荒波
1928年(昭和3年)
ついに、伊藤公が亡くなられる
すでに、鬼籍にはいってもよさそうな温泉老人ブラウニングさんはついに、20mm機関砲を完成させる
さすがである
これをM3 20mm機関砲と名付ける
新潟市一体に、ブラウニング一族が住んでいる、そして、増えているらしい
彼は、3人目の日本人妻をもらい、さらに子供まで作っている
さすがである
一方のディーゼル博士も日本人嫁を貰いなおし、子をなしている、いずれ、仙台にディーゼル一族が繁栄するのだろうか?
これで、航空機の機関砲は完成した、あとは機体の完成が待たれるところであるが、まだできていない、やはりこのままでは、ゼロ戦なのか、シコルスキー・川西連合がんばれ!
アバレーエフから、銅のプレゼント(インゴット)が届く、近ごろぼろもうけしているとのことで、どんどん、金属が届く、できれば、米軍が使う予定のライトサイクロンエンジンを密輸してくれるようにお願いしてみる
船ごと送ってくれるので、船も増えていく
・・・・・
「貴様が高野か!」
「はい、造船中将殿」
「お前、藤本と仲が良いと聞いているぞ」
「私は基本的に、誰とでも仲良くしようと努力しています」
「儂とも、仲良くできるつもりか」
「もちろんであります」
「そうか、では何をもらえるのか」
「そう来ますか、では、防空駆逐艦の設計なんか、個人的にお願いできますか」
「なんだ、その防空駆逐艦というのは?」
「これからの時代は航空機ですが、それを迎え撃つために特化した、駆逐艦です」
「戦艦ではないのか」
「中将殿、わが社はまだ、軍艦建造の技術が未発達なのです、まずは駆逐艦で技術を熟練させたいのです」
「ロシアの艦隊にするとかきいたぞ」
「その通りです軍縮条約中でもありますし、ロシア公国は金を持っていますので好都合なのです、それと、製造には、溶接とブロック工法を使います」
「なんだと、リベット工法ではないのか」
「溶接はこれから重要になりますよ、中将殿」
「まだまだだがな」
「そこですよ、溶接技術自体を発展させる必要があるのです」
「描いたら何をくれる」この中将の場合、ものが欲しいのではなく、俺を困らせてやろうという発想であろう
「何がお望みですか」
「戦艦を作らせろ」
「わかりました、わが部隊でも、戦艦が必要だと考えていましたので、結構ですよ」
「馬鹿な、お前子供の小遣いで作れるものではないぞ」あきれたといわんばかりの顔である
「昔から、小遣いをためているので大丈夫ですよ」
「貴様馬鹿か!」
「一隻、一億円くらいでお願いしますよ、もちろん先ほどの工法で作りますが」
「一億円!本当なのか!」
「私は冗談で軍人をやっているわけではありません、本気ですよ」
「冗談にしか聞こえんわ!」
「中将殿」
「ええい、平賀でよいわ」
「平賀中将、空母もお願いしたいのですが」
「儂は、そちらは、得意ではないが」
「では、得意な方に書かせればよいのでは」
「本気なのか?」
「内には資金もあります、それに足らなければ、ロシア大公がいます、世界一の資産家ですよ」
「それでは、日本海軍ではないではないか」
「今日本では、艦艇を増やせません、条約中なのです」
「貴様、条約中といったな」
「平賀中将、この条約はいつまで続くとお考えで?そんなものを気にするのは、海軍上層部に任せておくのです、我々は自分の世界で生きるのです」
「我々ではないぞ」
「趣味が似通っているという意味です」
「お前の趣味?」
「個人的艦隊を作るんですよ」
「馬鹿野郎!だが面白いな」平賀中将はニヤリとする
「では契約成立ということで、ところで、平賀中将はザニンジャ見たことはありますか」
「なんじゃ、藪から棒に、もちろんだろう、わしはこう見えても、映画好きなのだ、あの侍大将、名前が出ていないが儂は、侍大将の大ファンなんじゃ」
「そうですか、あの映画、内の子会社が作ってるんですよ」
「何!」
「侍大将のサインが欲しいぞ」
「わかりました、何に書きます」
「おお、そうじゃな、色紙を買っておく」
「じゃあ、色紙なら持っていますので」
そういって、机の引き出しから色紙を引っ張り出し、高野九十九とサインする
「なんの真似だ」
「え?サインが欲しいって言いましたよね」
「馬鹿野郎、侍大将のだ」
「だから、あれは私ですよ」
「なんだと!」
「だから、誰とでも仲良くなるといったでしょう」
・・・・
そうして、平賀造船中将とは、なぜか仲良くなれた?
