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サンフランシスコの攻防

サンフランシスコの攻防


ニミッツ大将は、帝国海軍が、6隻の空母を失ったと聞いていたので、危機は去ったと考えていた。

だが、夜が明けると、また帝国艦隊が沖に出没したことを、偵察機が発見したという。

奴らは、空母などなんでもないのか!


昨日はまんまと敵に乗せられ、新型戦闘機をかなりの数、燃料切れで失う羽目になった。

今回は、もっと近くに来るまでは攻撃させないようにしないといけない。

もちろん、航続距離の問題もあったのだが・・・


残念なことに、北部ワシントン州のピュージェット湾の造船所が、敵の爆撃機の攻撃を受けて、大きな損害を受けたとの報告も来た。ダッチハーバーから攻撃を仕掛けたに違いない。サンフランシスコ攻略に集中させておいて、別の場所を攻撃するという作戦だったようだ。一体どこまで我々を愚弄する気か!


大きな被害を受けはしたが、敵空母6隻の撃破は開戦から始めての大戦果である。

工業力に劣る日本では、この6隻を埋めるのは難しいであろう。

米国大統領も海軍長官もニミッツもそう考えていた。

これである意味、反撃の足掛かりができたのである。


米国のニュースは、米国航空隊の大戦果、敵戦艦1隻、空母6隻、駆逐艦3隻を撃沈、航空機多数を撃滅!此方の損害は軽微と伝ていた。


「明日こそ決戦だ!」

敵艦隊は隊列を組み、サンフランシスコを目指していた。空母は従えていなかった。

やはり、かなりの戦果があったのだ。

ニミッツは参謀らに指示を与え、休みをとる。

1000Kmも先の艦隊が、近づくまでは、1日はかかるのである。


夜明け前から、旧式ながら本土防衛の戦闘機隊らがスタンバっている。

P39エアラコブラ、P40ウォーホークなどであり、500ポンド爆弾を1発搭載することができる。

本土防空司令部は、先の戦闘の経験から対空砲弾に注意すべく、隊形を作らず、各個で爆撃し、それを繰り返すように指示した。


サンフランシスコ沖200㎞を戦艦を中心にした防空輪形陣で、大艦隊が近づいてきていた。

戦艦の主砲の射程は50Kmと推定されるため、サンフランシスコ沖50Kmまで接近してくる前に痛撃を与える必要がある。


そして、そのための武器となるのが、エセックス級に搭載予定だった部隊である。

計4隻に搭載するための部隊が基地に駐機している。サンディエゴからサンフランシスコへと防衛のためやってきていたのである。


敵には空母がほぼないであろうから、戦闘機はないはず。

「馬鹿め、航空援護もなく突っ込んでくるなどトンと間抜けだな」ニミッツは嘲笑った。


かつて航空援護もなく、突撃した艦隊が日本に存在した。


4個艦隊が確認されている。猛烈な弾幕は予想されるが、航空援護はないため、死にもの狂いで攻撃せよ!本土をなんとしても日本猿から守れ、ゲットバックパールハーバー!防衛指揮所ではお祭り騒ぎである。

そうでもしないと、傍らで死んでいった者たちに顔向けができないと考えたからでもある。

多くのパイロットが復讐を誓って飛び立っていった。


輪形陣の中心の戦艦の主砲が閃く。

戦闘機隊からは、雲でよく見えなかったのだが、戦艦からは、レーダーで見えていた。


火球に包まれたちまち数機が砕け散った。

しかし、編隊は組んでいないため、被害はそれほどでもない。


「いつまでも、同じ手が通じるものか!」

さすがに米国である、日本のように同じ過ちを何度も繰り返さず、すかさず対応してくる。

雲の切れ間から下が見える、その時何かが急速に浮き上がってきていた。


ズドドドドド!

ブスブスブス?


「うわ!」コックピットが炎に包まれる。

そのような光景がそこここで生まれる。


敵の航空機はないのでは?


もちろん、司令部は敵空母が全滅などとは言っていない、6隻撃沈といっただけであり、ないこともないかも知れないとは考えていた。

開戦当初日本には、8隻程度の空母が存在したからである。

少なくとも、2隻分程度はあるかも知れないとは考えていた。


だが、そこには少なくとも、100機以上の敵機が次々と急上昇して攻撃してくる状態となっていた。2隻どころではないのではないか?


