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10-4. お家でお絵かき・土肥玲花&宮廻あやめ


今回は聞き取りにくい会話部分の演出がありますが、大事な所なのでじっくり解読してもらえると嬉しいです。


 

 ジェンガを三十分くらいやった後、ひとしきり楽しんだので別の事をしようという話になった。

 ちなみにジェンガは六試合やって俺が二回、宮廻が三回、土肥が一回崩した。いやほんと、土肥は強かった。持ち主だけあったよ。

 最後の一回はどうにも勝てない俺と宮廻が半ば協力プレイみたいな感じで土肥を追い詰めたんだけど、それでかなりの長期戦の末に勝つことが出来たので激アツだったね。


「次は何する?」


 土肥がさっきより余裕のある顔で問うてくる。


「うーん」


 何があるかな、と部屋を見回すと本棚が目に入った。

 ドアから見たときは人形やぬいぐるみしか見えなかったけど、部屋に入って見てみるとそれ以外はほぼ少女漫画で埋まっている。

 単行本だけでなく、ずっしりとした大きい月刊誌もぎっしりと並んでいて厚がある。


「土肥って少女漫画好きなんだな」

「えと、そうだね」


 俺がぼそっと言うと、土肥がちょっとはにかんだ表情で頷く。


()()()()のポスターも、クローゼットにあったもんね」

「あやめちゃんも()()()()好きなの?」

「まあね」

「へえ、宮廻も少女漫画読むんだな」

「……お姉ちゃんが読むからね」


 宮廻が微妙な顔するので、ちょっと申し訳なくなって「悪い」と平謝りすると、宮廻はいいよと軽く頷いてくれた。

 いつも少年誌の話題で盛り上がっていたから意外だっただけなんだけど、失礼だったな。そもそも、少年誌を読んでいるからって少女漫画を読まないわけじゃないよな。


()()()()の最新話読んだ?」

「読んだよ。再来月で完結とか信じらんないよね」

「だよねっ!」


 土肥がいつになくハイテンションで宮廻に一歩近寄る。宮廻は少しだけ慌てた顔になって一歩下がる。おお、宮廻が押されるのは珍しいな。


「でも連載が結構長い……もう四年くらいだっけ?そろそろ終わらせる時期なのかもってあたしは納得させたなあ」

「そうなのかな。でも、寂しくなっちゃうね」

「あのさ。()()()()って何?」


 二人がめちゃくちゃ盛り上がっているところ悪いけど、喋ってる単語がわからないので聞いてしまった。


「え、寄木くん()()()()知らないの!?」


 土肥が目をまんまるにする。いや、普通に男子ってあんまり読まないと思うぞ、少女漫画……。


「えとね『あなわた――貴女か私がお嫁さん!』っていう作品でね、とっても面白いの!」

「主人公の雪子が通う学校に、人気者で大企業の御曹司な貴雅ってやつがいるんだけど、その婚約者候補に主人公ともう一人の女の子が選ばれる話」

「でね、雪子ちゃんのライバルの明日香ちゃんって子は、貴雅くんの婚約者になりたくて最初は雪子ちゃんのことを敵視してるんだけど、次第に仲良しになって恋のライバルになるの」

「雪子は初めは貴雅に対して興味がなかったんだけど、徐々に貴雅に惹かれていくわけ」

「それでね、高校の卒業式のときにどっちを婚約者に選ぶか発表するんだけど、それが再来月なんだって。今回の話は雪子ちゃんと明日香ちゃんがどっちが選ばれても友達だよって友情の約束をする回だったんだ」

「お、おう……」


 説明を聞いてもいまいちよくわからなかった。現代社会の話なのだろうか。それとも異世界ファンタジー?

 ていうか婚約者を貴雅ってやつが勝手に決めるんだろ、ただ選ばれるのを待つだけの運命な女の子ってちょっと可哀想じゃないか……?


