WWⅠ
高野建機(株)では、新卒生ばかりが80名ほど入社した
40名は新潟の貧しい学生を援助して、大学に入らせたものである
残りの40名は、援助学生のその友達たちである
社長に当たる人物はがいないので、ディーゼルエンジニアリング㈱(DE)の社長ディーゼル氏が指揮を執ってくれることになった
「では、君たちの半分は早速、アメリカのフォード社に研修に行ってもらう、半分は私と一緒に、エンジンを開発しよう」
フォード社への研修は、語学と大量生産を実感してきてもらうためである
というか、シャーシの製作が含まれていないのだが
幸いにというか不幸というか、会社建物は隣なので、ほぼ全員DEの社員になってしまったような形になる
その工場建屋の端っこには、油圧装置開発の教授と生徒たちが、何やら実験を行っている
とても、カオスな状態が広がりつつある
もちろん、東京にいる俺が知るはずもないことだったが・・・
その東京では、百瀬組が暴力によって、次々と傘下を急速に増大させていた
また、百瀬建設は東京の再開発で実績を急激に積み上げ、表の企業としても、大きくなっていった
都市再開発は順調で、朝鮮半島への投資を行なわなかった予算(韓国併合は行われなかった)で、日本の国土軸、鉄道、道路の整備も急激に進んでいる(元老田中の献策が続く)
そんな中に、ついに、エンジン開発から半年間の期間をおいて、ブルドーザーの一号機が完成する
圧倒的な破壊力?でさらに、開発に拍車がかかろうとしている、高野建機(現場の社員はDE建機と呼んでいた)がやってくれた!
人力から機械力への革命である
元老田中の意見で、陸海軍でも、工作大隊にブルドーザが導入されることが決定される
早期に、飛行場を完成させることができるらしい、との売込みであったが、その飛行機がないことが問題であった、そもそも飛行機など使えるのか?という疑問は多くの軍人が感じていたのだが、勅命に近い状態なので誰も表立って異を唱えるものはいなかった
この時代、まだ飛行機の重要性をしるものは非常に少ない時代であった
上からの命令で仕方なく、かわされたようなものであった
しかし、何事も、方向性の問題は非常に重要であり、機械化の嚆矢となるのである
この年の12月、内閣総理大臣は西園寺から桂になる(いわゆる桂園時代?)
その時、「国土交通は重要であるが、港湾の整備が足りないので、港湾関連の予算を要望する」との元老田中からの建白書がやってくる
「己!田中!なぜ、西園寺の時に出さないのか」と桂が絶叫していたが、もちろん西園寺内閣の時代にも様々な献策地獄が行われていた
今後の海外との関係から、早期に造船も可能な港湾整備の要望であり、函館、室蘭、仙台、和歌山を重要拠点に位置付け、投資を行うように書かれている
「陛下もご承知であり、ご賛同のようでした、田中元老はまさに鬼才とのことでございました」
侍従が、ニヤリと笑い、辞していく
「いつも、いつも虎の威を借る狐が!」桂が吐き捨てるように言った
しかし、残念ながら、田中の正体は依然として不明であった、内務省が調査をサボタージュしているのである
1913年(明治46年)
残念なことに、父母が相次いで亡くなった
葬式で兄五十六と久方ぶりに会う
順調に出世しているようである
1914年(明治47年)
俺は大尉に進級した
この年、ついに第1次世界大戦が勃発する
「徳川さん、岩倉、藤、みなご苦労ですが、これから全力で商売に当たってください、この機会を逃さず、徹底的に儲けます、情けは無用です」
岩倉東京の会議室で、その三人とその他の経営幹部たちがいる中、俺が激を飛ばす
「ただし全力は1916年までとします、その後は安全策に方針を変化させてください」
すでに、関連会社だけでも二十数社に上り、経営幹部だけでも相当数いる状況になっている、大会議室は満席状態である
・・・・・
統合本部
「イギリスから、参戦の要請が来ております、わが国としてどう対応するのか、これが今回の議題であります」
陸軍参謀総長が説明する
「海軍は参戦したいと考えているが」と東郷
「陸軍は観戦武官を派遣する程度でよいかと考えています」と陸軍大臣
「陛下、いかがでしょうか」乃木大将
このところ、明治帝はさすがに体調が思わしくなくなっている
「条件次第である」
「条件とは」参謀総長である
「ぱ、ぱ」
「ぱですか?」
「ニューギニア島の領有権である」
「南太平洋の大きな島ですか」
「朕の枕元に、#$%&女神が立たれた、朕の最後の仕事はこの大戦を見極めること、そして、パプアニューギニアをドイツより確保する、なお、海兵団はパ島に侵攻し、陸軍が占領、実行支配すべし、その他のドイツ領についても、海兵団が先手となり陸軍が占領せよ、ニューギニア島の領有を認めないのであれば、わが国は参戦しない、だが南洋のドイツ領は奪取する」と明治帝が指示を出す
陸海の両首脳部は震えた
このように、天皇がはっきりと目的を示すことなどいまだかつてないことであったのであるから当然といえば当然である(天皇が軍事に直接口出しはしないという決まり事が存在したからである)
そして、命じられれば、応じるしかないのである
