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奇襲

オーストラリア首相の執務室には主だった政治家、軍人たちが集まっていたが、みな一応に暗い顔をしている

「で、軍の方はどうかね」

「残念ですが、陸軍はアフリカ戦線に出払っている状況です」

「海軍の方は、主力は温存しておりますが、日本の艦隊には対応できるような戦力ではありません」

「アメリカ軍はどうか」

「はい、マッカーサー将軍がダーウィンに逃げてきたのは確認できていますが、アメリカ本国からの戦力が集まりません、もちろんわが国への援助も求めていますが、そもそも、米国太平洋艦隊が壊滅的打撃を受けており、それどころではないようです」


各大臣たちが、報告しているが、状況は絶望的であるといえる

そもそも、オーストラリアは相当広いが、人口は極端に少ない、それなのに、英本国の要請に基づき、アフリカへの派兵を行っているのである

オーストラリアを国として英国に認めさせるためにはこのような犠牲的行動が必要なのである


「彼らからの停戦協定案が届いているのは、みな知っているかと思うが、どうしたらよい」

首相は、みなを見回す

「無視が一番かと、」

「本国に救援を要請しましょう」

「米国部隊にたたっかてもらいましょう」

残念ながら、すべて不可能な方法でもある

英国東洋艦隊は、日本海軍航空隊に主力艦を撃沈されている

オーストラリア海軍はそもそも少ないのである

しかも、その出入口のニューギニア島を日本が占領している状況は非常に厳しい


イギリス本国は、ドイツとの闘いで精一杯であり、日本艦隊がインド洋を席巻している、さらに、インド独立派が活動を活発化させている、このような動きはアジア全土に広がっている、実は、高野の特殊部隊が十年もまえから現地入りし、独立派を支援してきた成果がここにきて実を結んでいる(?)のである


米国は、太平洋艦隊がほぼ全滅しており、大西洋から空母ホーネット、ヨークタウンを回航してきたがサンディエゴ基地に向かう途中で攻撃を受けて損傷している

そこまで詳しい状況はここには届いていないが・・・

しかも、真珠湾は壊滅、復旧は少なくとも一年はかかるであろう

さらに、ハワイ周辺には、復旧用物資を運ぶ輸送船団が潜水艦の格好のターゲットになっている状況であった、基地復旧は遅々として進まない状況であった


フィージー・サモア方面からの輸送もラバウル方面からくる潜水艦により攻撃を受けている状況である


そして、ここにきて、日本からの書面では、停戦に応じない場合は、容赦なく東海岸の都市を攻撃すると通告されていた


大連合艦隊は、フィリピン攻撃後、台湾・沖縄で出撃体制を整えていた


「できもしないことを言い合っても仕方がないのだが、停戦を飲むか?」

「しかし」首相執務室に沈黙が流れる


彼らは、まだ、大連合艦隊(ロシア公国義勇軍艦隊を含めて)の正規空母を見たことがない

というか、アメリカ軍ですら、見たものはいない

もし、オーストラリア首相がこの空母を見ていれば、彼らはすぐに、停戦に同意しただろう

彼らは、とりあえず、日本からの通告を無視することにしてしまった


だが、日本側にも問題がないこともなかったのは確かである

潜水艦の乗組員問題である

ロシア公国では、SX潜水艦が順次完成しているが、乗員は日本人になっている

日本帝国の乗員を回してもらっているが、その数は限られている

しかも、SX潜水艦にのった乗員は二度と日本の潜水艦には戻ろうとしないという問題が発生していたのである

SX潜水艦は静粛性、生活性、運動性すべてにおいて日本の潜水艦を引きはなしていた、これに乗れば、うるさい、汚い、狭い伊号潜に乗ろうと思わなくなるらしい

帝国海軍が乗員を出し渋り始めている状況にあった


次に問題となっているのが、空母乗員である、航空機乗員は、リヒトホーフェン学校から継続して生徒が排出されるので、すぐに充足させることができている、整備士も同じであるが、先ごろ、2隻の敵空母を鹵獲したので、これの乗員が不足している

