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手術

1908年(明治41年)

卒業まで、あと一年を残すところとなった、学生の餌付けは順調で、ほとんどの生徒が総力戦研究会(長岡派)の軍門に下っている

あの後、陛下から約束(資金提供の約束を頂いた)の1億円、父宮から500万円が入金される

岩倉に、横浜正金銀行の紹介状を持たせ、資金を借りに行かせる

とりあえず、造船会社の買収を目的にするために


金に余裕ができたので、船を大量に発注しようとしたが、日本の造船能力が低いので、2隻になってしまった


「総長、そんなに急に言われても。造船会社なんか作れません」と岩倉に怒られたので、では、買い取れといってやったのである


そんな折も折、異変がおこった


「総長、宮様が!宮様が大変です」

「どうした、山口参謀」

山口が血相を変えて飛び込んできたのだ


「総長!宮様が、宮様が倒れて苦しんでいるんです」

「何を慌てている、軍医殿は?」


「それが、今日は会議があって、東京へ出張していないそうなんだ」

「なんだと!」


医務室では、宮様が痛い痛いと苦しんでいた

「俺がやろう」

「何を?」

「手術だよ、切らないとだめだ」しかも急がないと危ないと直観がそういっている、というか頭の中で<警告>の文字がちらちらと出ては消えている


現代の手術室とは比べられないくらい貧相な装置しかないな、

まあ、当たり前だ、あっても使い方は知らんがな!


「貴様ら、何をしているのか!」入ってきた学生にビクリとした教官がどなる


「これから広島の病院に運ぶから邪魔だ」と教官


「教官残念ですが、時間がありません、ここで手術を行いますので」

すでに、宮様は痛みから気を失っていた


「何を馬鹿な、何の病気かもわからんのに?腹痛を起こす病気はいくらでもあるんだ、盲腸炎か、腸炎か、わしも詳しくはわからんが」と教官



「私が見ます診ますので、下がってください」

「バカ者!医者でもないくせに何を!」

「邪魔だ!どけ」その時、殺気が解放される

その迫力に教官は押されて固まる、ありえべからざる暴挙なのにである


まずは、触診、患部からの反応がある、その時、頭の中で何か柵か壁が、壊れていくような感じがした


先ほどよりももっと、はっきりとわかる、病状がわかる

盲腸炎であることは、頭の中ではっきりと字が浮き出ているのでわかるし、歴史的にもそうなのだ

「どうする」あたりを見回すと、必要なものがある場所の色が変化する

「参謀、そこの消毒液、それとメス、針と糸だ」

そこにある棚を指さす

「おい、貴様何をするつもりだ」

「兵頭先輩、教官を排除して」

丁度良いところに兵頭先輩が、宮様のことをきいたのだろう来てくれていた

「お前ほんとに大丈夫なのか」と兵頭

「このままでは、宮様が危ない、何とかするしかない、機材はここにあるもので十分です」


俺は必至で手を石鹸で洗いながら答える

殺菌はとても大事だったはずだ、ドラマでも医者はとにかく手を洗っていたのだ

見たことあるぞ!


その時、頭の中に、”周囲を殺菌しますか”という選択肢が現れる

YES!

その時室内を青い光が満たした

ぐらっと、意識が飛びそうになる

やばっ!魔力不足か!


その時、矢印がでた、倒れた教官をこれこれといった感じで点滅して指している

教官は兵頭先輩に絞め落とされていた


教官のそばに行くと”魔力を吸収しますか?”という選択肢が現れる

YES!


「GUE!!」教官がうめいた、聞かなかったことにしよう、君らも何も目にしていないよな!周囲に目配せする


医療技術は持っていないがすぐにメスで、盲腸に近い部分に切る

ビュッと血が噴き出るが気にしていられない、手探りで腫れている部分を探す、ゴム手袋越しだが極めて優れた野生?の感がその部分を教えてくれた

腹の中に手を入れていると思うとなかなかにえぐい感じだが、狩りの時にも同じことをしているので、問題ない、それどころか、盲腸部分を探すために役立った


「これだ!」ぐいぐいと引っ張り、腫れた部分を見えるところまで引きずり出す

「参謀、針と糸を用意してくれ」

山口は驚いて、自分に回ってきた役割をおずおずとこなした

「切るからな」誰かに向かって声をかける、もちろんやったことなどないのだから緊張はする


医療用のはさみでその部分を切断する、すぐに先を指でつまんで押さえて、切断面を縫いにかかる


縫い終わり、血が出てきていないかを確認し、縫合場所に”治癒”をかける

次は開腹した腹を縫う

腹を縫い終わると、やはり血があふれてきていないか確認し、”治癒”をかける


そして、今度こそ魔力切れ症状で気を失うこととなった


「高野!」声は少し聞こえたが、世界は暗転した


・・・・・


めを覚ますと、医務室の天井が見えた、ぼんやりとしている、横を見ると、ベッドに宮様が寝ていた、顔色も良い、これで大丈夫だろう


反対側を見ると、教官が寝ていた、こちらは極めて青白い顔つきで、病人のようだ

あまり、大丈夫ではなさそうだが、鬼教官なので攪乱を起こしたに違いない


だが、あの程度で気を失ってしまうとは、やはりこの世界は魔素がまったく足りない


魔素ってなんだ?しかし、人間から吸い取れるようだ、しかし、あまりやると、死にそうだな!と一人で納得してしまう


寝ている教官は体力だけは死ぬほどあるタイプなのに、病人のようだ


「高野、気が付いたか」兵頭先輩だった

その時、わかったのだ、高野山だよ、あそこなら、魔素がいっぱいありそうだ、俺は高野、当然、高野山に行くべきだったのだ!蒼い稲妻が頭の中を走りぬけた瞬間だった


「兵頭先輩ありがとうございます、今気づきましたよ!」


「いかん、高野が壊れた!」


その時、宮様がめを覚ました。


「ああ、えらい目にあった。高野君には世話になったようだね、意識はなかったけど、ちゃんと見えていたよ、#$%&女神さまが夢にでてきて高野君にお礼を言うようにって言われたよ、もちろん親友だから言われたらなんでも手伝うつもりはあったけどね、あらためて、ありがとう、君は命の恩人だ」


