SF作戦
SF作戦
停戦勧告は米国側に完全に無視される形になった大日本帝国は、SF作戦の決行を決定する。
各所にSF作戦に関する指示が行き交う。
当然、米国情報部は何らかの作戦想起の前触れであることを察知する。
「SF作戦」という名称であることをつかむ。
もちろん、SF作戦の目標はサンフランシスコに対する攻撃であることは明白であった。
日本側もしっかりわかってもらうために、解析されている暗号コードをわざわざ使って気を使っているのである。
真珠湾、ラハイナに大連合艦隊が集結してくる、それに合わせて、潜水艦群が、サンフランシスコ周辺からハワイ諸島までの間に、息を潜ませるように配置されていく。
ある意味ハワイからサンフランシスコまでの潜水艦ロードが完成するような形になる。
・・・・・
サンフランシスコにある米国太平洋艦隊司令部は恐慌状態にあった。
情報部からは、攻撃目標はこのサンフランシスコであり、真珠湾方面に日本軍の大艦隊が集結中という報告が入ったためである。
しかも、追い打ちをかけるように、大統領令で必ず迎撃し、サンフランシスコを守れと司令されたためであった。
「馬鹿野郎!戦艦も空母もないのに、そんなことできるわけないだろう」ニミッツは心の中でののしっていた。
手持ちはサウスダコタ級戦艦4、インディペンデンス級軽空母9とそれら以外の艦艇が精々である。
まともに、戦いを挑めば勝ち目などどうしても見えない。
しかも、悪いことに、潜水艦が絶望的に存在しなかった。
開戦前100隻以上あった潜水艦はすべて狩りつくされていた。
それゆえ、未だ魚雷の不発問題は発覚していなかった・・・
「どうしたらいい」
先任達が相次いで、戦死したため、急遽残存艦隊(第51任務群と命名)の司令官に任じられたスプルーアンスはため息をついた。
「ニミッツ大将、此処は、やはり敵をサンフランシスコ近くにおびき寄せ、陸軍航空力も存分に使い、何とか撃退するしかないでしょう」
「そうだな、中将のいう方法しかあるまい」
こうして、米国本土の陸軍航空隊が続々とサンフランシスコ近郊に集められるのであった。
非常に有難いことに、作戦決行日は暗号解析ではっきりとしていた。そうまるで教えるかのように・・・
ハワイ方面からは(ラジオ放送のこと)、連日日本側が、米国政府あてに停戦に応じるように呼びかけているが、それが無視されている事。米国内の被差別有色人種に対するサボタージュの呼びかけ、そして、白人種に対しては、自分の夫や息子が政府の無見識により数多く戦死している事、そしてそれを止めさせる必要がある事を訴えかけるラジオ放送が行われている。
将兵向けには、東京ローズという美声の女性がたどたどしい英語でこの戦いが実に無意味で自分たちは友達になれるのだというような放送も行われていた。
そして、運命の8月8日のアメリカ(東部)時間0:00
「皆さんお久しぶりです」いつもは米国批判の放送しかやっていないラジオにいつもと違う声が流れる。
「私は、映画ザ忍者の侍大将役を演じた帝国海軍中将高野九十九です」
「我々はたびたび停戦を米国政府に申し入れてきたのですが、無視されました、ここにいたり我々は重大な決意をもって米国政府への警告とすべく、サンフランシスコ攻略作戦を開始せざるを得ないと決断しました。このFS作戦により」
「SF作戦です」
「失礼SF作戦でした、このSF作戦により、サンフランシスコは大変な被害が発生すると考えられます。一般市民の皆さんはすぐに郊外へと非難してください。映画でも警告しましたが、侍の一撃必殺の剣はあなた方を真っ二つにするのです。どうかお願いします、無駄な戦いを止めるよう政府に訴えていただきたいのです。」
「では、グッドラック」
8月8日、天気は快晴、雲もほとんどない状態で見通しは大変良かった。
第一機動艦隊
第一戦隊 「大和」「武蔵」
第一航空戦隊 「天城」「赤城」
第二機動艦隊
第二戦隊 「長門」「陸奥」
第二航空戦隊 「蒼龍」「飛龍」
第三機動艦隊
第三戦隊 「比叡」「霧島」
第五航空戦隊 「翔鶴」「瑞鶴」
第四機動艦隊
第四戦隊 「金剛」「榛名」
第六航空戦隊 「紅鶴」(エンタープライズ)、「白鶴」(レキシントン)
防空補助艦隊
第四航空戦隊 「飛鷹」「隼鷹」「祥鳳」
呼称 第21機動艦隊(通称:高野親衛艦隊)
戦艦「神武」「応神」「天照」
超空母「朱雀」「玄武」空母「加賀」
呼称 第22機動艦隊(通称:ロシア艦隊)
戦艦「イワン」「ニコライ」「アレクセイ」
超空母「青龍」「白虎」正規空母「土佐」
