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開戦やむなし

奇妙な沈黙状態を打ち砕くドイツ軍の西部方面への攻撃が始まる

1940年(昭和15年)皇紀2600年

零式艦上戦闘機が正式に採用される

従来知られている戦闘機よりも少し大きく、分厚い感じに仕上がってしまったのは、防御を重視(途中で変更されたため)したためであり、重量増により、航続距離が若干短くなっている、また、格闘戦能力も少し下がっている

ただし、パイロットの生存性は著しく上がっているはずであった

さらには、無線装置も格段にできが良く、隊の連携に欠かせない存在となっている

零戦の美しさが、米軍のごついF4Fに近づいてしまった感じか



この頃、陸海航空隊ではある問題が起こっている


それは、特務兵問題と呼ばれるものであった

陸海航空隊は何か所もあり、航空兵の教練を行っているわけであるが、そこにいる教官は、本来軍人であるはずである

しかし現実は、特務少尉、特務大尉、特務少佐などとにかく特務~が随所にみられる、聞くと彼らは軍属扱いではあるが、正規の軍人ではないのである

下手をすれば、正規軍人の教官すら、特務兵の指導を受けている有様である

新人兵たちは、この特務兵という得体のしれない者たちから、徹底的に指導されているのである


「絶対に死ぬな、あえて屈辱を耐えて捕虜となれ!」と特務少尉

「落とされても、必ず生き延びろ!」と特務中尉

「できるだけ、粘れ、助けが必ず来ると信じろ」と特務大尉

帝国軍人の思想とまったく反対の心構えが刷り込まれていく

今までは、死んでも敵を倒す精神力、大和魂といわれてきたのである、まったく逆の考え方、潔くなどと考えるな、泥を啜っても生き延びろ、特務少佐の声が響く

とにかく生への執着を徹底的に仕込まれていく


この特務兵というのは、すべて、ロシア公国所属の兵である

ただし、構成は高野親衛隊または王女親衛隊と呼ばれる者たちが10割(国籍:日本人)

全てが、リヒトホーフェン航空学校あるいは大学校の卒業生であった


陸海軍の首脳部には、まだ航空兵力の重要性を認識していない者が多数あり、旧来の兵科に力をいれている、航空兵力の養成に本格的にいたれていないため、最も航空兵力に余裕のある、高野親衛隊から派遣されている将校が教官の立場をほぼ独占している状況にあったのだ


・・・・・

6月ドイツ軍がフランス軍を壊走させ、ドイツ寄りのヴィシー政権が擁立される


日本はヴィシー政府からの要望により、北部仏印への進駐を開始する

国際連盟には、その旨の通知は行っているが、やはり、英米、亡命仏政府が反発する


日本の仏印進駐は、現地住民への治安維持等の支援するためである旨を説明するが、侵略行為と非難される、もちろん、独立させるための戦略の一環である


そんな中、米国から満州、ニューギニア島、仏印からの撤退を行うよう、勧告が出される

従わない場合、石油の輸出を禁止する等の制裁を行うとの通知が外務省あてに届く


永田鉄山総理なったは、アジア諸国の植民地化からの独立を認めるなら、各地から撤兵することを、国際連盟で演説を行った


実際、北部仏印で行っていることは、フランス軍の武装解除だけであった


これには、ヴィシー政府すら反論したが、もちろん米英はもっとも強く反応した

「まずは、無条件に日本が撤退すべきである」

「それでは、米国もハワイから撤兵し、ハワイの独立を認めよ!最低でもそれが条件である」

「ハワイは米国の領土である」

「ハワイはハワイ国民のものである、さらには米国内の黒人に自治権を認めるべきである」

「貴様ら何を言っているのだ」米国は国際連盟には参加していないが、人員は会議に出席させている

「インディアンたちにも、自治を認める必要がある」

「・・・・」

「在米日本人を抑留から解放し、資産を返して、日本に帰還させよ」

「・・・・」

「フィリピンをフィリピン人に返還せよ」

「戦争になるぞ!」すでに、赤を通り越して黒い形相となった米国外交官は激高した

「我々は、貴国が我々の意見聞けば、撤収するといっている、戦いたいわけではないし、間違ったことを言っているつもりもない」

「とにかく、先に撤兵しろ」

「石油禁輸は取りやめてくれるのか」

「それは、日本が撤兵してから考える」

「そんなものは交渉とは言わない」


こうして、外務省高官同志がやり取りしたかどうかは別にして、日米は決定的対立を深めていくのである


・・・・

統合作戦本部

「いかにしても、戦争は避けられない状況となっております」

「撤兵のみすることはできないのか」

「できるでしょう、しかし、彼らが石油禁輸を解くかどうかは不透明です」

「彼らの植民地となれば、問題は解決できます」と俺

「高野!」

「これは、そういうことです、植民地もよしということであれば、戦争は回避できるでしょう、しかし、国民がどれだけつらい思いをするかは、相手の政治次第です、南米にかつてあった文明がどうなったか、また、今の植民地政治を見れば、国が亡ぶかもしれません」

