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老公

1921年(*大正4年)

わが国初めての航空母艦鳳翔の建造の着工が始まるのだが、ここでは東郷元帥からの厳しい注文が入った、それによるとアイランド型艦橋で右舷に設置、傾斜煙突と全通甲板で無ければならないというものであった、そこには、東郷直筆の解説図面が付けられていた、すべて、俺の入れ知恵であったが、誰も軍神に逆らうような人間はいなかった


今上陛下の容態がよくない、皇太子殿下が摂政宮となられる


俺は、やはり忙しい、2番目の子供ができたようだ、忙しいのだが?

そういえば、桜井がやってきて、無理やりアメリカに連れていかれて、第三作の撮影をおこなった

なぜ、こうなった?


俺は、謎の侍大将役、いわゆるヒールだが、顔は面頬もつけているので、顔は誰かわかる人間はいない、朱塗りの槍が一番の武器(自前)である


「はい、次のシーン、ガンマンが侍大将に向けて発砲します」


このシーンでは、実際にガンマン役は本物の銃で、俺を打つことになっている

念力で銃弾を止めて、木の枝に飛び上がるシーンであるという


「くそー、死にやがれ」2人のガンマンがリボルバー銃を撃つ

弾丸が俺の目の前で停止する、そしてポトリと落ちる

徐に、木の枝に飛び上がる、そして、枝を飛び移る


ガンマンの前に飛び降りると、ガンマン役は本当に腰を抜かすほどおびえていた

自分の銃が間違いなく無効化されてしまったのであるから当然であろう


そのあと、蝋人形のガンマンの首を槍で突き刺し、豚の腹を刀で切り裂く、飛び散る血しぶき、ビニールに入れた豚の血が飛び出るようにセットされている


それから、日本刀で、大木を両断するシーンなど、特殊な撮影を特殊なしで撮影した


ニンジャとの対決シーンは日本の姫路城内で行っているので、あとは編集だけでできるそうだ


日本に帰るともう夏だった

忙しいのだが、仕事があるので夏休みにはならないのである

赤軍がバイカル湖方面に進出してきた、ポーランド軍やその他の内戦勢力の掃討が終わったのだ、トロツキーが指揮を執っているらしい

ただし、兵力は圧倒的に、ロシア大公国軍が少ないのだが、まったくバイカル湖から東進できてはいないようである

もちろん、縦深陣地を百瀬建設が徹底的に作っているからであり、武装もはるかに進んでおり、補給もしっかりしている、しかも、トハチェフスキーが陰で指揮している

始めは、大公国に懐疑的だった彼も、今の政権の政治手法がかつてのような、貴族独裁のようなものではないことを徐々に理解し防衛指揮官を引き受けてくれてからは肯定的になってきている


赤軍がバイカル湖を東進すれば、呼応して、関東軍が側面を攻撃する準備もしているのだが・・・


しかし、防衛部隊の中で一番活躍しているのは、親衛軍第1部隊の狙撃猟兵である

徹底的に、政治将校を抹殺している、政治将校はいわゆる督戦隊の役目を帯びている、督戦隊は後方におり、前線の兵士が後退するとその背中に機銃を浴びせるという極悪仕様である

そこで、長距離射撃で政治将校を抹殺すると、前線の兵士は逃げ出し始めるのである


・・・・・


すでに、場所は日本の某所に移っている、俺は忙しいのだ

「第3部隊所属、八尋以下10名、総長に初めてお目かかります」第3ということは、東京の出身ということになる

「ご苦労、みな百瀬の傘下か」

「所属は憲兵隊となっていますが、そういうことになります、よろしくお願いします」

「今日の任務は、暴漢からターゲットを守ることだ、難しいことはないが、気を抜くことはないように頼む」

「は、もちろんであります」八尋以下10名が敬礼する

皆スーツ姿だが、胸には、自動拳銃インペリアル38口径(別の世界ではガバメントといわれた拳銃の38口径拳銃)をつっているのでパンパンだ


すでに、敵は、ターゲット宅の前で、待っている、面会を要求しているのである

まだ、朝の早い時間だが、こいつはもう起きて他人様の家の前で、何をしているのか?

