航空本部次長
1939年(昭和14年)
兄、山本五十六は連合艦隊司令長官に就任した
その間隙を縫うように、俺が航空本部次官に就任する
これで、航空機開発に口を挟めるのである
この年、日本はノモンハンでソ連との戦闘を行い大量の被害を出したはずであるが、すでに、この世界では、ノモンハン事件をおこさないための指令が行われており、また、モンゴルは日本の友好国となり、独立勢力となっている、ノモンハン事件の背景にはソビエトが赤化させたモンゴルがいたが、こちらのモンゴルは赤化しておらず、親日政権である
満蒙国境での線引きを誰も問題にしていないので当然である
ロシア公国とソ連がバイカル湖を境ににらみ合っている状況は変わらずであったが
史実の歴史では、スターリンが粛清の嵐の目をそらせるべく、大軍を導入し、なんとしても勝利を手に入れようノモンハン事件を画策していたのだが・・・・
ノモンハン事件は、発生しなかったのであるが、その影響かバイカル湖周辺でロシア対ソビエトの紛争が発生し、停戦合意が破られることになる
バイカル湖畔には、ロシア公国の縦深防御陣地が敷かれている
そこに、ソ連軍が侵攻し、革命時の内戦以来の戦闘となった
しかし、縦深防御陣地はミハイル・トハチェフスキー元帥の指令の元、完全に機能した
圧倒的防御火力が攻撃軍を粉砕し、航空機が車両を破壊、対戦車ライフルが戦車を貫通した、塹壕の中には、迫撃砲と航空爆弾と航空機銃が掃射され、ソビエト兵士たちを肉塊に変換した
投入した航空機も、ロシア公国側航空戦力に圧倒される
ロシア公国側のパイロットはリヒトホーフェン航空学校北海道本校でベルケの空戦8か条を徹底的に教え込まれ、飛行訓練を経てきたベテランであった、彼ら(義勇兵として参戦)の経験値を大きく積み上げたられたことは何よりの成果であった
いざというときには、新型戦車の投入も考えられていたが、投入する余地はなかった
陸空一体の攻撃がソビエトの大軍を完全に敗北へと追い落とした
そして、その責任を問われたジューコフ将軍が粛清されてしまうのである
シコルスキーACでは新規加入のツポレフ、コロリョフの協力もあり、川西航空機会社へ派遣されていた技師たちが、2式飛行艇(皇紀2599年なので99式?と呼ぶべき)を完成させる、エンジンは三菱ではなく、DEの星型エンジンであったが、エンジン製造技術は、各段に進歩し、その基盤となる基礎技術も格段に上昇していたため、何の問題もなく量産体制を確立していた
やはり、早い段階で工業規格を統一したのが功を奏したのである
川西では、海軍用艦上戦闘機も視野に入れ、紫電改(なぜか改)を開発中である
・・・・・
「次官、三菱の堀越技師がまいりました」
航空本部次官室である
「どうも、わざわざすいません」と俺
「恐れ入ります、で何か御用があるとか」と堀越
「ええ、私は高野九十九、山本五十六の弟です、今回航空本部次官に就任しました」
「山本長官の弟!」
「そうです、兄は、長岡の名家の跡を継ぐために山本姓になっているんですよ」
「そうなんですか」
「ところで、12試艦戦はどうですか?」
「エンジンの方がよくありません、ギリギリまで重量を削って、そちらの要求を満たすよう努力しています」と少しむっとする堀越
軍の要求が無茶すぎるので、その条件の中で必死でやりくりしつつ、研究を続けているのである
「そのことで、相談なんですが」
「これ以上はむりですよ、いまでも無理を承知でやっています」
「そうでしょう、わかりますよ」
そんなはずないだろうという表情が表に出ている
軍が無茶を言っているのである
「内の源田が無茶なことを言ったとか」
「そうです、格闘性能、航続距離、速度性能を同時に達成するなんてどうやっても無理な要求です」
「そうです、そこで私から要求を変更したいと思いましてね」
「何てことを!今更何を!」ブチギれ感満載の堀越技師だった
「まずエンジンの性能についてですが、現在予定の出力を上げましょう」
「そんなことできるわけないでしょう」三菱のエンジンはうまくいっていないのである
それゆえ、零戦は三菱の戦闘機ではあるが、エンジンは中島のエンジンを載せることになる
「ああ、高野財閥系列のDEで新型の星型エンジンを鋭意製作中ですので、問題ないでしょう」
「ばかな!」
「もちろん三菱さんも、頑張ってもらいたいのですが、時間の関係もありますからね、間に合わないでしょう?」
「防御重視に変更し、格闘戦闘の能力の低下も致し方ないという方向で」
「そんな」
「パイロット養成は大変時間と金がかかるものです、今までのように人間が紙切れ一つで徴兵すればいいのだと考えているバカ者がなんと多いことか、ですのでパイロットがいかに生き残れるかの工夫をお願いしたい、燃料タンクの防弾、消火装置、操縦席後部の防弾版の設置などですかね」
「エンジンは本当にできるのですか、それほどのものを装備、増量させると今までの計算が大きく変わってしまう」
「エンジンについては、あとでDEへの紹介状を書きますので、一度見てきてもらえばと思います、おそらくエンジンの直径を大きくすることになるでしょう、あと、大量生産に向けて、作りを簡単にしてもらいたいのです」
「数グラム稼ぐために、骨材に穴をあけている状態なのですが」
「そういうのは、エンジンの出力で何とかできるでしょうから、そこらへんは簡単さを優先してほしいところです」
