ルドルフ氏
「ということで、ほぼ勤務がなくなりそうなので、ドイツに行きます」
「総長、私、岩倉がすごく忙しいのです、主に総長の指示のせいですけど」
「岩倉、後継者を育てないとな」
「無茶言わんでください」
「ということで、岩倉は重機の会社立ち上げの準備をお願いします」
「総長、また会社ですか、銃器あるじゃないですか」
「その銃器ではありません、重機械の重機です」
「それより、まだ自転車のほうが手探りなんですから」
「おお、それは忘れていた、頑張るようにな、それと自転車がしっかり生産できるようになったら、オートバイね」
「オートバイって何ですか?」
「自動二輪です」
「?」
「さすがに、怒りますよ、藤の方からも、甜菜を絞る機械を買ってくれとか言ってくるし」
「おお、甜菜は豊作になったのだな」
「総長の言うやり方にしたら、とてつもなく取れるようになったらしいです」
「結構、結構」
「でも、新潟中に植えた、あの白樺どうするつもりですか、材木ですか」
「なに!メープルシロップを作るのだが」
「なんですか?そのシロップとは」
「なんだと、知らんのか?あのうまいやつだぞ」
「うまいんですか?」
「すまん、藤に作り方を伝えなかったのかも」
岩倉は微妙な顔をしている
俺も微妙な顔になる
「ゴムはゴムを取るでいいんですよね」
「まだ、苗木だろ、とにかく製品は、イギリスから買い取れ」
「自転車の車輪用ですね」
「おお、岩倉つながっているな」
「総長がすべてバラバラに思いつくので、岩倉の社員が大わらわですけどね」
「すまんな、ところで、地上げの方はどうだ」
「それは、百瀬組が担当なので、あまり無茶はしないようにいってますけど」
「東京は過密すぎるからな、震災対応のために、区画整理を行いたい」
「震災!また、不吉な言葉ですね」
「さすがにこれは冗談ではすまんぞ、延焼しないまちづくりをする必要があるのだ」
「それは、政府の仕事では?」
「だから、やる前に買ってるじゃないか!」
「え!」
「不動産は儲からないとだめだからな」
「え?藤には、儲け度外視って言ってませんでしたか」
「儲けることができるのに儲けないのはおかしいだろ」
「そうですね」
「それで、俺が一緒にドイツにまた行くんだな?」と山口兄
「そうですね、ただ、先生はまた主役をやってもらってからになるんで、今回は私とブラウニングさんとで遊び乍らいってきますよ」
「ブラウニングさんは今頃、山形の銀山温泉じゃないか?近ごろ温泉に凝ってしまってな、温泉温泉とうるさいのだ」
「ドイツにもいい温泉地があるはずですよね、クララのおばあさんが療養にいっていた」
「お前の話には、たまによくわからん単語が入るな」と山口
「副総長、たまではありません、いつもですから」此処では、山口は副総長ということになっている
「うん、そうともいうな」
㈱岩倉及びその子会社関連の資金不足は、映画の大ヒット及び玩具、飲料の大ヒットで解決された、飲料と玩具は継続的に利益を提供してくれるものであるので非常に有用である
原価も低いしね
かくして、俺と山形の銀山温泉で芸者遊びをしていた状態から拉致されて東京に帰ってきた、ブラウニングさんとはドイツのアウクスブルクへと旅立ったのである
その数日後、桂総理大臣はまた、元老田中の建白書なるものを突き付けられ、無念のうめきを上げる「田中!わしに何の恨みがあるのだ!」
曰く「東京は過密すぎるので、区画整理をきっちり行い防災に強いまちづくりを行わねばならない」
「陛下からも、ゆめゆめ怠ってはならぬぞ」とのお言葉です、書簡を届けた侍従の言葉である
「己!田中」桂は怨嗟の声を上げるのだった
「君、荷物少ないね」ブラウニング
「ええ、お持ちしますよ」俺
何せ、収納のスキルがあるので、なんでもそれに入れているので荷物は不要なのだ
「いえ、私が」西という少年である、荷物持ち兼護衛役として、派遣された若者である
「じゃあ、船室まで頼むよ」
「ブラウニングさん、西君よろしく頼みます」
「は、総長殿」と敬礼する西
「ああ、頼むよ、案内はまかしてくれ、それと温泉もあるといいな」とブラウニングさん
「あると思いますよ、そこにも行きましょう」と俺
「おお、昔から君は物分かりがいい」
「山口はあれでなかなか、硬いところがあるからな」
「そうですか」
俺たちは、英語で話し合っていた
もちろん、西も外国人教師から教わったはずなので、適当にはなすことができる
「西君、学校の教育システムはどうだ」
「はい、総長、僕らのような貧しい家の子供は通常進学できないですが、食事付きで勉強できて大変ありがたいことです」
「そうか、君らのような、優秀だが進学できない子供が勉強できているなら、結構だ」
「総長のおかげです」
「いや、岩倉のおかげだな、俺は言い始めただけで、運営はまるなげだからな」
「では、総長と副長のおかげです」
「まあ、先は長い、気楽にいこう」
「そうじゃぞ、少年たち、船旅は気長なものだぞ」旅慣れているブラウニング氏のありがたいお言葉である
「暇だと、手紙ばかり書きそうで」
「書けば、いいんじゃないか」
「みな、それだと困るようなので」
