謁見2
皇居別室、畳の大広間にお膳が用意されていた
「まあ、酒でも飲みながら考えようではないか」と陛下
「陛下、そのことで一つよろしいですか」と俺
「なんだ、君は酒にも文句を言うつもりなのか」
「いえ、言いにくいことでは、ありますが陛下はもっと食事に気を使っていただいて、できるだけ長生きをしていただきたいのです」
「やはり、朕は長くないのか?」少し青い顔の陛下、やはりオカルト少年の言は気になるようだ
「先ほどの映像は”昭和”に起こる戦争です、もちろん陛下はご存命ではありません」
「そうか」とうなだれる陛下
「私にとっては時間との闘いなのですが」
「それが、さっきの問いの答えの一つなのか、朕にのみいったところで、そののちはどうなるのかと」
「ええ、時間は限られているとはいえ、それまでにまだかなりに時間があることも事実、随時に必要なことを行っていく必要があります、陛下はわたくしのこと聞いてくださっても、皇太子さまはどうでしょうか?その次の殿下は?」
「それは、かんがえねばらんな、伊藤にでも相談するか?」
「そうだ、元老になってはどうか」
「陛下、何を!」と重臣達
「うん、我ながら良い考えだ!時々に朕らが意見を聞く必要があり、公職ではない」
「しかし、子供が元老などと」
「もちろん、そのままではいかんから、適当に年をとった人間を替え玉において、」
「替え玉!」
「そもそも、陛下はこの者を信じるのですか」
「では、君らは、今の映像を信用しないのか」
「我々を誤った方向に誘導しているかもしれません」
「それを防ぐのが君ら軍人であり、政治家、元老ではないのか」
「どうせ我が日本が、列強に並びいるということは、欧米はよしとはしまい」
「それはそうですが」
皆、心の中では、欧米が日本などアジアの端の国の野蛮人程度にしか考えていないことは、よく知っている、ここにいる人間は海外に行ったことがある人間が多いのであるから当然である、有色人種は白色人種より劣るのは当然、植民地化して当然なのだ、彼らは少なくともそう考えていることを知っているのである
そもそも、帝国主義とはそういう思想なのである
「準備を怠らなければよい、常に注意を張り巡らせばよい、この者の言うことに納得できなければ、理由を問えばよい、理由がおかしければ、いうことを聞かなければよい」
「陛下、まったく言われるとおりです、私は、協力していただければ幸い、邪魔されても、自分が良いと考えていることを実行していきます」
「では、飲もうではないか!」
そうして、夜は更けていく
かくして、偽元老田中太郎兵衛がこの夜生まれた、この偽元老がいろいろな場面で存在し、日本の方向性を変えようと画策するのである
次の日
「早速ですが、陛下にお願いがございます」
「元老の田中か、早速だな」
場所は皇居内である、恐れ多くも泊めていただいたのである
「はい、何事も早いほうが良いという性格で、陛下は今日より、食事に気を付けて、十分に運動するようお願いします、長生きの秘訣でございます」
「あと、銀行を紹介していただきたいのと、できれば、わたくしが行う事業に出資をいただきたいのです、簡単に言うとお金が必要です、儲かればお返ししますので、元手が必要になりすので」
「ずいぶん厚かましい元老だな」
「強欲と言っていただいて、結構です」
「いくらだ?」
「一億円!」
ぶへっと、周りいた人間が全員ふいた
ちなみに、宮親子もである
「大きくでたな、なんだそのでたらめな額は」
「はい、陛下はお金持ちだと聞きましたので」
「すぐには無理だな、できたら、口座に振り込む、横浜正金銀行でよいか、そこであれば紹介もしてやろう」
「は、では紹介状もお願いします、資金は失敗すれば、返せなくなるかもしれません、しかし、ご安心を、戦争で負ければ、陛下の資産のほぼすべてが連合国側に接収されますので、ご心配には及びません」まったく安心できないことをいう男であった
