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工場

契約後から、新工場に必要となる工作機械や工場社屋の構成など、ブラウニング氏の家族からいろいろと必要となることを教えてもらった

もちろん、岩倉と社員がであるが


ブラウニング氏本人は、研究室代わりにかりた家屋でAK47をばらしては組み立てている

次は試射させてくれと言ってきた


家族たちは、とりあえず米国に帰らせるそうである

自分は、小銃の新しい図面を書いてから帰るつもりらしい


「先生、新しい会社の名前ですが、ブローニングの名前を使わせていただいてもよろしいでしょうか、その際に先生にも株主になっていただきたいと考えています

先生の銃が売れて利益が出れば、先生にも配当の形で資金が振り込まれるようになると思います」

「そんなことは必要ありません、本当に日本人は欲がないのですね」と欲のないブラウニング氏だった

「いえいえ先生そんなことはありません、先生により良い銃を開発していただく動機付けとなるようにと思っているだけです」と俺

それ以外にも、ブラウニング氏をできるだけ日本からはなさいためでもあるのだが・・・


「ありがとう、期待に応えるよう努力するよ」

「社長をしていただいてもかまいませんよ、どうですか、日本永住などは」

「ああ、素晴らしい考えだけど、家族がね、それにユタには友人も多くいるし」ブラウニング氏の友人(同じ宗派の人)はユタ州に多くいるのだ


「先生ぜひともお願いしますよ」


「仕事の話だが、新型は基本この未知の銃に近い形になるだろうが、口径が小さいのが欲しいというのは?」とブラウニング氏


「残念ながら、日本人は小さいです、今の口径ではパワーがありすぎると思います」

AK47は7.62ミリ口径である

「君たちぐらいだと、特に問題ないのでは?」と俺や岩倉のことを言っているのであろうが、俺たちは、肉食を励行し、この時代の日本人の平均を大きく上回っているだけである

平均的日本人には反動が大きいのである

だから、5.56ミリ口径の設計をお願いしているのだ


「平均的な日本人はもっと小さいのです」自分たちは、肉食を中心に満腹まで食えるように手はずを整えているのでかなり大きめな日本人である


「任せてくだされ、とりあえず設計をすましたら国に帰ります、工場が完成したら、また来日しますよ」気のいいブラウニング氏だった

「ぜひともお願いします」製造工程などについても、指導してくれるようだ

いずれにしても、工作機械の輸入など半年は先の話である、再来日は来年の夏くらいになるか、工場建屋は新潟港近くに急ピッチで建設をすすめられている


そんな頃、郷田から手紙が届いた、ウラジオストクで暮らし、ロシア語にもだいぶ慣れたようである、これから国内を渡り歩き修行をするという、郷田の部下も大変そうだな


しかし、一体何の修行だろうか?

とりあえず、現地人を勧誘して会社を作らせるよう指示を出しておく

ロシアだとギャングでいいのか?

マフィア?まあ、どうでもいい

ウラジオストク支店、次は首都のサンクトペテルブルグ支店を目指してほしいものだ


イギリス、ドイツ、フランスにも支店が欲しい、米国にもである

そう考えると、人手が欲しい

これからは情報戦、総力戦の時代なのだから

いや、まだ第一次大戦も始まっていなかったな・・・



「隊長、船の話なんですが」と岩倉が声をかけてくる

「ああ、忘れていたすまん」

「5万円もあれば、できるそうです」

この時代の船の価格はトン当たり50円程度で建造できるようである

一万総トンの船の価格は、5万円程度ということであろうか


「あるか?」

「もちろんです」

「銃の新工場とかで金が要るのではないか?」

「問題ありません、維持管理コストなど不明な部分がありますが、2隻程度なら問題ないのではないでしょうか?」

岩倉、お前は神の使徒だ、非常に有能だ

「では、念願の船行ってみるか?」

「では、三菱造船に発注をかけます、船名を考えておいてくださいね」

「おお」

そうして、2隻の発注が行われる、完成には、一年はかかるとのこと、二隻目は一隻目の完成後となるようだ


1902年(明治35年)

春、俺は中学校に無事入学する、山口参謀と同級生である

小学校は別の時期に入学したので、中学校でやっと同期の桜と呼べるのではないだろうか、

身長が高いので、誰も俺のことに違和感を感じないようだ(みな恐れて口にしないだけだたことがのちにわかる)

