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軍縮会議

巷の話では、原敬の暗殺事件は、安田善次郎の暗殺に触発された右翼の犯行ということになっている、すなわち、今回は、安田暗殺が失敗しているので、何も起こらないと思われるのだが、一応、警戒は行っている

憲兵(第3部隊)の八尋が中心になって、現場を見張っている


東京駅改札口付近

1921年11月4日午後7時25分

「うおーっつ!」一人の男がドスを構えて突進してくる

八尋はすぐに、原の前に躍り出る、手を少し触っただけであったが、男はクルリと回転して、ホームにたたきつけられる、その瞬間には、手首を極められて折られていた

グキリといういやな音がした


しかし、事件は止まらなかった「おい、そこだ」八尋が、反対側向かってに吠える

反対側では、もう一人、原に向かって、男が突進していく

「りゃー」隊員の一人が見事な極め投げを放つ

第3部隊の武道教官は、合気道の創始者である、植芝盛平であり、長岡、新潟部隊では、受けられなかった指導をえて、体術はかなりの腕前のものが多いのである


残りの隊員が原敬をとり囲み防御陣形を作る

全員が、周囲に殺気を放ち、インペリアル.38構えている


「君らは?」

「はい、私は憲兵大尉の八尋と申します、首相暗殺の情報を得ましたので、首相を陰ながら、見守っていました」

駅長室である

「いてくれて助かったよ」

「よかったです」

「はい、高野ロシア伯爵からの情報であります」

「あの、海軍の神道派の高野中佐か」

「は、神道派と呼ばれているのかわかりませんが、高野中佐であります」

「なぜそのような情報を?」

「高野閣下は神から予言を得られる方でありますので」

「そうか、何はともあれ、助かったよ、恩に着るよ」

「お役に立てて光栄です、わたくしどもも、任務を達成できて何よりでした」


そのころ俺は、ワシントンにいた、ワシントン軍縮会議である

英:米:日で5:5:3の比率で艦船を保有するというものであったが、日本は対英米7割を要求するが、峻拒される

「閣下、日本には、艦船のドックが足りないのです、比率などはこの際どうでもいいですから、港湾整備に力をいれ、貯油施設を各地に作りましょう、あと、廃棄に回す艦はロシアに売り払いましょう、コルチャークが欲しがっていますから」

「君は、ロシアの娘を嫁に貰っているからそんなことをいうのではないのか」

「まあ、そこはそれ、何とかがあれば何とか心というじゃないですか」

「少し違うと思うが」

「しかし、要塞化禁止の除外部分として、小笠原諸島と沖縄は外せません、できれば台湾もねじ込みたい」

「できるのか」

「英国に話を利かすように、説得に行きますよ」

「そんなことが可能なのか」

「さあどうでしょうか」

会議の途中で、いろいろと蠢いている俺


・・・・

「ところで、私は大日本帝国海軍中佐高野です、初めまして」

「なんの用かね」

イギリスの代表はそっけなく言った

「これでも、私は、ユトランド海戦にて、貴国の女王から勲章をもらっているのですが」

「なんですと、これは失礼した」

「閣下、今回の会議は、日本の封じ込めを狙われているのでしょうが、少し考えなおしていただきたいのです」

「なんのことかね、君らの働きは、ニューギニアで返したはずだが」ニューギニアの委任統治は日本が行っているのである(史実ではオーストラリアになった)

「まあ、そうですね、ありがとうございます」


「閣下から見れば、我々は黄色のサルということでしょうが、だからと言って、米国をのみ信じるというのもどうでしょうか」

「日英同盟のことか、我々には、もうあまり必要ないと思うが」

「そうですか、しかし、逆に日本が太平洋で暴れ始めれば、英国領はすべてなくなるのではありませんか」

「インド艦隊がいるので心配ない」相手は強気だ

「そうですか、そのあとに、アメリカがすべて持っていくのではないですか、今現在のように」第一次大戦でアメリカは全く無傷で巨大な債権国になり、世界への発言力を大きく向上させている、因みに日本も債務国から債権国に変わった、第一次世界大戦の利益である

