第一次世界大戦後の総括
「おい、高野ちょっとこい」すでに、軍令部長をやめ、軍事参議官というよくわからない職の東郷元帥がやってきた
「やっと日本に帰ってきたのですが」と俺
「馬鹿垂れ、お前が変なもの連れてくるから呼びに来たんだろうが」
「統合本部ですか?」
「そうだ、重要事項だろうが」
ロシア皇帝家を連れてきたことで、軍事プレゼンスが大きく変化することになるのであろう
・・・・・
三宅坂 統合本部会議室
「それで、どうするつもりかね?」陸軍参謀長
「現在の情勢を鑑みるに、シベリア方面で」
「ちょっと待て」軍令部長の島村提督である
「そうですぞ、これは明らかに問題行動です」
「陛下は?なんと」
「陛下のご様子はよくない」
大正天皇のことである
「申し訳ないが、裕仁宮に摂政に立ってもらうしかないのではないか」
「それよりこの始末をどうつける」
各人が様々にものを言っている
明治帝の頃は、しっかりとみな議論できていたが、今は中心がない状態となってしまったようだ
明治帝とは、方向性については決めていたのだがな・・・
「とりあえず、殿下の摂政就任の件は乃木院長にお願いしたい」
「陸軍は満州国内で軍閥の掃討を徹底していただきたい」
「それは、元老田中の意見か」
「元老の田中様に聞くのがいいのかもしれませんね」と俺
「ならん!それはならんぞ!」桂大将がなぜかここにいる
「ロマノフ家は、ロシア大公国(仮)の樹立を望んでおります」と俺
「馬鹿な、革命で倒されたのだぞ」
「しかし、赤軍が国を統一すれば大変な事態になります、かの国は共産主義です、わが国内の左派も活発化するものと思われます、共産主義に対する壁として利用するというのは以前の決定事項のはずですが」
「そうだ、国内の社会主義者どもも何とかせねばならん」
「ニコライ2世は国民に謝罪、退位して息子のアレクセイが王となり、選挙を取り入れたわが国に似た形の政体を作るとの意向であります」と俺
「本当か?」
「白衛軍を早急に集約し、赤軍への抵抗勢力にする必要があります、わが国は、新公国を軍事的にあと押しする必要があるでしょう、その条件として、満州国を国際的に認める国になってもらいます」
「そもそも、その国自体が、認められるのか?」
「認めさせるのが、わが国の外交の腕の見せ所ではないですか」
「原因者が偉そうに」
「私、個人的にあの家の親戚になりますので、一人でもやりますよ」と俺
「バカ者!」「なんだと!」「これ以上何をするつもりだ」会議室内が怒号に包まれる
まさに大混乱の極み!
「そもそも、なんで少佐ごときがこの場にいるのだ!」
「いや、それは、前軍令部長のお付きだったからでは?」
「今はどうなのか、海軍は何を考えている」
「陸軍の前参謀総長は認めていたぞ」
かつて、仇敵であった時代のような状態となってしまった
「黙れ!この馬鹿どもが」その時乃木将軍が怒鳴った
さすがに、歴戦の軍神の一喝で会議室が水を打ったように静まる
「そもそも、この統合作戦本部は、陸海が一体となって、今後の日本を導いていくという重責を負っている、しかも、責任者は陛下自身も含まれるのだ、欽定陛下に置かれては、体調が思わしくない、我々が仲間割れしている時ではない、儂は明治帝からしっかり頼まれたものとして、貴様らにいうべき立場である」
・・・・
「田中太郎兵衛元老から以下の意見があった」
達筆な筆による、雄渾な意見書である
曰く、ロシア公国を作り、白衛軍を集結し満州とともに、赤軍を防ぐ
曰く、ロシアに日本の軍事力を貸し付けて、代わりに国内への投資資金を得べし
曰く、ロシア公国は徹底的に防衛の体制を敷き、決して攻勢させるべからず
国内を安定させるまでは、バイカル湖畔以西に出してはならん
「資金はあるのか?」
「はい、聞いたところでは、イングランド銀行に相当な資金を預けているとのことです、英国の国王筋とは親戚関係にありますので、その辺は大丈夫なのではと考えます、世界の数分の1の富を所有していると聞いたことがあります」
「ところで、高野、結婚するとか言ってなかった」と東郷元帥
「はい、末娘と結婚するつもりであります」
「そのほかにも、娘がいるらしいが、誰か皇室関係者と結婚させて、縁を深くするのはどうか」と陸軍参謀総長
「適任者がいるか?」
「有栖川宮の息子はどうだ」と島村軍令部長
かくして、ウラジオストクを首都としてロシア大公国(仮)が設立され、日本国が承認した
同時に、日満露防衛協定が締結される運びとなる
また、旧ロシアで赤軍と対決している勢力に向けて、アレクセイ大公(仮)から結集するようにとの檄文が発せられる