あと、設計書がいるのは、巡洋艦だから、藤本大佐にお願いしよう
人員は海軍に要請しておこう
「高野!」
艦政本部長室で俺は怒鳴られている
「は、部長」
「貴様、藤本と、中将に何をさせている」
「いえ、何もさせておりません」
「嘘をつけ、証拠は挙がっている」
「いえ、個人的なお願いをしただけで、仕事を頼んだわけではありません」
「馬鹿野郎、条約中は、艦船の建造はできんことは知っているだろう」
「もちろんです、私もいっておりました」
「で」
「ロシアの艦船を作るために、ちょっとお願いしただけなのです、個人的なお願いをしただけなのです」
「艦船の設計を個人的な仕事で頼むやつがおるか」
「まあ、みんな、暇なわけですし」
「暇なのは、中将だけだ」
「藤本主任は」
「条約批准の艦船の設計で忙しいわ」
「そうなのですか」
「そうだ」
「でも、無理やり武装を詰め込むのは、よくありません、私の考えでは、まずは造船の基本技術の向上こそ、目指すべきところであると考えています」
「貴様が言うな」
日頃、穏やかな山梨本部長が珍しく激高状態である
個人的なお願いに憤慨したのだろうか、それとも、藤本君が愚痴をいったのだろうか
「本部長!」
「なんだ」
「あんまり、言いたくはないのですが、よろしいですか」
「なんだ、まだ言い訳するつもりか!」
「はい」
「貴様、艦隊勤務に飛ばしてやるぞ」
「いや、それはちょっと」
「島村さんが言っていたが、本当にお前というやつは」
「ああ、校長ですね、じゃあ、ちょっと、あれを見てみますか」
「あれとはなんだ、”映像”というやつか」
「そうです、でも今回は、校長にみせたものとは少し違いますよ」
基本的に映像は俺が、目隠し女神にお願いして、アカシックレコード内の必要部分を切り取り編集してもらっているので、ある意味で真実しか映っていない、しかし、この世界はもうすでにかなり変化させてきたので、そのレコードがこの世界のレコードというわけではなくなっている・・・はずである
太平洋戦争編を見た山梨本部長は号泣している
しかし、問題はこれからである
夜間、練習中の水雷艇が高波を食らって、転覆してしまう
大惨事である
原因は、トップヘビーによるものとされ、設計に問題があるのではと問題になる
次のシーンでは、台風の大しけの中を進む艦隊、その時大波が、駆逐艦の前部艦首を食いちぎる
多数の死者が出る大惨事となる
いわゆる、友鶴事件、第4艦隊事件の映像であった
そのことで、艦の設計者の藤本主任は謹慎処分となり、その心労からか心筋梗塞で死亡してしまう、そのおかげで平賀中将が復権するのである
「これは!」
「本部長、以上が私が得た神託とでもいいましょうか、なんと申し上げましょうか」
「こんなことがあっていいのか」
「個人的にも、藤本さんには頑張っていただきたいのです、しかも、平賀中将とも仲良くなってもらいたい、日本には、二人とも必要なのです、保守と革新の融合で、新機軸をうちだしていただきたい、ちなみに、第4艦隊事件といいますが、破断した駆逐艦を製造したのは、舞鶴です、舞鶴の溶接技術に問題があったとのことで、我々は、技術の成熟を最優先にしなければなりません」
「なんだか、お前にうまく騙されているように感じるのは私だけなのか?」
「本部長は騙されてなどおりません、正しいことを行っているです」
「そうか、では、舞鶴に監査に行くことにするか、今日はかえってよい」
「は、失礼します」
俺は無事にその場を切り抜けたのであった
・・・・
ウーデッド氏が帰ってきた、何とか、88mm高射砲の設計図を持ってきたようだ