しかし、なぜニューギニア島なのだ、多くのものが首をかしげていた
「では、外務省を通じて、交渉させます」と総理大臣
「うん、あとは任せる」
全員が敬礼する
乃木大将が付き添いで、陛下が退出する
「で、陸軍はどうする、島の占領のみにするか、大陸の戦闘に兵を送るのか?」と海軍
「海軍は軍を送るのか」と陸軍
「一部の艦隊を送る、まあ、島の領有が認められれば、それだけの仕事はせねばなるまい」
「では、我々も一部、軍を送り、欧州大戦の経験を積ませよう、輸送は海軍にお願いする」
「わかった、では、お互い準備をするとしよう」
「では、これで終了でよろしいでしょうか」と参謀総長
「では、解散とします」
「誰も、陛下の#$%&女神発言に口を挟まないとは!」と俺
「お前がいわせたのではないのか」と東郷
「いえいえ、パ島は私の案ですが、#$%&女神の話はしてませんよ、奴はやばいですよ」
「そうなのか、わしはてっきり、お前が黒幕だと思っていた」
「・・・・」
「陛下も近ごろはあまりよろしくない」
「そうですね、私の記憶では、明治は44年までですから」
「うむ」
・・・・・
「ニューギニア島?あんな島が欲しいのですか?しかし、そのほかのドイツの南洋諸島もというと、少し強欲というものでしょう」と英国領事
「いやなら、わが軍は参戦しません、しかも、勝手にドイツ領を占領します」外務省役人
「そんな、無茶が通るとでもいうのか」
「とおるというか、通します、お国は戦争で手一杯になりますよ」
「足元を見おって」英外務省高官
「いや実は、軍からは、南アフリカ方面での採掘権もとってこいと言っておられたが、さすがにそれは無理でしょうと断りました」と外務省高官
「なんと!強欲すぎるであろう」
「軍は、火事場泥棒的にやれば、できるといっていましたよ、今回の戦争はそう簡単におわらないと言っていましたし」と外務省役人
「貴国の軍隊は、強盗か何かなのか」英国領事
「まあ、軍組織なんてそんなもんでしょう、お国のやり方も、原住民を撃ち殺して奪ったのではありませんか?」外務省高官
「無礼な」英国領事
「今回は、失敗してもよいといわれてますので我々は楽です」外務省高官
「日英同盟が終わってもよいというのか」英国領事
「これも、そういわれるといわれてました、まさに元老田中様は鬼才です」外務省高官
「たなか?」
「そもそも、今回の戦争で、お国は深く消耗します、日英同盟はそもそも意味をなさなくなるのでは?」
「なめているのか?」
「まあ、そんなに怒らずに、よく考えてください、我々は協力する必要があるのですよ」
「何を!?」
「太平洋の覇権がお国の衰退により米国に渡るかもしれないのです、これから、あなた方は、米国と競争することになる、わが日本も米国に圧力をかけられるのです、この戦争の本当の勝者は米国ということになるのです」
「・・・」
「国土を荒らされず、製品を買ってもらえるのです、まあ、日本も同じですが」
「・・・・」
「我々が協力せずに、米国に圧倒されるのですか?」
「この話、女王陛下のご裁可が必要です」
「もちろんです、我々は同盟国です、お忘れなきように」
「わかっておる」
・・・・・
かくして、ニューギニア島の領有権は、日英同盟により暗黙の裡に了承される
日本が同盟国側に宣戦布告すると、あっという間に、中国の青島方面、南洋諸島が占領が開始される、さらに、ニューギニア島に日本軍が進駐する
海兵師団は上陸訓練を常に行っていたので非常に順調に仕事をこなす
陣地構築には、ブルドーザーが大活躍した
このことにより、ブルドーザーの受注が大幅に増加することになる
ニューギニア島の占領には、オーストラリアが難色を示したが、英本国が仲介してくれた
早速、ラエの要塞化工事を開始する、ここで、ブルドーザが革命的なさらに力を発揮するのである
要塞化工事を請け負った百瀬建設が海外初進出を行う足掛かりとなった
後に、軍人たちから「第100工兵旅団」と呼ばれることになる伝説の始まりであった
海軍は艦隊を派遣、陸軍は旅団をイギリスに派遣することが決定される
その中に俺も入っていた、第1特務艦隊、行先はイギリス本国のスカパフロー泊地、最新鋭戦艦金剛の乗組員である
初めての艦艇乗り組みである、さすがにいろいろと問題があるような気がしてくる
艦内はまるで迷路である、困ったなあ~と早速道に迷ってしまう俺がいた
「総長、お久しぶりであります」慣れない戦艦の中をうろうろしていると聞きおぼえのある声がした「おお参謀、いいところで、この艦への乗り組みか」それは山口参謀であった
「そうですよ、総長そういえば、船乗ってませんよね」すっかり海軍軍人となった山口大尉であった
「実はそうなんだ、よくわからんのだよ」と実際には全く船に乗ったことのない大尉の俺氏・・・
「私ができるだけ、サポートしますよ、一緒に艦橋に向かいましょう」
こうして、絶好のサポートを得ることができたのである
もちろん、裏で東郷部長が手を回してくれていたのであるが、俺はそんなことをもちろんしらない
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