ん? ということは……まさか、俺はまた夢を見たのか?
「あかんなんも思い出せん、しゃーない切り替えよ……ちょっと眠気覚ましになんか買ってくるか……」
貴明の言葉に俺達はつられるように車外に出た。すると俺の右手に何かを握った感覚があり、右手を見た。
すると、そこには夢の中で渡しそびれたと思っていたリサのスカーフが握られていた。
『さようならリサ いつかどこかで』を読んでくださりありがとうございます。
これにて、第2部完結となります。
第一部執筆の時点で、第二部を書く機会があればリサが魔王軍の生き残りを追って現実世界にやってきてター君たちと共に戦うと言う構想をしていたのですが、ネタはある、書きたいという思いとは裏腹になかなか、頭の名で思い描いたものを文章に出来ないと言う状況で、書いては直しを繰り返した結果なんとか、完成することが出来ました。
この度いろいろな構想を練り、シリーズ化を取りやめ一つにまとめたのですが、いかがだったでしょうか?
また、ご意見等いただければ幸いです。
そして、これでリサとター君の物語は終わりではありません。第三部の構想もしっかりありますので、今後もよろしくお願いします。
最後になりますが、リサとター君の物語が面白いと少しでも感じて頂けたなら、評価、感想、広告下の
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それでは、第三部でお会いしましょう!




