開戦1 トラトラトラ
1941年(昭和16年)
この年の末、ついに太平洋戦争が始まることになる
統合作戦本部では、戦争開始を選択、日本時間12月8日を期して攻撃を開始するように各軍に準備命令が下る
外交においては、できるだけ避戦に向けた努力を行うのではあるが・・・
ロシア公国艦隊と大日本帝国艦隊との間で盛んに訓練が執り行われる
陸においては、ロシア公国、満州陸軍、関東軍がバイカル方面で防衛強化、北部仏印は、自治権を与えて、独立を容認する
南部仏印は、現在真空状態であったが、英国軍が進駐を行う
これに対して、日本、アジア諸国が、独立を認めるよう非難する
さらには、英仏蘭に対しアジア諸国を開放するよう国連の場で友好国が各々声明を発表、民族独立を声高にさけぶのである
ここにおいて、国際連盟では、白人対有色人種の戦いの場という感が醸し出されている、日本の謀略がある程度うまくいっているようである
12月6日
駐米日本大使野村吉三郎は、コーデル・ハルに対して宣戦布告書を手交する
12月7日正体不明の航空機が、ニューヨークに大量のチラシを投下
「心ある有色人種はサボタージュで抵抗を」
侍大将からとして、「我が日本に抗う者よ!頭と体が生き別れになりたいのか?我は修羅となりて、貴様らを斬らん」と書かれていたという
同日ニューヨークのホテル
「我々日本民族は、欧米による植民地支配のくびきから脱するため、友邦アジア各国のために決死的精神により、宣戦を布告するものである、心ある白人種、有色人種は、我々の壮挙に協力を望むものである」野村吉三郎大使の宣戦布告に関する演説を各国の報道関係者にたいして行われ、同時にラジオの生放送も中継された
”ニイタカヤマノボレ1208”をすでに受けっとっていた大日本帝国連合艦隊は、すでにハワイをめがけて驀進していた
そして俺が指揮を任されているロシア公国義勇軍艦隊も同様にハワイを目掛けて驀進していた
俺が座上する戦艦「神武」は帝国連合艦隊から西方100kmを南進している
ロシア公国義勇軍艦隊は、戦艦4超空母4正規空母2重巡10駆逐艦30輸送船4の大艦隊である
正規空母「加賀」、「土佐」は戦闘機のみの運用を行っており、役割としては護衛空母である
俺は、一応ロシア公国義勇軍艦隊副司令という役職になっている(任されているのに、なぜか、副司令?なぜなら、ほとんど陸上勤務しかしていないので艦隊運用などの指揮能力に問題大あり)ので、司令長官は、山梨勝之進大将にお願いしている
ロシア公国義勇軍艦隊とは、ロシア海軍所有の艦艇が有志で日本に協力するための艦隊という建前になっている(船籍の所属がロシア公国の日本人艦隊というのが実情)
連合艦隊としての符号は第21、22艦隊として編成されている
第21空母機動艦隊
戦艦「神武」「応神」超空母「朱雀」「玄武」正規空母「加賀」重巡5駆逐15輸送船2
第22空母機動艦隊
戦艦「イワン」「ニコライ」超空母「青龍」「白虎」正規空母「土佐」重巡5駆逐15輸送船2
艦隊の空母は超空母(米海軍原子力空母を模倣したもの、機関は蒸気機関)であり搭載航空機は戦闘機40攻撃40機爆撃機40の120機と予備40機としている
加賀、土佐はともに戦闘機80機としている
超空母はもともと、全長330mなので、この当時の航空機であれば、まだまだ乗せることができるのだが、運用上の問題として、一隻に集中しすぎることは良くないため、この機数としている、加賀、土佐もアングルド化しており、露天繋止をすれば、まだ乗せることが可能である
なお、航空機は零戦(少し太った)、97艦攻、99艦爆となっている
次期艦上戦闘機「紫電改」は開発が完了しているが数がそろわず、訓練期間も足りなかったため今回は使用されないことなった
ハワイ時間12月7日未明
ハワイ近海から、帝国海軍の戦爆連合180機(第一次攻撃隊)あまりが闇へと飛び立っていく
一方、わが艦隊からは、480機あまりの戦爆連合が飛び立っていく
此方の方は、同時発艦できる数が違うため、全機が発進することができた
さらに、正規空母2隻から100機が戦爆連合のフォローに、残り30機がロシア公国義勇軍艦隊、30機が連合艦隊空母軍の航空警戒を行うため飛び立っていく
・・・・・・・・・
山口一の視点
明かりが、差してくる、日の出が近いのであろう
第22艦隊の第3航空戦隊(空母青龍所属)の零戦に搭乗している山口一は、今までの半生を振り返っていた
