9-4. 学級新聞を作ろう・羽鳥純恋&土肥玲花
本日はもう一話、投稿があります。
十分~二十分後くらいにアップします。
「じゃあどうしようか」
「まず、何を書くか決めないとじゃないかな」
俺が話を振ると、羽鳥がシャーペンをくるくる回しながら反応した。
「ああ、確かにな。羽鳥は何か案ある?」
「ううん。土肥さんは?」
「えと、何も……。ごめんね」
二人がじっと俺の方を見てくる。いや、やっぱり俺か。
「ゴリ山の指示で書くんだから、はっちゃけた内容はマズいよな。クラスであった出来事とか、授業に関係しそうな話題を中心にしていくか」
「おお、さすが寄木だね。確かに先生の依頼なんだもんね。学校に関わることを書いたほうが無難かな」
「寄木くん、すごい。羽鳥さん、寄木くんに来てもらってよかったね」
「そうだね」
きゃっきゃと喜んでいる二人の力になれたのは嬉しいが、大したことを言っていないのに称賛されると若干いたたまれない。
大学で単位を取るために、教授の言いたいことや俺達に言わせたいことを考えてレポートを書く癖がついたから、そういう発想が出ただけなのに……。
どちらかといえば、大人の汚さみたいなもんだと思うしな……。
「ああっと、授業に関することだと何があるだろう」
気恥ずかしさを覆い隠すように咳払いをして問うてみる。
「月の話とかどうかな?天体は四年生の時に軽くやったから、その延長ってことになると思うんだよね」
「お、いいじゃん」
羽鳥の宇宙に関する知識は本物だから、絶対面白いと思う。先生ウケもいいだろうし、間違いない。
「じゃあ、それで一個決まりでいいかな?」
「ああ」
俺が口で同意して、土肥もこくんこくんと首を縦に振る。
後は何が有ればいいだろう。授業に関することは一つ出たし、クラスであった出来事から何か……そうだ。
「この間行った、動物園の感想とか日記みたいな記事もあったらいいんじゃないか?」
「いいね。じゃあ寄木、お願いしていいかな?」
「あれ、俺?」
「寄木くん、ダメかな?」
「お、おう……」
二人に畳み掛けられて、俺は反射的に頷いてしまう。
ええ、俺助っ人じゃなかったのかよ。まあいいか。
動物園で思ったことを、面白おかしく脚色して書いてみたら面白そうだ。
さてこれで、俺と羽鳥の二人はまず一つやることが決まった。
「土肥は何をする?」
俺が水を向けると、土肥があわあわという感じになってペンを取り落した。
いや、そんなに焦ることか?
そして、ちょっとだけ上を向いてから、土肥の割にキリっとした顔つきになって口を開く。
「ええっと、よ、四コマ漫画ってダメかな!パパが新聞読む時に、四コマ漫画だけ読ませてもらってるから……」
「ああ、土肥は絵上手かったもんな」
動物園の写生で描いたライオンは特徴を捉えながらファンシーに描かれていたから、うってつけな気がする。
「あの、羽鳥さん、私四コマ漫画で大丈夫?」
「うん。お願いするね」
「ありがとう」
「んじゃ、紙の大きさ的に記事二つと漫画でいいか?」
「そうだね。いいと思うかな」
「じゃあ、原稿の内容を考えるか」
デカい紙とはいえ壁新聞として掲示する以上文字サイズもそこまで小さく出来ないので、これで十分だろう。
なんとか内容が決まり、じゃあどんな記事にしようかと羽鳥がメモ帳に向かい、俺が空を見上げたタイミングで土肥がおずおずと手を挙げてきた。
「えっと、いいかな」
「うん。どうぞ」
羽鳥が緊張した面持ちの土肥に微笑みかける。土肥はホッとした表情になって口を開く。
「うんと、今のうちに誰がどこに書くか、スペースを決めといたほうがいいんじゃないかなって……」
「確かにな」
スペースによってどれくらいの量を書けばいいかが変わるしな。ハッとさせられた。
俺がめっちゃ長い動物園の記事を書いてしまったら、羽鳥が月の記事を書く場所が無くなったりするだろうし。
ていうか、無計画にやったら絶対そうなるだろ。
