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海戦

一応、艦隊の参謀付きということになっている

艦隊司令には、島村速雄校長が指名された、最も、信頼厚い人間が行くべきであるとの、陛下のご威光が大きい


「おい高野、お前船初めてだろう、よく勉強しておけよ」艦橋で早速、島村校長に笑われる「参謀長の山下だ、よろしく頼む」山下源太郎参謀長である

「は、よろしくお願いします」

「こいつは、返事だけはいつも良いのだが、問題を起こす」と島村

「ほお、例の噂の、」

「まあ、そういうことだ、いろいろと至らん奴だが、一つよろしく頼む」

「そういうことで、あれば、私がしっかりと教育しましょう」

「まあ、今回はこちらが本気になって、戦う必要はない、あくまでもお手伝いだ、命を大事に、できることをやろう」と島村

「心得ました」と山下


ということで、イギリスにつくまでの間いろいろとこまごまとこき使われる俺であった


地中海で、第2特務艦隊と別れ、イギリスを目指す第1特務艦隊であった

なお、第2艦隊は地中海での輸送船防御の任務に就くとのこと


第1艦隊は、イギリス、スカパ・フロー泊地を根拠地に戦闘に参加する予定であるが基本的には、お手伝い兼観察である


司令官室

「で、お前の目的を聞いておく」島村司令官

横には、山下参謀長が座っている

「もちろん、戦闘経験です、というか、海戦が終わったあとちょっと、ドイツに行ってみようかなと」

島村司令官が目を閉じて、眉間をつまむ

「海戦があるのか」山下参謀長

「突っ込みどころではないような」

「そうだな、まず海戦の話を聞いておこう、とりあえず、こいつはやばいので、そのことはくれぐれも、内密に」島村が山下に言う


「ユトランド沖海戦という大海戦が起こります、まさに、イギリス、ドイツの艦船が入り乱れての一大海戦です」

「おい、危ないのじゃないか」と山下

「しかし、ニューギニア島をもらう約束なので、それぐらいはやって見せませんと」と俺

「ニューギニア島をもらう?」と山下

「参謀長、我々には関係ないことだ」と島村はあきらめたような顔つきである

「まあ、今後このような海戦は起きないぐらいの海戦です、海軍軍人は絶対参加すべきでしょう」と俺

「お前は海軍軍人なのか?」と二人

「ああと、もちろんであります」

二人の目が冷たい

「では、海戦が終わったらの行動とは何か?」

「はい、実は今後の日本のために、優秀な航空機のパイロットを獲得したく、敵地ドイツへの単独潜入を行います、これは、軍令部長には話は通しております」

「話は聞いているが、部長は奴は勝手に始めるから、止めても無駄とのことだったなあ」と島村は遠くを見つめている

「は、もちろんであります」

「帰ってこれるのか」

「もちろん、まだ死ぬわけにはまいりませんので」

「そうか、ではまずその海戦に向けて、厳しい訓練を行う必要がありそうだな」

「は、よろしくお願いします」

「こいつ、こんなやつですよ、参謀長」と島村

「はあ、まったくとんでもないやつですね」

「おい、参謀長を味方にしたいのなら、例のあれ見ておいてもらえ」

「は」

そうして、例のプロパガンダ画像の上映が始まる


ユトランド沖海戦はいわゆる戦艦同士が艦砲を打ち合う最後の大海戦と称されるようになる、この戦いでの主役は戦艦であり、真珠湾攻撃までは、それが常識となる


次の日から、第一特務艦隊は、厳しい艦隊行動、訓練を開始するのであった


一方、日本では、空前の大戦景気が起ころうとしていた

それに一番喜んでいたのは、藤である、なんと砂糖会社が儲け始めたのである、しかも、注文はうなぎのぼりである


岩倉も、全力で物資を買いあさり、高野海運の船を使って輸送を行っている、右から左へと物を動かすだけで、利益が出る状態である、まさに入れ食い状態である


徳川が経営する銀行・保険会社も集めた資金で運輸船舶への多額の投資、融資を展開している


BFAブローニングファイアアームでは、新型として、旧式の重機関銃を大量に用意してあり、帝国軍と対ドイツ軍側へと販売している、いくらでも必要な状態である

拳銃も恐ろしく売れていく

余剰資金は、すべて九十九銀行で信託しているという


DEディーゼル・エンジニアリング・高野建機では、ブルドーザーに続き、ダンプトラックの開発、そしてついにあの、黄色いユンボ(油圧ショベル)も開発された、エンジンも性能そのままに一回り、小さく改良し、ターボなどの付加装置も順次開発されている途中だ


