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アバレーエフ

俺の名は、スパルタク・アバレーエフ、日本人である

もちろん、日本名があるが、もうこの名前を使って長いので、スパルタクが俺の名と言っていいのかもしれない

今回、俺はなじみのあったロシアから、カナダにロシア人としてやってきた

今まで、俺は、総長に対して、それほど金を献納してきたことはないが、総長から請求は一切なかった、他のメンツは一生懸命働いているのに比べて、とても自由を謳歌してきたといっても過言ではない、まず、イギリスで事業を始めるはずだったのが、なぜかロシアでマフィア組織を作ってしまったのだ

今回は、ロシア革命で生きにくくなったところ、総長から、カナダに向かえとの、啓示をいただいたのだ


これから、アメリカが禁酒法時代になるから、酒の密輸で稼げとのことである、それから、イタリアンマフィアを叩き潰して、マフィア界を牛耳れとの指示である

とにかくシカゴを攻略せよということらしい


カナダの国境沿い、ウィンザーという場所が良いとの部下からの情報が来たので、そこで起業することにした、なんでも川の向こうはデトロイトという好立地であるらしい

デトロイトはアメリカの自動車会社の本拠が存在するビックシティだということらしい


早速、ウィンザーで土地を買い、醸造所を作る

そのことを伝える前に、映画を撮りに来たという、総長が突然やってきた、場所を知らせなくても、お告げがあるのでわかるらしい、この広い大陸からピンポイントで俺のところに来るのは奇跡の確率であるはずだが、なんてことなくやってのける人である

「さすがに、総長は総長であった」

そして、これから必要になる武器を大量に、しかも新型の兵器を大量に、収納という、空間から取り出して、おいていってくれた、武器はロシアから密輸するつもりだったが、もう十分まにあった、というか、完全に、軍隊の装備である、誰と戦争をさせようというのか?ちょっと、心配になった、シカゴのマフィアとの闘いは戦争レベルになりそうである

迫撃砲を街中で撃ち合うのか?

「とにかく、醸造はちゃんとやるから職人を集めてこい」というと

「ウォッカ作りをやっていたので、大丈夫です」と返事が返ってきた

さすがに、ウォッカの製造販売もロシアマフィアの資金源の一つであった

「そうか、職人部門の戦闘は禁止する、密輸班は原則として、別の場所に本拠を構え、醸造部門と無関係を装う」

そういうことで、醸造部門と密輸部門が分離された、いわゆる兵農分離であり、刀狩り令である


密輸部門で使う高速船を用意し、重機(機関銃)用の三脚を据える

いつでも、密輸OKだ

とにかく、向こうの卸を探すか、自分で販売所を設けるか?