「今回は、88mm砲が完成したので持ってきました、40mmも完成次第、私がとりにいってきますので、その時はよろしくお願いします」
「ええ、もちろん、お礼は別に差し上げましょう」
「ありがとうございます」ウーデッドは相好を崩す
「ボ社側は、製造にかかる指導も受けるとのことでした、もちろんそれなりの指導料も必要とのことですしたが」
「わかりました、お願いします、わが社はまだ技術が不足しています、ウラジオストクで会社を立ち上げますので、40mmも一緒に製造しますので、技術支援もお願いします」
「ところで、向こう側から、空母の設計図をぜひお願いしたいとのことでした、レーダー海軍長官が出てきてびっくりです」
「なるほど、では、こちらもできるだけ期待に応えるべく対応しましょう」
「ありがとうございます」余程いい成功報酬を約束されているのか、ウーデッドの顔が輝く
「岩倉よ」
「は、総長」
「ウラジオストクで88mm高射砲と40mm機関砲を製造する、工場の建設を、あと、早速、重工の工場で、88mmを製造させよ」
「わかりました」
「砲の完成に合わせて、自動車と建機両方で戦車の試作を開始せよ」
「御意」
1929年(昭和4年)
最後の儲け時がやってきた、世界恐慌の発端となる、ニューヨーク株式の暴落である
すでに、この日のために、関連各部門で株を買わせている、最高値で売り抜けて、今度はその資金で売り建てる、しかも、できるだけ名義を分散して、詳細をわからなくさせるように指示を出している、アバレーエフにも全財産で攻撃するよう指示を出している
今現在もっとも、資産家はアバレーエフであろうか、すでに、禁酒法は終わりを迎えている、これを最後に、違う商売というか、自分の好きなことをするように言っている
徳川公爵の銀行系グループ、岩倉商事系、安田財閥系、DE、BFA、ロマノフ家など金のある関係機関がありったけで、株を買って仕込んでいる状態であった
だが、この恐慌が第2次世界大戦の引き金を引くことになるのは、皮肉なのかもしれない
10月24日木曜日、売りが始まる
この時代、売りを浴びると、安全装置がないためいくらでも下がる
この教訓を生かして、ストップ安など制度ができるのだが今はまだない
現物の投資は5年前以上から買って持っている部隊が、現物を売り始める
現物のすべて売却が完了すると、今度は信用売りを始める
アメリカ勢が何とか守ろうと踏ん張ったが、各方面から売りの大攻勢であえなくたたきつぶされた、そもそも、バブル景気の一面があったのが原因であろう
そして、そのトリガーになったのは、俺?だったのかもしれない・・・・
数日で暴落の中、多くの投資家がビルから身を投じる事態に陥り、ウォール街は大混乱に陥っていた
その後株価の低下は一か月にわたり続くことになる
こちら側は、20日間で手じまいするよう指示していたので、売りが終わったのだろうか?
かくして、今世における儲け話は終息したのであった
これから、その資金で、資源と武器を買うだけかって、戦争準備をするのである
出資者には、お礼を言って、出資金を全て返還する、陛下だけは、返金はいらないとのことで、準備資金として拝領する
全ての関連会社にも、今後はできるだけ、表に出ていない会社は、国籍を隠し世界へと消えていくように指示を出す
激動の世界大戦がついにまじかに迫っているのだった
しかし、この恐慌を作ったのって、もしかして俺?
疑問はリフレインしながらいつまでも、頭の中にこだましていた
いつも読んでくださりありがとうございます。




