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赤い至宝

1920年(大正3年*)

1919年には、リヒトホーフェン男爵のリヒトホーフェン航空学校(北海道札幌郊外)、シコルスキーエアクラフト(仙台)、高野造船(函館、室蘭、仙台、和歌山)、高野重工業(仙台)、有栖川自動車(仙台)が次々と創立された(東北帝大との技術提携の関係でどうしても仙台に偏りがでる)

いよいよ第二次大戦に向けての準備を整える時がやってきたということであろう


高野造船はDEの船舶用エンジンを載せた輸送船の建造から開始される、函館、室蘭、仙台、和歌山でロシア所有の船渠(造船ドック)で技術の成熟を図る、ゆくゆくは戦闘艦の建造を行う予定である、重工業は砲の製造を行いたいところであるが、今は鉄鋼、合金などの製造から始めている、有栖川自動車はガソリン車の製造を行う、ゆくゆくはそれが戦車や四輪駆動車に代わる予定である


だが、実情は、米国製の自動車輸入とその整備や部品を購入しての組み立てなどしか行えていないのが現状であった(ノックダウン生産)

さいわい大戦景気による潤沢な資金のおかげで、最新鋭の工作機械を次々と輸入しているので、ゆくゆくは、自前の生産も可能になるのではないかと期待しておこう


ところで、戦後処理で得た中国の青島、南洋諸島、ニューギニア島(どれもが委任統治)であるが、直ちに、陸軍が進駐し実効支配を開始している、特にニューギニアには、大量の重機を持ち込み早速鉱山開発とラエの要塞化、港湾の整備などの作業を行っている