デトロイトは自動車の町であり、労働者が多い

しかも、大戦景気で金回りが非常に良い中で、なぜか禁酒法である

アメリカとは不思議な国である


日本を出る前に、ロシア語と英語をたっぷり現地人から教育されていたので、英語にも不自由はない


やはり総長は先を見通していたのだろうなと今となっては思う


禁酒と言われているが、飲み屋街が広がり、皆が飲んでいる

カクテルという一見ジュースのような酒が流行りだしているらしい

一軒の店に入り酒を頼むと普通に出てくる


警官が巡回しているが、店主が袖の下を渡せば、普通に帰っていく

これでは、ここの天職は、警察官になってしまう


「内の店は、白人専用だ、入ってくるな!」

裏通りを歩いていると、そんな景色が目に入ってくる

白人の大男が二人、仁王立ちで黒人を見下ろしている

「ちくしょう!」

黒人労働者であろう、捨て台詞を吐いた

「殴られたりないのか」ボディーガードらしき一人が腕を上げる

「おい、俺はロシア人だから入っていいだろう」と俺が英語で話しかける

「ふん、イエローじゃないか、ロシア人?俺にはそうは見えないがな」

「ロシアのサンクトペテルブルクでは、ちょっとは知られた物なんだがな」

「ケガしないうちに帰りな、イエローモンキーもお断りだ」

「わかった、店には入らないが喧嘩はうってくれるんだよな」


白人の一人が力任せに殴りかかる

やはり背が段違いに大きい、肉食で日本人としては大きくなった、アバレーエフだが、本場の白人とはやはり大きさが違う

皮一枚で、そのパンチを見切り伸び切ったところをつかみ背負い投げをかける、腕を決めながらの背負、しかも、後頭部を地面に叩きつけるという凶悪な極め投げであった

「グぼ」音なのか声なのかわからない音がして、その大男は気を失った


「おい、お前、俺達でも入れる店はないのか」

殴られて、此方を見ている黒人に声をかける

「お前強いんだな」

もう一人の白人も片付けている俺を見て黒人が返す


「俺はアバレーエフ、ロシア人だ」

黒人は俺の出した手をもって立ち上がった

「俺は、アーサー、黒人だ」

「アメリカンじゃないのか」

「この国では、白人以外は、国民じゃない」

「そんなもんか」

「そんなもんだ」


黒人、有色人種入店可能な店を見つけて入る

「俺は、自動車工場で働いてる」

ドレッドヘアの陽気そうな黒人である

「そうか、仕事は大変なのか?」

「ああ、単純でいやになる」

「俺は、酒の密輸をやる予定だ」

「お前犯罪だろ?」

「そうかもしれんな、お前、同僚に密売したらどうだ」

「考えさせてくれ」

「俺に手伝わせてくれ」別の男がこちらに向かってくる

ごつい男だが、白人ではなかった、黄色人種、いわゆるインディアンであった

「あんたは?」

「ジェロニモ」

「?」

偽名であろうが、意味が分からなかったのである

「ジェロニモは何ができる?」

「殺しだ」

「わかった」

「え?」アーサーは戸惑っている


「とりあえず、貴様らには、組織化資金を渡すので、仲間を厳選して集めろ」

俺は、総長から渡された米ドルの札束を2人に手渡す

「アーサーは黒人の仲間を組織化しろ、ジェロニモもインディアンのネットワークを構築しろ、ナバホ族出身でナバホ語のできるやつはぜひとも欲しい」


こうして、初めての黒色と黄色の「タイガー同盟」が結成された瞬間であった


デトロイトの町に、「タイガーアイ」なる飲み屋がのちにできることになり、そこがアバレーエフ戦争の起点となる場所である


・・・・・

カナダのウォッカ製造は順調でドンドン作られていく

そして、それは、河をわたってデトロイトで密輸品として売りさばかれ、莫大な収益へと変換される

その資金は、警察と行政にも裏金としてわたされ、世界を侵食していく

アーサーは自動車で黒人仲間を集め、密輸酒の販売を、ジェロニモはインディアンの戦闘員をその資金で集める

こうして、アバレーエフ密輸団はドンドン大きくなっていった


そして、それは、シカゴにも噂が届くほどの勢力になっていた


そのころ、カナダには、第1部隊出身の軍事訓練の教官がやってきていたのである

土地を追われたインディアンたちが、カナダの森林や平原で日本軍発の兵器を使い訓練している


第1部隊出身者の多くは、アジア諸国に潜入し、宗主国と敵対する勢力を支援している

そして、それをアメリカ大陸でも始めているということである


兵器を持ってきたのは、俺だったがな、人間倉庫として各地に派遣されたりするので、やはり忙しいのだった


禁酒法のおかげでアバレーエフの組織は莫大な利益を生み出す存在になっていたが、そこは非合法の世界、シカゴで非合法社会を牛耳るイタリアンマフィアがちょくちょく、デトロイト近辺でもめごとを起こすようになっていた

