猟師
「よし、まあ、今までは、普通の猟師がどのように、獲物をとるのか?ということは肝に銘じておけよ」
「はい、先生」
「今度は猟銃の撃ち方だ」
九十九の目がきらりと光る、子供が銃を使いたがるのは、好奇心からだろうが、こいつの場合は、何か違う気がしてならない
発射までの手筋を説明し終わると、さも当然のように銃を渡してくれと手が出てくる
この子供が銃を撃って大丈夫なのか?いやだめだろう!
「先生」手が要求してくる
「持つだけだぞ」
「はい」
「こんな感じかな」膝を落として、構えるそして撃つ
ズバーン!幹に弾が食い込む
「おい!」
いつの間にか、九十九は次弾を装填し始めている、弾を渡してはいなかったはず!
その時、兎が茂みから飛び出してくる、そんな馬鹿なことがあってたまるか!
一瞬で銃口が兎の進路に向けられる、ズバーン!
兎が持ち上げれれるように浮き上がり、地面にたたきつけられた
「やりました、先生」
いや、そうじゃないだろう
「やっぱり、弾が食い込む感覚ってわかりますね」
子供が言う言葉ではないと思いながら
「誰が、撃っていいといった」
「先生、俺も銃が欲しいです」
「小学校前の子供が、猟銃もってどうすんだよ」
「先生、俺毎日、狩りしてますよ、猟師なんですよ」
「お前、槍で刺すんだろ」
「まあ、でも銃のほうがかっこいいじゃないですか」
「やれやれだぜ」俺はまた、頭が痛くなってきた
・・・・・・
九十九の視点
その後数発、ウサギやトリを撃たしてもらった、やはりトリは、銃のほうが打ちやすい、初めのほうは弓矢だったからな!しかし、銃の反動はやはりこの体では、きついかもしれない、鎖骨が痛い、弱いながらも治癒魔法を発動する
治癒魔法自体は難しくないのだが、魔力が極端に少ない世界であるようで、効きが悪い
ちなみに、なぜかそのようなことがわかる
「じゃあ、明日も、猟するのか」と山口
「先生、明日もよろしくお願いします」
「そうか、じゃあ明日は、罠猟をやろう、槍もってこいよ」
と山口が俺にいう
「うん?お前あの槍は?」
「え!」しまった、邪魔なので、収納に入れてしまっていた
「あ、先生、おいてきてしまった様です」
「なんだと、じゃあ、今から探しに行こう、あの槍は相当なもんだろ」
朱塗りの槍がどの程度ものかは、知らないがいいものなのは間違いないだろう
「ええ、」
「僕が探してきますので、先生は先に帰ってください」
「馬鹿野郎、子供一人おいて帰れるわけないだろ」
「先生、すぐに探してきますので少しお待ちください」
俺は焦って走り始める、適当な藪に入って、槍を取り出す
「ありました先生」俺は槍を突き上げながら走る
「おい」
山口の近くまで、走ってきた俺に
「まあ、何かお前には秘密があるのはわかるが、嘘はいかん、あの藪は一切入っていない」
山口の顔は真剣だった
「言えないこともあるだろう、しかし、そんな見え透いていては、足元をすくわれるぞ」
「先生」
「まあ、明日は、罠猟だ、またここでな」
「はい先生、よろしくお願いします」
・・・・・
山口の視点
にしても、どれだけすごいのか?ひどい!という言葉がぴったりだ
藪に入るときの速度が尋常でなかった、まさしく、槍で獲物を突き刺すのだろう、それに、銃の狙い、予測位置を射撃している、動くものを撃つなど相当な腕前でも難しい、鹿のような大物ならば当てることができるが、兎は狙ってもなかなか当たるまい、鳥も同じだ、今日は散弾を使っていない、一発弾を鳥に打ちかけているのだ
まあ、しかし、子供は子供か、どうしてもしっぽが見えてしまう
しかも、かなり大きなしっぽである
今日も、岩魚、兎、山鳩と取った分だけ持たされた、自分ちにはまだあるとのことだ
正直、食料はいくらあってもうれしいものだ、特にうちのような兄弟が多い家では
明日も、常識をあの大きなしっぽをもつ少年?に教えてやらなければならない
山口は一人ごちた
・・・・・
今日は、やばかった、ついに秘密について感づかれた?
まあ、ばれても問題ないとは思うし、山口は基本的にやさしい人間ポイからな
それに、女神も人間は現地調達と言っていた、何とかして、協力者になってもらえるように誠意をもってあたるしかない
それにしても、今日の銃猟はすごかった
明らかに、スキルが発動していたのではなかろうか
ステータスオープン
頭の中でつぶやくと、視界に小さな窓が開く、スキルを確認
〈NEW!偏差射撃〉
〈NEW!進路予測〉
がアクティブになって表示されている
「よし、新スキルゲット」
だが、相変わらずレベルや基本数値などの欄は潰れたままである
まあ、レベルの概念がないのかもしれない
日常生活で、レベルアップしたことなんかないからな
当然といえば当然である
よし、明日も頑張ろう、今日は不漁で何もなかったことにしようかと考えたが、家族ががっかりすると悪いから、シカを収納から取り出し、背負って帰ることにした
「かあちゃん、シカとってきたよ」と俺
兄の五十六が出てきた
近ごろは、肉をたらふく食えるせいか、どんどん背が伸びているらしい
「九十九、今日もとれたのか?」
「うん、兄ちゃん、とれたよ」
「そうか、持ってやるよ」
五十六が背負子を背負おうとしたがズシリと重かった
「こんなもん、お前どうやって」
五十六はぐらぐらと家の奥に入っていった
やばいな!
力が9歳上の兄よりあるのがばれてしまった
あと、長身の山本五十六になったらどうしよう?
しかしである、気にしても仕方ないので、とにかく肉食を続けよう
近頃は、腹いっぱい食えるようになって有難いことこの上ない
家族内では、この弟の尋常でないところは、一切無視するように暗黙の了解がなされていることに、俺だけが、気づいていないのであった
見直しを行っています。