空母は戦闘艦とは違うので、すぐに補充はきかないのである


このような状況を改善するため、海軍兵学校が各地に増設されることとなる


輸送船団護衛を行う護衛隊の乗組員も不足しているが、これはロシア公国海軍が実戦経験を積むため、乗員を日本艦に派遣している

戦闘の最前線は日本人が受け持ち、後背では、ロシア人と満州人が経験のため、輸送護衛任務を行うという図式ができつつある


満州国では、満州人による部隊も編成されているが、彼らは、国土防衛のための部隊となっており、いわゆる外征を関東軍が担う形をとっている

関東軍は、モンゴル国内、ソ連国境付近で、防御陣地を構築し、そこで待機している状況であった


ロシア公国陸軍は、バイカル湖周辺の防御陣地に集結し、その時を待っている状況である


・・・・・

時は少しさかのぼり


パナマでは運河の警備が非常に厳しくなっている

太平洋艦隊の空母が足りなくなっている状況を改善するため、大西洋から空母を太平洋に移す必要がある、そのための警備である


アバレーエフはそのことをすぐに察知した

空母ヨークタウン、ホーネットとそのお付きたちが運河を渡るようである


アバレーエフがパナマで暮らしているのは、これらの情報をすぐに知るためである

そして、現地のラジオ局から、決められた曲を流す、ヨークタウンとホーネットには、決められた曲が割り振られており、その曲を何回か流せば、パナマ沖に待機している、日本側の潜水艦がそれを受信し、敵空母の進出を知るという仕組みである


・・・・

「敵空母のヨークタウン、ホーネットが太平洋に出てくることが判明しております」

「敵は、何らかの攻撃を仕掛けてくると思われます」

「高野中将の言うような、本土爆撃作戦があるのかもしれません」


統合作戦本部では、対策が練られている

「それより、オーストラリアへの救援かもしれません」

「いや、彼らとしては、これまでの失地回復のため、是が非でも何らかの戦術的勝利がほしいのではないでしょうか」


「では、連合艦隊は、オーストラリア攻撃に全力でいっていただくのを、パープル暗号で打電してもらうというのはどうですか?」


「パープル暗号?」

外務省が使用する97式暗号である

「それは、解読されているのではないのか」

「だからこそ、全力攻撃を教えるのです、そうすれば、本土を襲うのに都合がよいのではないですか」

「撃たすというのか」

「もちろん、反撃しますよ、わがロシア公国義勇軍艦隊が敵を待ち構えます、また、万一の時のために、各地の航空隊の準備もお願いします」


「よし、では、5月にオーストラリア、ブリスベンを強襲するという方向で、決定する」


かくして、5月にブリスベン攻撃が決定される、それでも停戦に応じない時は、シドニー、キャンベラを攻撃し灰燼とする、容赦は一切しない「冷血作戦」を発動するのである


史実ではこの年、帝都が初空襲を受けるのである

だが、敵空母は、ハワイから出撃していたはずである

しかし、この状況では、ハワイは無理である

実際に、敵空母群は、ハワイに向かっていない、実際まだ港湾に進入することはできない状況である

とすれば、敵は、アリューシャン方面から来ざるを得ない

男は、そう結論に至った


史実から、帝都空襲Xdayは4月18日前後の一週間と推測することができる

どれだけ、歴史が修正力を持っているかは不明だが・・・


すでに南雲機動部隊、戦艦部隊は、5月1日のオーストラリア攻撃のために本土を出撃している

4月10日には、ロシア公国義勇軍艦隊は室蘭に集結していた

敵の予想コースは、ダッチハーバーから東京あるいは札幌、室蘭を攻撃するのではないか?