要するに、島争いである、ヤクザの世界では鎬を削るのは当たり前!アバレーエフは、動き出した


今度、デトロイトのある場所で大規模な物の取引があるという噂がまことしやかに流される

”物”といっても覚せい剤ではなく、酒である

デトロイト川に存在するベル島で真昼間に行われるという


もちろんがせねたである


そして、噂の当日には、本当に取引が行われる

カナダからベル島に大量の酒が持ち込まれ、夜に、デトロイトに輸送される

ロシアンマフィアがこの一帯を取り仕切っている


次の取引は一か月後という噂がまた流れる

もちろん、警察は買収されているので、取り締まりなどは行わない

まさに、密輸し放題である

ただし、ロシアンマフィアの作るウォッカは非常に美味く評判が良い、品質には、アバレーエフがこだわりを見せたからである


ピョートル・カワリモーノフ、一見すると西洋人に見える男が現れた

「ピョートル・カワリモーノフだ、アバレーエフに会いにきた」

「ちょっとまて」ロシア人が屋敷の中に入っていく

此処は、カナダのウィンザーの一画にある豪華な屋敷である


「総長!」大柄な日本人、アバレーエフが走り出てきた

「おお、郷田元気でやってるか」

「はい、お久しぶりです」

「そうだな、いつも、金属をありがとう」

ニッケルや鉄などを送ってもらっているのだ

「いえ、総長、自分はあまり働けていないのではと」

「馬鹿野郎、泣く奴があるか」そういう自分も少し泣きかけている


「総長まずは入りましょう」

こうして豪邸の中に招き入れられた


「どうしました」豪華な客間に入ると郷田が聞いてきた

「決まっている、もうすぐ決戦だろう、私の感がそういっている」

「え?」

「決戦は近い!」

「ということは、私の策がうまくいっているということですか」

「そうだ」


郷田は、偽情報をリークし、ベル島にイタリアンマフィアを集めて一網打尽にする計画を建てていた

そのために、取引を大大的に行っているのである


・・・・

取引当日、朝から島に酒樽をいくつも陸揚げしていく

もちろん、密輸用のスーパーボート(エンジンを2つ積んでいる)を使ってである

ベル島にはなぜか、倉庫がありそこに入れていくのである


なんかあまりにも、嘘くさい話である


昼には、黒人たちがやってくる、自動車工場で働いている労働者の仲間である

倉庫の中でアタッシュケースを受け取るアバレーエフ

その時、遠くからモーターボートのエンジンを音が響いてくる

10台近くのボートに人が満載で迫ってくる


拳銃とトミーガンで武装したイタリアンマフィア達が撃ちまくりながら上陸してくる

「ゴッドファーザーみたいな恰好してる!」一人不謹慎に呟ている男がいた


「てめえら、死にたくなかったら降伏しろ!」

たちまち銃撃戦が開始される

数では圧倒的に、イタリアンマフィアである、50名はいる対して、ロシアンマフィアは10名と黒人2名程度である


だが、ロシアンマフィア側は、塹壕を掘っており、その中に潜んで、拳銃をぶっぱなしてなかなか倒すことができない


アバレーエフがブローニングBAR機関銃を持ち出すと、イタリアンマフィアは前進することも、後退することもできなくなる

まさに、真昼の銃撃戦がベル島で繰り広げられる


そして、不謹慎な男は川(デトロイト川)のカナダ側の対岸で偽装網を被り待機していた

俺の知る史実では、ブローニングM2重機関銃と呼ばれた機銃に大口径スコープが取り付けられている

もちろん、そのような装備はないのだが、この世界では、対物ライフルとしても運用される予定である、スコープはニコン製である

対岸から島までは一キロほどなので、M2の射程内となる


ドドド、ドドド、ドドド、もともと機関銃なので、狙撃よりも敵の多い場所に三点射で打ち込んでいく、現場に来る前に、1kmで零点規制をしているので、スコープをそのままで撃つことができる


ただでさえ、火力で負けていたところに、巨弾の機銃が撃ち込まれる、しかも側面から

イタリアンマフィアが次々と殴り倒されるように倒れていく


ドドド、ドドド、ドドド多少の障害物があってもそれを貫通して向こう側の敵を撃ち抜いていく


イタリアンマフィアはこれはたまらんと、撤退を開始する、我先にボートに乗り込む

しかし、其れこそ悪手である


ドドドドドドドド、人間もボートも関係無く破壊される

ドーン、ボートが爆発する


桜井連れてくるべきだったか?


世界の桜井、映画プロデューサーである


かくして、真昼のゴッドファーザーの決闘は終わった


「すまん郷田、後始末頼む、俺はもう行くからな」

「総長、その機銃は!」

「おお、新型、まだ世に出ていないから、ほしかったらおいていくぞ」

「ありがとうございます」

「おお、くれぐれも、シカゴマフィアとは喧嘩しないようにな」

「総長、今のが、シカゴマフィアでしたけど」

「おお、そうなのか、俺はデトロイトの縄張り争いなのかと勘違いしていたぞ」

「今度は此方が反撃です」

「やめておいたほうが・・・」

「総長、俺の喧嘩を全部持っていってそれですか」

「すまん、ちょっとやりすぎた」

「俺の戦いはこれからです」

「そうか、とりあえず、俺忙しいから行くわ」

「は!」郷田は敬礼する

「うん!」俺も、敬礼をして返す


この後、アバレーエフはシカゴの密輸、密造酒の縄張りを手に入れたらしい


アバレーエフが世界でも有数の富豪になるきっかけはこの戦いだったらしい

いつも読んでくださりありがとうございます。

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