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宮様

1937年(昭和12年)

盧溝橋事件は発生していない

日本軍は、万里の長城以北におり、以南にはいないからである

さらに言うと、天皇陛下から直々に関東軍に対して、厳しい命令が下っているからでもある

日本は、中国国民党と和平交渉を進めている

だが、その条件は満州国の独立承認であるため、難航しているといえるのかもしれない

とにかく、関東軍には、決して手をださせないように、何度もくぎがさされている


内地の人間が陸軍にとられる事態は避けねばならない、工業力が下がるからだ

帝国内では、徐々に女性たちにも工場で働くよう奨励(例えば真空管工場)をしてきたもののなかなかに簡単に今までの習慣が変わるわけではないのである


艦政本部では、ひと騒動が起こっていた

「なんだ、この図面は!」

軍令部総長のあのお方である、陸軍は参謀総長であるのに、海軍は軍令部長であったが、陸軍が総をつけているのだから、こちらもつけるべきだと言い張って、軍令部総長になった人である


「こんなもの、見たことないぞ」

すでに、ロシア公国の空母「玄武」はこのような形になっている、非常に現代的な形であるが、彼はもちろんそれを見たことはない

もちろんこの時代に、現代のアメリカ海軍の空母の形があるわけがないので、誰もが初めて見る形になっている、もう一つ言えば、経験上からも洗練されてきた形であるため、合理的であるといえるのかもしれない(アングルドデッキの角度9度も経験により裏打ちされたものであろう)


「新しい着想を取り入れた形ということです」

「こんなけったいな形を受け入れるわけにはいかん」

「総長、今まで我慢してきましたが、すでにデッドラインに極めて近い状況であると警告します」

「貴様、誰に向かってそのような口を利くのか!」そもそも、皇族出身であるため、あまり下々の意見を受け入れる素養はないのである


「統合作戦本部での陛下のお言葉を聞いていなかったとでもおっしゃるのか!」

「己、奸賊が!」

「お言葉が過ぎましょう!」

「ロシアのスパイが!」

「総長、お静まりください」と百武本部長

「黙れ!儂は、日露戦争の頃から戦っているのだぞ」

「そちらこそ黙れ!私も、日露戦争では、戦っていた」

「嘘をつくな!お前がまだ洟垂れのころのことだろうが」

「黙れ爺が!乃木中将に聞いてみろ、ちゃんと203高地制圧で先頭を切っていたわ!」

「高野もやめよ!不敬であるぞ」

「貴様が日露戦争で戦っていたなら、儂は総長をやめてやる、しかし、嘘だったら、腹を切れ」

「超兵部隊に送ってやる!」

俺たちは、にらみあい、激しい火花をちらせていたのである


後日、乃木中将が海軍に呼び出される

「乃木大将の息子の乃木か?」

「はい殿下、希典の息子保典であります」

「君は、日露戦争時赴任していたのだな」

「はい、かなり昔のことになりました」

「ところで、言うに事欠いて、出征していたというやつがおる」

「ああ、高野君ですね?」

「そうだ、こいつはそのころはまだ子供だったはずだ、君が証人だといいおった」

「彼は、出征とは違うとは思いますが」

「そうだろう、そうだろう高野嘘もたいがいに」

「いや総長殿、違います、彼は、新兵器の実験をしていました、まったく子供でしたが、配下に指揮をして見事に戦っていました、というよりは、彼の活躍なくして、203高地は突破できなかったかもしれません、それに、兄が重傷を負った時、奇跡をおこして助けてくれました」

「なんだと!」殿下の顔から血の気が引いていく



「殿下、では早速超兵部隊への転属命令の手配をしてきますので」

「待て、待ってくれ、わしが悪かった、もう引退するときが来たようだ」

「いささか、遅きに失した感がありますな」と俺


「どうか助けてくれ」

「では、御裁可ののちに、引退してください」

「わかった」伏見宮が屈服した瞬間だった


新軍令部総長には、山梨勝乃進が就任した


かくして、新型の空母翔鶴と瑞鶴が俺の知る歴史よりも一年も早く、建造を開始される、とにかく、新機軸アングルドデッキ等が多数入っているため工事は難航することが予想されるための措置であった


ロシア公国艦隊として別に、改大和型戦艦2隻と新型空母2隻が函館、室蘭、仙台、和歌山で起工される(高野系の造船会社で資金は高野財閥とロシア公国側からでている)


すでに、日本の大型ドックは満杯の状況になる、大和、武蔵、翔鶴、瑞鶴でいっぱいのところであったが(呉、長崎、横須賀)、先んじて港湾整備とドックの維持を行っておいた効果がここで現れた形になる、改大和型とは平賀の提案した大和型戦艦をべースに藤本のダメージコントロールの考えを取り入れ、空母への随伴と対空戦闘を優先的に考えて設計されている、そのため、史実の大和より少しスマートになっているし、舷側にあったはずの15センチ副砲ははじめからついていない