完成品は、買い手がつかなくても、岩倉が買い取って、倉庫に保管しておくのである

戦略物資のため、国外への持ち出しは禁止している

あとは、量産化を行うだけである、量産化の工場を日本の各地、先に桂内閣に指示された重要港湾の隣接地に設立する計画であり、岩倉不動産が適地の買収を進めている


DEには、次の研究、2サイクル船舶用・産業用の大型ディーゼルが待っている


高野鉱山は、世界にかかわりなく順調に金の採掘を行っている、余剰資金はやはり、九十九銀行が投融資に回している


百瀬組はついに、東京を制覇したそうである

一体どこまで、勢力を広めるのか全く読めない

フロント企業の百瀬建設は相変わらず、都市再開発事業で非常に多忙らしい

しかし、その公共事業で得られる利益は、莫大なものとなりつつある

やはり余剰資金は洗浄も込めて、九十九銀行でロンダリングされいるらしい


「あとは、ガソリンエンジンが欲しい」俺は訓練中にそう考えるのだった

やはり、ダイムラーか?いや、ロールスロイスなのか?

しかし、回答は意外なところに存在した

「ディーゼルエンジンが作れるなら、ガソリンエンジンも作れるのでは?」と山口参謀

俺は、そのことに気が付いていなかったのだ、どちらかというと、ディーゼルエンジンのほうが製造は難しいのである


構造自体は、ほぼ同じようなものであり、ディーゼルエンジンの方がエンジン内の圧力を高めに維持するために構造材を厚くしたりする必要がありかさばり重くなる

ガソリンエンジンは、圧力が比較すると低いため、薄く軽くできるのである


早速、ディーゼル氏に、自動車用のガソリンエンジンの研究をお願いし、さらに、農業機器用のディーゼルエンジン小型化の開発も依頼しておく


岩倉なら、ディーゼルエンジンなのにガソリンエンジンなのですかと突っ込んでくれるところなのに、岩倉はここにはいない


1916年5月30日スカパフロー泊地

突然、出動命令が下る

ドイツ海軍が動き始めたとのことである

イギリス軍の情報分析能力はすごいものである

「む、やはり奴の言う通りになった」山下参謀長が苦虫をかみつぶしたような顔をしている

金剛以下第一特務艦隊は、出撃準備が十分にできていた、なぜか出撃命令を予測されていたかのように


「予定どおりの計画で動きます」山下参謀長が島村司令に言う

「うむ、そうしよう」


英海軍ジェリコー提督の艦隊が大慌てで出撃していく


帝国海軍は、機関準備に時間がかかるためその一時間後に出発を始める

十分追いつくことができるが、わざと先に行かせる必要があった


「しかし、この戦法は」と山下

「まあ、そういうな、我々は生き残り、次の世代への架け橋となるのだ」と島村

「は、しかし」

歯切れが悪い原因は、イギリス海軍をおとりにして、漁夫の利をさらうため、わざと遅れているためである


・・・・・

「イギリス艦隊発砲」双眼鏡を構えた見張り員が叫ぶ

「よし、我々は、全速で前進せよ」

金剛艦橋で艦長が命令する


現在イギリス艦隊はスカラゲク海峡を、ドイツ艦隊と併進し、南下している

我が艦隊はそれについていかず前進し、そののちに南下を開始する、当然英独艦隊のほうがどんどん南下していく

「敵に追いつくことができません」

「構わん」

失敗しても、出撃したことに変わりはないし、戦果を挙げることは大事だが、無理をすることはないのである、日本艦隊はあくまでもお手伝いなのだ


「敵艦隊見えます、回頭しています」

ついに、その時が来た、あらかじめ回頭することは予定されていた、この時を狙っていたのである

「取り舵!全艦!砲雷撃戦用意」艦体が急速に傾ぎ始める

その時俺は、超感覚(頭の中の黒い空間の中)で敵艦の動きをとらえていた、着弾予測位置が、敵艦と重なるのを見計らっている


「て!」その声より先に発射ボタンを押していた2連装4基8門の主砲が同時に火を噴く

常識を超えた、愚かな行為といわれそうな斉射であった


・・・・・

さかのぼること前日