これにより、デニーキン、コルチャークら白軍の将軍が直ちに呼応し、集結を開始する
ウラジオストクに高野建機の重機が荷下ろしされている、百瀬建設社員が大挙して、作業している、近ごろ百瀬建設は裏の稼業をそっちのけで、建設作業を行ってきたので、この地に来ているのは、もはや土木作業のプロの側面を持つ者のばかりである
もちろんヤクザの組員もいるが、すでに東京周辺をほぼ傘下に収めて、必要な時しか出てこないのである、もちろんもめごとが発生すれば、彼らが出張ってくることになるのであるが・・・
彼らの仕事は、防御陣地の構築である、設計は軍人がするが、塹壕の掘削やトーチカ、掩蔽壕などの建設を行い、順次、ウラジオストクの外苑へと作業を行っていく予定になっている、資金はロマノフ家からでており、順調な出だしである
同時に、軍港の整備拡張である
なお、武器供与は、BFAからも積極的に販売が行われている
ピストル、ライフル、重機関銃、迫撃砲などである
DEからは、軍用トラックである、ガソリンエンジンの開発にも成功しており、そのエンジンを供給し、有栖川自動車が乗用車の販売を行っている
有栖川自動車では、まだ、本格的な自動車生産が行われておらず、部品の大半は、米国製を使用しているので、ほとんどが米国製自動車といっても過言ではない
部品の規格統一、供給できる下請け企業を模索しているところである
DEでは、トラック部門の分社化が行われ、なぜか高野トラックが発足した
さらに、造船部門が立ち上げようと、高野造船が発足する
そうこうしているうちに、俺は、ロシア公国のアナスターシア王女と結婚式を上げることになった
すでに、子供ができたようだ、脱出時の時の子供のようである
同時に、有栖川宮も彼女の姉マリアと結婚することになった
人生何が起こるかわからないものである
これで、義兄弟になったわけだが、・・・
有栖川父宮は俺の治療のおかげか、非常に元気であり、現役で海軍大将となっている
いずれは、軍令部長になるのではと噂されている
ところで、これまでの総括であるが、大戦景気により各企業は、莫大な利益を稼ぎ出した
出資者に資金の返還を打診したが、十分な配当を得ているので、返還は無用との回答を得てしまう、これでは、会社を私物化できないではないか!
それどころか、皇太子殿下からさらに1億円の出資を受けてしまう
船成金という言葉がこの時代生まれているのだが、高野企業群こそまさに、船成金の権化となってしまった
投資額が簡単に20倍以上になり、原資部分程度の配当は簡単に出せてしまった
商船の保有がすでに20隻を超えた、これから不況で船が余るので、買い占めを図る必要がある、もちろん維持コストもかかるが、わが社の利益を食いつぶしながら、価格の下がった鉱物資源を他国経由で国内に備蓄する必要があるためいくら資金があっても足りない?
状態である
そのため、日本各地の港湾施設の近くには次々と備蓄用倉庫(岩倉倉庫)が立てられている
すでに相当量のニッケル、鉄鋼、アルミニウム、銅などが備蓄されている
これらは岩倉玩具が行っていたが、岩倉商事㈱が立ち上がり、とって変わることになった
玩具類は確実に利益を上げている様子だ、その利益よりも、大戦景気の資金運用益のほうがはるかに莫大であったわけであるが
金融部門も投資が大成功し、莫大な利益を積み上げた、銀行、保険、証券で形成されている、徳川公爵の指揮のもと、これからも発展していってほしいものである、ちなみに第九十九銀行の筆頭株主は皇太子殿下となっており、非常に安心できるとのことで、世間からの信頼も厚く預金を集めるのに役立っている
これからは、不況でつぶれかかる企業が数多くでることから、そこでの会社買収、人材のリクルートを積極的に展開する指示をだしている状況である
高野鉱山は、この金融グループ(徳川系)に組み入れられ確実に金を掘り出しており
技術を生かして、ニューギニア島で資源採掘を開始する準備を始めている
BFAは銃器類の販売が、今現在も非常に好調で、ブラウニングさんはほぼ毎日、温泉三昧である(研究以外は温泉しかしない状態の人間になってしまった、人呼んで温泉大名)
DEではディーゼル氏が、船舶用エンジン、産業用エンジンなど研究員と一生懸命研究している、4ストロークエンジンの完成品は、すべて高野建機㈱が買い取っている
そんなに、エンジンが必要か?もちろん、建機が普及していないこの時代に、それほどの数は必要ないが、工場は、コンベア活用した流れ作業で、大量生産を行うように設計されている