俺のが短くて羽鳥のも短かったら、また別の企画を考えなきゃいけなくなるし、絶対先に担当区域を決めたほうがいい。
筆記テストで枠が足りなくなって、後ろに行くにつれて文字が小さくなる現象を模試で何度かやらかしたことがあるだけにそう思う。
一旦消して、全部の文字のサイズを少し小さくして書き直せばいいと後で気付くんだけど、テスト中は焦ってるからそんな冷静な対応できないんだよな。
「土肥さんが言ってくれたことで思ったけど、一人あたり大体何文字を書けばいいのか先に確認しておいたほうが良いよね」
「ああ、実際の文字数がわからないと調整できないもんな」
担当スペースを割り当てられたところで、文字数がわからなければ書く量が決めれないので大正論である。
「でも、どうやって文字を数えるんだ?」
「定規で薄く線を引いて、マス目を作ればいいんじゃないかな」
そう言って、羽鳥は黒板の横にかかっている大きな三角定規を指差す。長辺が俺達の身長と変わらないサイズで、これなら大きめの紙でも対応できそうだ。
白紙ゆえにどうやって文字数を割り出そうか悩ましかったけど、言われてみれば自分でマス目を作ればいいのか。
というか、マス目やガイドがないと一文字ごとにサイズが変わって不格好になるし、一石二鳥である。さすが羽鳥だな。
「おお、ナイスアイデア」
「わ、羽鳥さんすごいすごい」
羽鳥がクールな顔をちょっとだけ赤くして、頬に指を当てた。
「土肥さんのお陰だよ。……うん、各自のスペースを決めていこうか」
「そうだね。えっと、あと、新聞だから写真の代わりに絵があっても良いかもって思うんだけど、羽鳥さんはどう思う?」
「私も良いと思うかな。私も月の絵が欲しかったんだ。土肥さん描いてもらっていいかな?寄木が言うくらい上手なんだよね、お願いしていい?」
土肥が俺の方をちらっと見てきたのでゆっくり深く頷く。いいじゃん、描いてやれよ。大丈夫、お前なら出来る。
「えと。うん……描くね」
「ありがとう。うん。あと原稿を考えるときは、方眼ノートに書けば簡単に文字を数えられると思うんだ」
「わあ、羽鳥さんすごい!」
「ううん、土肥さんこそ」
「あ、それとね。考えたんだけど……」
土肥と羽鳥が二人で盛り上がっていて、俺は若干お邪魔感がある。めちゃくちゃお互い褒めあっているけど、二人が交わしている言葉にはお世辞がないので、応酬を聞いてても不快じゃないのは良いな。
しかし、いつの間にか二人とも椅子をギリギリまで寄せて話し込んでいるので、間に挟まれている俺はかなり窮屈だ。
左肩が土肥と、右肩が羽鳥とぎゅっとくっついているんだよな。さながら、満員電車で運良く座れたサラリーマンである。
でもまあ、最初は俺を挟んで多少のぎこちなさがあったのに、いきなり砕けた感じで話せているし、良かった良かった。
この感じで協力してやっていけば、きっといい感じの学級新聞が出来ると思う。そう思うと、安堵の感情が湧き上がってくる。
「ねえ、寄木聞いてた?」
「寄木くんはどうしたらいいと思う?」
「あ、え?」
俺がちょっと思索にふけっていたら、羽鳥が少しだけ真面目な顔で、土肥がちょっとだけ寂しげな顔で俺の事を左右から見つめていた。
「うん。やっぱり聞いてなかったんだ」
「寄木くん、私達一生懸命考えてたのに……」
「えっと、俺あの……その……ええっと……」
至近距離で女の子二人に詰め寄られた俺は、上手く口を回すことが出来ずにしどろもどろな応対しか出来ない。
い、良いじゃんか!俺、助っ人だろ!?
そう開き直ることも出来ず、俺はひたすら拗ねた様子の二人に謝り倒すしかできなかった。
いつもお読みいただき、有難うございます。
九話はこれで終わりです。
今日は10-1もすぐに投稿しますので、是非お読みください。
それと、9-1の冒頭を少しだけ修正しました。
寄木の誕生日は閑話でやろうと思うので、少し時間が飛んだ形になっています。




