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将軍家!

1911年明治44年はまだ続く


それにしても、何をおこなうにも金が必要になる

各方面から出資を得たり、借金をしたりしているが、これを大きく育てる必要がある

前世?の知識を生かし、うまくやる必要があるな


「岩倉よ」

「は、総長、新たな企みですね」

「そうだ、鉱山会社を作ろうと思う」と俺

「あてがあるのですか」

「会社にあてはないがな、掘る場所にはあてがある」

「なるほど、では今年大学を卒業してくる者たちに経営を任せましょう」

「おお、ついに、大学卒が!」

「はい、高野学校の成績優秀者を大学に送り込んできましたが、ようよう卒業者がでます」

「まあ、これからは、私も楽をさせてもらえますな」と岩倉は少し満足そうだ

「ご苦労だった、これからは戦闘機のりにでもなればよい」

「総長、今度は、飛行機を狙っているのですか」

「絶対に外せん技術だからな、そうそうに航空兵の養成学校もつくらねばならん」

「航空隊もできていないのにですか」

「軍のやっていることなどあてにならんからな」

「総長は軍人ですが」

「私があてになるのか?」

「いえ、なりません」

「そうだろう」

「はい」

かくして、鉱山会社”高野鉱山㈱”が設立される

資本金100万円というかなり破格な資本金であるがほかの会社も同じである

人員については、こちら側の関係者を会社経営で、掘削現場は、鉱山会社の人間を徹底的にスカウトしたというか、金にあかせて引き抜きを敢行する


あてがある場所は鹿児島県の菱刈である、知っている人は知っている金山であるがこの当時はいまだ無名の山である、地元民から広大な土地を買い取ると、地元民たちは呆れた様子だった「何をするつもりだ」といぶかしんでいたという


儲かれば、まさに軍資金である、横浜正金銀行が融資を引き受けてくれた

本来は、貸したくはないであろうが、明治帝から命じられては仕方ないであろう

こうして、菱刈鉱山は、掘り進められることになる


何本か試掘したが、鉱山技術者は、顔を横に振る

もう2本も掘ると、鉱脈らしいものを発見したとのことである

「とりあえず、一儲けできそうだな」忙しい俺は軍令部部長室でうなずくのだった


金鉱はあることはわかっていたので、問題はなかった

どんどん、金を生み出してほしいものだ


その時部長室に同期のアリスちゃんがやってきた、彼は兵学校の最終年に盲腸炎にかかり死にかかっていたのを、俺の手術で助けたのである

「有栖川宮中尉!」

「高野君!」

1年半に及ぶ練習航海に耐え、今や中尉に進級した、日焼けした男前になっていた

「宮様元気でやってますか?」

嬉しそうな笑顔で彼ははいってきた

「うん、何とかね、すべては君のお陰だよ」

「いやいや、それよりも随分と日焼けしたね」

「それより、今日は、軍令部長に個人的にお願いがあってきたんだよ」

さすが皇族、普通の軍人は部長には会えない

「部長は、参内してますね、言付かりますよ」一応秘書のようなことをやっている俺である(ほとんど存在しないので、佐藤兄弟が秘書だと思っている人の方が多い)

「ああ、頼むよ、実は妹が結婚することに成ってね」

「おめでとうございます、宮様」

「ああ、それで、部長に出席のお願いに上がったわけだ」

通常の兵隊ならば、軍令部長が出席するはずもないのだが、有栖川宮家ともなれば、皇族家のなかでも、最有力クラスである、上司というか、社長?クラスの話であるが

「お相手はどなたで」

「公爵の徳川慶久さまだ」

「ええと?徳川将軍家?」

「まあ、時代が時代ならね」

どうも、最後の征夷大将軍の孫にあたるらしい


「へえ、やっぱり、宮様、半端ないですね」

「どうだろうね、とても男前の人だよ、映画俳優になれそうなひとだった」


「もてもてで、公爵で資産家、うらやましい限りですね」と俺

「頭もいいらしい東京帝大卒で、今は第一銀行に勤めているようだ」

「頭までいいとか、ありえない」実際すべてをもって生まれてきたようなひとであろう

「君もすごい才能を持っているじゃないか」と宮様

まあ、そうではあるが、これは任務達成に必要な能力であり目隠し女神?から与えられたもの?である、生まれながらにして与えられている人間とは違う!