「高野よさんか!」

「言い繕っても仕方がありません、やるか、やられるかです」

「では、高野は戦って勝てるのか?」

「おそらく勝てません、今まで努力はしてきましたが、やはり国としての工業力が違いすぎます」

「では、どうするのだ」

「負けない戦いを相手が嫌になるまでするしかありません」

「どういうことだ」

「わが国は、陛下を中心とする立憲君主国家でありますが、米国は民主主義国家を標榜しております、大統領は必ず選挙でえらばれます」

「うむ」

「選挙で大統領が代われば、潮目が変わる可能性があるのです、逆に言うと、次の選挙で戦争反対の人間が勝ってくれればいいわけです」

「すると?」

「民衆にこの戦争は無意味で、被害ばかりでるからやめようという雰囲気を醸成させるのです」

「できるのか?」

「皆さんの覚悟が必要です」と俺は会議に参加する主要メンバーを見渡す


「では、皆さんに質問します、敵の艦が沈没しています、近くでは、救助の敵艦が漂流する米兵を必死で救助しています、あなたは、巡洋艦の艦長です、一斉射で敵駆逐艦を撃沈できます、どのような命令を下しますか、山本長官」


「武士の情け、見逃してやる」兄がそういった、みなもうなずいている

「さすが、武士道精神です、しかし、それがどういう結果につながるか考えておられない」

「なに!」

「彼らは、また、戦場で、味方を殺しに来るのです、救助の駆逐艦ごと、すべてを海底に沈めてしまわなければなりません、それが最善手です、情けなど無用、味方の危機を作り出してどうするつもりなのですか?」

「わが高野家は武士の家系ぞ」

「では、武士になりなさい、海軍をやめて、武士道探求の道に行かれるがよろしい、戦争とは、殺しあい、相手を殺さねば、仲間が殺される、そういう基本的なことが皆さんには欠けているのです、そのような心構えでは、とても総力戦は戦えないのです、我々は植民地になるべきです、まったく話にならない!」と俺


「高野、兄にそのようなことをいってはいけない」と静まり返った場を収めるように、陛下がいった

「失礼しました、しかし、戦場では道理などはないのです、それだけの覚悟がなければ戦い抜くことはできません、植民地化に賛成されるのであれば、私は海軍をやめ、ロシア公国に移住しましょう、そこで、生き残る方策を立てます」


「ちょっと、それはないでしょう」永田総理である


「わかった、朕が決断せねばならんのだな?」

「陛下、まことに申し訳ありません」


「では、全軍の長として命じる、わが国を植民地とすることはできん、武士道精神はこの際封印し、長期戦を覚悟のうえで、全軍奮励努力するように、これは朕の命である」


「ははあ」

全員が頭を垂れる

こうして、開戦やむなしという状況が確定した


・・・・・

それよりさかのぼること、一年、アインシュタインが米国大統領に一通の手紙を送っている、原子爆弾の可能性についてである

そのことを、ある黒い男は聞きつけたのである、あのベルギーの黒い男である

そして、ウラン鉱石(ラジウムの抽出後の鉱石)が大量に、コンゴの鉱山近辺に廃棄されていることを思い出したのである

早速、現地法人に、ラジウム鉱山周辺の、廃棄鉱石の収集を命じるのである

しかし、現地法人からの返事は耳を疑うものだった、廃鉱石は確かに大量に存在したはずだが、閉山後にやってきた、カナダ人の鉱山会社が廃鉱石もすべて処分してしまっているので、何もないとのことだった

現在もカナダの鉱山会社がとにかく掘りまくっているとのことである

もちろん、高値で売りつけたのであるから当然の権利である

しかし、廃鉱石はまったくないらしい、そもそも、ラジウムを掘っていたのではないから当然である


すでに、ベルギーの状況は危機的であったため、黒い男は、アメリカ陸軍に鉱山の話を持ち掛ける、ウラン鉱石が、コンゴでとれることを

ひそかに、アメリカ陸軍がコンゴに向けて出発していく、鉱山を占領するためである


かくして、マンハッタン計画の出鼻は初めからくじかれてしまうのである


・・・・・

鉱山周辺には人影がなかった、数日前までは、活発に活動していたらしいが、もはやは廃鉱である

アメリカ陸軍の工兵部隊大隊長クインシー・アンダーソン少佐は鉱山を見ていた

なぜ、自分がこんなアフリカくんだりまで来なければならないのか

しかし、上官からはとても重要な任務であることは伝えられている

この鉱山の鉱石は新型爆弾製造に欠かせないらしい

一応、平和的に占領したいが、相手が反抗した場合は、攻撃をしてもよいことになっている


だが、交渉する相手はいないらしい、もぬけの殻である

「これで、楽に行きそうだ」

しかも、重機などもそのままであり、中にはみたこともないものもほおってある、幸先が良い


交渉相手はあくまでも、アフリカの原住民相手程度の認識がない彼にしてみればその程度の感想しか抱かない

「よし、一応、周囲を警戒して陣地を構築しろ」

「町にもどって、鉱夫を募集しないとな」後ろを振り向いた瞬間だった

山肌の岩陰から銃身が突き出されていたのだが、もちろん知る由もなかった、距離にして800mも離れていたが、狙撃手の腕はよかった、光学スコープもついていなかったが、銃弾は、アンダーソン少佐の頭の半分をもっていった

それが、合図となったのか、一斉に銃火が起こり、陸軍大隊の将兵は、次々と打ち倒されていく、一方的な虐殺の場と化したのである


その後、この鉱山周辺には、多数のゲリラが潜伏し、激しい独立抗争の場とかすのである

武器・弾薬は各所に分散されて隠されており、数年はたたかえる分を備蓄している

もちろん、備蓄させたのは、わが高野親衛隊であり、現地住民に対しゲリラ戦の指導も徹底的に行っていた


いつも読んでくださりありがとうございます。

そして、誤字報告たくさんありがとうございます。


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