「・・・」

「それに、ロシア大公国は、英国女王とは親戚関係、私は、そこの娘と結婚しているので、縁はあると思いたいのです」と俺

ニコライ2世の嫁はイギリスのヴィクトリア女王の次女の娘である

ニコライ2世自身は、ジョージ5世の従弟である

「残念ながら、今回のことは、国内で決定済みであるので、同盟延期はできない」

「そうですか、残念です、できれば貴国との同盟は続けたかったのですが」


・・・・・

「加藤全権、英国はやはり同盟破棄の考えをかえませんでした」

「そうだろうな」

「申し訳ありません」

「いや、仕方ないことだ、ご苦労」


日本は艦艇比率よりも、要塞化対象区域を執拗に粘り、沖縄、小笠原諸島の対象外化に成功して会議は終わった

いよいよ、孤立を深める日本、やはり大戦は避けられないのかも知れない

焦りにもにた、いやな感じがが口の中に広がっていく


1922年(大正5年*)

会議を終え、日本、次にウラジオストクにたどり着くと、第2子の誕生を知らされる

ソフィアと名付けられた、とてもきれいな女の子だった

「おお、わが天使よ」俺は嫁と娘に抱き着くのだった


束の間の休息ののち、俺は帝都に向かう、ロシアの冬は長い、バイカル方面では、まだ戦いは再開されていない


首相官邸にて

「君の予言?に助けられたよ、ありがとう」原敬首相である

お礼をと首相官邸に呼ばれたので参上したのであるが、関東大震災前の被害抑止の諫言を行うことにした


「私自身が警備を行いたかったのですが、軍縮会議があったため、部下に任せました」

「なぜ、というかどのようにして」

「閣下は私のことを神道派とおっしゃったと聞きましたが、まさにそこに関係することでして」

「そうなのか」

「はい、夢枕にお告げが来るのです、非常にオカルトで申し訳ありません」

嘘である


「いや、そのおかげで助かったのだから、文句はないよ」

「そのことで、少し気になることがあるのですが、よろしいですか」

「なんだね」

「はい、災害が近づいているようで」

「なんだと!それも、夢枕に?」

「はい」

「どのようなことが、起こるのか、いつなのか?」

「どうやら、今回は地震がおきそうです、しかも、この帝都でです」

「一大事ではないか!」

「はい、しかし、神様のお告げといっても、人は信じてはくれないでしょうから」

「儂は信じるよ」

「ありがとうございます」

「時期は、?」

「そこは、やはり、はっきりとはわかりませんが、あと1年程度かと」

「どうすれば」


「以前から、田中元老が時時の首相に町の再開発を勧奨してこられました」

「ああ、あの謎の元老殿か」

「はい、今一度、地震、火災対策を推し進めるために、再開発を行い、弱い建物も取り除きましょう、道路幅を大きく取り、緑化すれば、ある程度、火災を防ぐことができます、密集地帯を解消する必要があります」

