表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/100

映画

1910年(明治43年)

この年、日韓併合は起こらなかった、それどころか、朝鮮半島の大部分から、日本軍、企業は撤退した、鉄道沿線と関連鉱山のみを警護する部隊のみが常駐する状態となる


事実上政府の機能していない朝鮮半島であるため、北接しているロシア軍が国境周辺の町や村を襲うような事態が多発しているという


このころ、BFA工場(新潟市)の隣の空き地に高野工業技術専門学校と普通科の高野学校が正式に開学する(定員各200名)、これは、収入の少ない家から優秀な子供を受け入れて奨学生として育て、いずれ関連会社に入社させる目的で行われているものである、今までの学校規模では、足りなくなったため、新校舎を増築し、同時に、普通科も新設したものである


それに合わせて、BFAの新工場も増設される、しかし新工場では、銃の製造ではなく自転車の製造を行うことになる、自転車を国内に普及させるためと、銃以外の収入を得るためであるが、銃の製造用機械が自転車製造にも転用できるためもある

学生の製造機械への練習場所ともなる

かつての日本軍には「銀輪部隊」が存在したというが、それを目指したものではない


高野技術学校では、造船部門、自動車整備の二手に分けて授業を行うようになっている

造船は、新潟港の造船所で実習、自動車は、輸入されたもの整備などを行う形になる


この時代はまだ、馬が主力であった


早く自転車、オートバイ、自動車と行きたいところであるが、まずは自転車の製造販売を強化することにしたのである


・・・・・

「部長、少し休みをいただきたく」と俺

軍令部長室である

「貴様去年も同じことをいって休んだであろうが、そもそも、実習船にも載っていないのにどうするつもりだ、貴様は海軍軍人なのだぞ」東郷部長は怒っていらっしゃる

「いろいろありまして」

「まあ、この前は、伊藤閣下が助かったって言ってきたときは、何を言ってるのかわからなかったがな」と少し怒りが和らぐ

「船は、戦争になればいやでも乗りますから心配していないですね」

「儂が心配するわ」

「ありがとうございます」

「違うだろー!」


「今度は何をするつもりだ」と部長

「プロパガンダ映画を製作しようと考えております」

「プロパガンダ?」

「はい、日本がいかなる国で、しかも大変危険な国であることを、米国民に知ってもらえるような、宣伝映像です」

「お前がそういうと、いやな予感しかせんから、不思議だな」と部長、感慨無量である

「ありがとうございます」

「礼を言うところではないぞ」

「ほめられていると考えておりました」

「しっかりとけなしておいたが」

「では、佐藤にまた来させますので、自由にお使いください」

「うん、佐藤は素直で大変よろしい、車もいいな」この時代、自動車は大変貴重であり、運転するにも特別な知識と経験がいるので、特殊技術者のような扱いになる

「それは、大変結構であります」


そうして、俺は、軍令部を後にする



岩倉東京の会議室、俺、岩倉、かわいそうな桜井君、それに映画監督やそれ以外の関係者が集まっている


「シナリオは簡単で、日本人忍者が、米国へ渡り、たまたま、ギャングから美人をすくうという非常に簡単なものだ、セリフなどは、脚本家にお願いする」と俺

「忍者ですか?」と桜井

「忍者の修行風景は、日本の美しい名所でオールロケで行いたい」

「なぜ、名所ですか」

「この映画は米国での放映を考えているというか、対米プロパガンダに使うんだから当然だろう」と俺

「米国放映!」監督らしき男が驚いている

「忍者役には心あたりがいるので問題はない、刀をうまく扱えると思う」

「本物の刀を使うのですか?」

「剣法が本物のほうがいいんじゃないのか」

「とってみないとわかりません」と監督らしい男

「その人は英語も堪能だから、アメリカロケでも言葉不自由しないし」と俺

「アメリカロケ?ロケって何ですか?」

「後半は、全編アメリカロケーションで撮ってもらう」

「大変な金額がいると思いますが」

「問題ない、そこは映像の中に、岩倉玩具の新製品を入れて撮影してもらい宣伝費で落としてもらおう」

「え!」と岩倉系の人々が驚きの表情、この時代、外国旅行は相当な金がかかる

「あと、新製品の飲料を最後に主人公に飲んでもらうつもりだから、その新製品の選定をよろしく、製品名は”ニンジャコーク”みたいな感じで行ってね」と俺

「さすがに、いくらかかるかわかりませんね」岩倉の経理であろう人間が青くなっている

「ああ、もしも、金が足りないなら、言ってね、あるから、それより、映画の最後に、正金銀行とか書いてあげるから、金出せよみたいな交渉してきてよ、クレジットって言うんだけどこの世界ではまだなじみがないから、ものすごい宣伝になるからって、うまく騙しといて」米国で正金銀行が有名になっても意味ないけどな

「では、わたくしが」と岩倉

「撮影の仕方については、俺から指示を出したいけど、とにかくカメラは何台かそろえといて、あとでフィルム編集するのも大変だと思うけど、そこら辺のまとめは桜井お願いね」

「は、総長」

「コークは本気なのですか」と岩倉

「米国から外貨を稼ぎたいなと思っている」

「会社が要りますが」

「出資するよ、俺と、有栖川父宮と伊藤公でどう?陛下はまずいでしょう」

「わかりました、人材は、学校出身者で、米国法人ですか?」

「米国法人で」

「わかりました」


わけのわからぬまま、ニンジャ役の山口一が拉致され日本各地で修行することになる

そして、肝心の忍術であるが、これは、アニメーションの手法を取りいれて、駒撮りで行う、これで瞬間に消えたりできる、またワイヤーアクションで一瞬で木の上に飛び上がったり、降りたりを行う