というか、ある意味同じなのか?と自問自答してしまう

「あっ!」

「どうした、高野君」

「第一銀行でしたよね?」

「らしいよ」

ぜひ会いたい、金のなる木を探す才能スキルがそれを指し示すかのようだ


嘘です、そんなスキルはありません


「ところで、その義理の兄と今度会うことに成ったのだが、じゃあ一緒に行ってくれないかい?」

「宮様、ぜひ喜んで」下舐めずりしながら同席をOKする俺だった


旨く行けば、第一銀行からも融資を得ることができるかもしれない

融資がなくても、大変良い出会いである

まさに、運命的というべきなのかもしれない


・・・・・

都内某所

「やあ、待たせたね」

シルクハットにスーツ姿の男が車から降りてやってきた

俺達二人は、軍服である、敬礼して出迎える

「公爵閣下ですか」

「ああ、みんなヨシヒサさまって呼ぶから、ヨシヒサって呼んでよ」

男前が笑顔でさわやかに言ってくる

「有栖川宮タネ仁です、妹がお世話になります」

「付き添いの海軍中尉高野であります、よろしく願いします」と敬礼


「ああ、弟宮様と今海軍で話題の高野さんだね、噂は聞いているよ」

「海軍ですが、まだ軍艦に乗ったことはありませんが」と俺

「そうだよね、練習航海に行かなかったよね、大丈夫なの」と有栖川宮

「ドイツには、言ってきたけど、あと満州かな」

「旅行?そんな、俺たちは地獄のようにこき使われていたのに」と宮様

少尉候補生は、普通の兵よりも扱いが下になっているようで、とても大変なようだ


「まあ食事でもしながら、話をしよう、車でいこう」

慶久が黒塗りの車を指さす


三人とも後ろに乗り込む

この当時、車は外車であり、5000円もする高級な財産である、ちなみに、平均的な給与は20円ほどである

さすがは徳川将軍家、きっと資産家なのであろうと、舌舐めずりするのだった


「自家用ですか?」

「ああ、そうだね」

「有栖川家にもあるよね」と俺

そういえば、車乗ってないな、軍令部長の顔が思い浮かぶ、俺の車はどうなったのだろう


銀座の高級洋食店でシチュウなどをいただきながら

「日本の食事は、もっと肉を食べねばいかんな」と俺

「だから、学校では、いつも食事つきだったのか」

「いや、あれは、餌付けといって飼いならす方法だよ」

「ヒド」

ワイワイと三人で談笑した


「ところで、今いろいろと起業しているんですが、軍人の仕事もあり、なかなか思うようにできないのですが、徳川様、わが社の財務担当役員になってくれませんか」

「わが社?」

学校も含めると関連会社が10程度はある、岩倉の能力では賄いきれない状態である

「ええ、小さいんですがどれもこれから伸びると思うんですが」そういいながら、会社群について説明していくと

「おお、あの映画を作った会社じゃないか、ザニンジャ、アメリカで大ヒットしたやつ」

「ええ、そんなことしてたの、ひどいじゃないか!」と宮様

「何が!」

「僕も映画に出たかったよ」

「え?そうなの」

「決まってるじゃないか」

「山口参謀の兄貴が主役の忍者だけど」

山口参謀も同期である

「え!」

「きっと山口君は知らないと思うよ、俺たちは、ずっと海外だったから」

海外が外国のことなのか、海上のことなのかは俺には区別がつかなかった

「欧州でもヒットしたけど」

「断固要求する」

「ああ、残念、第2作はもう撮り終えてる」

「が~ん」

「が~ん」

「ええ?徳川様もでたいの」

「もちろんじゃないか、面白いことには全力で取り組む、それが僕のポリシーだよ」と案外気さくさを持つ人のようだった


「あ、そういえば俺第2作で、敵の侍大将役で出てるわ」面付けてるけど

「何!」二人は憤慨している


「だせ~」

「だせ~」二人はすっかり意気投合したようだ、シンクロしている

「では、わが社に入社の条件として、第三作出演を約束します、一応、脚本家?的な立場なんで」


「その件については、少し考えさせてくれないか、一応僕もそこそこの家の跡取りという、微妙な立場なので」

「わかりました、前向きにお願いします、できれば公爵家からの出資もお願いしたいです」

「恐ろしい、商売人根性だね」と宮様

「ありがとうございます、でも君の父上も有栖川自動車の社長になったよ」と俺

「え?なになにどういうこと?」息子はそのことを知らされていなかったらしい


・・・・・・・・・・・・・・


ふと、藤は大丈夫なのだろうか?と考える

まだ、メープルシロップが届かない、どうしたのだ藤よ!


そのころ、藤は、北海道の大地をたがやしていたのである

甜菜糖、小麦、ジャガイモなどを作付けしている

新潟では、稲作、砂糖楓の植樹と樹液採集を行っている

台湾では、ゴムの木の栽培も手掛けており、忙しく働いていたのである

すでに、100名以上の社員を抱える農業会社へと成長したわけだが、採算は取れていない

しかし、甜菜糖の栽培は、十分に成功をおさめ始めた、直播からある程度の種苗育成後の植え替えで収穫量が格段に増えたためであり、小麦、米も耐寒品種の発見により生産拡大に成功している


製糖はかつて、官営工場が建設され失敗したが、その工場が藤農業に下げ渡された

すでに政商化している高野グループであった


のちに、藤製糖、藤ゴム、藤製粉、藤食品などの分社、巨大企業グループへと発展していくことになる


いつも読んでくださりありがとうございます。

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