空母とは、全長330mの巨大現代型空母である、かつて日本にはなかった、油圧カタパルトが、七味油圧システムにより開発されており、搭載される予定である

油圧カタパルトをさらに磨き、護衛空母にも搭載できるよう、開発が進んでいる


これらの艦は残念ながら、ディーゼル機関は搭載されなかった、やはり高速を出すための技術がまだ足りていないようである

艦本式の蒸気タービンを改造した高圧高温のもので対応される予定である



都内某所

「高野、各地で戦艦を作っているとのことだが、お前は、戦争を行うつもりなのか」

「陛下、私の天命は知っておられると思いますが、戦争が回避できれば、それで達成可能であります、しかし、うまくいけばそうでしょうが、そううまくいくとは限りません、私が行っているのは、戦争準備であって、仕掛ける準備ではありません、万一戦争が起これば、それから準備しても遅いということであります」

「お前を見ていると、戦争を待っている風に見えるのだが」

「それは、違います、私は兵器が好きなだけで、作っているのが楽しいだけですので、勘違いなさらないでください」

「朕の勘違いなのか?」

「はい、その通りです、私はできるだけ陛下の意志を優先させるべく動いております」

「まあ、わかった、くれぐれも回避を第一の方針としてくれ」

「は」


・・・・・

「岩倉よ」

「は」

「潜水艦はどうなっているか」

「は、各地の港でブロックを製作しております、エンジンの方は、あらかた、DEで作られておりますので、問題ないかと思われます」

「では、あとは乗り手の問題だな」

「そうですね、海軍には、かなり以前から根回ししておりますので大丈夫かと」

「航空隊はどうか」

「はい、すでに、相当の卒業生が出ており、最初期の卒業生は年齢的にも引退するものも出ていますが、5000名は確保しております、現在は、陸海軍に特務兵として勤務しているものがほとんどであります、彼らが、さらに航空兵を育てております

北海道でも促成の航空兵(少年兵)の錬成は進めております、此方は、機械工学、教養、語学などの教育を省いた過程でありますので、士官には向きませんが、空戦技術だけ見れば、問題のない者、数百はすぐに集めることが可能です」

「できるだけ、教養も詰め込ませるようにな、本人のためにいずれなるだろう」

「総長」

「彼らまで戦場に送り出すのは不憫ではあるがな」

「国家が負ければもっと悲惨な状態になります」

「陛下の意見が一番正しいのかもしれんな」

「できることをやるだけですよ、総長」

「そうだな、悪かった岩倉」

「は、総長」


・・・・・

「軍務局長殿、今日はお願いがあってまいりました」

「これは、高野少将、先日は満足にお礼も言えず失礼しました、やはり、人間は生きてこそでありますな」と永田

「そうですね」

「まあ、どうぞ」永田軍務局長がソファを勧める

「敢えて言いますが、私が押しすすめている計画ですが」

「神道派のプランですか?」

「永田さん、神道派というのは、私が言っていることではありませんので」

「知っております、しかし、何やら、大変な女神の加護を受けられているとのもっぱらの噂です」なんとも言えない表情の永田である


「ああ、そうですね、オカルト関係の話はここでは、やめておきます、私が推し進めているプランとは、長期不敗体制の構築であります」

「そうですか、わが陸軍もその考え方には賛成であろうと思いますが、南進か北進か分裂していると思われます」

「私の場合は海軍ですので、海洋、諸島の防衛が喫緊の課題ということであります」

「では、南進ですかな」

「北の防備ももちろん重要でありましょう、しかし、北には、ロシア公国がありますので、そう簡単には、攻めてこないのではと考えております」


「しかし、世間の中には、閣下をロシア公国のスパイとみなす風潮がありますが」

「そうですね、私の嫁がロシア王女ですからね」

「私は、閣下を信用しておりますぞ」

「ありがとうございます、その閣下というのはおやめください、同じ少将でしょう」

「いえ、私は閣下に心服しました、閣下こそ日本を救うお人と見ました」

「買いかぶりですよ、私はそんな大層な人間ではありません」

「いえ、閣下です」

「そんなことを言うあなたこそ、永田の前に永田なし、永田の後に永田なしといわれる傑物だ、いずれ、総理大臣となってこの国を導いてくださらねば」

「では、その時は、閣下が海軍大臣をお願いします」


永田の瞳には、強い光があった


「まあ、未来の話はさておいて」

「そうでした、なんでも言いつけてください、できることは何でも実現させて見せます」

「それで、お願いしたいのは、各基地の要塞化と派兵のことです、現在、日本は島嶼に基地をいくつか持っていますが、長期不敗体制には、この基地の要塞化と維持が絶対に必要です」

