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船出

冬が終わり、雪解けが進むころ、山口先生が旅立った、僕は、駅で泣きながら先生を見送った、先生の家族もみんな泣いていた、結局のところ、僕が描いたスケジュールをこなすにはどれほどの日数がかかるか不明であったため、とにかく米国へ旅立つことになったのだ、まあ、一年は帰ってくるまい


先生から家族のフォローを頼まれたが、もちろん不自由な真似はさせない

それから、資金が不足したら、どんどん手紙で知らせるようにお願いした

先生は、そうやって、汽車で横浜へむかって出発した、ちなみにどのような路線かは知らないが・・・


送り出した本人が言うのもなんだが、やはり別れは残された者のほうがつらい

涙で前が見えなくなったのは、秘密だ


だが、敢えて言おう!あなたのことは一生忘れない!そして、必要な犠牲なのである!と

九十九は心の中で叫んだのである、7歳の早春のころである


そうして、つらい別れの後は、俺が入学式を迎えることになる

入学式には、五十六兄が付き添ってくれた、何分父母は、かなりの高齢である


収納スキルに慣れ切った俺は、風呂敷包みに苦労しながら、登校することになる


やはり、入学生の中で、俺は頭一つ以上とびぬけて、背が一番高かった

学年でいえば3,4年でも十分通用するくらいの高さである


式を終えて、クラスに入ると、名前を呼ばれ、自己紹介すると

「お前、五十六と全然似てないな」兄を教えたこともあるらしい担任から声がかけられた

もちろん、俺もそんなことは自覚している。そもそも、本当に、同じ血を継いでいるのか?

その疑問は生まれたころから常々思い続けたものである、全然にていないのだ

そもそも、高齢の母が俺を生むことができたのか?そもそも、父母はそのようなことをいたしたのか?次々と疑問が湧きあがったのだが・・・真相は闇の中である

「そうですか?僕はよく似ていると思っていますが」しれっと言い切る


「お前の兄はよくできた、お前もがんばるように」

「はい先生」


そうして、初登校が終える

校門をでたところで声がかけられる


「おい、お前、いい気になるなよ」

別のクラスの同じく新入生である、洟垂れながら、いかにもガキ大将という雰囲気が漂っている

別地区の子供も当然に来ているため、別地区のガキ大将の一人であろう

そもそも、あまり同じ世代との交流がない

ずっと狩猟生活を行ってきた弊害である


「話がおありなら、そちらの空き地でお聞きしましょう」


空き地にやってくると、ガキ大将の取り巻きが俺を囲うように位置取りをする

「話し合いではないのですね」

「お前むかつくわ」とガキ大将


自分より小さいガキ大将に言われても何も感じないのだが

「名前だけは聞いておこうか」

「2組の佐藤だ」この時代の子供が何をして過ごすのか、やたら喧嘩でもしているのか

なんの抵抗もなく鉄拳が飛んでくる、この世界は大丈夫なのでしょう?


ハエが止まるようなパンチを交わして投げる

本当はそこに、けりを入れるところだが、死んではまずいので投げだけにしておく


「ぐへ」

ガキ大将は意識を失う!

弱わ!

佐藤の襟首をつかみ、顔を軽くはたいて声をかける

なんとなく意識を取り戻した佐藤

「佐藤、弱すぎだな」


「おいお前ら、こいつを家まで送り届けろよ」


まだ、茫然と座っている、佐藤を尻目に、俺は子分に声をかけて、その場をあとにすることなる


こんな弱さでは、米兵と戦うことができない、徹底的に戦闘訓練する必要がある

そんな確信を胸に抱いたのだった


次の日、佐藤の兄たちが待ち受けてくれていた、同じ小学校の4年生にいたらしい

麗しの兄弟愛である


しかし、悲しいかな、修羅のように、狩猟生活を続けてきた俺にかなうわけもない

同じように、鎧袖一触、佐藤兄は撃沈した


そうなると、ガキ大将界を揺るがす事態である

そもそも、このころは、年上のほうが圧倒的に有利なのであり、年下は年上に基本逆らわないし、逆らえない

もちろん、俺がさかっらたわけではないのだが・・・


次の日廊下を上級生が走ってくる

「おい、高野、高野はいないか?」どこかでみたことのある少年が教室で叫ぶ


「はい、高野です」


「おー、お前あの時の」

それで思い出したが、彼は山口の弟である

「山口先生の弟さん」


「おお、そうだ、兄がお世話になりました」慌てているにもかかわらず、弟は礼儀正しく頭を下げた


「いえいえ、こちらこそお世話になりました」こちらも答礼を行う

「そうじゃなくて。すぐに、裏門から逃げろ、表に中学生らが来ている、お前を探しているらしい」

どうやら、その情報を聞きつけて、知らせに来てくれたらしい

「中学生ですか」さすがにそれは反則であろう、こちらは小学1年生なのだ


「わかりました、山口さんありがとうございます」

「裏から逃げよう」山口は一緒に行ってくれるつもりのようだ、心根の優しい子である

「山口先輩一緒に行ってもらう必要はありません」

「一人だけでにげきれるのか?」山口は心配そうな顔つきである


「逃げはしませんが、大丈夫です、一人で何とかできますので」

「何言ってる、ここいら界隈で有名な奴らしいぞ」

「なるほど、ここらを仕切っている奴なのですね」

「俺の同級生がそう言ってた」


「なるほど、番長ですね、興味がわきました、では、知らせていただきありがとうございました、累が及ぶといけません、先輩は気になさらず、お帰りください」


「お前何言ってんの」

山口は、怒ったように自分が何とか助けてやろうと考えていたようだ、正義感が強いのは悪いことではない

「では、一緒にお願いしても?」

「え?」顔色が悪くなる

「大丈夫です、先輩には、見届け人をお願いします」

「お前、20人はいるぞ、小学1年生相手におかしいとは思うんだが、先生に言いつけたほうがいいかもしれん」

「先輩、大丈夫です、彼らには彼らの使い方があると思います、有効に使わせていただきますよ」


近くの空き地

相手方を一目見たが、暴れ者そのものという感がすごい、絵ずらだけで、こうもはっきり雰囲気がわかるなんて、あるいみすごいことだ

漫画だな


「一つ確認しておきたいのだが、彼は、見届け人だ、手は出さないように願いたい」

まず俺がこう切り出す、まるでこれからバトルロイヤルが行われそうな感じだが、別にそういう気はない


「お前が、舎弟の佐藤をやったって聞いている」

番長らしい男がいう

「ここら辺の番長さんですか?」

中学生がうなずく

「ここら辺を仕切っている、歯向かうやつは容赦しない」

「いやいや、こちらはなにも歯向かってなどいませんよ」


「佐藤は俺の舎弟だ、お前をやる」


「問答無用ですか?それとも思考力が無いのですか?」

目の前の男は獰猛な顔を摺り寄せてくる


「少しだけ話を聞いてもらっていいですか」

「お前は許さん」


まったく人の言うことを聞く気がないようだ

この時代の人間は大丈夫なのか?


読んでくれている人が増えてきました!ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] こーゆー人だらけだから戦争に突入せざるを得なかった、という事情も間違いなくあると思います。
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