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開戦3 激闘レキシントン!

第21艦隊と別行動となり、北へと向かう第22艦隊は驀進していた

目的地はミッドウェー基地方面であり狙いは敵空母群である

「おそらく、敵空母はオアフを目指さないのではないか」

第22艦隊司令官山口多門中将である

「ハワイは放棄して、サンディエゴあたりに逃げると?」と参謀


真珠湾には、敵空母は不在であり、太平洋にいる米空母レキシントンはおそらくミッドウェーへと航空機の輸送を行っている

なぜか、作戦はそのような条件で練られている


さすが、「御使い様」である、占いでそのようなことまでわかるとは!

山口多門は、御使い高野九十九の後輩になる

海軍士官学校40期である、高野は38期であり、2つ上の先輩になる

そのころから、本当にいろいろと世話を焼いてもらった

しかし、何よりも、彼が作ってくれた料理の味が忘れられない、ああ食いたいあの鍋が!

山口多門はバリバリの「神道派」であった


 もちろん、それを考慮してすでに、ロシア公国艦隊の新型潜水艦20隻が、ハワイ北方に点々と網を張っている、日本海軍の伊号潜水艦も10隻程度同じ任務に就いている



・・・・

レキシントン艦長のシャーマン大佐は焦っていた、真珠湾奇襲の報を受け、ミッドウェーへの輸送任務を中止し、偵察を繰り出す、しかし、その偵察機からの知らせは、信じられないような情報だった、真珠湾が壊滅状態であるという

いくら奇襲だったとは言え、そんなに破壊されるものなのか?

彼は、どれほどの航空機が使用されたか知らないので無理もない

通信もまったく途絶していてしまった


「とにかく、オアフへの帰還はまずい、サンディエゴかサンフランシスコへと向かう」

「しかし、駆逐艦の燃料が足りません」参謀が意見するが

「そんなものは、ラハイナに寄港させろ、とにかく来れるところまでは、護衛に来てもらう」

「では、ハルゼー提督の方は、どうされますか」

「儂が聞きたい、全然、通信に出ないではないか、奴のことだ、戦力も考えずに敵艦隊に突っ込んでいったに違いない」


合流しようと、急いで南下してきたが、偵察の結果をきいて、すぐさま、西方へと逃げる決意を固めたのである


すでに、夕刻になりつつあった

「とにかく、ここは危険だ、全速力で、東へ向かう」

そこまで、言い切られれば参謀も従うしかなかった、彼にしても、どのような案が良いかなどまるでわからなかったからである


空母群(第12任務部隊)には、レキシントンと重巡、軽巡、駆逐艦5隻が同伴していた

少なくとも、日本には、開戦前に6隻程度の正規空母が存在している、真珠湾が壊滅するだけの攻撃を行うのであれば、全力出撃の可能性が高い、たとえ、此方が先に敵を見つけても、勝てる数ではない、此方は空母1隻分の航空機で戦わねばならないのだから


夜になれば、航空機は使えない、その間にできるだけ東へ距離を稼ぐ


だが、ことはそう簡単にはいかないものである


「スクリュー音探知、艦隊だと思われます」

早くも、ロシア公国義勇軍の新鋭SX型潜水艦SX7がレキシントン部隊のスクリュー音をキャッチしたのである、ちなみにSXのSはサブマリン、XはX舵のXとなる、あとの数字は7番艦の7である


ちなみに、ロシア公国はアメリカに対して宣戦布告を行っていないため、戦場に存在するロシア公国艦船はすべて義勇軍とされているが、実態は、それを隠れ蓑にしているに過ぎない、乗員はすべて日本人である、もちろん、潜水艦の国籍などわかるはずもないが・・・


この時代の潜水艦の常識的な姿とは全く異なる、現代的なX舵の潜水艦は高い静粛性と先進の技術を持っていた


かつては、ドイツから持ち込まれるはずだった、シュノーケルはすでに開発され装備され、逆探知装置、レーダー、ソナーを完備、エンジンは4ストロークディーゼルターボ4000馬力×2搭載で、水中20KNをたたき出すことができる、海上は10Knだが・・・