「なるほど、それで陸軍が、島嶼を要塞化し、防衛せよということですね」

「そうです」

「沖縄の要塞化はすでに済んでいるのでは」

「沖縄は、まだまだ要塞化します、陸軍には申し訳ないが、島内にこもってゲリラ戦を長期にわたって繰り広げるだけの基地の建設をお願いしたいのです」

「ゲリラ戦!」

「そうです、敵が攻撃してくるときは、隠れて、上陸後から敵を正面からでなく、隙をついて攻撃し、弱体化、長期的に出血させ疲弊させる」

「陸軍将官の中には、そういう戦術を嫌うものが多いと思われます」

「では、そういう輩は、予備役に回すというのは」

「閣下がそうおっしゃるなら、私が説得して回ります」

「そうですか、大変な仕事かと思いますが、今後必ず必要になりますので、ぜひともお願いします」

「わかりました」


「それで、沖縄のほかに、台湾、サイパン、ニューギニア島、小笠原諸島にも同様の要塞、ゲリラ基地を作ります、特に、ニューギニアはオーストラリア攻略の上で、重要な土地です、何か所でも基地が必要です」

「わかりました、しかし、わが陸軍でもそのような大工事をいくつも同時にはできません、お時間をいただかないと」


「そこで、建設機械は私の会社から出します、費用は陸軍と海軍で出し合い、常駐兵力は、陸軍からという形でお願いしたい、できるだけ急いでかからねばなりません」

「わかりました、全力で内部の説得を行います」

「その代わりとって言ってはなんですが・・・」


それから、二人は、自動車に送られて、岩倉倉庫のとある倉庫にやってきていた

「これから見せるものは、秘匿兵器ですので、時が来るまでは、決して外には言わないで下さい」

「ずいぶんと大きな倉庫群ですね」

あたりには、同じような倉庫が多数並んでいる

「まあ、とにかく、日本はなんでも輸入頼みなので、とにかく備蓄ですよ、これにはさすがに、我が社も苦しんでいます、負債の塊みたいなものですので」

「我が国に資源に乏しいですからな、でもこれは岩倉倉庫㈱とかかれていましたが?」

「これは、高野グループの企業です」

「まさか、これらは、すべて戦略物資なのですか?」

「ここにあるのは、武器ですね、秘匿兵器です、物資ももちろん各所に備蓄してあります」

「まさか、私財で」

「ええ、私財といっていいのかわかりませんが、わがグループ総力を挙げて、準備はしていますよ」

「そんなことが!」

「まあ、その話は置いておいて、せっかく来たのですから、これを見てください」

倉庫の見張り役(部隊の隊員)が鉄の扉を引いていく

「中にどうぞ」

扉が閉められると、明かりが倉庫全体につく


「これは、戦車?」

日本軍が開発している戦車とはあまりにも違いすぎて、いや、現在確認されている各国の戦車とも根本的に違っている

これも、現代の10式戦車を手本の形としているため、この時代では異形と呼んでよい形となっている

しかも、それが倉庫全体に整然と並んでいる

百両はありそうである

「手土産です」

「これは相当な性能なのでしょうか」

「シベリアで十分性能試験を行っておりますので、十分使えると考えています」

人のいないシベリアは恰好の試験場である

そこで、走行、射撃等の試験を十二分に行い、修正し量産を行っている

日本陸軍の戦車では、簡単に踏みつぶされて終わらせる性能である

「ロシアにもかなり持っていかれるので、始めは500両程度お渡しできると思います、申し訳ないですが、ただでは差し上げられませんが、利益がほとんど出ない程度の値引きはさせていただきますので、予算と人員の準備をお願いします」

「500両!」

「1両6万円程度でお願いします」

「3000万円ですね、しかし、」

「ああ、一応88mmライフル砲、12.7mm重機関銃装備、V12気筒600馬力のディーゼルです、燃料は軽油が最適かと思いますが、重油でも動くとは思います」

「88mm砲!それが6万円?」

「鼻血も出ないほど原価に近い価格ですよ、まあ、こちらもお願いしているのですから、努力させていただいています」

「わが軍の戦車がおもちゃのような感じを受けてしまいますね」

「能力差はそんなものだと思いますよ」

「優先的に購入させていただけませんか?」

「陸軍関連の技術者をよこしてくれたら、工場を増設しましょう、そうすれば増産できる」

「すぐに手配させていただきます」


「喜んでいただけたようで良かった、今日は、みなを呼んで酒を飲みましょう、我が家に来てください」

「いいのですか」


我が家はすでに、かの事件の時よりも、外壁が外側に追加され、各所に監視塔もたっており、高野要塞とかロシア要塞とか呼ばれるようになっていた


いつも読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伏見宮さまの超兵部隊長就任ならずか、非常に残念です。 竹槍での超人的活躍を期待していたのだがw
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