閑話 魚雷
閑話
開戦からさかのぼること、一年、1938年は、タイムスケジュールでは、戦争開始1年前である
全ては、1939年12月8日(Xデイ)に向けて、準備を整えることが、統合作戦本部の極秘命令として出されていた
「魚雷が足りないとはどういうことか?」
航空本部で報告を受けた俺
此処で問題になっているのは、航空魚雷であるが、俺は、自分が用意した潜水艦部隊に配給するべき魚雷も足りないことに気が付いた
三菱重工業が長崎で製作していたが、生産能力が非常に貧弱であったのである
連合艦隊所属の艦上攻撃機への配備もギリギリの状態らしい
全ての予定は、12月8日に間に合うようになっている必要があるのだが、そのため連合艦隊旗艦の予定の大和、武蔵すら間に合うように建造されている。
もうすぐ、艤装が終了し、訓練に入る予定である
「義勇軍部隊の航空機用にも必用なのだがね」
「はい、閣下しかし・・・・」
「なぜそんなに時間がかかるのか?」
技官は、魚雷製造の難点について語り始める
日本の酸素魚雷は、結局あまりにも扱いづらいので、ドイツでも作られなかった
しかし、性能自体は、速度、航走距離など世界トップクラスのものであったのは間違いない。
しかも、酸素魚雷は航跡を発見されにくい性質をも兼ね備えた優秀兵器であった
その半面、扱いずらいのはあるが・・・
「中核部品の製造が時間と手間がかかるのであります」
気室という部品、ニッケルクロムモリブデン鋼製が作るのが難しいとのことだった
鋼塊を中ぐり機で穴をあけるという
「板を丸めて、溶接できんのか?」
「今の技術ではなかなかに難しく、高圧に耐えることができないということです」
「なんでもよいが、潜水艦部隊でもいるんだが、通常の魚雷は問題ないのであろうな」
「はい?」
「貴様は知らんだろうが、秘密裡に潜水艦が多数建造されているのだが、そこにも、魚雷はいるんだが、大丈夫なのか?と聞いている」
「私は・・・」
「おい、潜水艦部隊だけでも、万単位の魚雷が必要なんだぞ!製造能力を増強するんだよ」
思わず、声が荒くなる
「万?」技官は唖然としている
とても、無理なのは顔を見れば明らかであった
もともと、帝国海軍の武器製造能力は低い
足らず分を、高野系企業で補ってきたのである
直ちに、海軍工廠兵器部の幹部、本多金属本多博士、高野重工業、高野造船の技術者などがあつめられる
「魚雷不足問題を直ちに解決する必要がある」
「民間のものがかなりいますが」海軍工廠の幹部は不満顔である
「航空魚雷のみならず、潜水艦用魚雷もまったく足りないと聞いている」
「はい、帝国海軍の艦船への補給でいっぱいかと」
「貴様、命令が届いておらんのか」と俺が怒気をみなぎらせる
「魚雷27000発というやつですか」
「そうだ」
「本当の話なのですか」
「貴様、命令書に書いてあったろう!」
「あなたの兄の山本中将が零戦、陸攻各1000機を要望するという話がありましたが、そのたぐいなのではなかったのですか」と幹部は言った
「貴様は首だ、なんとしても首にする、私を舐めているのか」怒りのオーラが室内に揺らめく
「総長、怒りが駄々洩れですぞ、お控えください」岩倉が袖を引く
「・・・・」
集まった人間は青い顔をしている
「総長、27000発は、戦争期間中にいる量を推定しているだけです、開戦初期には、4500発もあれば、足りるでしょう、いまからならまだ間に合うはずです」
「そうだな、3か月で工場を用意して、9か月で4500発として、1月500発か、その規模の工場を頼む」
「では、工場を5つ作りましょう、まずは一つ作りそこで、技術者を錬成して各工場にばらまくということで」
「よし、それでいこう」
「博士には、気室の製作について助言をいただきたい」
「おお、そうだな、くりぬきではなく初めから、その形で、鋳造するか?それとも、溶接か」
「溶接は造船でよく使っているから、頼むぞ」と俺
「は」造船の幹部が敬礼する、彼らは軍人ではないのだが
「では、詳細は、総長抜きで決めましょうか、総長退席~」
俺は、部屋を追い出される
結局、鋼塊の削りから、溶接工法への変更でできるめどが立ち、魚雷の価格、製作時間が革命的に安く、短くなることになったのである
その時から、さらにさかのぼること数年前のことである
「やはり、日本の製鋼技術では、クルップ鋼には勝てないか?」
「はい、やはり技術的蓄積と鉱石の性質も大きいかと」
製鋼の技術はやはり、ドイツ、そもそも、ドイツはスウェーデン鋼を利用しているためそもそも、性能が良いのである
アジア方面に存在する鉄鉱石には、硫黄分が多く含まれ、完全に除去するのが難しいのであった、硫黄分が含まれると鉄がもろくなる
「そもそもスウェーデン鋼がいいなら、それを輸入せよ、それより各種金属の備蓄はどうなっているのか?」
「はい、所要量の三年分というところです」
「三年は戦えるということだな」
「まあ、そういうことですが」
各地の倉庫にインゴットが積まれている
特に、ニッケルは過剰なほどの量を輸入していた
カナダからアバレーエフの会社経由で・・・
アバレーエフは現在、パナマに潜伏している
チリで銅などを買い付けて送ってきてくれている、費用は向こう持ちである
こちらからは、兵器をお礼に輸出している
自動拳銃、自動小銃、狙撃ライフル、重機関銃、軽機関銃、迫撃砲、柄付き手りゅう弾、対戦車ロケット砲などBFA製品詰め合わせを送っている
帝国軍、ロシア公国軍に充足できるだけの生産量を確保できる予定が立ったのである
BFAでは、その補給弾薬も製造しており、国内最大の兵器生産会社となってしまった
工員10万人以上の大企業である
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有栖川自動車は、ハイランダーという、多目的自動車を生産にこぎつけた、エンジンはDEのV6ディーゼルターボである
この、我々のよく知るランド〇ルーザーによく似た、オフローダーはどこでも、いつでも丈夫に走り続けるをコンセプトに作られている
(因みに当初はジー〇を作るように依頼していたが、ジー〇よりもランク〇のほうが使い勝手がよさそうだったので、変更された)
もう少し、小さくならないのかと設計部門に、ジ〇ニーを要求していてみたところ、なんと、同社の星子という技師が作り上げてしまった
あとは、どれだけ生産できるかにかかっている
T型フォードとまではいかなくとも、月産100台や200台は製造できるよう、製造ラインを仙台に増設中である
有栖川父宮は史実では、肺結核で亡くなるのだが、俺の治療と高栄養食品を十分に取らせることにより、いまでも元気だというより、元気すぎる
息子を軍令部総長に就かせるべく運動を展開していた
ついでに、アリスの宮に子供もできて宮家は安泰となったのではなかろうか