ゴムの木の植林も同時に行い、ゴムの増産をも目指す

この時期、百瀬建設は日本最大の工事の受注量を誇っていた

沖縄、台湾、小笠原、サイパン、ニューギニアと軍からの要塞化計画が矢継ぎ早に注文として入っているからである、その工事を推し進める原動力が建機である


俺は、相変わらずウラジオストクから離れられない状況が続いている

そんな中「岩倉よ」

「は」

「私は、以前から考えていた計画を実行に移そうと考えている」

「そうですか、総長はいつも計画をたてているのですね」

「そうだ、しかし、この計画は、飛び切りの奴だから、注意せねばならん」

「ほう」岩倉の目が怪しく光る、ものすごく警戒している、自分に類が及ぶことを恐れているのであろう

「昔、樺太に、石油会社を作ったな」

「はい、そういえばあったような」

日露戦争時に無理やり樺太全島を占領し、サハ油田に食い込んで、高野系企業に石油を細々と送っている企業であった


「技術の獲得は済んでいるか」たしか高野石油といったような、自分でもあまり記憶が定かではない

「どうでしょうか?今まで、まったく忘れておりました」

「そうか、まあ、それはさておき、満州で石油を掘るぞ」

「なんと、あるのですか、総長の話では、かつての日本も満州を占領したが、石油がないために、南進したという話であったような」


「岩倉、さすがだな、そんな細かいことを話したか?」

「そのような流れであったかと」

「だがな、満州に石油はあるのだ、俺たちがいただこう」

「もちろんであります」ぎろりと岩倉の眼が光る

「ただし、製品の質事態はあまり期待できないから、いずれは南進せねばならんがな」

「そうですか、しかし、我々は全力で、利益をとりに行きましょう」

「その意気だ、私も仕事を終えたら、行くから頑張って掘ってくれ」

「わかりました」

「先生に一緒に行ってもらえ、あと警備保障と、関東軍にも一応声をかけておいてくれ」

「山口先生は、次の映画の撮影があるらしいですよ、そう言えば、総長も”侍大将”役じゃなかったですか」

「私は、忙しいのだが」

「桜井氏に直接いってください、世界の桜井はなかなか、手にあまります」

「映画で敵に潜在的脅威を植え付けるのを考えたのは、私だから、仕方がないのだが」


「さすが、総長そんなお考えが」

「言ってなかったか?」

「一切聞いていませんでしたが?」

「そうか?」

「ただの思い付きで、金もうけがしたいのかと思っておりました」

「馬鹿な、忍者、侍が欧米人を圧倒することで、敵国民の心胆寒からしむ、それを潜在意識に刷り込むための作戦なのだが」

「真意はともかく、うまくいっているのでは」

「うむ」


「ところで、藤に言ってなかったが、頼みたいことがあるのだが」

「総長、藤は今度衆議院議員選挙に出ますので、後任のものが適切かと」

「後任は誰か?」

「今度、一度あいさつに来るように申し付けておきます」

「そうか、では、戻ってきてからでよいな」

「どこに行かれるおつもりですか」

「ロシア内戦の戦線だが」

「おやめください、総長にもしものことがあったら」

「いらぬ心配である」

「しかし、奥方様も心配でありましょう」

「いや、きっと心配していない」

「そうでしょうか」

「もちろん、私を信頼しているからな」

「しかし、」

「岩倉よ、私がやらねば、ロシア大公国がまずくなるのだ、許せ」

「は、では、わたくしは奥方様が無事にお子様を生んでいただけるよう、努力いたします」

「大丈夫ではないか?向こうの家も王家なのだから」

「では、市中の警戒を」

「そうだな、頼むぞ、油田の探索もな」

「お任せを、全力でまいります」

「うん、任せたぞ」俺は、岩倉とがっしりと握手をした


・・・・・

油田探索隊は、非常に大規模な部隊となっていた、まずは、高野石油の技師たち、一応、長年、サハ油田で経験を積んでいた、しかも、高オクタン価ガソリンの開発も忘れてはいなかった、まだ、完成はしていなかったが。


しかし、彼らの存在は、岩倉の中でも忘れられていたことは、彼らは知らない

やっと交替が来たと思ったら、満州に連れてこられた、かわいそうな人たちである

彼らと機材を護衛するのは、高野親衛軍という、非常に危険そうな、私設軍隊でありその数4000人

あと、トラックの上に、バックホー、ブルなど、あとダンプ、その周囲には、関東軍の部隊がつづく


掘削地点は大体で決めて、掘られるが、

「見つけるまで掘れ、出るまで探せ」という命令が下っているらしい


しかし、である、なんと一回目の井戸の採掘で石油は出たのである

早速、その周囲に塹壕やトーチカ、見張りの塔などの建設が始まる、駐留するのは関東軍ということに決まっている

関東軍が早速、増援部隊を要請、掘削隊は別の場所でも、油井を掘っていくのである


・・・・・

石油が出てしまったので、直ちに、高野石油化学が設置され、石油生産体制に入る、同時に、重質成分が多いこの石油のアスファルトで道路整備を行う、高野道路が設立され、道路整備も開始される


・・・・

話はかわるが、1920年のアメリカでは、なぜか禁酒法が成立する

今後アバレーエフがどのような活躍をするのか、とても楽しみだ

一応、シカゴのマフィアに気をつけて、働くようにいっているが、彼は、わざとそこに行きそうな予感がする


そして、私は、再び欧州にいる

デニーキン将軍がそうそうとロシア大公国について、欧州から去ると、ヴーランゲリ将軍が赤軍と争っていたのだが、それを好機とみたポーランド軍がソヴィエトに侵攻、混乱を極めている状況を納めつつあるのが、赤軍の赤いナポレオンこと、トハチェフスキー将軍である


俺は、収納の中から、車やバイクを取り出して進んでいる、たまに、赤軍に止められるが、軍服は赤軍のものであるので、問題ないし、身分証明に至るまで、すべて偽造(完璧)によっておおわれている、おまけに言葉もまったく問題ない

相手の数が少ない場合は、すぐに暗殺して、森に放置ということを繰り返す


野戦用の天幕の前

「将軍に伝令であります」

「うん、少し待て」護衛の兵がいう


「入れ」

トハチェフスキーは座ってこちらを見上げた、やさしい顔の男だった

「伝令を持ってきました」

「そうか、いただこう」

「は、少しお人払いを、」

「構わん」

そうですよね!

