表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/22

【第4話 ソデ】


 注意事項にしっかり目を通させられた上で、サトーの説明を受けることになった。佐藤ではなく、SA10〈通称サトー〉である。第二世代のAIで、旧世代では最も信頼性が高い。


 オッさんは他のプレイヤーへの対応があると言って退席し、代わりに愛らしい妖精が現れた。サトーのアバターだ。手のひらほどのサイズで事務机の上にちょこんと立っている。世界観を崩さないように配慮されているのだろう。と思ったら、


「エリ様、初めまして。この先はテストプレイの機微にわたる話ですので、当選を辞退される場合は御退席ください。

 辞退されない場合は、VR法に基づき、一切口外しない旨を誓約願います。違反された場合、違約金が発生し、悪質な場合には刑事責任を問われることとなります」


と、およそ妖精らしからぬ脅しを入れてきた。ファンタジー要素ゼロだ。


「せっかくログインしたんだ。誓うよ。この先の話は決して口外しない」


「ありがとうございます。妖精スキル〈ロック・オン〉により録音させていただきました」


 妙なところにファンタジー要素とくだらんダジャレを入れてくるあたり、制作サイドの感覚を疑うな。


「で? 僕は、テストプレイヤーとして何をすればいいんだ」


「SMをしていただきます」


「えっ? SM?」


「みなさま勘違いされるようですね。ウィズは全年齢対象のオンラインゲームですので、おそらくエリ様の推測は外れで御座います」


「微妙にバカにされてる気がする」


「気のせいです。旧世代のAIには、そのような高度な機能は付属しておりません。SMとは、ストーリーマスターの略称です」


「それってゲームマスターみたいな役割?」


「左様で御座います。GMほどの権限はありませんが、半ば運営サイドに立つプレイヤーとして、円滑なプレイ環境維持に努めていただくこととなります」


「具体的に何をすればいいのか、よくわかんないな。えっと、サトーって呼ぶのも変か。なんて呼んだらいい?」


「サトーで構いません」


「いや、それだと他のSA10と区別つかないし。サポート妖精はたくさんいるとして、一応、別個体ということになるんでしょ?」


「その通りです」


「じゃあ、ソデにしよう。僕のサポートをする時は、おまえの名前はソデね」


「かしこまりました。データベースに紐付ひもづけいたしますので、差し支えなければ名前の由来を教えていただけますか」


「ん、僕の名前が服のえりから来てるから、仲間的に服のそでからだよ」


「……承知しました。エリ様のサポートをさせていただくこととなります。以後、ソデとお呼びください」


 小さな妖精ソデが礼儀正しく頭を下げた。


「なんか不満そうだけど、気のせい?」


「気のせいです。名称など、ただの記号に過ぎません。クズでもカスでも、お好きにお呼びください」


「やっぱり怒ってる?」


「いえ、そのような機能は御座いません。エリ様の快適なゲームライフを祈念いたします」


 再び無表情に頭を下げるソデの様子は、やっぱりどこか怒っているようにも感じられた。実はこの時、妖精スキル〈フッコー〉かなんかで不幸の呪いをかけられたのではないかと思うのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