「そうか、お前さんは一家の長らしいからな、だが、皆のことも常に気遣ってあげるようにな」心根のやさしいブラウニングさんらしいことばである
「はい、そうします」と俺
・・・・・
「グーテンターク」俺と西がドイツ語であいさつするとルドルフ・ディーゼル氏は少し驚いたようだったが「ハロー」とブラウンさんが挨拶すると「ああ、あなたは、」
「ブラウニング、ジョン・ブラウニングだガンスミスの」
「ああ、そうでした」とルドルフ氏、表情が少しくらい
「この前、芸者遊びの誘いにきたじゃろ、今回はその続きできたよ」
「ああ、」ルドルフ氏は暗い顔をしている
「そんなしんけくさい顔するな」
「そうですね」
「何かお悩みがありそうですね」と俺
「いや、そういうわけではありませんが、いつもこんな感じですよ」とルドルフ氏
「少し診せてもらいましょうか」
「え」
「私、日本で、医者の真似事をしていたことがあります」嘘は言っていない
「医者なのですか?」
「少し診てみましょう」敢えて問いには答えない、医者ではないので
そうして、診察を行うと
〈目に異常〉と謎の文字が浮かび上がる
「目が少しお悪いのですか」
「え!そうなんです、視力が片方だけ悪いようで、昔、実験中に爆発を起こしてしまってそれから、少し調子が悪いのです」
「なるほど、それが気分がさえない原因になっているかもしれませんね」
「まあ、それだけではないとおもいますが」
他にも悩みがあるらしい
〈目の治療を開始しますか?〉ってできんの?
「少し、痛むかもしれませんよ」とYESを選択する
目に向けていた手がジワリと光始める
「なんと」「え!」ブラウニングさんと西が驚いている
10秒で光が消え、俺の意識も消えかかる、倒れそうになるのを西が支えてくれる
「すまん、西」魔法は魔素の薄さから使うとすぐ限界に来てしまうのである、これでまた弘法大師さまにすがりつきにいかなくてはならない
「ああ、久しぶりになんだか、気持ちがいい、それに少し見えかたがよくなった気がします」喜色を浮かべるルドルフ氏
「ありがとう、ええと、」
「高野です」
「ああ、高野さんありがとう、何だか力が湧いてくるようだ」
「それはよかったです」
「なんといって、お礼をいったらいいのか」なんだか涙ぐむルドルフ氏
「じゃあ、目がよく見えるようになったことだし、温泉に行こう」
「え?」
「じゃあ、ウィースバーデンに行きましょう」
「え?」
「そこに温泉があるのか」とブラウニング氏
「ええ、あるらしいですよ、ディーゼル博士の先生のリンデ博士もいるんでしょう?」と俺
「先生を知っているのですか?」とルドルフ氏
「いえ、実は、ディーゼル博士のエンジン技術を発展させるお誘いにきたんですが、博士の先生、つまりリンデ博士は、冷凍や冷蔵の機械を売っているらしいじゃないですか、ぜひディーゼル博士に口をきいてもらって、その機械も買って帰りたいなとおもいまして」と俺
「そうなのですか」とルドルフ氏
「ええ、実は牧場もやっているんですが、やはり冷凍技術がないと、肉なんかすぐに腐りますから、ぜひとも手に入れたいん技術なんです」と俺
「さすが、商売の神だな」とブラウニング氏
「商売の神!」とディーゼル氏
「こいつは儲けることにかけては天才だ、こっちでは、ザニンジャはやってないのか」
「見たことはないですが、すごいとうわさは聞きました、映画ですよね」
「それを作ったのは、ほぼ彼だ、しかも、映画の中でおもちゃや飲み物をつかって、それも同時に売り出しているんだ、それを考えたのも彼だ」
「そんなに、すごいのですか」
「私の作った銃が、日本の軍隊の正式銃になっている、そのおかげで、わしは温泉三昧だよ」とブラウニング氏
いままさに、彼は温泉スミスだった
「本当に?」とルドルフさんは本当に驚いた様子である
「本当だよ、嘘いっても仕方ないじゃないか」とブラウニングさん
「まあ、ブラウニングさんの作った銃は、まだ一部しか売っていませんので、それも売り出せばもっと利益は出せますが、待ってもらっている状態です、何せ、新機軸すぎるので」
「君が、なんか考えているのなら、まかしておくだけだ、今のままでも、十分遊んで暮らせるからな、いまみたいにドイツ旅行もただでできるしな」
「ありがとうございます」
「じゃあ、そのウィース何とかに行こうじゃないか」
「ルドルフさんも早く、日本にいく準備をしなさい、まずは、ウィースなんとかにいくがな」
「ウィースバーデンです」とルドルフ氏の顔に笑顔が生まれた
「では、温泉にて、博士の会社の話をしましょう」
「私の会社?」ルドルフは怪訝な表情を浮かべる
「私たちが精いっぱい出資しますので、博士は、研究で、ディーゼルエンジンをより発展させてください」
「ディーゼルエンジン?」
彼の開発したエンジンがディーゼルエンジンのと言われるようになったのは、彼の死後である、当時はオイルエンジンなどとよばれている
「私の名前がエンジンの名前になる?」ルドルフの目に光がうまれた瞬間だった
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