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閑話 ウオッカとロバ

閑話

時はかなりさかのぼり、開戦前の頃のことである


ニューギニア島

藤一慶ふじ かずよしは藤グループの総帥である

若いころは、米、小麦の品種改良の手伝いをこなし、農業に精通している


ある時、北海道で甜菜糖の作付けを命令されて、北海道で藤製糖を設立してもらった

かと思えば、酪農も仕事に加わる、製粉事業も開始、米騒動が起こりかけたときには、備蓄米を放出し、国を救った男として、ニュースにもなった


台湾でゴム栽培を開始したと思ったら、第一次世界大戦で日本が占領した、ニューギニア島の旧ドイツ植民地でやはり、ゴムプランテーションを行うように命令が届く

このころには、部下も相当な数がいたのだが、生来の性格ゆえか、自ら、ニューギニア島にやってきたのである


出発前、高野九十九からくれぐれも、体に気を付けること、原住民の慰撫に努めることを命じられた

「藤、自分でいかんでもいいのではないか?」とても日本人には見えない容姿の総長

「いえ、やはりまずは自分で現地を見ないと」米、小麦の耐寒品種づくりは、毎日田畑を細かく見ることから始まるので、その習性が身についてしまった


「そうか、では、これを持っていけ」

DEのトラックの中身は、大量の蚊取り線香とたばこ、ウォッカである

「これは?」

「原住民に配って、仲良くなるにはちょうどいいかな?と」

とにかく、近くの藪は必ず切り開いて、蚊を寄せ付けるなといわれている

マラリアにならないためためらしい

「嗜好品は、餌付けにはもってこいだしな、いるものがあったらすぐに、寝るときに念じろよ、送ってやるからな」手紙をかけではないらしい


仙台港には、岩倉商事の船が重機を大量に載せて出発を待っている

護衛ということで、親衛隊から50名の武装兵士が用意されている

船には、百瀬建設の社員、あと、高砂兵(これは、台湾の原住民)が役に立つであろうと乗せられている


軍楽隊が勇壮な曲を奏で、船は出向する

高野総長が敬礼をしておくり出してくれる


船の中では、一番いい部屋を用意してもらっていた、兵士らはもっと狭いところに押し込まれれているのだ

その兵たちにウォッカを差し入れし、高砂兵にもたばこ、ウォッカを差し入れ、少しでもコミュニケーションをとる、彼らは、日本語の教育も受けているらしく少しは日本語を理解できるようだ

百瀬建設の百瀬裕次郎は、百瀬組長の次男である

「百瀬さんは、ニューギニア島で何をされるのですか」

「藤様、私は百瀬の息子です、なんでも命令していただいて結構です」

日に焼けた鋭い顔は白い歯をのぞかせる

「私は、主に港湾整備と道路延伸になります、現地では、ろくな道路はないようですので」

「そうですか、よろしくお願いします」

「こちらこそ、どうかよろしくお願いします」元ヤクザの息子とは思えないほど親切な若者だった




「西さんは私の護衛ということでいいのですか」

「はい、そうですが、私は実は原住民との接触を命令されていますので、護衛兵の一部とともに、現地山間部の調査及び宣撫を行います」

西一文にし かずふみは、マレーで現地潜入任務などをこなした経験を持っているため、今回よばれたのである

「それより、藤様、現地には、”超兵部隊”がいますので、少しだけ注意してください」

「”超兵部隊”とは?」


”超兵部隊”とは精神力によって、通常の人間以上の力を発揮する超兵士の部隊である


「超兵部隊は現在、オーウェンスタンレーの頂上周辺への登山訓練を行っております」



船がニューギニア島の北部のラエ港に到着、早速荷下ろしが行われる

港湾は、百瀬建設の部隊が先に到着しておりすでに、大規模な埋め立て、整地、浚渫を行っている


新社屋に入るとすでに、家具などは置かれており仕事にかかれるようになっていた

副社長の柳が手を回してくれているのだろう


建物には、藤ゴム工業の看板がかかっている

周辺の土地は、すでに、買い取りが済んでいるので、ゴムの苗木を植えていくだけである

そこから先は、開拓しないといけないのだが・・・


「では、島の西部、蘭領との境界に調査に行ってきます」西が敬礼する

ニューギニア島は西半分がオランダの植民地、東半分の北部が日本の委任統治領、南部が英国の植民地と三分割されている状態であった


小ハイランダー(ジ〇ニーに似た車)三台に分乗した彼らは、原住民接触部隊、すでに日本人になれている島民も一緒に乗せている、似通った言語を話す住民を介して接触するらしい