この時代の人間は概して早起きなのであろうか?

それとも朝駆けというやつなのか?


暴漢は中に入っていく

もちろん、俺たちも無断で入らせてもらう、いざという時のためである

日本の家は防犯上あまり優れていない、入る気になると、簡単に入ることができてしまう


「何とか、このホテルを作るために、金を出してほしい!あなたは、それだけの財産を持っているだろう、困っているものをすくうのは当然ではないか」と暴漢の声が聞こえてくる

「本当に立てるなら、話を聞かんこともないが、おぬしにはその気がないじゃろう、これをやるから、帰れ」

「貴様、私を愚弄するきか!」

そもそも、偽の話を持ってきたのは、暴漢の方である、愚弄するもなにも詐欺の投資話なのだがな・・・

こういう輩ってのは本当にどこにでもいるものだ


俺は部屋の障子を吹き飛ばしながら、突入する

暴漢は、ドスを逆手にもって、いままさに襲い掛かろうとしていた

ターゲットは恐怖でうまく動けていない

「はい、そこまで」インペリアル(俺のは45口径)が鈍く光っている

「この、お前はなんだ!」突き刺しにかかってくる

「はい、自己防衛」バンバン、素晴らしいストッピングパワーである

暴漢は前に進むことはできなかった


「総長!」

「早く警察を呼んで来い」

「は」

「いやどうも、すいません、不法侵入してしまって、この男が怪しそうだったもので」

俺の方が余程怪しいが、さわやかな男前顔が言うとあまりに気にならないらしい

「あんたは」

「はい、私、大日本帝国海軍中佐高野です」

「ありがとう、助かったが、この男は」

「死にました、残念です」まったく残念そうに聞こえないところが恐ろしい

「警察にあとを任せるとして、少しお話をしてもよろしいですか」

血まみれの死体がいる部屋で話はしたくはない


「別の部屋で話そうか」

「総長、警察が来ました」


「なんだ、これは」警官が驚いている

「ところで、お前は何者だ、殺しの犯人はお前か」

「私は、大日本帝国海軍中佐、並びにロシア大公国伯爵の高野である、話は、ここにいる八尋から聞いてくれ、彼は一般人の服装をしているが、憲兵隊である、良いな」いつの時代も、官吏には、肩書が幅を利かす

「これは失礼しました」と敬礼している


「では、老公、別室にてお話を」

「儂も説明せんでもいいのか?」

「大体、この男が金を無心に来たのでしょう?」

「まあ、そうだが」

「そういうことだ、八尋頼んだぞ」

「は、総長わかりました」


・・・・・

「君は私を助けに来てくれたのか?それともあの男を追っていたのか?」

「助けに来たのです、あの男は今日初めて見ました」

「では、私のことを知っているのか?」

「はい、もちろん安田善次郎さんでよろしいですね」

「なぜ、助けたというより、なぜそんなことが可能なのだ」

「はい、それを説明するには、少し時間を頂戴したいですが、よろしいですか」

「要は君も私に金を無心するつもりではないのかね」

「ははは」乾いた笑い、その通りですと言いかけてしまった

さすがに、世の中の修羅場をくぐってきた男だけあって、よくわかっている

「では、わしが世間からどういわれているかも知っておろう」

「いえ、知りませんが、須らく命を助けた人からは、お金を出資していただいてたりします」

「人助けで、金を稼いでいるのか?」安田老人の顔は厳しい

「出資していただいているだけですよ、ああ、出資の言葉ですね、本来の出資ですので、配当なりで返してますよ、この前も、返金する旨申し上げたのですが、もう必要ないといわれましたが」大戦景気でぼろもうけしたので、元金を返すといったのだが、みなそれは不要といって断られた、全く豪儀な話である