フィルム一枚一枚からピアノ線を手書きで消して、周囲と同じ色を塗る、日本人はこういう細かい作業は非常に得意である


監督はもはや、俺のことを神様と呼ぶほどになっていた

しかも、多数のカメラを駆使するというのも、この時代にはないものであったようである

スピード感ある場面を作るために、カメラをレールに乗せて走らせてとったりする

そうして、映画撮影の基礎を習得し、後半のアメリカロケを敢行することなる


「師匠、この映画は日本では放映しないのでしょうか」と映画監督

「うーん、どうでもいい」と俺

「絶対、売れる思いますので、ぜひともよろしくお願いします」

日本ではもちろん、楽しいことは少ないのだ


「おいおい、今度はアメリカって」と山口

「山口先生、英語得意だし、ハリウッドって、映画の都ですよ」

「お前な、この前ドイツ行ってきたんだが」

「ディーゼルさんどうでした」

「まあ、ブラウンさんとは、やはり話が合ってたな、悩みあるなら、気晴らしには日本が最高ですぞって、言ってたけどな」

「また、お願いしますよ、映画終わったら」

「まあ、旅行が仕事みたいな感じだからな」

「先生、今度は映画俳優ですよ」

「お前いつも本当に調子いいな」

「お任せください」

「お前に任せたら、大変だろ」と山口一


米国での撮影も問題なかった、金髪美人を助けて、ギャングの首を切り飛ばすだけである

首が飛ぶときは、偽物の首を蝋で作って着色したものがごろりと落ちるようにアニメーション撮影する

映画の最中に、外国人が”ゴールドラッシュ”に興じる風景と忍者がコークをうまそうに飲み干す映像を撮影する、飲むとパワーアップするような特殊効果をフィルムに着色して付加するように指示する


「神よ」映画監督はその方法を聞き思わず膝まづいてひれ伏した

こうして、好き勝手に作られた映画が編集されて完成する

長い期間、撮影したが、編集して45分間に短縮される、このころでは映画は、15分間ぐらいが普通らしいので長編?なのかもしれない


皇居の一室で試写会が行われる

「この一撃受けてみろ」

「ぎゃ!」ギャングの首が落ちる

悲鳴が起こる、女官たちも見ているせいだ

「忍法!」どん!と煙が起こると、忍者は別のギャングの後ろに現れ、さらに、首をはねる

「くそ」ギャングの一人が銃をぶっぱなすと忍者は一飛びして、木の上に飛び上がる

「秘剣、流星剣!」剣の部分が光り、忍者が飛び降りてギャングを縦に真っ二つにする


「もう大丈夫だ」と忍者

人間を縦に真っ二つにしておいて、大丈夫かはないだろうと思うが

「お名前は?」と金髪美人は、死体など気にする様子はない

「我は忍者、日本の忍者才蔵だ」と英語で話す

そして、忍者コークを飲み干す忍者が大写しになる

そして去っていく忍者

「ニンジャ、カンバーック!」と金髪美女


エンドロールが流れる


「すごい映像だな、どうやったのだ」明治帝が興奮気味である

「さすがは、高野君だ」と乃木

「すごい」と父宮

「こいつ、休んで何を作っておるのか!」東郷軍令部長

「やはり只者ではないな」伊藤元老

明治の重鎮たちの前で映画監督とプロデューサーの桜井は青い顔をしている


こうして、映画は完成し、日米同時でないロードショウが始まる

アメリカでは、始めふるまわなかったが、ただで一週間上映すると、うわさが噂を呼び始めると、直ちに大ヒットになった


とにかく今までの映画と違いすぎる画面作りと撮影技術が圧倒的なファンを獲得したのだ

かくして、ニンジャブームが全米を席巻する

同時に、ニンジャコークとゴールドラッシュが大ヒットするという一大ムーブメントを生み出してしまうのであった


こうして高野映像は世界の映画界の最先端の会社になってしまうのだった


意外なところで、派生的な日本刀ブームが起こる


「岩倉、日本の資産流出を防げ、名刀を回収せよ、米国にはアルミダイキャストの刀を輸出するのだ」

「総長、予想外に儲かっています、欧州でも大ヒットです」

「そうか、何よりだ、できれば向こう(アメリカ)で、中古船でも買って、中古車を大量輸入してくれ」

「今度は、自動車会社でも?」と岩倉

「その通りだ、自動車工場が必要になる、軍の機械化は自動車からだ」

「総長、もう少し人材が育つまで、待てませんか、戦闘員は十分余っているのですが、優秀な頭脳や技術者は足りていません」

「余っている戦闘員だが、教官役を残して、満州に移動させて、民間軍事会社を立ち上げよう」

「強盗でもさせるのですか」

「逆だ、この前のココチェフ氏のように、武装強盗に狙わることがあるからな、それからの護衛を請け負うのだ」

「武装強盗ですか」

「そうだ、満州の治安はよくないからな」

「そういえば、総長はあの時、満州に行ってましたよね」

「そうだったか?そんなはずはないはず」と顔をそむける男がいた


いつも読んでくださりありがとうございます。

応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 日露戦争では喀血から大量の死者がでてそれまでの白米の配給から玄米を支給することを兵隊が渋々了承された流れがあるが。 簡単なビタミンサプリの開発とカレーライスの普及が欲しいところ。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