「西さん気を付けて、蚊取り線香も一杯持ちましたか」

「はい、大丈夫ですよ」西の日焼けした顔が笑顔を作る


そうして、毎日が忙しく過ぎていく、拓いた土地には、ゴムを植えた、限界まで来ると、今度は、重機を使った開拓である、DEの重機、ブルドーザーが役に立つ

遠くに、海軍が飛行場を作っている

百瀬建設が請け負ったらしい


百瀬裕次郎、西一文、そして藤一慶は、頻繁に会い情報交換を行いつつ、ウォッカを飲んだ


原住民にウォッカとたばこは非常に好評らしい、西は、新しく親しくなった原住民に別の種族を教えてもらい、次々と奥地へと赴いているらしい


本土から来る船には、必ず、たばこ「朝日」「錦」とウォッカとウィスキーが乗ってやってきたのでまったく困ることはないのだが、彼らは日本酒を飲みたいと思ったのである


原住民を教育するための学校も開設した、ゴムプランテーションで働いてもらうにしても、ある程度教養がないとということで、高野に進言したら、すぐに立てるようにと資金資材等が送られてきた


原住民の子供たちに無償で教育を受けさせる、子供を出し渋る親には、たばこ、酒を提供することを条件に出させる

こうして、原住民は現地人になり、帝国への協力者へと変換していくのである


そんな時、陸軍の軍人が現れたのである

「私は帝国陸軍、辻正信大尉である」丸眼鏡をかけた男が入ってくる

「辻様、何か御用でしょうか」

「実はな、貴様のところにある、ロバを供出してほしいのだ」

ようはただでくれ言うことのようだ、海軍には、高野教徒がおおいのでこのような輩はいない(高野財閥系企業であるからである)


「しかし、内も驢馬が必要なのですが」

「貴様、軍事と民事とどちらが大事なのかもわからんのか!」

総長に馬よりも驢馬を飼えといわれたので仕方なく養殖したが、結局使いどころは見つからなかったので、このニューギニアに連れてきていた、馬であると船旅で疲れて死んでしまったが、ロバはそんなことはなかったし、このニューギニアでは荷運びに活躍していたのである


機械化の進んだわが帝国といえども、まだすべてを機械化できているわけではない


「そういわれましても」

「貴様、私は陸軍の中でももっとも優れた超兵部隊であるぞ、民間人ごときが逆らうか」

辻は激高した

張りてが飛んでくるが、習い癖ですっとかわしてその右手をとって、極めてしまう

そのまま、手をひねりあげて、床に押し倒す

幼いころから、戦闘術は、高野学校で教え込まれているのであった

「動くな」周りの社員が、ブローニングインペリアル拳銃を構えて集まってくる


「待て、辻まだまだだな」

今度はちょび髭をはやした男が入ってくる

「私は荒木貞夫中将である」

「中将閣下何事でしょうか」

「うむ、辻は頭は良いが、すぐに走ってしまうのが難点なのだ」

「わが超兵部隊では、オーエンスタンレー山脈頂上付近に探知機を設置する任務をいただいておる、しかし、探知機は重いのでな、そこで驢馬なのだ」


「そうですか、ではそのように言っていただければ、ロバをお貸しするのもやぶさかではないのですが・・・」

「頼むぞ」

こうして、ロバが十数頭もつれさられていった

この時代、軍人に逆らうことは基本できないのである


しかし、本土にはまだ数百頭の驢馬がいる

次の船には、まだ手紙が届くはずもないのに、ロバが満載されていたのは、やはり総長の力なのかもしれない


別に、夢でお願いしたという事実はないのだが・・・


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― 新着の感想 ―
[良い点] あれー?超兵なら片手で機材もって登れるだろとか言わんのだな。 まあ民間人に辻の説得は不可だろうし。
[一言] 辻はね~
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