謁見
1907年(明治40年)
兵学校の始業式に乃木大将が訪れる
「息子達が世話になった、ありがとう」
日露戦争時のことを息子達から聞いたのであろう
「しかし、君はまだ海兵学校とは、いったい何才で戦場にでていたのだ」
「閣下少し、お時間をいただけたら、ご説明できます」
俺は、あの後、乃木兄弟と手紙でやり取りしている、もちろん、仲間にするためである
そして、樺太制圧、ウラジオストク攻撃を強く、弟保典から父希典あてに要請させていたのである
「わかった、あとで君を呼ぶので来るように」
「は」俺は敬礼した
その他の生徒や教師、校長までも驚いた表情を浮かべている
当然であろう、日露戦争の英雄が兵学校の生徒といかなる話があるというのか!
もちろん、この始業式に来たのは、日露戦争の英雄が新入生を寿ぐためであった
校長室に呼び出される俺
島村校長と乃木大将の二人だけであった
「高野学生、本当なのか?日露戦争に出征していたというのは」と校長
「私も驚いているのだが、息子達が命を助けてもらったというのは本当です」と乃木
「お前、年齢を偽っているな」まさかのいきなりの露見であった
さすがに、冷汗が流れる、まだまだ、修行が足りないようである
しかし、平常心を失わず
「すいません」
「何歳なのだ」と乃木
「実は、15歳です」
「何!」
「では、戦時は13歳ということか」
「え?本当に戦場に?」校長は年齢よりもそのことに驚いている
「私が息子から聞いた話では、高野が率いる実験部隊というのが、圧倒的な攻勢力で前線を侵食し、そこから、203高地攻略に結びつけたということだが」
俺は、遠い昔を思い出していた、そんな感じだっただろうか
「そうですね、実験部隊に参加していたのは本当です、ただし、隊長は岩倉という、ブローニングファイアアームズ(BFA)の社長です、新型拳銃の納入業者です、新兵器のテストのために、陸軍にねじ込んだようです、俺は、近所のよしみで、ついでに連れて行ってもらっただけなんです」とまた、いつものように適当な嘘がながれでる、これは、一種の病気なのかもしれない
乃木の目には、嘘ばかり言いおってという色が浮かんでいる
「それでも、その年で戦争はないだろ」と校長
「そのことに関連して、お二人にお話ししますので、少しよろしいですか」
「この後のことも考慮せねばならんしな」と校長は困り顔である
入試資格は16歳である、しかも入学から1年が経過していた
「話せば長くなりますので、手っ取りばやくしますね、お二方お手を」
俺は二人に手を差し出す
二人が手を握ったところで「目を閉じてください」
「今からある映像をお見せしますので心してご覧ください」
ハルノートから会談決裂、真珠湾へと進み、悲惨な最期へと突き進む
今回は、ハルノートの部分を追加している、だんだんと長くなっていくデモテープであった、フルダイブ型MMO何とかみたいな没入感がある
二人の男はやはり涙を流している
「これは、なんだ、わが国は戦争でこのような悲惨な目に合うのか?」
「高野お前は一体何者だ!」と校長
「私は、一人の人間です、ただし、あまり人に言いたくはないのですが、個人的には、使命をもって生まれてきた人間と考えています」
それから、30分ほど#$%女神関連任務に関して説明をさせていただいた
「今から、お前を退校させても仕方がないし、年齢のことは不問とすることにしよう」
もちろん、不手際の露見するのもまずいであろうしね
「ありがとうございます、校長」
「調子のいいやつだ、まったく」校長は眉間を指でもんでいた
「私はどうすればよいか、君は陛下に会うべきだと思うが」と乃木
「そうですな、彼の言うことが本当なら帝国はとてつもない危機を迎えることになる」と校長
「機会は私が作るので、高野君、陛下に申し上げるべきことを考えておいてくれ、”使命”を帯びた者としてな」と乃木大将が言った
「承知しました」
それから10日後、俺と有栖川宮様の二人は、汽車に乗り、上京することになった
宮様はことのついでに、宮様の父親に俺を紹介するのと、今回の謁見に父宮も参加することになり一緒にくることになってしまい、青い顔をしているらしい
東京駅を出ると、近衛隊が迎えに来ていた
馬車にのせられて、皇居に向かうことなった
皇居内の一室には、今上陛下(明治帝)、乃木大将、斎藤実大将、東郷軍令部長というそうそうたる面々が待ち構えていた、あと、有栖川宮の父宮である
「乃木さんが嘘を言うとも思えんが、この子供が日本を動かすのか」と東郷軍令部長があきれたような声を上げる
「私は嘘はつかんようにしている」と乃木将軍、まさに嘘をつくような人間ではありえない
「まあ、よいではないか、お前たちもせっかく集まったのだから、仲良くせんか」
明治帝のお言葉である
「にしても、本当なのか、少年」
「は、陛下、大嘘をついて、御身をわずらせたところで私に何の得があるというのでしょうか?」
「おい、高野!」と父宮さまが袖を引く
「若いものは元気があってよいな」
「陛下、兵学校校長の島村からもその内容の手紙が私宛に届いております」斎藤海軍大臣が答える
「では、幾万言を唱えるよりも、映像を見ていただきたいと思います、そのあと、内容についてわたくしが御説明申し上げます」