葉巻型のため水中では高速であるが、水上は遅くなるのである


「潜望鏡深度まで浮上」


夜闇の中でははっきりと確認できないが、影が遠くを動いているぐらいは感じることができる、レーダーでもはっきりと確認できる

潜望鏡にはレーダーも装備されているのである


「距離およそ6kmといったところか?」

「はい、そのくらいです」レーダー監視員が答える

「ちょうど、俺たちの前を横切ってくれるようだ、全門発射準備、発射後、艦隊あて通信を入れろよ、その後急速潜航する」

「魚雷準備よし」

「通信準備よし」

「撃て!」

6発の魚雷が圧縮空気によって海中へと押し出される

敵艦隊発見の通信が発信されるのとは同時だった


第12任務部隊では、暗号通信を傍受したが、解読はできなかった

「警戒を厳にせよ」

おそらく敵の潜水艦が近くにいる!シャーマン大佐は直感した


SX07では、敵の駆逐艦がすぐに、こちらに爆走してくると考えていたが、そのようなことはおこらなかった


潜水艦学校では、通信を行えば、敵の駆逐艦がただちに、此方の居場所を探知して、爆雷を落としに来ると習っていたのである


「命中まであと、10秒」

タイマーを数える士官が声をかける、もちろん当たればである

時速50knの魚雷が3分程度で6kmを走破するのである

「今!」

轟音が海水越しに伝わってくる


レキシントンの横を航行する駆逐艦がいきなり、水柱に包まれた

爆風が、艦橋のガラスを思い切り殴りつける

「くそ、何してやがる、敵潜がいるぞ!」

もちろん、見張りは立っていたが、夜闇の中で、明かりもなしに、酸素魚雷を見つけることなど不可能であろう


駆逐艦が真っ二つに折れる

他の駆逐艦が、魚雷が来たであろう方向に爆雷をばらまいているが、すでに、SX7は別の場所に移動している、そもそも、彼らは近くを探しすぎている


6kmもかなたから撃ってきたとは考えていないのだろう

彼らが、警戒せずに直進していたため、当てることができたのである


今は、ジグザグ航行を開始している

だが当然ジグザグ航行は、魚雷対策にはなるが、無駄な距離を走ることになるため、遅くなるのである(距離を稼げなくなる)


「救助している、艦を狙いましょう」

副長が進言してくる

海上では、爆雷投下と、救助が同時に行われている、空母と巡洋艦は先に逃げている

「しかし、あまりにも」艦長は帝国海軍出身の海兵、少佐である

副長は、高野部隊からの特務大尉である

「戦争指示決定の時、高野総長は、このような場合どうするかを、実の兄山本長官に聞いたといわれています」

「そうらしいな」

「山本長官は武士の情けで見逃すといわれたが、高野総長は、こういわれたそうです、敵を見逃せば、必ず、仲間が後で殺される、その時、兄上は、その兵士のご家族にどう謝られるのかと」

そのようなことは、言われていなかったが・・・この場所ではそうなっているらしい


「初めから戦いを避けるならば、米国の奴隷になれば、戦いで死ぬものいなくなるでしょう、その後どうなるかは知りませんがとも言われたのです」

やはり、そのようなことは記録されていないのだが・・・この場所ではそうなっているらしい

「わかった、私の判断が、いずれ仲間を危機に陥れることは、避けねばならん、魚雷発射準備」

「準備よーし」

「敵駆逐艦こちらに向かってきます」

「潜望鏡を発見されたのか!撃て、ダウントリム一杯急速潜航」


真正面から駆逐艦が突進してくる



「潜望鏡のようなものを発見!」その少し前、米駆逐艦の中では、声が響いていた

「全速前進!取り舵」

だが、それは少し遅かったのである

全速の駆逐艦と全速の魚雷は真っ向から向かい合った、魚雷の先端が船首部分をズリズリとした瞬間、大爆発が起こった


艦長は、前方に吹きとばされて、計器とガラスにたたきつけられ、意識を失った

艦は、前方に大穴が開き、しかも勢いがあるため、水中に一気に沈み込んでいく

その力が強すぎて、船体が真ん中でボキリと折れてしまったのであった


そして、救助艦の方は、そのおかげで、難を逃れたのである


SX7はすでに、戦場をあとにしていた


救助艦(駆逐艦)は、轟沈した駆逐艦の生き残りを拾い上げていたのである

サーチライトを使いながら


だが、その勇敢な行動は報われることはなかった、サーチライトが敵をおびき寄せていた

もっとも近くで配置されていた、SX6が、SX7の通信を傍受し、この海域に忍び寄っていたのである

そんな中、サーチライトを使う駆逐艦を発見する


SX6艦内でも同じような議論はされたのであろうか?

