僕はいつも、お店に通う時に使うバスの中で同じ痴漢に遭う。
僕は普段は、31歳のサラリーマンだ。
スーツ姿で、ビシッときめて毎日仕事をしている。
仕事も順調で、仕事仲間とも仲が良い。
でも? 僕は土日の会社が休みの日は別の仕事をしている。
別の仕事というより、“僕の趣味”の仕事だ。
でもこの事は? 会社の人達には絶対にバレたくない!
僕は【女装家】だからだ。
女性のカツラを被り、慣れない化粧をして派手な女性のスーツ姿で
お店に行く。
足を出すため、僕は全身脱毛をした。毛という毛は、僕にはない。
ただただ、人から見られたい! 綺麗と思われたい!
僕にはそういう願望が子供の時からあった。
僕が子供の頃は、母親に隠れてこっそり化粧をしたり母親の服を
着る事が快感だった。
少しづつ大人になっていくうちに、女性の格好をしたいと思うようになる。
・・・ただ、誤解されたくないのは?
僕は女性が好きだ! 恋愛対象は“女性”だからだ。
男性が好きな訳じゃない! 僕は女性の格好に憧れているだけ。
きっと他の男性よりも“美”に関して興味が強いのだろう。
一人暮らしの僕の暮らしの中でも、化粧品は欠かせない。
毎朝、洗顔、化粧水、乳液、保湿、美容に関わるモノは何でも
やっている。
健康にも気を付けて、朝はスムージーを飲むようしているのだ。
だから、会社でも女性社員の子達が僕にこう言う。
『下川さん、相変わらず肌キレイですね! 何かやってるんですか?』
『・・・い、いや? 別に、』
『私も下川さんみたに、肌がキレイになりたいわ!』
『・・・・・・』
・・・そりゃ、ちゃんと肌のケアをしているからキレイに
決まってるけど? なかなか男の僕がそういう事を事細かく
説明もできないしね。
確かに、男性も化粧品を使ってる男子はいるけどさー!
どう見ても僕は、普通の男性だから違和感があるんだろうなと思って
会社の人達には、一切話してないんだ。
・・・でも唯一! 僕の心が解き放たれる土日の仕事は?
僕はウキウキしながらお店に向かうお店だ。
夜のお店で、お客さんはほとんど男性相手。
この仕事の為に、僕も少しは努力をしたんだ。
飲めなかったお酒を飲むように頑張って、少しはお酒の相手が
できるまでになったよ。
そして、今日は土曜日。
僕は、家から最寄りにあるバス停まで女装した格好で行く。
履きなれないヒールを履いて、生足がスラっと見えるミニスカート
中が透けて見えるT-シャツを着てバスに乗る。
初めは、化粧慣れしてなかったせいで厚化粧になり女装している
のが誰が見ても分かるようなメイクだったが...。
次第に、慣れてくると? 本物の女性と変わらないぐらいにナチュラル
なメイクが出来るようになっていった。
・・・だからなのか? いつからか、僕は同じ男から痴漢される
ようになった。
男は僕よりも少し身長が低く、必ず僕がバスに乗り込むと?
僕の後にべったりと付くんだ。
僕が乗るバスは、何故なのか? 土日は直ぐに満員になってしまう。
だから、痴漢をするこの男には絶好の場所に違いない!
男は僕の足を優しく後ろから撫でるように触っていく。
僕のお尻も、その男は好きらしくずっと僕がバスから降りるまで
触っている。
僕も女性だと言えない為、黙ってその男の痴漢に耐えていた。
今なら僕も、女性の気持ちがよく分かる。
見知らぬ男から、急にお尻を触られる気持ち。
だけど、僕はそれが少しづつ快感になっていった。
男も、どんどん大胆になっていく。
最初はお尻や足だけを触っていただけなのに、僕の胸も触るように
なっていく。
僕はより女性に近づきたいと思い、胸はシリコンをブラに入れて
付けていた為、男には一切僕が男だとはバレてはいなかった。
こんなスリルを、僕は毎週土日感じている。
お店では、ショーもあり男性の目を釘付けにしていた。
僕は幸せだ! こんなに注目される事はない!
僕という人間を見てもらえることがこんなにも嬉しい事なのかと
女装をして分かったことなんだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。