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金属研究所

東北帝国大学理学部教授となった本多光太郎のもとに、外国人と商社社員を名乗る若者、そして軍人と妙な男たちが訪れていた


「忙しいところ恐れ入ります」一番の年若い軍人が言葉を切った

全く恐れ入っていないことは明らかである


「そうですな、今日は絶好の実験日和、早く実験をしたいのですが」


「そうですね、さすが実験の神、本多博士ですね」


「ところで、その実験について、此方から依頼があってまいりました」

今度は商社社員の年若い男が言った


「初めまして」今度は外国人が英語であいさつした


「こちらは、ドイツ人のディーゼル博士です、エンジンの研究をされており、今度、日本で、自動車用、船舶用のエンジンの会社を設立されました」と紹介される


「そうですか、鉄関係の実験ですか?」と本多博士


「いえいえ、今後耐熱金属が必要になりますので、そちらの方をお願いしたいのです」


「耐熱金属?」


「特に過給機では、排気が高温になりますので、耐熱金属を先手を取って、研究したい、してほしいと考えているのです」と若い軍人


「?」本多博士は不思議そうな顔になる


「ニッケル基の金属は耐熱性に優れているので、ぜひ研究していただきたいのです」


「鉄ではないのかね?」


「もちろん、鉄自体も重要ですが、耐熱合金も重要になります、今のうちに性状、機能、利用方法について知っておきたいのです」


「耐熱合金とは、初めて聞く言葉だね」


「先生が初めて作ることになります」


「私が?」


それにしても、この軍人は、専門家でもないくせに、断言しているのが気になる

本多はそう思っていた


「そこで、先生には、学業とは別に、特殊鋼の会社を作り、そこで、耐熱合金、特殊鋼の研究をしていただきたいのです、まずは、ある映像を見るところから始めましょう」


そして、ソファに促される本多博士、その隣に、軍人が座る


「今から、流れるものは、映画のようなものではありますが、非常にショッキングなものなのでご注意を願います」


軍人が博士の手を取る


そうして、アカシックレコードから編集された、大東亜戦争が始まるのであった


滂沱の涙を流す本多博士を、ルドルフ博士は驚いたように眺めるだけだった

そういえば、この光景をルドルフは初めてみるのだった


「こんなことは、許されてはならん!断じてならんぞ!」本多博士は泣きながら叫んでいた

「その通りです、先生、我々とともに戦ってください」

実際には、すでにこの世界の未来ではないのでどうなるのかは不明であったが、俺の世界では確実に起こっていたことなのは間違いない事実である


「私は、お国のために、全身全霊で実験を行い、見事その耐熱合金と特殊鋼とやらを作り上げる所存である」本多博士は何らかのものに宣言した


こうして、資本金100万円の本多金属㈱が設立されることになる


ある程度の金属レシピは知っていたので、有名な耐熱合金の成分と焼結冶金について、説明しておく

「君!これは特許とれるんじゃないか?」

「先生、まずは秘匿でお願いします、ばれそうになったら特許をとって、特許料の一部をこちらに還流してくれれば問題ありません」

例の契約魔法を済ませた俺がいう


「わかった、任しておきたまえ、国家安寧のために私は全力で頑張るぞ、全力で実験だ」

なまじ、まじめな性格のため、一方的な軍事裁判の判決をみせられれば、義憤に駆られてしまうのであろう


こうして、ターボ過給機への布石は完了した


「私は、来なくてもよかったのではないかね」

「ルドルフ先生にも、見てもらいましょうか?」

「あるのかね」

実は、第2次世界大戦のドイツ版が完成している、もちろん、ヒトラーが悪的な出来上がりになっている、ただし、国のために、ドイツに帰るといわれても困るので今まで見せていなかった


「ではせっかくなので、みんなで見ましょう、ただし、これはルドルフ先生の故郷のドイツについてまとめております、この映像では、日本はドイツと同盟を組みますが、それは不確実な要素として指摘しておきます」