俺は、隣で立っている兵士の腕をつかむと簡単に一回転さして、床に叩きつける、そして、後頭部を軽くけると、あっけなく意識をうしなった

「お前!」トハチェフスキーが銃を抜くが

俺は、手を挙げて降伏の姿勢を示す

「閣下、私は伝令ではありませんが、お話があります」

「スパイか!」

「スターリン閣下の手のものです」

「やはりそうか!」

いや、そこは違うとかいうべきではないのだろうか

「嘘です!少しを話を聞いていただきたい、それだけです」

「逃げられんぞ」

「閣下、引き金を引くのは自由ですが、まず私の話を聞いていただきたい」

「お前は本当はどこの手のものだ」

「私は、大日本帝国海軍所属の高野です」

「日本か!その軍服は?」

「まあ、日本軍の服をきていても、ここまでは来れませんからね」


「座ってもよろしいですか」

「ああ、構わんぞ」油断なく銃を構えるトハチェフスキー


「私は、ロシア大公家の親戚となりました」

「貴様が、逃がした張本人か?このソヴィエトで跳梁跋扈しおって」

「そうですね、好き好んでしているのではないですが、結果そうなっていますね」


「閣下はソヴィエトといいましたが、ロシアに未練はないのですか」

「ないな、どちらがいいというものではないが」

帝政ロシアの苛政に耐えかねて、革命を起こしたが、赤軍による支配に変わっても民の生活は良くはならなかった


「閣下はご活躍されて、ソヴィエトの救世主となるでしょう」

「かもしれんな」

「なかなか、信用してもらえてなそうですな」

「当たり前だろう、貴様スパイではないか」銃が油断なく此方を狙っている


「まったくです、ところで、閣下はこのようなことわざをご存じですか」

「なんだ」

「狡兎死して走狗煮らる、中国のことわざです」

「わけのわからんことを言って、隙を作ろうとしても無駄だ」

「閣下、たとえ閣下が引き金を引いても、私を殺すことはできません、しかし、まだ話は終わっていないので、撃たないでくださいね」

「どうかな、試してみるか」

「閣下を暗殺するなら、入ってきた瞬間にできましたよ」

「今はできまい」

「まあ、話を戻しますが、先ほどのことわざの意味ですが、兎を狩る猟犬も兎がいなくなれば、食べられてしまうという意味です」

「私が犬だといいたいのか」何処の国でも、犬と呼ばれると侮辱を受けていると感じるのだろうか?


「日本にも同じようなことがありました、兄弟だったのですが、弟は戦争の天才でしたが、敵がいなくなったら、兄に殺されてしまいました、兄は戦争の天才が怖かったからです」


「何が言いたい、私は赤軍軍人だ、赤軍の敵と戦うのが当然だろう」

「まあ、それはいいんではないでしょうか、軍人とは常に敵と戦う存在ですから」


「私には、一つ才能があります」

「それで、貴様さっきから何を言っているのだ」

「未来をある程度見ることができると言ったらどうでしょう」

「馬鹿なことを、私をだまして、裏切らせるつもりだな」

「閣下は騙されるのですか」

「騙されてたまるか」

引き金に力が入る


「では、騙されたと思って、いまから映像を見ていただきたいのですよ」

俺は続ける

「この映像は、ある世界の映像の記録です、この世界ではありませんが非常に似た世界の映像です、この映像はある世界では確実に起こったことです、ただしこの世界では、確実起こるとは限りません、ですから、いまからなら変わる可能性はあると申し上げておきます」


「何を言っているのだ、お前は」

「似たようなことが起こるから、気を付けてくださいと言っているとお考え下さい」


「見ないといったら」

「最後の瞬間に後悔することになると思います」

「見ない」

「そうですか、わかりました、ところで最後に一言申し上げますが、後悔する方は、あなただけとは私は言っておりませんので、お気を付けください、では失礼します」俺は立ち上がった

「逃がすと思うのか」

「止められるとお思いですか」

「殺す」

「無理ですな」

銃口を頭に突き付けているトハチェフスキーが圧倒的に有利に思える状態ではあるのだが・・・


「見せろ」

「そういっていただいて、よかったですよ」


銃を突き付けられた状態で、トハチェフスキーの左手を握る

「目を閉じなくても、映像は流れますが」

「動いたら、撃つぞ」

「そちらこそ、誤って撃たないでくださいよ」

「ふん」


映像は、アカシックレコードから抽出した映像である

それは、アカシックレコード、トハチェフスキー版であった


トハチェフスキーは、次々と成功していく、内戦を終結へと結びつける

そして、ソヴィエト軍の改革を断行し、強力な軍へと改革に成功するのであるが、やはりである

狡兎死して、スターリンに煮られるのである

それと同時に家族も抹殺される


トハチェフスキーは泣いていた、娘や姉妹、母の無残な死にざまに

アカシックレコードの映像は、本物の映像であるためか、訴える力がすごいのである

もちろん、実際にある世界では起こったことであるから当然といえば当然である


「こんなことが、あっていいのか」

「閣下、騙されてはいけません」

「娘が、妹が、母までも、私がスパイだと!」

スターリンはとにかく粛清が大好きなのだ


「閣下、気を付けていれば、防げるかもしれません」


「違う、あれは現実だ、あの景色は本物だ」


「俺はどうすればいいのだ」

「閣下、騙されてはなりませんぞ」

「頼む、俺は構わん!だが、家族は助けたいのだ」トハチェフスキーは少し混乱していた


「では、契約書にサインをお願いします」

トハチェフスキーには、その男高野の笑顔が悪魔のそれに見えた


しかし、その悪魔にでも、助けを求める心は本物の家族愛だったのだろう


いつも読んでくださりありがとうございます。

すいません、アップ抜けていました、申し訳ありません

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