「一度死んだ身だ、生まれかわった気持ちでお国のために働くよ」


そこには、さわやかな決意が生まれていた

死の淵を垣間見た人間は自ずと変わらざるを得ない、そういう経験を有栖川宮はしたのであろう


歴史の歯車を確実に変えている実感を感じつつ俺はまた、意識を失った

というか、寝た


・・・・・


早速、休日に和歌山にやってきた、もちろん高野山を目指す、奥之院には、今でも弘法大師空海が座って世界の平和を願っているという

少しでも、その神気を吸い込めたらと考えていた


奥之院は巨大な樹木がそそり立ち、人界とは空気が違う

まさに、気配が違う、神気というか霊気があふれているような場所であった


神気を吸収し、しばし、結跏趺坐の姿勢で時間を忘れる


だが、昼過ぎには、帰る必要がある

花坂のやきもちを食いながら、皆の土産に、陀羅尼助をかう

陀羅尼助(胃腸薬)だよ、因みに皆が胃腸薬を必要としているのかは知らないが・・・


汽車の中で、ふといろいろと思いついたので、偽元老田中太郎兵衛の名前で筆を走らせる

万年筆の方が便利であろうか?


「元老として国策の在り方について、申し伝えたいこと之有」

「台湾においては、気候の特性から、砂糖を生産しているが、今後の重要性を鑑みるに、ゴムの木を栽培する必要之有」


「砂糖については、蝦夷地にて、甜菜糖の栽培で充足するべし」

「鉄道においては、国内において、狭軌を利用しているが、今後発展すべき、兵器はみな鉄の塊ともいうべきものであり大変重い、満州鉄道において使われたる標準軌とすべきなり」


あと、工業インフラの整備、港湾整備、自動車の国産化と普及など適当に書いて、明治帝あてで皇居に送付を行う


ゴムの木は、岩倉にお願いしよう、ガタパチャというゴムが性能がいいらしいから、マレーシアに誰か潜入させて、密輸しよう


砂糖は藤に頑張ってもらおう


ということで彼らへの手紙を書いて投函するのだった


・・・・・

手紙を送りつけられた3名は思い思いにため息をついた


「朕に送りつけるのか?」

「おい、誰かおらんか」

「はい、なんでしょうか?」それは乃木希典だった

近ごろ、毎日のようにやってくる、やたらと歩きましょうとか、腕立てしなさいとか、人に運動させようとする

「乃木今日もきたのか」

「来れる日は毎日来ますよ、陛下」

「まあよい、すまんが、西園寺公にこれを届けてくれんか」

「それは?」

「ああ、例の元老田中の書簡だよ、朕にやれと送ってきよった、中身は政治家に任せた方が良い内容だったのでな」

「田中様ですな、大変よろしいことです、ぜひともその通りせねば、さあ、議会まで歩いて行きましょう」

「何!」

「さあさあ」


「誰か!」



総長からの手紙である、また変なことがかかれているに違いない

「部隊から戦闘員を選りすぐり、ガタパチャの苗あるいは種を奪取せよ」

「ガタパチャって何?」


よく読むと書いていた、マレーシアあたりで自生しているゴムの木らしいが、普通のゴムとは違うのか?ガタパチャって何?

「うーん」

するとさらに、その下に、船が余っていたら、今度はクロムを買い付けておいてくれと書かれていた

「ニッケルの次はクロムですか、戦時用の必要物資なのですね」

「さすがに、近ごろ、岩倉の儲けだけでは、維持できませんね、まあ、満鉄株の儲けがあるので、やっていけますが」

高野からの指示では、赤字でも、必要なものは購入せよと指示が来ている

「また、銀行で融資を受けますか」


頭の中でいろいろと計算しながら、会社の状態などを考え続ける岩倉だった




藤のもとに手紙が届く、この前は、白樺(砂糖楓です)をたくさん植えろ見たいなことをいわれて、長岡の山や新潟の山などで植林を施した、なんに使うのか?何に使うのかおしえてもらっていなかったのだ

しかし、生来がまじめな男である藤は総長の命令を忠実にこなす男だった


手紙には、北海道で甜菜なるものを育てろ、資金は総長に要求しろとのことであった

「甜菜って何?」北海道では小麦を生産しろと言っていたような?

人員は、部隊で農業経験のある人間を北海道に送っている、自分もそろそろ、北海道に向かう必要があるのだろうか?

「しかし甜菜は何に使うのだろうか?」やはり書いていない

「う~ん」

藤はうなりを上げるのであった

小麦・米の栽培も北海道で行う必要があるのだろうか


「藤君、農業のことだったら、札幌農学校で応援を得たらよいと思うよ」と岩倉が助け舟を出してくれる

「それと、必要なお金は岩倉か横浜銀行で借りるから、言ってくれ」


思いつきで、手紙を出されてその手紙を受け取った3人は非常に迷惑するのだった


いつも読んでくださりありがとうございます。

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