【第5話 SM】
さて、妖精ソデからの詳しい話だ。ウィズでSMをしてくれと言われて、具体的な話を聞いたものである。縄とか蝋燭とかの話じゃないぞ。念のため。
では、不肖ソデより、SMの役割についてお伝えいたします。エリ様には、ストーリーマスター、略称SMとして運営の補助に当たっていただきます。
具体的には、自律思考型第三世代AI搭載NPCと行動をともにし、そのサポートをお願いします。テストプレイヤーの範疇を越えてくるため報酬も支払われます。その分、果たすべきタスクと認識していただければ幸いです。
該当のNPC名は、リンゴです。
ノンプレイヤーキャラクターですが、ストーリー上、無くてはならない役柄なのです。初心者としてプレイするリンゴを見守り、助けながら一緒に冒険してやってください。
今回、初めて実用化された第三世代AIのリンゴには、より人間らしい行動を取れるよう、ログアウトしている期間の記憶も作られ、与えられます。NPCではなく、人として接するよう配慮してください。エリ様の行動も、心理学的見地から記録させてもらいます。
ここまではよろしいでしょうか。
次に、禁止事項をお伝えします。これらを守られない場合、テストプレイ中であってもアカウントは停止され、権限も剥奪となります。
許可なく、リンゴに自身がNPCであることを告げてはなりません。年齢、名前、住所の聴取、オフ会の誘い、ウィズ外の連絡先交換も禁止です。通常のオンラインゲームでの禁止推奨事項などとは違い、明確に禁止されます。
当然、SMであることも口外禁止です。発言はリアルタイムで検閲されており、個人の特定に係る発言は削除されます。
ウィズは、AIの実証実験も兼ねており、通常のプレイヤーのほか、リンゴ以外にも人として振る舞うNPCが紛れています。答えは教えられませんが、もし、他のプレイヤーをAIと確信することがあれば御指摘願います。言うまでもありませんが、リンゴがNPCであることを他のプレイヤーに告げてはなりません。
御理解いただけたでしょうか。重ねて申し上げますが、故意に禁止事項に触れる行為をされた場合、VR法に基づき、刑事責任を問われる可能性もあります。
御自身のためにも慎重な行動をとられることをお勧めいたします。