全ては、一人の少年と出会ったことだった
一人の見知らぬ子どもが大きなイノシシを次々と屠る、尋常でないのはすぐにわかった、それからというもの人生が大きく転換していった、アメリカにわたり、ブラウニング氏とともに暮らし鉄砲鍛冶を身につけた、そして氏とともに日本へ帰還、一緒に銃を開発し、温泉三昧を楽しんだ、氏も老齢になり寂しくなるころに、航空学校と出会った、あの少年がドイツから連れてきた撃墜王が教える学校だった
もともと素養があったのか、それとも誰でもなのかはわからないが、飛ぶことはとても楽しかった、また鍛冶の能力がエンジン機関の理解に役立った
英語でコミュニケーションもとれた、ドイツ人兄弟とすぐに仲良くなれたのだ
そして、いま俺は、未明の空を飛んでいる、眼下には素晴らしい砂浜や海岸が広がっているのだろう、なぜ、俺たちが戦う必要があるのか?アメリカ生活も経験した山口だった
しかし、お国を植民地にするわけにはいかない
すでに、山口は60歳を超えていたが、なぜか見た目は40前後に見えた
肉体的にも、戦闘可能と判断された
「本当に飛ぶのですか」空母青龍に乗り込む話をすると、元少年は言った
「俺はまだ戦える」
「無理しないでくださいね」少年だったころからほとんど変わらない男だった、いまだに30歳といっても通るだろう
自分はすでに老境に入っている、年寄の冷や水なのかもしれないが
「ああ」と答えた
第3航空戦隊は空母「青龍」所属部隊である
ロシア公国1航戦の指揮官は、弟(山口勇)だったのには驚いた!九十九と一緒に海軍士官学校に行った弟である、俺も一緒に士官学校に行きたかった、いけなかったのは少し残念だが
最後まで面白い人生を送れる自分が恵まれていると実感した
あの少年のおかげだな、自然と顔が笑顔になった
「山口!どうした行くぞ」無線が明瞭に聞こえる
史実では、重くて邪魔と外されていたともいわれる無線機であるが、この無線機は非常に有用であった、そして、使用する方法もきっちりと教育されている
戦闘機隊は基本2機のロッテを2つ4機編隊である
部隊には、すでに大量の卒業生(同じリヒトホーフェン航空学校)がおり、自分は2番機に甘んじるしかなかったが、それでも飛びたかった、空はそれほど魅力的で美しかった
「了解」
低空で島に侵入する、海岸を入ると密林の谷筋を飛んでいく、やはり美しい島である
山口はかつてクーリー(中国人労働者)のふりをして、このオアフで生活し、英語の習熟もこなしたこともあった
航空基地が見えてくる、監視塔に対して、機銃掃射を行う
12.6m機関銃がタタタとうなる、監視塔の機銃が破壊される
次は、駐機中の機を次々と破壊していく
この戦闘機に搭載されている12.6機銃と20mm機関砲は親友だったブラウニングさんがのこしてくれたものである
ブ式機銃と呼ばれるこの機銃はM2重機と呼ばれている
日本軍のすべての航空機はすべてブ式12.6mm機銃を搭載している(高野が7.62mm機銃は絶対に装備しないと決めたらしい、ちなみに7.62mmもブ式である)
また、陸軍と海軍の航空機が別の機銃を搭載することはないし、銃弾も同じものを使用している
絶対に、同じでないといかん!とやはり九十九が、偉い人の集まる会議で強硬に主張した結果だという
「何でだめなのだ」
「絶対に絶対ダメなのです」
「神のお告げに逆らうといわれるのか!」最後には殺気を放出しながら、鬼気迫る男を止める勇気のあるものはいなかった
味方機の爆撃が基地を黒煙と火炎で包む
山口の所属する航空戦隊は、担当するホイラー基地を早くも灰燼に変えてしまった
「戦闘機隊は、真珠湾方面へ向かえ」戦闘隊長の無線が届く
「爆弾の残っている攻撃機も同様である」攻撃隊長の無線が入る
真珠湾はすでに燃え上がっていた、動く兵に対しても、機銃掃射するように命令が出ている、兵士は須らく抹殺すべし、武士道精神は無用、修羅となれとの指導、命令を受けている
公国第1航空戦隊の爆撃機は、真珠湾の艦船の上を素通りして、石油タンクの攻撃を行う予定となっている、戦闘機隊は前面の抵抗地点に機銃掃射を行いながら露払いを行っていく
公国第2航空戦隊の戦爆連合は、帝国海軍部隊の攻撃力の不足分を補っていく
「なんということだ」キンメル大将は、昨夜のことを思い出していた
美しい港湾の夜景を眺めて、酒を飲んでいた、まさかこのハワイが強襲されるとは思っていなかった(本部からは宣戦布告されたこと、一応、警戒はするようにとの通達が来ていた)
