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11-1. 奏者と指揮者・宮廻あやめ&羽鳥純恋

 

「合唱コンクールの季節がやってきました。二週間後にまずはクラスごとの校内発表会をやって、その後に学校全体からコンクールに参加したい人を募って出場する予定です」

「おおーっ!」


 六月の薄く垂れこめた曇天の下。帰りの会でちょっとだけ抑揚をつけて発された担任の横江先生の言葉に、クラスの三分の一くらいが沸き立った。

 合唱をするだけで盛り上がるの、小学生だなあって感じだよね。これが高校なら誰も反応しないもんな。

 でも流石に高学年になったからちょっと反応が薄くなっているのが面白い。

 ちなみに前の方で立っているクラス委員長の羽鳥はいつも通りのクールな顔、土肥はちょっとだけ嬉しそうだったりする。

 樫崎は結構楽しそうにしている。まあ樫崎は何でも楽しめるタイプだからな。暁斗は平穏な顔で、宮廻はちょっと不服そう。どうしたんだろう。


「歌う曲の楽譜を配りますね。二曲あります」


 そう言って回ってきたプリントに印字してあったのは、前世でも歌った覚えがあるやつと初めて見るやつだった。

 多分変わってないやつが横江先生が選んだので、もう一つはゴリ山が選んだやつなんだろうな。

 始業式の頃には校歌を歌うのが恥ずかしくて仕方なかったけど、最近は音楽の授業でもそこそこ声を出して歌っている。

 いや、周りが真面目に歌っているのに自分が声出さないのがなんかちょっと気まずくて真剣に歌ってたらさ、なんかこう慣れてしまったんだよな……。

 あれだけ嫌がってたくせに、我が事ながら小学生に対しての順応が早すぎる気がする。


「ピアノの演奏は宮廻さん、指揮はクラス委員長の羽鳥さんにお願いしています。皆さん拍手!」


 手をたたきながら宮廻の方を見ると、さっきよりも苦い顔になっている。ああ不服そうな顔はこれだったのか。

 というか、宮廻ってピアノできるんだ。まあバレエやっているくらいだから、ピアノも出来るのか。

 しかし前世では宮廻が演奏した記憶がないけども……あれか、土肥が俺と一緒のクラスになった影響でクラス替えがちょっと変わったし、伴奏をした子が二組に行ったんだろうな。クラス替えの時には必ずピアノが出来る子が一人はいるようにするらしいけど、もしかして一組は宮廻一人だったのかもしれない。

 羽鳥もちょっとだけ気落ちしているように見える。人前で何かをするのは苦手じゃない、というか得意なのだと思ってたから不思議だ。


「クラス副委員長の土肥さんには、校内発表会の運営委員会をお願いしています。拍手」


 ぱらぱらと疎らな拍手の中、土肥がちょっとだけ恥ずかしそうにぺこりと頭を下げる。


「では、今日の終わりの会はおしまいです。日直さん」

「はーい。起立、礼」

「先生さようなら」

「さようなら、気をつけて帰ってくださいね」


 出席簿をパタパタで仰ぐようにして、横江先生は教室を出ていく。

 俺はとりあえず、ちょっと態度が気になっていたので宮廻の席へと向かってみた。


「宮廻ピアノ引けるんだな」

「一応ね」

「嫌なのか?」

「あたしが弾いてたら笑うやついそうだし」

「んなことねーよ。カッコいいと思うけどな、俺は」

「……ホント?」


 信用ねえなあ俺。まあ、スカート穿いてたことをからかうと思われてたし、前世の俺の罪だろう。

 自分のやったことだから受け入れるしかない。


「おうおう。ていうか、自信がないわけじゃないんだな」


 失敗したらどうしようとか、そういう悩みじゃなかったんだ。


「これくらいなら弾けるとは思うけど」


 配られた楽譜に目を落としながら宮廻が平坦に言う。


「あの、今いいかな?」


 いきなり声がかかってちょっとだけびっくりする。羽鳥がいつの間にか真横に立っていた。


「羽鳥さんどうぞ。寄木、あたし今日は家でピアノ練習するから……」


 宮廻がランドセルを手にして立ち上がろうとした瞬間に、羽鳥がちょっとまってとばかりに次の句を継ぐ。


「あの、寄木じゃなくて宮廻さんに用事があって」

「へ、あたし?」


 宮廻が驚いた顔でランドセルを机に乗せる。


「用事というか、お願いかな」

「えっと、何ですか」


 割と警戒心をあらわに宮廻が羽鳥を見つめる。そういえばこの二人が会話しているところは見たことがないな。

 四年生だって同じクラスだったはずなのに。


「私音楽のセンスとかなくて、指揮とかできる自信がないから、宮廻さんに教えてもらえたらと思って……」

「え?あ、そういうこと。……あたしでいいなら」


 宮廻がびっくりした顔になって、それから一瞬考え込んで頷いた。


「じゃあ早速で悪いんだけど、もし今日時間あったら教えてもらえたら嬉しいな。いいかな」

「いいけど、場所は……」

「先生にお願いして、音楽室を押さえてもらってるんだ。寄木も来る?」

「俺も?いいなら」

「伴奏と指揮だけじゃなくて、歌ってくれる人がいたほうがいいかなって」

「じゃあ、玲花も誘う?」


 回りを伺いながら宮廻が土肥の名前を挙げるが、土肥は既に教室にいなかった。あれ?


「土肥さんは校内発表の委員会があるみたい」


 ああ、なるほど。さっき何かやるって言ってたもんな。


「改めて、宮廻さんお願いします」

「うん。わかった」


 そんな感じで俺達は音楽室に向かうことになった。




いつもお読みいただき、有難うございます。


前回予告した羽鳥と宮廻が揃って家に襲来という展開は、諸般の事情でちょっと後回しになりました。申し訳ないです。

最初は音楽室でなく寄木家のピアノでするつもりだったのですが、色々考えた末にちょっと後にしたいなと思いまして。しばしお待ち下さい。




ただ、新型コロナの影響で少し職域が変わる可能性があり、これから一月ほど投稿が不安定になる可能性があります。ご了承ください。

いつも応援してくださっているのに、申し訳ないです。


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[気になる点] あやめと純恋との関係が描かれるのを楽しみにしてます。
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