009_俺とどっちが強いのかな、ってさ
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「マジでか……」
「おう、大マジだぜ。
ここが隣の結界だ。
名前は知らねえが」
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レイヴンが護衛してからというもの、
全く魔物の気配がなく、
結果として俺たちは、
何の被害もないままに
隣の結界の界境にたどり着いていた。
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「だから言ったろ?
ちゃんと護衛してやるってよ」
「ああ、運が良かった」
「ニクスお前そういうとこ
ほんとブレねえな」
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「とは言え助かったのは事実だ。
感謝する」
「いいって。
シルバから匿ってもらった礼だ」
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「そういえばレイヴンさん、
結局どうしてシルバさんから
隠れてたんですか?」
「いや、それだけは絶対に言えねえ」
「どうしてですか?」
「情けなさ過ぎてな」
「人間に匿ってもらうよう頼むのも
相当情けないが」
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「さ、界境を抜けたら結界の中だ。
……そういやニクス、
お前ら結界の中なのに他の人間に
殺されそうになってたんだよな?
入って大丈夫か?」
「大丈夫だ、多分」
「それを言うやつは
大体大丈夫じゃねえんだが」
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「一つの国が一つの結界を持って、
その中を治めるのが人間界の基本だ。
別の結界に入ればそこは別の国。
さっきまでの国の問題は不問、のはずだ」
「めちゃくちゃ推定で話すじゃねえか……」
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「ま、大丈夫ってんなら大丈夫なんだな。
せっかく守ってやった奴が
結界に入って3秒で死んだんじゃ、
俺も寝覚めが悪いからな。
せいぜい気をつけろよ」
「言われるまでもないが、
忠告はありがたく受け取っておく」
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「それじゃあ、……あー」
「どうした、レイヴン?」
「いや、まあ大した話じゃねえ。
大した話じゃねえんだが……。
ちょっとした好奇心というか、な」
「何だ、気持ち悪い。
言いたいことがあるならはっきり言え」
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「ステラちゃん、強いよな?」
「はい、強いです!」
「自分で言うのか」
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「やっぱそうだよな。
魔力が多いとかじゃねえんだけど、
佇まいとか気配とか、そう言うの?
なんか不思議な感じがしてたんだよな」
「レイヴン、お前……」
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「見る目があるな」
「褒められるのは嬉しいけど、
ニクスお前そんなキャラだったか?」
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「俺もお前らを護衛するなんて
わざわざ言うくらいには
腕に自信があるわけだけど、
そうすると気になるわけよ」
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「俺とどっちが強いのかな、ってさ」
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「嫌だって言うなら無理にとは言わねえ。
ただし、もし受けてくれるなら、
次魔界に来たときにも色々と
頼みを聞いてやるよ。
どうする、ステラちゃん?」
「どうしましょう、ご主人さま?」
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「……次魔界に入ったときに
頼みを聞いてもらえると言うが、
その予定はない。
と言うか、なるべく
そうならないようにしたい。
そうなれば、
レイヴンの申し出も意味がない」
「そりゃそうだよな。
じゃあやっぱり……」
「ああ。
この話……」
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「受けてやってもいいが、
条件を変えさせてもらう」
「なかったこと……は?
受けないんじゃねえのか?」
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「受けないとは言っていない。
俺としても、ステラの力が
魔界でどの程度のものなのか
試してみたい気持ちはある。
それに、命は懸けないんだろう?」
「当然」
「なら決まりだ」
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「で、条件は?」
「俺たちが勝ったら、
何でも一つ言う事を聞いてもらう」
「俺が言ったのと変わんなくねえか?」
「魔界の条件はなし。
人間界でもだ」
「マジかよ……こりゃ負けらんねえな」
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「勝負のルールは?」
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ザッ。
レイヴンが地面に円を描く。
「5分以内に俺をこの円の外に出すか、
俺に攻撃を入れればお前らの勝ち。
俺が5分耐えきれば俺の勝ち。
ハンデとして、俺からは攻撃しない。
どうだ?」
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「随分俺たちに有利なルールだな」
「まあな。
これくらいじゃなきゃ、
俺が護衛をしてる意味がないだろ?」
「それもそうだ」
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「ステラ、行けるか?」
「はい、ご主人さま!」
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「フォームチェンジ、バトルフォーム!」
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「どっからでもかかってきな」
「じゃあお言葉に甘えて」
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先手必勝!
行ってこい、ステラ!
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「はっ!」
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ガッギイイィィンン!!!
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