よく見れば、魚雷の進むのが見えるのかもしれない、だが、白い航跡は現れないのである、

酸素魚雷は航跡を発見するのが非常に難しい、しかも、彼らはもう数時間も救助を続けており、体力も気力限界である、見張りなどできようはずもなかった


魚雷だけが50Knで世闇の海中を驀進していくのであった


・・・・・


すでに、夜も明けようとしている

「直掩を上げろ」なけなしの戦闘機である、逃げきれていれば問題ないが・・・

だが、夜の魚雷攻撃のせいで時間がかかってしまった、しかも、駆逐艦3隻が傍からいなくなっていた


「くそ、ジャップめ!」シャーマン大佐は毒づいた


だが、奮戦もむなしく、第22艦隊旗艦戦艦『イワン』では、敵空母と思しき艦をレーダーにとらえていた

すでに、航空機を発進させた後である、航空隊には、空母と駆逐艦一隻だけ残して全て葬り去れと厳命している


すでに、エースが誕生している

山口は心のどこかで、自分もエースになろう、いやなりたいという意思が芽生えていた

その心を見透かすように編隊の隊長機稲垣から通信が入る

「山口さん、だいぶ入れ込んでますね」

「いや、そんなことはない」

「私、総長からくれぐれも、山口副長を頼むといわれてます」

「気にせんでほしい、高野とは、長い付き合いだが、自分のことは自分でできる」

「今日は、山口さんが一番機を、私は調子が悪いので、山口さんのカバーを行います」

「そんな」

「これは命令だ、山口特務中尉」


「は!」涙がなぜか出ているが何とかこらえた

「では、我々は島、一番機いけ」

「え」

かれら二人は、教官をできるほどの腕である、どこの部隊でも、一番機になれる実力を持っている、残念なことに、この4機編隊は一番機は攻撃するのだが、二番機は必ず一番機のカバーに入ることになるため、攻撃する機会が至極当然に少なくなるのである

また、同じ敵を攻撃しても、だめなことになっている


夜明けと同時に、空戦が開始される

すでに、先行の戦闘機隊が戦いを繰り広げている


山口の隊はとりあえず高空へ遷移し、機会をうかがう

数で圧倒する第22艦隊所属航空隊は、仲間の動きを見ている部隊が多い

その時「山口、行くぞ!ブレイク」

隊長の声がかかる

丁度一機の敵戦闘機が、空戦を逃れて、ふらりと集団からはみ出たのであるが、それを攻撃機会ととらえたのであろう

4機が大きくロールして降下を開始する

先頭を切り急降下する山口の前に、F4Fが急速に大きくなってくる

パイロットが上空を見上げて、驚いた表情すら見える、ブ式機銃のトリガーを引く、零戦の機銃は12.7mm2丁と20mm機関砲2丁であるが、どちらも、彼が連れてきたブラウニング氏が開発した逸品である

機銃弾がキャノピーのガラス越しにパイロットを貫いたがその時には、編隊はその機を通り越していた


山口がロールして、態勢を立て直した時には、前方に味方を争う敵の姿が飛び込んでくる

フルスロットルで上昇を開始する、敵機の真下からの射撃になったが、20mm機関砲弾がさく裂して、翼をもぎ取った

その時、山口の目には、もう次の敵が隙を見せているのが映っている、「よし!」さらにエンジンをふかさんとしたとき、「山口止まれ」隊長の声が聞こえた


「味方にも仕事を分けてやらんとな」稲垣の声にやっと我に返る

「敵艦の攻撃を行う、編隊を組みなおせ」


稲垣が前にでて、いつもの配置を作る

「さすが、本物の侍ですね」若い島少尉が感心しきりである


・・・・・

すでになけなしの戦闘機は壊滅していた、上空で待機していた、敵の艦爆、艦攻が編隊を組みなおして、此方にむけてやってくる


さすがに航空機からは逃げきれない、此方の攻撃機は、発進させている、戦闘を迂回して東へ攻撃に出させた、おそらくこの空母に戻ることはできまいシャーマン大佐はそう思ったが、仕方がない、このまま空母に積んでいても、やられてしまう、少しでも攻撃できる方を選んだだけである