「初めの一発目は、ぜひこの高野にお願いします」

「馬鹿を言うな、貴様は参謀だろう、砲は砲術長が撃つに決まっているのだ」

「そこを何とか」

「バカ者、そんなことが軍隊で認められるわけがあるか」山下参謀である

「いや、始めの一発なんか絶対当たらないから、いいじゃないですか」と俺

俺と、艦隊幹部が言い争っていた

「そういう問題ではない」山下参謀

もちろんそういうレベルの問題ではない

「どうしても、一回やってみたいんですよ」と俺

参謀総長の拳骨が襲い掛かるが、見事に空を切る

「貴様」

「では、私が」今度は砲術長が怒り心頭で全力で打ち込んでくる

しかし、それも空を切る

2度3度と空を切る

「やめんか」さすがに、司令が止めに入る

「お前な、部署というものがあるのだから、無茶を言うな」

「わかりました、では、無茶を承知でもう一度お願いします」

これだよ!と島村司令の顔に書いている

「この大馬鹿者が!」また、参謀総長が殴りかかるが、空を切る

「わかりました、ではこういうのはどうでしょう」

俺は懐から1円札の束を取り出した

「100円あります、皆さんに一束づつ、渡しますので、一発目の権利を買い取らせてください」

「この野郎!」

今度は司令官が切れた


司令、参謀長、砲術長が非常に疲れたような姿を見せた

「貴様!わしの夢にまで、攻撃を仕掛けるとは!」

「なんだあの、目隠しした、女神を名乗る怪物は」

「まいった、俺はお前が普通でないのにもっと早く気付くべきだった」

三者三様の意見を述べて、一発目の権利は俺のものになった

彼らの夢に女神が降臨し、攻撃を受けたそうだ


一応砲術の理論も勉強はしたんだからいいだろう

と俺は呟くのだった


・・・・・


艦砲というものは、非常に難しい予測の連続であるため、一発目はほぼ当たらない、どんどん修正して、夾叉 (きょうさ) させて命中弾をだすのであるから、一発目なんか誰も期待していないのである、調整のための準備運動のようなものである

此方が動き、あちらも動く、しかも、照準装置もそれほど性格でもないからとうぜんであろう、たとえ、火がでるような厳しい訓練を積もうともである


「だんちゃ~く」艦橋部員が予測時間から声を上げる

前方の海上で爆炎が吹き上がる

「まさか!」味方の射撃にまさかはないだろうと思いながら、意識が遠のく俺

山下参謀長が押さえてくれた


「大丈夫か」

「ええ、こういうのは、非常に疲れが出るので」

「敵の旗艦に命中したようだ」


突如、現れた敵の援軍にドイツ艦隊は、非常にうろたえた

しかも、旗艦の艦橋が大破してしまう、指揮系統が大きく乱れる、そこにさらに敵艦が、発砲しながら突撃してくる

回頭中で大きくスピードがそがれ、意識をむけていなかったほうからの攻撃がこれほど艦隊を乱すことになるとは・・・


ヒッパー提督(ドイツ海軍)の部隊は大混乱に陥り、まったく反応できない状態となる、帝国海軍第1特務艦隊は、全力攻撃を敢行、そして速やかに、離れていく

敵の別動隊が、ヒッパー部隊の援護に回るように突進してくる


火力的問題からも、帝国海軍では不利であったため、この奇襲?による一撃離脱戦法が採用されていた、あとは数で勝る、英国艦隊が何とかするであろうと


その後夜戦を続け、翌朝、戦闘が終わり、艦隊は帰投を開始した

帝国海軍に目立った損傷はなかった

しかし戦果は敵旗艦リュツオーを大破、駆逐艦3隻撃沈、巡洋戦艦中破などの戦果を挙げた、大戦果であった


英国艦隊は、日本艦隊離脱後の追撃戦によって、大戦果を挙げた

その端緒を日本軍が作ったことから、女王陛下から勲章を授けられることになった


こうして、ユトランド沖海戦は英国側の大勝利となったのである


かくして「一発屋の高野」が生まれた日でもあった

多大な魔力を使うため2発目にたどり着くことができなかったのである


いつも読んでくださりありがとうございます。

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