銃砲製作工場「ブローニングファイヤーアームズ社」(略称BFA)が完成した、ブローニングと山口兄が再来日する予定である

工員はとりあえず、長岡部隊と新潟部隊の中学卒業生で20人ほどとするに決定


「何かまたあるんですね」

俺が岩倉を呼ぼうとしたとき、岩倉が言った、近ごろはほとんど新潟に出ずっぱりである

「察しがいいな、実はな、学校を建てたいのだ」

「学校ですか?」

「そうだ、今隊員たちは相当数いるが、多少はましになったが、彼らは武力要員だ、まじめな仕事をコツコツこなしたり、技術の修練をしたりするのは難しいのではないか?」

「中には、向いた者もおりますので、岩倉に入社させて、働かせておりますが、まあ、おおむねそんな感じだと思います、元もとは暴れ者が多かったですからね、半端ものは百瀬組で面倒を見てもらいます」

「ヤクザを増やしてもな」

「まあ。そうですね、しかし役に立つこともあるかと」

「否定はしないがな」

「それで学校ですか?」

「そうだ、技術を身に着けて、ブ社工場で働かせる、できるやつは大学にいかせて将来の幹部候補とする」

「そうなると私たちは」

「お前らはもう幹部だ」

「ありがとうございます」

「では、とりあえず、40名程度の優秀な貧乏な子供達を無償で募集しますか」

「頼めるか?」

「お任せを」


そうして、ブ社の敷地内に学校の校舎が立てられることになった

高野技術訓練学校と呼称が決定される、高野でなくてもよいといったのだが、岩倉は、隊長の姓を使うべきですと言い張ったのだ

卒業生はブ社で働くことになる

まあ、新潟だし、俺との関係を知られることもあるまい


日英同盟がこの年結ばれる、いよいよ日露戦争が迫っている

ロシアの南下政策が英国の危機感をあおり、この同盟を助長したのである 


時代は帝国主義まっさかり、当然国力にあまりがあれば、他の植民地を作ってやろうとするのは、時代の趨勢である


1903年(明治36年)

俺は中学2年生へと進級した

ブ社では、ブラウニング氏と兄弟が製造工程等を指南してくれている

現在、新型の拳銃を製造している、慣れてくれば新型自動小銃の生産も行うことになっている、工員の熟練度がまだ低いので拳銃の方が良いらしい


ブラウニング氏は相当日本を気に入ってくれて、また、京都に連れて行けと催促してくる、どうも、舞妓と遊びたいらしい

大丈夫なのか?嫁が二人もいるのにと思いつつも、山口兄におねがいすることにした

高野技術訓練学校も生徒募集を行うと殺到し、40名の予定のところ、80名を受け入れることになってしまった

ということで、40名が授業を受けているときは40名が外で軍事訓練を行うことになる

純粋に、勉強と工業技術を身に着けさせようと考えていたのだが、予想以上に貧しくて、学校にいけない子供が多いらしい

学生寮も必要だというので、岩倉に全部丸投げでお願いしている


夏、新型商船〈越後丸〉が就航した、船員が訓練を開始している

チリに硝石を買い出しに行ってもらう予定である

行きでリバーシ、絹製品などを積んでサンフランシスコで卸す計画だが、うまくいくのか不明である、とりあえず船長はいるが、山口兄と部隊の人員をつけて送り出す予定である

こうなってみると、元不良少年のほうが頼りになりそうでよかった


「ところで、君は?」

「はい総長、藤 一慶であります」

小柄で丸顔のクリクリした瞳が特徴の子供である

もちろん俺より年上であるが

「そうか」

「岩倉社長が多忙を極めるため、わたくしがお手伝いするように抜擢されました、何なりとお申し付けください」

岩倉より少し年下の長岡部隊の隊員であった

「総長というのは」

「はい、いつまでも隊長というのはどうかとのことでありました、すでに、長岡部隊、新潟部隊とも新隊長が存在します、副長、小隊長もかなりの数で存在しますので、総長でよいであろうと決定されました、ご不快であれば、隊長たちに伝えて変えさせますが」

「そうなのか」

「ところで、両部隊からの意見具申でありますが、米が不足しているというか、岩倉社から供出していただいているのですが、訓練の一部に農作業を取り入れたらどうかという案であります、現在、長岡部隊は定員500名であり、食料さえ増産できればもっと隊員を増やすことが可能であろうとの見解であります、ぜひとも周囲の田畑を借りていただき食料自給をしたいところです」

「え?定員とかあんの?」「なんのこと?」的な声が頭の中で発せられるが表面上は

「そうか、考えておこう」ととりあえず無難に答えておくのだった

上に立つものとして、知らないことでも知っている風を装うことが大切な時があるのである

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