ディーゼル氏には、内緒だが戦車用エンジンとして使用するために、ストックされているのである(ディーゼル氏はエンジンの戦争使用にためらいを感じている模様)
高野建機は、ダンプ、トラック、ブルドーザ、そしてついに、建機の王者、ユンボ?を開発した、しかし、認知度が低いため、売れる数は少ない(というか、絞っている)
購入者は、すでに、国内でも相当のゼネコンになりつつある百瀬建設㈱である
また、藤農業からの要望で農業用機器の開発を行うため、高野農機㈱が発足した、これからは北海道をどんどん耕す必要があるということである
DE内の一角で起動し始めた、油圧装置部門が七味油圧装置㈱として起業した
七味というのは、東北帝大の教授の名前で、油圧装置研究に力を入れてもらうべく起業し、利益を回しているのである、油圧装置にはもっと先の研究を奨励している、主には建機の油圧システムでありそののちは、油圧カタパルトになる予定である
リンデ博士の㈱リンデの協力のもと冷凍装置を乗せたトラックが開発された、いわゆる冷凍トラックである
藤農業は、今回の景気でついに利益を出した、砂糖が爆発的に売れたからである、しかも、生産した食料を惜しげもなく、市場に投入したことにより、米騒動を事前に防いだことで、藤の人望がうなぎのぼりになっている、今後は国会議員に出馬する要請があるらしい
コメ相場では、政府、軍の統制と我が社の金融部門の売り崩しにあい、急騰を防がれたので、米騒動にはついに発展しなかった
高野学校の生徒も続々と大学を卒業し、企業群への幹部候補として就職する、また優れた民間企業に就職し、必要な技術情報などの収集にかかる予定になっている(完全に産業スパイ?では)
今後は、関東にも同様の学校を設立する予定である
そして、今一番発展活躍しているのは、百瀬建設㈱である日本国中の開発に貢献している、百瀬建設は、ニューギニア島、ウラジオストク、満州で防御陣地の建設を一手に掌握している独占企業という状態になりつつある、まさに第100工兵師団と化しつつあった
港湾開発のための専用会社、高野港湾㈱が設立された
百瀬建設から港湾部門が独立する形になったのだから、百瀬港湾がよさそうなものだが、なぜか高野港湾である
日本を代表するゼネコンへと育ってほしいものである、建機を独占的に利用しているため、競争力が非常に高いのである、さらに、地元対策でも、硬軟おりまぜて行う交渉は、まったく相手を腰砕けにしてしまう、恐ろしさも備えている、もともと、そういう組織であるためである
ついでにいうと、百瀬組は、東京のヤクザをすべて傘下に収めた状態である
あまったヤクザは、満州国に移動させられたり、カニ工船に乗せられたりと苦難の道を歩むことになる、いずれは、陸軍、海軍の兵卒になれるように訓練されている
藤農業では、缶詰生産を行うべく、室蘭に缶詰工場を設立、戦時の保存食料、軍の糧食として利用できるよう生産を開始する
鮭缶、カニ缶、鯖缶、牛管、豚缶などを作るように指示しておいた
ついでに言うと、ジャガイモを大量生産しているのだからと、「ポテトチップス」を作るよ
うに言うと、これがたちまち大ヒットとなり日本中を席巻してしまうこととなる
そして、藤食品、藤製缶、藤製粉など藤食品グループが形成され、利益も十分にとれる会社に成長していくことになるのである
話は変わるが、元老の口利きで、治安機関である特高警察に情報を売る見返りに、うちの関連のものが逮捕を免れるよう協定を闇で結んでいる、もちろん、百瀬組は民間人に危害を加えたりはしない、ただし相手がヤクザの場合は、生死不問だったりする場合があるためである
大規模な防御陣地の構築と港湾整備、軍備の拡充とロシア大公国では、大金の支出が見込まれるロマノフ家だが、なんと!イングランド銀行に2000万ポンドの預金があるというではないか!まあ、俺のものではないが、有効に使わせてもらわねばならない
ロシア大公国の軍備に一杯金を使ってもらおう(1ポンド=2万円位らしい)
うれしいことに、買ってもらえる兵器はいくらでもあったし、公共事業の請け負いも建設ゼネコンで請け負うことができるではないか(コネを使って)!
世間では、高野グループを政商、汚職企業、官民癒着の象徴などと、根も葉もない噂が広まっているらしいが、全くの無実である
いつも読んでくださりありがとうございます。
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