近ごろ、ロシア公国が艦船の建造を活発化させているという情報は来ていたが、まったくそんなはずはないと考えていた、ロシアはソビエトから身を守ることに精一杯のはず
日本も経済的にもそんな能力はないはずとの情報であった(国に経済に余力はなかったが、財閥にはあった)
しかし、この空を埋め尽くす敵の航空機の数は異常であった
何百という航空機が爆弾を投じ、機銃を容赦なく撃ってくる
「貯油タンクがやられました」
太平洋艦隊のために、450万バレルの石油が備蓄されていたのである
「逃げましょう、ここは延焼する可能性があります」
「本国に打電、司令部を放棄する」
450万バレルの重油は、黒い河となって、流れ下ってくる
行先は真珠湾である
すでに、港湾施設が破壊され、艦船も無傷なものがいないような状況となっている
その上、重油で燃やされる運命になる
傷ついた艦船から生き残った機銃が対空弾幕を作っているが、非常に少ない
キンメル以下の将官が建物から出たとき、空には、まだ戦闘機が、右往左往していたのだが、その一機が彼らを発見する
「決して、容赦するな!見的必殺の精神だ」という命令を受けている、個人的にはそんなことはしたくはないが、それで仲間が死んだらお前は責任をとれるのかと問い詰められたことを思い出すパイロット
「将兵発見!攻撃する」
戦闘機がこちらに急降下してくる
「来るぞ!」機銃がミシンが縫うようにこちらへと迫る
12.6mm弾が手足を吹き飛ばす
「ぐあ」
声だったのかうめきだったのか?それが最後の音だった
重油が激しく燃え始めている、気化した部分に火が付いたのであろう、一部は真珠湾に流れ込んでいる、空から動くものは確認できない
「第1次攻撃の終了、これより帰投する」
「司令部了解!」艦隊航空司令部から了解の返事がクリアに聞こえる
真珠湾にいたすべての艦船が破壊され、その後、火炎により焼失した
キンメル大将は戦死、司令部も火災により焼失、港湾施設、燃料タンクも壊滅し、焼失した
軍部で無事であったのは、真珠湾要塞の守備要員だけであった
休日であったため、急いで基地に向かう兵士たちが車を走らせたが、それらの車も射撃目標にされたようである
ハワイ時間10時に第一次攻撃は終了した
第2次攻撃が、目標を要塞砲、陸軍駐屯地へと変更され、発艦を開始する
戦闘機群も6番爆弾を2発搭載し発進していく
オアフ島には、米国陸軍2個師団が駐屯している、一次攻撃は、真珠湾の艦隊、施設としていたが、2次攻撃はこれらの兵力への攻撃である
陸軍のショート中将は焦っていた、キンメル司令部と連絡がつかない、上空の敵機は今はいない、しかし、すぐに態勢を立て直す必要がある、そのためにも、海軍と連絡をつけねばならない
真珠湾は大炎上している
「まさか、ジャップのサルどもがハワイを襲撃するとは!」
「残っている機を準備しろ、いつ来るかわからんぞ」
此方の司令部も大興奮状態である
「敵機来ます!レーダーが捕らえました」
「くそ野郎!」
結局防衛に上がれた機体は20もなかった、それもあっという間に、蹴散らされる始末で、次々陸軍基地に爆弾が投下されていく
対空機銃で交戦しようとした兵士たちは、零戦の徹底的な機銃掃射を浴びることになる
兵士を狙っていることは、明らかなほど、人間の動きにたいして、素早い攻撃を浴びせる猫のような戦闘機だった
そして、オアフ島各地にあった要塞砲には、80番爆弾が降り注ぐ
「こちらは、連合艦隊、司令部堀である、第21、22艦隊第2作戦を開始せよ」
「第21艦隊了解」
「第22艦隊了解」
無線で交信するが非常によく聞こえる
八木・宇田・岡部教授の研究が通信機にも生かされているためである
午前中にすべての航空機が帰還を終える
第21艦隊はすぐさま、転舵し、ウェーク島方面へ航行を開始する
また、南雲機動部隊も、ゆっくりとウェーク島方面へと転舵する
第22艦隊はミッドウェー方面へと転舵していく
取り逃がした、敵空母を撃滅するためである、もちろんいないことは承知の上であった
いつも読んでくださりありがとうございます。
ついに、運命の開戦、長い間お疲れ様でした。
淵田:「トラトラトラ」とか書いてんのに、描写ないやん
どういうこと!
九十九:「すいません」投稿するときにサブタイトル変えてるんでなんとなく書いてしまいました