「寄木くん、説明あんまりよくわからなかったかな?えとね、本当にヒロインの気持ちがわかってドキドキしちゃうんだよ。ね、あやめちゃん?」


 え、婚約者バトルをするヒロインの気持ちがわかるのか?なんというか、女の子って多感なんだなあ。


「ま、結構好きだよ。あたしはどっちかと言えば、『シュシュ』に連載してるやつなら『坂道の向こうで君と』が好きかな」


 ちょっとだけはすっぽく宮廻が言う。けど、なんか作品名を挙げたときにちょっとだけ遠い目をしたので、結構好きなんだと思う。

 さっきのお嬢様ヘアを思い出す、かわいらしい雰囲気があったんだよな。


「あやめちゃんは坂キミが好きなんだ!坂キミは大人の恋愛っぽくていいよね、雰囲気が落ち着いてて……」

「作者がベテランだからね。同じ作者の『悪魔かもしれない』も好きだな、あたし」

「えと、ちょっと前のだよね?私は読んだことないなあ。あやめちゃん単行本持ってるの?」

「お姉ちゃんがね。貸してあげよっか?」

「いいの?」

「うん。じゃあ明日学校に持っていくね」

「わあっ!」


 土肥が嬉しそうに小さくジャンプする。ぴょんぴょん跳ねてうさぎみたいである。


「あ!」


 何度かジャンプをした後、突然土肥が小さく叫んで、ゴソゴソと机の引き出しを漁りだした。

 そして、紙の束を取り出してくる。


「あの、二人とも良ければお絵かきしない……?」

「え、お絵かき?」


 宮廻が俺の方をチラっと見てくる。顔に憂いというか心配そうなものが浮かんでいて、これは俺のことを気にしてくれているんだろうな。

 けど、実は俺としても乗り気だったりするんだよ。


「いや、俺もやってみたい」


 俺の答えに宮廻が「お?」という顔になる。

 お絵かきで遊ぶって発想がなかったし、人生で一度もやったことがなかったからな。

 完全に興味本位ではあるんだけど、どんなもんか気になるんだよね。


「……いいの?」

「おう」


 土肥が遠慮がちに聞いてくるけど、土肥に気遣いしたのではなく俺がやりたいだけからな。

 大きく頷くと、土肥がほっと胸をなでおろした。

 そして、土肥は各自に紙を配っていく。パソコンのディスプレイより一回りか二回りか小さいくらいのサイズだ。


「お友達とお絵描きするの、好きなんだ」

「そうなのか」


 土肥がちょっと仄かな笑顔を浮かべながら、また引き出しから取ってきた色鉛筆やマーカーを並べていく。

 へえ、土肥にも友達が居たんだ、とちょっと失礼なことを思ってしまう。

 でも親しくなって数ヶ月だけど学校には友達らしき人は俺たちの他には思い当たらないし、習い事とかで出来た友達なのかな。

 表情から何かを汲み取ったのか、土肥はちょっとだけ俺の顔を見つめてくる。

 いや、そこまでめちゃくちゃ失礼なこと思ってないからな、俺。


「玲花は何を書くの?」

「んとね、()()()()の明日香ちゃんかな」

「へえ明日香派なの?」

「どっちとも好きなんだけどね、今は明日香ちゃんが書きたくて。あやめちゃんは?」

「あたしは坂キミの美雨を書こうかなって」

「いいよねー!」


 土肥が嬉しそうに笑い、宮廻もまんざらじゃなさそうに微笑む。やっぱりよくわからないけど、楽しそうで何よりである。

 しかし宮廻のやつ、妹を見る姉みたいな感じをちょっとだけ醸し出していてやがる。


「で、寄木は何書くの?」

「うーん、バトルものの誰か」

「曖昧じゃん」

「仕方ないだろ」

「まね」


 それきり宮廻は黙ってしまい、真剣に紙に向かってペンを走らせていく。横顔は真剣そのもので、なんか凛々しくてカッコいい感じがある。ちょっとだけドキっとさせられる。

 土肥もいつの間にか描き始めてたらしく、既に輪郭が完成していた。

 うむ。俺もいっちょやってやりますか。



 *****



 二十分くらい絵を描いていただろうか。

 俺は自分の出来栄えになんとなく納得がいかずに、描いては消し描いては消しを繰り返して、結局何一つ進まないまま尿意を感じてトイレに立った。

 まあ俺ってそんなに絵上手い方じゃないしな。でも色々考えながら描いているのは意外に面白かった。

 ちなみに宮廻と土肥の絵はまだ見れてない。さっきまでは自分の絵に集中していたし、俺が立ち上がったタイミングでは二人共恥ずかしくなったのか手で隠したしな。

 階段突き当りのお手洗いで用を足して戻ると、閉じたドアの中から声が聞こえてくる。

 ん?

 さっきまで無言で絵を描いてたのに。まあ、俺が立ち上がったタイミングで休憩に入ったのだろうか。


「あのね、あやめ…ゃんって()()()()の…日香ちゃん…たいだ……。…やめちゃんの方が優し……思うけど」

「……の話?」

「あや…ちゃんも………んのことが好きでしょ?私も多分、気付いて…と思うけど………んのことが……なの。えっと、だから()()()…みたいに私と……めちゃんも友達だけどライバ……て感…に恨みっこな…で」

「あたしは……のこと……じゃな…よ」

「私は……めちゃん…ことが好…だから、自分が………んに選…れなくても……」

「玲花…れ誤解だ……ね。……しは本当に……のこと好……ゃない……」

「嘘だもん、わかるもん!」


 しかし、何の話をしているんだろう。なぜかめちゃくちゃ小声な上にドア越しなので、断片的にしか聞こえない。

 最後の土肥の声だけ明瞭に聞こえたけど、他はほぼ何も聞こえなかった。

 まあ立ち聞きは良くないと思うので、サッサとドアを開けて入ることにするか。俺はドアノブをギュッと回す。


「嘘って何の話?」

「よ、寄木くん?早いね」

「まあ男子だからな」

「そ、そうなんだ。えと、聞いてた?」


 土肥がミスったという顔で蒼白になり、宮廻も下を向いて唇を噛んでいる。

 え、何この雰囲気。


「いや、小声だったし何も。何か話していたなとは思ったけどさ」

「はあぁ……。よ、よかった……」


 土肥が大きく溜息を付いた。そんな大袈裟な……。え、そんな大事な話をしていたのか?


「ま、気にしないで続きやらない?ほら」


 いつの間にか普段通りの顔になった宮廻が、強引に俺の手にペンを握らせてきた。

 釈然としない思いを抱えつつ、俺はペンを走らせていく。いやほんと、何の話をしてたんだよ……。






読みいただき、有難うございます。


土肥の家に初襲撃の話は次回で終わりです。

コメント返しが少し遅れていますが、お許しくださいませ!



次回はまた明日か明後日に投稿します。

ただ、新型コロナの影響で少し職域が変わる可能性があり、これから一月ほど投稿が不安定になる可能性があります。ご了承ください。

いつも応援してくださっているのに、申し訳ないです。



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