「わかった、どのような、手妻かは知らんが、面白そうではないか、なあ斎藤」と東郷軍令部長
「では、皆さん申し訳ありませんが、円になって手を置つなぎください」
「ダ」
「ダンスではありませんので、ご注意ください」機先を制して父宮の言葉を遮る俺
「目を閉じてください」
「目を閉じた瞬間に陛下を狙う魂胆ではあるまいな」と東郷
「これは、失礼しました、ですが、この部屋に入れた瞬間に私はこの部屋のすべての人間程度殺せますので、ご心配には及びません」
部屋の外でごそりと音がする
盗聴している部隊がいるのは壁越しにしっかり感じているし、スキル的なレーダーに表示されている
「大きくでおったな」と東郷
「しかし、203高地では、無双の活躍をなした、名もなき英雄であると、息子から聞いております」と乃木
「そういえば、乃木さんは、あの戦いでご長男を亡くされかかったとか」
「高野君がいなければ、長男も次男も死んでおったとのことでした、特に長男勝典は、腹に穴が開くほどの重症だったのを、医療の心得がある高野君が診てくれて助かったと次男の保典が申しておりました」
「何ですと!」皆が唖然としている
「これこれ、本題から脱線しすぎぞ、高野も遠慮せい」明治帝
「は、失礼しました」
準備が整い(全員が円形に手をつないで椅子に座る)、映像が開始される、脳内再生映像であるため、音もサラウンド状態である、迫真の映像と音の融合である、ほぼVRで映像の真ん中にいる感覚である
ただし、あとに行くほど、日本の悲惨な状況も半端なくリアルである
今回は、政治家向きということで、ハルノートから敗戦、ソビエトの侵攻、極東裁判までのロングバージョンでお届けしている
「怪しからん!」明治帝は泣きながら、怒り始めた
「なぜ、ロシアが日本人を虐殺している、何が裁判だ!帝国主義は貴様らの方ではないか!」
「陛下、お気をお沈めください」と斎藤
その声も涙でかすれている
大の大人が、悔し涙をながしている
「ご説明してよろしいでしょうか」
「頼む」
まず日本が、満州利権を獲得することに、アメリカは否定的であること
日本が太平洋側で強くなることはアメリカにはとても不都合であること
そして、米国覇権樹立のためには、太平洋を確保する必要があること
米国が欧州の戦争に参加するためには、ドイツの同盟国である日本が攻撃してくれることが都合がいいこと
世界大戦で米国以外は例外なく戦場になるため、米国が覇権を成立させやすいこと
原子爆弾の実験に日本またはドイツが丁度いいこと
ソビエトは、自国の開発に奴隷や捕虜が大量に必要なことから戦勝国にのることが都合がいいこと
戦争犯罪を暴く形は、自分たちの戦争犯罪を隠すために都合がいいこと
などを、事細かに説明した
どれほどの時間がすぎたのか、語られることは嘘には思えないものだった、もしこれが嘘なら、こいつは大した大嘘付きである、歴史を見事に嘘で作り上げたのだから
全員がほぼ、これがある種の真実であると確信できた
これほどの嘘をつく必然性がまったくないからである
「わたくしの使命は原爆投下阻止であります、残念ながら、それ以上でもそれ以下でもありません」
「どういうことだ、戦争に勝つことが阻止することではないのか」
「わたくしの使命は、今言いました通りであります、おそらく米国相手には勝てないと思われます、国力が違いすぎます、それと、戦争回避は実質的に、私の目的を達成できるものと思われるので国家を運営するみな様にがんばっていただきたいものです」
「もちろん、努力する」
「残念ながら、わたくしがここにいること自体が、戦争不可避の条件ではないかと、愚考しておりますが」
「つまりは、わたくしがいることが、戦争を決定づけているとも考えられるのではないでしょうか」
「では、貴様が戦争をおこすというのか」
「そこまでは、言いませんが、私はもし戦争が起これば、対処するべく全力で準備だけはしておきたいのです」
「朕は今悩んで居る」と明治帝
「私を殺しても何も解決はしないと思います」
「そうだろうな」
「そうです、それに先ほども言いましたが、ここにいるかたでは、私を殺せないと思います、逆上して暴れまわると手が付けられませんよ」
「近衛師団ではどうか?」
「やってみても結構ですが、そうなると私は日本いられなくなりますから、使命は失敗の判定となると思います、#$%&女神がどのような行動をおこすのか、起こさないのか、私にはわかりません」
「#$%&女神とは?」
「私に、こんなことをさせている首魁であります」
「では、質問を変える、君は朕に何を望む」
「考えてはいたのですが、何がいいのかはっきりとわかりませんでした、とりあえず必要なことはいくつかあるのですが、その都度に意見をきいていただきたいと思います」
「歯切れが悪いな」
「そうですね、いろいろと様々な要素を考え合わせると、この一回ですべて解決とはいかないと思います」
「それは、そうかもしれんな、朕も少し疲れた、一杯やるか」
氷結していた空気がやっと少し和らいだような気がした
いつもありがとうございます。
応援(具体的には、ブックマークの登録や評価ボタンポチ)よろしくお願いします。




