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3/10

003_絶対負けませんから

――――――――――――――――――――


 卒業試合。


 魔法学校の卒業生が

 召喚した使い魔の力を見せ合う

 正しく見世物である。


――――――――――――――――――――


「逃げずに来たことは褒めてあげよう。

 主席の僕と君とでは

 力の差がありすぎるからね。

 逃げたとしても

 君を責めはしなかっただろうに」


「どうだか。

 どうせ色々と手を回してるんだろ?」


――――――――――――――――――――


 これまでも腰巾着を使って

 色々と良からぬことをしていたらしい

 噂は聞いている。


 どうせピグルの一件も

 こいつの差し金だったんだろう。


 だとすれば、逃げれば一層面倒なことに

 なっていたに違いない。


――――――――――――――――――――


「それに、うちの使い魔が

 誰が相手だろうと絶対に負けない

 って言うもんでね」


「私、あなたのような人には

 絶対負けませんから」


――――――――――――――――――――


「それは素晴らしい。

 できるだけ善戦してくれよ。

 そうでなければ、

 僕の力が示せないからね。


 ところでニクス。

 試合の前に一つ提案がある」


「断る」


――――――――――――――――――――


 こいつからの提案だと?

 ろくな提案じゃないに決まっている。

 聞く前に却下だ。


――――――――――――――――――――


「まあ聞きなよ。


 これから始まる試合で

 君が無様を晒す前に、

 どうだろう降参しては」


「却下だ」


――――――――――――――――――――


「我が魔法学校の卒業試験には、

 各界の著名人が列席している。


 魔法学校卒業は輝かしい成績だが、

 一方でここで晒した無様は

 同じくらい暗い成績にもなる。


 経歴に傷がつかないうちに

 潔く身を引くのも

 力の一つだとは思わないか」


「うるさい、早く構えろ」


――――――――――――――――――――


「だが、いくら君の頼みでも、

 ここまで来てタダで降参を認める

 というわけにも行かないだろう。

 オーディエンスが納得しないからね。


 そこで、だ。

 君の使い魔を僕に差し出したまえ。

 それでこの場は手打ちにしよう。


 なに、父上には僕から

 話を通しておくよ」


――――――――――――――――――――


 こいつ、一体何を言っているんだ?


 100%自分が勝つと思っていて、

 俺もキースに勝てないと思っている、

 と思っているのか。


 それだけの自信、

 それだけの使い魔ってことか。


――――――――――――――――――――


 こいつ、バカなんじゃないか?


 これまでのやり取りで、

 俺が降参しそうにないことくらい

 わからないのか?


――――――――――――――――――――


「……耳が腐ってるのか?

 もう一度言う、早く構えろ」


「答えを聞いていないよ、ニクス。


 その1、降参して使い魔を差し出す。

 その2、無様に僕に敗北する。


 二つに一つだ。

 さあ、答えなよ」


「ちっ……答えてやるよ」


――――――――――――――――――――


「答えはその3、お前が俺に、

 無様に敗北する、だ!」


「やれやれ、せっかくの僕の情けを……。

 まあいい。

 身の程を思い知らせてあげるのも、

 強者の役割だからね」


――――――――――――――――――――


「行くぞ、エーデルワイス」


「はい、ご主人さま!

 フォームチェンジ、バトルフォーム!」


――――――――――――――――――――


「顕現せよ、『サラマンダー』」


――――――――――――――――――――


「おお、あれはサラマンダー!」

「流石はファインダー家の……」

「これは将来が楽しみですな」


――――――――――――――――――――


 巨大な赤いトカゲが姿を現した。

 所によっては精霊としても扱われる、

 炎の化身だ。


 魔物の格としてはケルベロス以上、

 学生が召喚する使い魔としては

 破格のレベルと言っていい。


――――――――――――――――――――


「一方あちらは……何ですかな?」

「人間にしか見えませんが……」

「あれが使い魔なのでしょうか……」


――――――――――――――――――――


 えらい反応の差だな。

 まあ、エーデルワイスが

 前世でロボットだったなんて言って、

 こっちの世界で通じるとも思えないが。


――――――――――――――――――――


「さあ、楽しませてくれ。

 君の使い魔を倒して、

 僕は有終の美を飾るとしよう」


――――――――――――――――――――


 サラマンダーが口に炎を溜める。


――――――――――――――――――――


「エーデルワイス!」


「はい!」


――――――――――――――――――――



       ゴオウッッ!