俺、岩倉、ルドルフ、本多(ほぼ関係ないハズ)が手をつなぐ


始まりは、パリ講和会議から始まる、この会議において、敗戦国のドイツは巨額の借金を負わされることになる

どんなに頑張っても、返しきれないほどの借金であり、国土の一部も賠償として取られることになる

そんな中、民衆の不満をうまく味方にして、ナチスが台頭していく

そして、ポーランド侵攻、ついに第2次大戦がはじまる

ユダヤ人の虐殺、さらには、ソビエトへの突然の侵攻等次々とナチス親衛隊が活躍?していく

だが、ついに連合国の反撃が始まり、ドイツ本土が爆撃を受けることになる

最後は、ベルリン陥落、多くの軍人が、シベリアへ連れ去られ、住民女性が強姦・虐殺される


「ロシアめ!許さんぞ!」

ルドルフ博士が怒鳴った

「ソビエトです」

「なんだそれは!」

「共産主義者の国です、このころには、ロシア帝国は滅んでいます」

「許さん!」ルドルフ博士の絶叫がこだまする


「この映像は未来の映像なのか」と本多博士

「正確には、ある世界の歴史です」と俺

「では、この世界ではないということでは」

「さすがに、博士、その通りです、しかし、類似した世界であるため、同じようになる蓋然性は高いと思われます」と根拠もなくいう俺

「なるほど、わかった」さすがは博士だ、俺には何が何だかわからないが、理解してくれたようだ


「それにしても、ドイツはとんでもないことになる、早く知人たちを脱出させなければならない」

「その通りです博士」と適当に相槌をうつ俺

「ユダヤ系の知り合いを逃がさなければ」

「ええ、頑張りましょう、日本を拠点にすればよいと思います」

「手を貸してくれるのか」

「もちろんです、博士」帰るといわれたらどうしようと考えていたが、うまくいったようだ


ユダヤ系の資金力と知識力はぜひとも取り込めるだけ取り込みたいものである


・・・・・・

ところ変わり、東京

久しぶりの東京である、次々と場所を移動していると、足元がおろそかになってしまうものである


麹町区の一画に有栖川宮威仁たけひと親王(いわゆる父宮)の屋敷が存在する

俺の知る歴史では、息子の栽仁たねひと王が早世(例の盲腸炎)し、失意のうちに肺結核を患い、1913年に病没するのであるが、歴史は変化し、栽仁君は健在、父宮も大した病気にもなっていない状況である


「今日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございます」

「君に言われると断れんだろうが」父宮は海軍大将でもあるはずだが、苦り切った表情である


「ところで、お体の方に異常はございませんか?」

もともと、この家系の人は体が弱いのか、早世する人が多いのが気がかりである

実際、御家がなくなっている

「ああ、少し、咳がでるが、昔からあまり体は強くないのはわかっているからね」

「では、少し診てみましょうか、閣下には長生きをしてもらわないといけませんからね」

「大丈夫だ、儂は長生きしてみせる」

そうは言っているが、早速、俺の脳内に、異常の文字が浮かび上がる

「少し、異常があるようですので、私が、施術を施します」

「そうか、すまないな」自分の息子を助けてもらったこともあり、父宮は素直である


俺は、いわゆる手かざしを行いながら、力を籠める、手のひらが少し光る

光は少しまぶしい程度に光、消えていく


気を失いかけると、横の佐藤兄(影武者1号)が俺を支えてくれる


「宮様はやはり肺結核の兆候がおありの様ですので、十分に栄養を取るようになさってください」

「わかった、感謝する」


「ところで」

「やはり来たか!」


「閣下は日本初の自動車を生産されたとか?」

「うむ、まあな」

カイゼルひげをつまみながら少し自慢げに宮がにやりとする


本当のところは、自動車輸入業者が部品を輸入し、日本で組み立てたらしいのだが、日本初というのは間違いないらしい


「そこで、閣下にお願いしたいのは、自動車生産業を隆盛させていただきたいのです」


「?」父宮は全く理解できていないようである


「有栖川自動車を起こして、この日本を自動車王国とするのです」


「有栖川自動車?なんだそれは」


「もちろん、宮様の自動車会社です」


「わからんな」


「わからなくても結構です、会社設立、運営はこちらで行いますので、名前と金を提供していただければ、社長の座をお約束します」


「お前な、この前も金を出資させたではないか」げんなりとした表情の宮様

以前500万円ほど預かったことがあったのを思い出す

「そうでしたね、ではその金を使い作っときますので、宮様の知る技術者にこの会社に入るように声をおかけください」


「わかった、だが、貴様はなぜ艦隊勤務をしていないのだ、わが子は船に乗っているというのに」


「そうですね、海軍軍人としては、お恥ずかしい話ですが、地上勤務で忙しいもので」


こうして、有栖川自動車㈱が資本金100万円で創立された

しかし、日本初の自動車の話だが、岩倉(株)はすでに大量のT型フォードを輸入していたが、それはカウントしなくてもいいのか?とすこし疑問が湧いたが、どうでもいいことに気づいたので無視する


いつも読んでくださりありがとうございます。

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