もちろん、俺、高野九十九が勝手に考えているだけだ


真相を知る者は数少ない、ある一人の男の思い込みからであると


だが、一人の思い込みを信用する信者が多数存在するのもまた事実である

神道派は、ある意味絶対の信者の集団である


4月15日には、敵艦隊発見の報が入る、やはり敵は本土爆撃を狙っているのであった

情報を発信したのは、潜水艦である、発見時に決められた巨大音声クジラを何回も放出したのである


Xdayは4月19日になると考えられる

敵は、東京沖500カイリからの爆撃を考えており、夜間爆撃を狙っている、この際戦果が問題ではなく、沈滞した雰囲気を打ち破るために、何か小さな戦術的勝利が必要であったのである


4月17日、海が大荒れとなっていた、そもそも、この海域はそういう海域である

第17任務部隊のフレッチャー提督は、いやな予感を感じていた

ヨークタウンが太平洋にきてまだ間もないというのに、いきなりの奇襲攻撃作戦である

アメリカ政府首脳部は明らかに、焦っている!

稼働できる空母では、日本側が圧倒的に優位に立っている、工業力で勝る米国は、新型空母が完成するまで、我慢するべきなのである

しかも、敵は、オーストラリアを襲撃する作戦を立てており、その反撃にこそ我々は向かうべきなのだ、このままでは、ブリスベンが灰燼に帰する、真珠湾ではそれが行われ、いまだに基地機能が回復していない

荒れる海の波が空母の甲板を洗う

曇り空が、自分の明日を暗示しているようだった


第18任務部隊のホーネット艦上でも同様の状況であった

飛行甲板にくくりつけられた、B25がさらわれそうになっている

ブルが戦闘不能にされたため、キンケイド提督が急遽、この第18任務部隊の司令官に任じられた、彼もまた、オーストラリア防衛に向かうべきだと考えていた、たとえこの奇襲が上手くいっても、それでどうなるのか?彼はおもうのである

そもそも、上手くいくのか?敵はレーダーを持っているのではないか?そういう気がしてならないのである

少なくとも、それに近い技術は持っていそうである、すでに海軍の潜水艦が多数撃沈されている状況であり、消息不明艦が多数出ている、彼らは明らかに、潜水艦発見技術がこちらより進んでいるようなのである、とすれば、レーダーの技術も進んでいてもおかしくはない


だが、現実はそうではなかった、彼らのレーダーの技術より、日本側のそれの方がはるかに進んでいたのである


そして、彼らの西方から急速に接近を始める4つの輪形陣の艦隊がある

当初、足りていなかった巡洋艦、駆逐艦がやっと増やされて超空母1隻に対して輪形陣を組めるようになったのである


そして、その後方を少し離れて、正規空母群が後を追う

彼らの任務は、艦隊の直掩戦闘機を安全な距離から供給することである


しかも、攻撃開始予想地点X地点の付近にはSX潜水艦が集結中という最悪のシナリオが用意されていた


全力をもって全力でたたく

見敵必殺!夜明け前の一時間に次々と航空機が発艦していく

戦艦「神武」以下4隻の戦艦群が西方に向かって驀進する、米国空母の東側に回りこみながら

レーダーにはまだ、敵艦は映っていないが南東側にいるのは間違いない


・・・・

カニ漁船に見つかってしまった

夜明けからすぐに、日本の漁船が前方にいるのが、レーダーでわかった

重巡が前進して漁船を砲撃する


「だめだ、遠いがすぐに爆撃機を発進させよ!」

キンケードが命令を下す

おそらく、カニ漁船は日本側の情報船だ

カニ缶は日本軍の軍料として使用されている


「ヨークタウンから通信!敵機らしきものが接近中、東方からです」

「くそ!読まれていたのか!」


なぜ、東方から敵機が来るのか、退路を断たれている!キンケードは背中に冷汗が流れるのを止めることができなかった


いつもありがとうございます。

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