対空砲がうなりを上げるが、あまつさえ数が少ない

「なんとしても!打ち落とせ、空母を狙ってくるぞ」シャーマン大佐が怒鳴る


艦爆の急降下爆撃が始まる、「取り舵」退避行動の命令を出そうとした瞬間、自分の艦が狙われていないことに気付いた

近くの重巡洋艦を目標にしている、攻撃機が同時に航空魚雷を放つ、同時攻撃である

だが、自分が狙われていないので、何とも妙な気分である


投下した爆弾が直撃する

ドドーン!爆音と火柱が次々と起こる

それが、両翼で発生する、左側にいる軽巡洋艦でも爆発が発生する

2隻には、とどめとなる魚雷が撃ち込まれて、真っ二つに折れて轟沈する


そのあとは、あとは対空砲対機関銃の戦いになってしまうが、戦闘機の機関砲が容赦なく、空母の機関砲を掃射していく

「奴らは、この艦を狙っているぞ」

その時、窓の向こうに、零戦の姿が見えたとおもった瞬間、バキバキと辺りで何かがはじけた

「うっぐあ!」

誰かの悲鳴が聞こえたが、自分も打ち倒されていたことに気づく

「くそ」血まみれで、立ちあがりながら辺りを見回すと何人かやられている

「逃げろ!何とか逃げろ、自爆の準備をしろ、駆逐艦に雷撃させろ」

シャーマン大佐は怒鳴ったが、命令を聞いている人間は少なかった

無線機をつかみ上げて、ボタンを押す、「レキシントンを雷撃せよ、沈めるんだ」

無線先の駆逐艦にも機銃掃射が行われており、駆逐艦は逃げ回っていた、すでにまともに動く機銃がなかったのである


「おい、聞こえてるか、ハムマン!」

ザーザーといいながらも何か言っているようである


「無駄な抵抗をやめよ」突如会話に割り込まれる

「何者だ」

「私は、連合艦隊第22艦隊司令の山口である、直ちに抵抗をやめよ」

「やめてたまるか」

「では、全員ここで死ね、もう一度聞く、全員ここで死ぬか、駆逐艦でハワイに帰るか選べ」

その時、シャーマン大佐は、降伏を選ぼうとした

「だめです!大佐」参謀が必死にはいつくばって、手を伸ばしている

手は血まみれである


「お前たちを死なせるわけにはいかん」本当は自分が死にたくないだけであったが、そういった


「降伏する、全艦攻撃停止、機関停止」


数時間後、巨大な戦艦がゆっくりと近づいてきていた

砲すべてが、此方を向いている


生き残った兵士が次々とカッターに乗り込んでいる


此方の攻撃は、空振りだったのか?シャーマンは撤退する兵士たちを見ながらつぶやいた


だが、米レキシントン攻撃隊は、敵艦隊を発見した、しかし、直掩の戦闘機に阻まれ攻撃することはできなかった、戦闘機を潜り抜けた攻撃機は、猛烈な対空砲に包まれ、あっという間に火だるまになってしまったのだ

帝国の艦船は、対空装備でハリネズミのようになっている

ある男が、「後からつけると面倒だから、めいっぱい装備しといて」と軽く言ったために、各艦はハリネズミに変貌していたのである


かくして、レキシントン攻撃隊の攻撃は全く効果を表さなかったのである

そして、レキシントンも鹵獲されてしまったのである


昼過ぎ、大量の米兵を乗せた、駆逐艦はオアフ島を目指す

「では、諸君、今度こそ頭と体を泣き別れにしてやるから、それまで元気でな」


あくまでも流暢な英語をしゃべるくそ野郎め!シャーマンは毒づいたが、口にはしなかった、聞かれているような気がしたからだ

そして、このセリフをどこかで聞いた気がしたのである


「これより作戦は仕上げの最終段階に入る」

「了解、最終段階開始を、暗号にて発信」


第22艦隊の艦艇は、南に向かい始める

第21艦隊、連合艦隊本体との合流を図るためである

いつも読んでくださりありがとうございます。

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