「高野次官、つまり、今までやってきたことを全否定しているのでは」
「いえいえ、12試艦戦がよりよくなるようにお願いしているだけです、これからも航空機はどんどん進化していく、堀越先生の作られる12試が完全であればあるほど、改良する余地がなくなるのです、ですから敢えて完成度を低め、汎用性を持たせる工夫が必要なのです」
「もっと早くそうしていただきたかった」憮然とした堀越の表情
「残念ながら、我々も官僚です、人の範疇に口出しするのは難しいのが現状です」
「わかりました、次官の要望をできるだけ反映させましょう、エンジンができればですが」
「よろしくお願いします」
・・・・・
「もしもし、東条閣下ですか」
「私は、高野九十九です、ええ、この前はお疲れさまでした」
懐かしい黒電話の受話器を握りながら、陸軍航空本部に電話をかけている
「ところで、陸軍の戦闘機の件ですが、海軍の12試艦戦を共用しましょう、その方が、資源的にも、日本にやさしいでしょう」
「ええ、此方は全くかまいません、海上飛行の訓練ですか、ええ、此方で研修してくれたらよいと思います」
「それと、航空燃料はできるだけ、そちらも備蓄するようこころがけてください、ただし、取り合いはなしで」
「戦闘機の内容は、技術者を行かせますので、ええ、はい、そういうことでお願いします」
東条英機とは、シベリアの軍事演習以来、連絡を取り合うようになった
陸軍としても、88mm高射砲を改修した対戦車砲が欲しいらしいので、連絡を取りたいようである
もちろん、戦車もあるだろうが
実際の陸戦になれば、彼らに頑張ってもらわねばならないので、梃入れをしておく必要があるだろう
こうして、陸海軍は初期の戦闘機において共用することになる
海軍は零戦、陸軍は隼と呼ぶがほぼ同じ設計である、艦上機用の装備を外せば、隼になるということである
資源の無い日本が多品種少量生産を行っても意味がない、できるだけ共用を行い大量生産できる基盤づくりが大切であるのだ
9月、ドイツがついにポーランドへの侵攻を開始する
第二次世界大戦の勃発である
しかし、日本では、満州国の防備を徹底しているだけで、中国への侵攻は行われていない、日満露三国そこにモンゴル(蒙)を加えて4か国は防衛線の整備と軍備増強を行い、沈黙を続けているのみである
中国国内では、国民軍と共産軍が勢力争いを激化させている
朝鮮半島はロシア公国が完全に占領してしまった、事実上、国名が地図から消えることになる
ただし、日本の輸送と鉱山開発についてのみは認められている
満州国内のユダヤ人自治州では、各地から逃れてきたユダヤ人たちが住み始めている状態で、ロシア人亡命者、主に粛清を逃れてきた者たちは、ロシア公国が受け入れを行っている、ただし、スパイの可能性があるため、ある程度の期間は収容所での暮らしとなる
ロシア公国艦隊司令長官には、俺が就任する運びとなる、コルチャークが反対することはなかった、実質の艦隊司令部はほぼ日本人の艦隊になっている、ただし、練習航海などはかなりロシア人も入っている、この戦争終結後は、艦隊をロシア公国への移譲が予定されているため、今は訓練期間という扱いになっている
すでに、改大和型戦艦4隻、新型正規空母4隻、正規空母2隻、巡洋艦10隻、駆逐艦30隻、輸送船4隻の2個艦隊、潜水艦20隻、軽空母4隻などが完成し、訓練を実施している状態である、状況により、商船の改造空母計画が進行しており、これらは商船護衛の海防艦隊へと配置される予定である
ネイバルホリデーの期間中で、港湾整備を確実に実施し、艦船建造能力をしっかりと維持できていたおかげで、造船、修繕能力に余裕が生まれている
資金的にも、高野財閥、ロマノフ家の財産、また、ロシア公国の鉱山開発、さらには、アバレーエフ資金等もあり余力十分というところである
また、ロシアの科学技術と高野の技術陣、東北帝大の学者グループの融合で基本的な科学技術の向上も顕著である
例としては耐熱金属である、ニッケル系の耐熱金属の実験の成果が結実している、本多金属のおかげである、これによりターボチャージャーが搭載可能となった
もちろん、それを見越して、声をかけておいたのだが、「ニッケルがいいらしい」と・・・
例えば、八木宇田アンテナ、岡部研究所のレーダーシステムとか
例えば、ロシア人亡命者の考えたロケット砲とか
さらには、戦争予定にたいして、必要となる戦略資源の輸入も計画的に行われているほか、シベリアからも資源を得ることが可能となっている点も大きい、モンゴルの銅山、大慶の油田、ニューギニアのゴム等戦争必要物資をかなり以前から計画的に備蓄している
これに加えて、ユダヤ人科学者が協力してくれるよう要請していく必要がある
ここまでの状況では、米国が日本を挑発する理由がないように思われる
そもそも、支那事変が戦争介入の具体的理由であったはずであるが、現在それはないのである(米国が中国内で影響力を発揮するため、日本の中国侵攻に腹を立てたのが原因、満州国内は、米国企業でも経済活動を許されているので問題ないはずである)
さらには、日独伊同盟も存在しないので、大戦参入の口実にならないはず
防共協定のみ存在したが、独ソ不可侵条約の締結で、防共協定は破棄されるのである
いつも読んでくださりありがとうございます。