「貴様、ふざけているのか、本気で言っているのか?」と東郷元帥
「もちろん本気です、儲けて陛下にも還元させていただきます」
「まあ、わかった」少し頭が痛いようだ
・・・・・・
それから皇居を後にして、有栖川宮親子と宮邸へと向かうことになった
馬車の中で
「心臓に悪すぎだ、お前は危険すぎる」と父宮
「そうだぞ、高野煽りすぎだ、何回処刑されるとおもったか」
「いや、わかっていただけて良かった、何よりも、一億円の収入は大きい」
「高野君、一億円とは、国の予算規模だぞ、何をするつもりだ」と父宮
「宮様、戦争とは国家の一大事です、金がかかるのは当然ですが、まず、戦争するにも準備が必要です、多岐にわたり、投資をおこなう必要があります、もちろん、私自身全力で金を儲けて、投資します、それで国が強くなる!といいのですが・・・」
「おい、あれだけ吹っ掛けといて」
「宮様、総力戦は国同士がすべての戦力を傾けてたたかのうです、これで足りるなどと思われては困ります、アリス君、父上は総力戦について、十分知識が足りていないように思われるが、ちゃんと手紙をおくっているのか?」
「も、もちろんじゃないか!父上、あとでわたくしがちゃんと説明しますので」アリスの宮が顔を青くしている
「では、宮様も出資していただけるのですね、大変助かります」
父宮の顔も少し青くなっていた
「大変格式の高い宮家と聞いております」と俺はニコリと笑う
「ま、まあ、そうではあるが、維新あたりから、収入がふえてきたのでな」
「まあ、軽く一千万円ほど、」
「いや、さすがに無理!500万円くらいなら何とか、頑張ってみる」
「宮様、私は出資していただきたいと考えているのですよ、儲かれば、宮様も儲かるのです、心配はいりません、絶対儲かりますから」
「高野君!それって、詐欺師みたいな言動になってるから」
「絶対です、絶対儲かる投資ですから」と黒い笑顔で金を無心する男がそこにいた
「わかった、何とか用意してみるよ、その代わり」
「絶対損はさせません、大丈夫ですよ」
「うわ~、家が滅ぶ」とアリス
「息子よあとは頼んだぞ」と父宮は意識を失った
・・・・
海軍軍令部に呼びつけられ、東郷軍令部長から、大目玉をくらい
その後、乃木大将の自宅を訪問した
「私もできることは、させてもらおう」
「では、お願いしてもよろしいですか」
「もちろんだ、息子の恩人の頼みだ、なんでも言ってくれ」と大将
「では、殉死するのはおやめください」
「なんだと!」
「いずれ人は死にますが、だからと言って、自分も死ぬわけにはまいりません、生きて勤めを果たす必要があります、閣下は今後どのようなことが起こるか知った今、やるべきことが山積みです、決して、無責任に死んだりはしないとはおもいますが」
「陛下は?」
「それほどご心配であるなら、陛下に節制と運動をさせるように、常に注意しに行ってもらえますか?協力者は長くいていただきたいので」
「そうすればよいのだな」
「多少はよいかと思います」
「わかった、毎日謁見し、運動させる」
「助かります」
「君のことも助けさせてもらう」
「ありがとうございます」
史実では、乃木大将は、明治天皇が崩御した際、夫婦で殉死する
まあ、息子二人が日露戦争で生き残ったので、それはないと思うが、念のために、釘を刺しておく
・・・・・
「では、帰りますか」
「うん、君のせいで、とても疲れたよ」とアリス
「いや、こころづよかったよ」
「全然、そんなことなかったじゃないか」
「いやいや、これでもメンタルが弱いほうなんで」
「君のメンタルは鋼鉄に違いない」
「そうだ、いい鉄も輸入しないとな。早く、お金振り込んでくれないかな、そうだ、岩倉に手紙を書かないと」
「ほら、汽車に乗るよ」
「おお、そうだな、行くぞアリスちゃん」
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