レーダーを回避するため、帝国海軍戦闘機隊は、低空でここまで飛んできていたのである。


「メーデーメーデー」

「助けてくれ!」

「うお」

「ギャ」

様々な声が無線を飛び交っていた。


少なくとも、爆弾を積んだ、旧式戦闘機(もちろんこれでも十分働けるだけの能力はあった)では、手も足も出ない状態であった。


司令部では、一部の方面のみこうなる可能性も視野に入れていた。

残った空母の戦闘機隊が存在する可能性も考慮していたのである。

だが、全ての方面から同じような救助要請が入り始める。


編隊を組んでいない分、敵に襲われても、カバーしてくれる味方がいなかった。


海軍の艦攻がまず集中的に狙われる。

その次は、艦爆であろう。

F6F部隊が必死になって援護に回る、さすがに、海上での戦いを想定して訓練されている部隊である。

直ちに、爆弾を切り離し、対空戦闘に入ったのである。


各所で、F6F対紫電改の戦いが始まるが、紫電改の方は、2機1組だった。

しかし、その間には、陸軍戦闘機(エアラコブラ、ウオーホーク)や艦攻アベンジャー艦爆ヘルダイバーが敵艦目掛けて進むことができたのである。


5インチ両用砲、ボフォース40mm機関砲、ブローニング20mm機関砲がまたしても彼らを苦しめることになる。

圧倒的な数の対空砲である。

積めるだけ積んでいるからね・・・


曳光弾が雨のように向かってくる、5インチ砲弾が近くで炸裂する、5インチ砲には、VT信管いや、UO信管が使われており、直撃せずとも爆発するのである。


そして、戦艦には、5インチ連装4基も片舷に積まれており、次々と火炎を噴き上げていた。


彼らは、まさしく、殺虫剤を吹きかけられた蚊のように次々と海面へと叩きつけられていく。


艦攻隊はなんとか、魚雷を放り込み、逃走を図る。

帝国駆逐艦はそれをよける、すると戦艦に魚雷が命中する。

大きな水柱が上がる


「やった!」


上空には、ヘルダイバー隊が攻撃態勢に入る。

ほぼ垂直に落下していく。曳光弾の滝が目の前にできるが如く弾が撃ちあがってくる。

次々と、爆発飛散する僚機。


何とか最後の一機が第2砲塔に自ら直撃した。

ドカーン、ヤンキー魂が炸裂した。


だが、さすがに戦艦の第2砲塔は無事だった。


別の隊がそれに続けと態勢をくみ上げた時には、急速に接近する戦闘機隊があった。

本来は、艦艇の10Km圏には入らないように下命されているのにである。

ジェット戦闘機隊、第8492飛行隊、通称「ベルケ戦闘隊」であった。

垂直尾翼には、黒い鉄十字のクロス部分に日の丸が描かれている、が通過しながら、ヘルダイバー隊を撃ち砕いていった。


防空士官が自動射撃をきらなければとんでもない悲劇が起こるところであった。


「馬鹿野郎!死にたいか!」無線から味方艦隊の声が聞こえる。


ベルケ戦闘隊の攻撃相手は、又も重爆撃機であった。

B17たちは、必死に12.7mm機関銃を撃った。残念ながら、この世界では、ブローニングは手に入れることができなかったのでホチキス製であった。

航空機用機銃もM2重機を調達できなかったので、ホチキス製になった。

M2よりも重く、しかも設計も古かった。丈夫さは負けていなかったが・・・・

そのために、米国の戦闘機隊は、装弾数が少なくなったり、装備丁数が少なくなったりと悪影響を諸に受けていたのであった。


B17たちは頑張ったが、30mm機関砲でブスリブスリと風穴をあけられて、落下していった。


第2波攻撃をしのぎ切ったころ、艦隊の一部は、サンフランシスコ沖海上50Kmへと到達していた。

未だに攻撃機は第3波攻撃を仕掛けてくるが、戦艦の主砲は、仰角45度の空を向いていた。


港湾施設目掛けて主砲が斉射を行う。

すでに、陸軍戦闘機では、攻撃の効果は見られなかった。

爆弾は当たらず、機銃掃射をしようとすれば、その前に自分が掃射されるような状態だった。

肝心の空母機動部隊の艦載機たちは、いの一番に集中的に攻撃され跡形もなく粉砕されていた。

4方面から侵攻していた戦艦群が集まってきて、50Kmの射程から巨弾を撃ちまくる。

16隻の戦艦が一同に会し、砲撃する様は圧巻であった。


夜になると、戦艦群はさらに陸地へと近づいて、奥地を攻撃する。

海軍航空基地、仮設の飛行場などにも砲弾を撃ち込む。


巨弾の飛来音と爆発音が人々を恐怖のどん底へといざなうのだった。

かくして、SF作戦は終了する。


この戦いにおいて、米国は第51任務群が完全に崩壊、乗員、パイロット40000名以上が戦死あるいは行方不明。戦艦4隻軽空母9隻撃沈破駆逐艦、巡洋艦多数沈没あるいは大破。


防空航空機隊(陸軍)、喪失戦闘機3000以上、重爆撃機500機以上 パイロット8000名以上が戦死あるいは行方不明。


エセックス級に搭載予定だった海軍戦闘機160機、攻撃機120機、爆撃機120機700名以上が戦死あるいは行方不明。


救助作業中に敵の攻撃により沈没した艦船50隻以上、乗員4000名以上が戦死あるいは行方不明。

艦砲射撃による死者、海軍基地勤務者1200名以上 陸軍基地勤務500名以上。

民間人3500名以上


しかしながら、新聞で報じられたのは、先の戦闘に続き、敵空母2隻、戦艦3隻を撃沈、その他航空機多数撃墜、サンフランシスコの街に多少の損害という記事であった。



この戦闘の責任者、ニミッツ大将は太平洋艦隊司令官を解任された。


「おそらく、敵空母は生きていた、我々が撃沈したと考えていたのは、おそらくダミーだ」

しかし、そう言えば今度は自身が逮捕されそうだった。

ゆえに、静かに、軍服を脱いだのである。



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