「怪しい話だな」

「そうですね、怪しさという点においては、私は誰にも負ける気がしませんよ」と自嘲気味の俺

「ところで、奴の持っていた宣言書?の中身には、老公が金を出すべきだと書かれていましたが、私は、老公がお金を陰で出していることは、存じています」

「なに!」

「詳しくは知りませんが、東京帝大の講堂の建設費用を出したりされているのですよね、私はそのことを知っているからこそまいったのです、陰徳を積めとかいうつもりはありません、私は、私の任務を全うするために、金が必要なだけですからね」

「なんで、そんなことを知っている」

「さあ、そこですよ、なぜ今日ここに来たのか、すべて疑問ですよね」

「・・・・」

「私は、ある種の天命?これはいささか私自身も自信がないのですが、を持っていましてね、そのおかげで、ある種の知識を持っております」

「今度はオカルトか」

「そうですね、オカルトですよね、証明しづらいんですよね」名前の表記できない女神とか・・・


「そこで、一つ騙されたと思って、ある映像を見ていただきたいのですがね」

「すでに、死んでいてもおかしくない儂だ、それくらいなら付き合ってやる」

「ありがとうございます、助かります、大体この映像を見た人は騙されて、泣いて、私の言う通りお金を出してくれますよ」圧倒的な詐欺技術を自慢する詐欺師であるかのように胸をはる俺

「ふん」安田はいった


壮大な音楽とともに、映像が始まる、ハルノートの交付、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦といつもの映像である、この映像は近ごろ編集されていないので、前のまま、空襲、原爆、ソヴィエト侵攻、東京裁判と圧倒的敗北で灰になった日本が映し出される


安田氏は泣いていた、しかし「おい、ソヴィエトはおかしいのではないのか?」

初めて、疑問をさしはさむ人が現れた、困ったな!

「まったくその通りです、さすが老公というべきでしょう」

「儂は、騙されんぞ」

「しかし、老公、ロシア王家を助け、国を新しく作り出した、わたくしの努力が、すでに、歴史改編を進めているということを申し上げておきます」

「なんだと!」

「老公、私の知る歴史では、老公は先ほどの男に殺されて終わりでしたが、今は生きている、そういうことです」

「なんと、そんな大それたことをしているのか!」

「では、今すぐ死ぬんですか?そして、日本が踏みにじられてもよいとおっしゃるのですか」

「そんなことは言っておらん、しかし、そんなことは断じて許されん」

「わかりました、歴史の修正力のほうが勝った場合は、日本は、灰になる、それでよろしいのですね」

「オカルト詐欺師め!」

「ははは、そうですね今気づきました、オカルトですね」

「だが、死んだはずの儂が何を言っても始まらん、貴様の悪魔の所業に手を貸そう」厳し顔から初めて、笑顔がのぞいた

「ありがとうございます」

俺と老人はがっしりと握手をした

「で、いくらほしいのだ」

「できるだけ、がっぽりと、いずれ儲ければ返しますよ」

「そうはいかん、会社の金は、会社に残さねばならん、わし個人の金を渡す、それならば、もともと、わしとともに死んだも同じであるからな」

「返す当てはありますよ」

「金を無心に来るやつはみなそういう」

俺は、にやりとしてしまった

「まったくです」

「5千万円だそう、この国救うために使ってくれ」

「老公、それは勘違いです、私の使命は原爆投下阻止であり、そういう意味の国を救うには適用されても、戦争に勝てと言われても、責任は負えませんよ」

「そうか、では、原爆投下とやらを阻止して、数十万の人命を救ってくれ」

「何とか、頑張りますよ、老公」


こうして、騙された老公は5千万円という大金を出資してくれることになった


「だが、大戦景気も終わってこれからは、悪くなるだろう、大丈夫なのか?」

さすが、最前線の経済人である

「それについては、問題ありません、景気に波はつきものです、次の機会をとらえます、返すまでは長生きをしてください、出ないと息子さんに返す羽目になります」

「もう、その金はなくなったものだと考えておるわ」安田老人は傲然と笑った


いつも読んでくださりありがとうございます。

引き続き応援のほどよろしくお願いします。

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