「そうか、わかった、できる限りのことを行う、時期について、わかったら、また教えてくれると助かる」

「お告げ次第なので」

嘘である


・・・・・

統合作戦本部

東郷、乃木は事実上の本部長と副本部長扱いとなっている

摂政宮(後の昭和天皇)、陸海軍大臣、陸軍参謀総長、海軍軍令部長、その他(総理、外務大臣、その他の軍人)によって構成されている


「ところで、軍縮会議はやはり、予想通りの結果となった」

「我が国は、国際的に孤立の方向だ」

「満州国、ロシアの勢力の確立が重要ということだ、ロシアを通じて、英国への働きかけを強く求める」

「軍事的には、沖縄、小笠原を完全な要塞とするよう、予算をお願いしたい」

「軍は積極的に、倒産船舶会社のドックを買い取るようお願いする」


「前回の方針通り、ドックの確保、造船体制の確立、貯油施設の全国展開を決定する」

「要塞化工事は、高野のところに回す」

「あんまり仕事をもらうと政商とか言われて、狙われれるんですが」

「お前なら、大丈夫だ」

「俺を狙わせる方向でしょう」

「右翼も左翼も一掃したいところだな」


「しかし、台湾も要塞化が必要ではないのか」

「台湾の要塞化は認められていませんし、高野建設も手一杯です」

「港湾整備だけを財閥にやらせよ」


以前よりもかなりまとまりが出てきて、方向性がまとまってきた

良い方向である、この会議では、第二次世界大戦は織り込み済みであり、太平洋戦争も避けがたいとの方針で、準備を進めている

支那事変のみ絶対的に起こさせない方針である

支那事変、朝鮮併合にかかる費用を節減し、国内インフラの整備に充てるという方針が了解されている


「ところで、今回軍縮で、工廠の方で人員削減等を行いますが、すべて、内の方で、引き取りたいのですが、よろしいですか」

「まさに、政商じゃないか」

「これから、不景気ですからね、内でないと持たないですよ」


ここでは、大戦景気後の不景気を公共事業(港湾整備、道路整備、防災整備等)によって、景気の下支えを行う方針である

俺は、個人的に、ロシアでの軍艦、戦車、航空機、国内で軍用車両の製造、備蓄を計画している


ロシアが軍艦を持つことは、軍縮会議では、決まっていないのである

しかも、ロシア王家は、かつて世界の富の10分の一を所有したほどの金持ちである、自前の財布で建造してくれるので、景気対策にもうってつけである


・・・・・

そんな折、ウラジオストクで政庁に呼ばれる

「すまない、義兄さん、実はちょっと相談したいのだが」アレクセイ大公である、近ごろは俺のオカルト治療が効いて、体調が良いと聞いている、そのせいで、母親は俺をものすごく信用するようになった


「どういたしました、陛下」

「ああ、普通にしてくれていいよ」

「はい、じゃあどうしたの」

「うん、義兄さんの方針どおり、国民から必要以上に搾取しないという政策のおかげで、治安はよくなっているんだけど、何かと費用がかかるから、鉱山の開発を行いたいと思っているんだ」

「すれば、いいんじゃないか?」

「ああ、そうなんだけど、鉱山はコルイマ河の流域地方で、非常に環境的に厳しいところなんだ」

「重機なら任せろ」

「もちろん、お願いしたいんだけど、人も必要だろう」

「赤軍の捕虜がいいんじゃないか」

「足りないと思う」

「そうか、でも国民はやめておけよ」

「そこなんだよ」

「ああ、そこね」


人が必要だが、国民を使いにくい場所なのである

コルイマは環境的に人間では耐えがたいくらいの極寒である、スターリンに粛清されかけた人々の多くがそこで死んでいるような土地である、流刑地なのである

この歴史では、この地方は、ロシア公国の勢力圏となっているのである

ちなみに、非常に優良な金山である


「俺は、何も言わんが、働きたいという民族がいるかもしれんぞ」

「ああ、そうか、自国民でなければいいのか」

「満州国民はだめだぞ、これからは日満露の友好、結束が何よりも重要だからな」

「わかったよ、満州人でなければいいんだね」

「俺は、何も知らない」

「ありがとう、義兄さん」アレクセイはにっこりと笑った


建国された満州では、希望すれば満州国国民になることができるが、自分の意志で国民にならねばならない、他国籍の場合は、満州で仕事を得るのに難しい面がある

他国民排除規定である

政府、日本系企業では、朝鮮、中国人は仕事を得られない

戦後賠償など起こった場合、万一を考えて排除方針を満州国政府に決定させ、国内企業に通知しているのである

なお、朝鮮籍の人間は、満州国籍をとることはできない

中国籍について、満州族であることが認められれば、国籍をとることができる仕組みとなっている、あくまでも、満州族の国ということである、国防を脆弱な政府に代わり関東軍が行っている状況にある


ロシア大公国が半島で徴用しようが、募集しようが、帝国には何ら関係がないのである


しかし、金が少ないのか?その方が問題だ、妻に聞いてみよう

我々は、大戦景気で大儲けしたが、ロシア王家は逮捕、脱出、亡命でさんざんであったからくるしいのであろうか?

イングランド銀行に貯蓄があったのでは???


いつも読んでくださりありがとうございます。

感想などもいただいております、ありがとうございます。

お返事できないこともあることご理解賜りますようお願い申し上げます。


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