主要な艦艇は以上である。
航空部隊の総指揮は、南雲忠一中将が指揮、戦艦部隊の総指揮は堀悌吉連合艦隊司令長官大将直卒。
ロシア義勇軍艦隊は、山梨勝之進大将義勇軍艦隊司令直卒となっている。
夜明け直前の哨戒でB17の一機がサンフランシスコ西方1500Kmに敵艦隊を発見、通報。
基地(陸軍・海軍・急遽造成された飛行場)に発見の報が響く。
サンフランシスコ沖200Kmに待機していた、第51任務群が発見された艦隊に向かい動き始める。
しかし、スプルーアンスの胸中には強いわだかまりが存在した。
スプルーアンス艦隊の上方に本土からの戦闘機群が群がってくる。
彼らは陸軍のため海上航法を心得ていないので、海軍航空隊が敵まで連れていく必要があったのである。
数百機をひとまとめで連れていく、海軍機。
そのうち爆撃機も集まってくる。
艦隊攻撃の主力はこの陸軍の爆撃機というのもひっかかりの一つであった。
基地には海軍のアヴェンジャー、ドーントレスも存在し、過日のパナマ運河事故ので大破あるいは沈没したエセックス級に搭載されるはずだった航空機とパイロットがいたのである。
だが、海上1500Kmでは、往復することができない距離であるため、主力は足の長い爆撃機が公算爆撃を行うしかなかったのである。
F6Fヘルキャットも同じ理由で、軽空母からの発艦分しか発進できない。
要は実に嫌な、嫌らしい距離にいるということである。
だが、爆撃機と陸軍の戦闘機だけでも1万以上がサンフランシスコ近郊に集められている。近づいてくれば、必ず撃破できるはずであることは疑いようはなかった。
・・・・
発見されたのは、第一機動艦隊、戦艦大和の一群であった。
偵察機には紫電改が、一期に押し寄せて、20mm機関砲でとどめを刺す。
次の偵察機が来る頃には、当然別の場所へと移動している。
サンフランシスコ沖1200Kmには数十Kmの間隔で各機動艦隊が展開し、発見されると転身(東進)や北上(北進)などを各々に行っていた。
次々と己が犠牲とともに、B17やB25、カタリーナなどが敵艦隊発見の報を基地に知らせる。
いかに航空機といえど、さすがに1000Kmを飛ぶには2時間がかかる、そしてその間に、敵艦隊はその場所から必死で逃走しているという経過をたどる。
だが、今日は、視界がよく、敵艦隊を北方に何とか視認できた。
その少し前から大和艦橋では
「敵航空機群、約250Kmです。」
レーダー測距と目視により、艦橋に報告が響く。
「レーダーと連動50Kmでサ式砲弾を発射せよ!10kmで対空戦闘態勢に移行」
艦長の松田大佐が命令を発する。
命令が復唱される。
「敵空母発見、必ず仕留めろ!」
P51ムスタングを駆る、エドワード少佐は戦闘機隊に号令をかける。
「了解!」敵艦を攻撃するため250ポンド爆弾2発を抱えていた。
陸軍の最新鋭戦闘機であった。
「敵艦発砲!そのままを維持!」
空からでも、戦艦が主砲を発砲したのは、確認できた。
もちろん回避ということもできるが、そもそも、周囲には、数百の戦闘機があり、自分が狙われているのかどうかわからなかったのである。
そして、海軍兵士からは、敵の主砲など当たるはずがないと言われていた。全くその通りである。
しかし、近くで大火球が発生した!10機以上がその火球に飲まれた!
「やばかった!」その直後、エドワードの機体が爆風の衝撃波を浴びてバラバラと砕け散った。
火球は、直径100mはあった、米国パイロットには何が起こったのか全くわからなかった。
まさに火の玉が発生し、直撃した戦闘機は火に包まれた。そして、その爆風は周辺の航空機をバラバラに粉砕したのである。
さらに恐るべきことに、その後を通った航空機の何機かは、エンジンが突如停止して、きりもみしながら墜落していた。
たったの3連射、計27発の砲撃で、まさに100機以上の航空機が海の藻屑となったのである。
サ式砲弾とは、サーモバリック砲弾の略であり、個体から気化する間に急膨張し、粉塵爆発を起こす仕組みの新型爆弾である。火球内部に包まれると発火し、周囲にはその爆風で被害を及ぼし、周囲の酸素を燃焼しつくすという凶悪な兵器であった。しかも信管は時限式とUO信管(宇田・岡部式いわゆるVT信管のパクリがついていた、真空管ではなくトランジスタの開発により実用化可能となった)が使われていた。電波を発しながら飛び、金属に反応すると爆発させるという信管であった。
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