――――――――――――――――――――


 サラマンダーの口から放たれた熱戦が、

 一直線に俺の方に向かってきた。


 それをエーデルワイスが盾で防ぐ。

 ……こいつ、わざと防がせたな。


――――――――――――――――――――


「さて、いつまで耐えられるかな?

 サラマンダーの炎に耐えられる盾など、

 そうそうありはしない」


――――――――――――――――――――


 ブレスの最後、巨大な火球を放つ。

 それが盾に直撃し、爆炎が上がる。


――――――――――――――――――――


「少しばかり大人気なかったな。

 まあ、僕と君の実力差なら

 このくらいは当然……っ!?」


――――――――――――――――――――


 無傷のエーデルワイスが

 炎の中から現れたのに、

 キースは大層驚いたようだった。


 どうした?

 さっきまでの余裕の表情が

 なくなっているぞ。


――――――――――――――――――――


「馬鹿な、サラマンダーの

 ファイアボールを受けて無傷だと!?」


「まあ、そういうものもあるんだよ、

 世の中にはな」


――――――――――――――――――――


 多層立体ハニカムシールド。


 エーデルワイスの初期装備の一つ。

 盾の装甲材の間を微細な

 ハニカム構造とすることで、

 強度を損なうことなく軽量化した

 当時の先端技術が詰まった盾だ。


 装甲の間に空気の層ができることで

 結果的に耐熱性が飛躍的に向上したのは

 軽量化の副産物だったのだが、

 それが様々な装備へと

 転用されていったのは後の話だ。


――――――――――――――――――――


「ちっ……炎が効かないか。

 ならば。

 サラマンダー、斬り刻んでやれ!」


――――――――――――――――――――


 サラマンダーの爪が

 エーデルワイスに襲い来る。


 だが、この程度でどうにかなる

 エーデルワイスではない。

 そうだろ?


――――――――――――――――――――


「エーデルワイス」


「はい、ご主人さま!」


――――――――――――――――――――



     ドッゴゴゴゴゥッ!!



――――――――――――――――――――


「は……?」


――――――――――――――――――――


 この世のものとは思えない音を発し、

 サラマンダーが吹き飛んだ。


 エーデルワイスが瞬間に六度の攻撃を

 サラマンダーに叩き込んだのだ。


――――――――――――――――――――


「なっ……! 何が起きた!?」

「さ、サラマンダーが、負けた!?」

「まさかそんなことが……ありえない!」


――――――――――――――――――――


 観客もかなり動揺しているようだ。


 そもそもこの試合は

 キースが圧倒的な力を披露して勝つ

 八百長試合みたいなもんだ。


 それが逆に瞬殺されたとあれば、

 キースの言葉を借りれば

 経歴になかなかの傷がつく。


 主席卒業者の使い魔が瞬殺されるなんて

 一体誰が考える?


――――――――――――――――――――


「サラマンダーが……。

 僕のサラマンダーが……」


――――――――――――――――――――


「やりました、ご主人さま!」


「ああ、よくやったな」


――――――――――――――――――――


「く、ふふふ……。

 まさかサラマンダーを倒すとはね。

 流石に驚いたよ」


「そうかよ。

 だがもう決着はついた」


「いいや、まださ。

 試合終了の判定は

 行われていないだろう」


――――――――――――――――――――


「あぁ!?

 審判、判定は!」


「キースくんは

 まだ試合続行の意思があるようだ。

 ならば続けても構わない」


「だそうだ」


――――――――――――――――――――


「汚えぞ!

 潔く身を引くのも

 力の一つじゃないのか!」


「弱者のための救済を

 強者に当てはめるのは間違っているよ」


「敗者が強者?

 笑わせんな。

 使い魔もなしにどうするつもりだ」


――――――――――――――――――――


「君は、僕の使い魔がサラマンダーしか

 いないと思っていたのかい?

 主席卒業者の僕が?

 考えが甘いというものだ」


――――――――――――――――――――


 何だと……!?

 最初の使い魔召喚はつい昨日だ。


 それをこの短期間で

 二体目を召喚したのか!?


――――――――――――――――――――


「さあ、第二ラウンドと行こう。

 顕現せよ、『タイラントゴーレム』」


――――――――――――――――――――

★、ホシイ。

オネガイスル。

ヨシナニ。

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