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8-2. 追っかけて、遊園地・宮廻あやめ


 

 宮廻と遊びまわった翌日。俺は暇を持て余して適当に散歩をすることにした。

 昨日はよく運動したのが良かったのか、遡行前の知識を忘れないように毎日やっている数学の問題集も気付けば今日の分まで解けてしまったし、今日は出前を取るということだったので料理も買い物も不要であり、本当にやるべきことがなかったんだよな。


 ちなみに英語を忘れないための策としては、母さんの部屋にある洋書を読むのに加えて、羽鳥と一緒に英単語帳から単語カードを作って覚えていたりもする。

 単語カードっていうのは、あのリングに綴じられていて捲るあれである。百均でいくつも買ってきて、それにチマチマと書いて暗記に使っている。

 俺たちは週に大体100個ずつくらい覚えるように決めていて、ウチに羽鳥が来た時に母さんにテストを作ってもらって解いたりするんだけど、羽鳥は前世で一度覚えてる俺と遜色ないくらいに単語をすぐ覚えてくるからびっくりしてしまう。小学生の頭脳って凄いな、と思わされる。いや、羽鳥が頭がいいからなのかもしれない。

 学校でも、お互いにふとしたタイミングで英単語を呟いて、言われた方が日本語の意味を答えたりなんかもしていたりもする。


 暁斗、宮廻、樫崎もみな用事があるようで、遊びに誘っても素気無く断られてしまったんだよな。

 家にいても漫画を読むかゲームをするかだというのもあり、それなら折角の日曜日だしいっそ外に出ようと思ったわけである。

 しかし、逆行前ならインターネットさえあれば家から出ずに暇つぶしが幾らでもできたわけで、そう考えるとすごい時代に生きていたものだと思わざるを得ない。

 というわけでとりあえずルジュールへでも行こうか、と日曜日の気だるい雰囲気を振り払うように首を細かく震わせて、玄関を出てから五分ほどのことだった。


「ん?」


 何人か先客がいる横断歩道の信号待ちの一団に後ろから加わると、斜め前の同世代くらいの人影がいやに見覚えがある気がした。

 その人物はパーカーで顔を隠しているので、よく見ようと覗き込む。

 しかし何故か、顔を背けられてしまい一向に何者かがわからない。


 怪しい。

 俺がその顔を背ける向きに沿ってにじり寄ると、怪しい人物は逃げるように体全体で回転して背中を見せてくる。

 その追いかけっこをぐるり、ぐるりと続けて一周半ほどしただろうか。これでは埒があかない。そこで俺は一計を案じた。

 タイミングを見計らって、俺は今の進行方向と反対向きに走るふりをしつつ、その場に留まる。

 俺のフェイントに釣られた相手が回転方向を逆にしてこっちに向かってきたので、ようやく顔を拝む事ができた。

 ああ、やっぱり。


「宮廻じゃん」

「う、寄木……」


 謎のパーカーの正体は宮廻だった。

 なんか立ち姿がまさにそうにしか思えなかったんだよな。合っててよかった。

 パーカーのフードを俺がばさっと跳ね除けると、内側からツインテールがぴょこぴょこ飛び出してきた。これをパーカーの中に押し込んでるとか、絶対暑いだろ……。


「どうしたんだよ、用事があるとか言ってたけどさ。そんな格好して、スパイでもしてるのか?」

「しーっ。とりあえず声抑えて!」

「あえ?うおっ」


 囁くような声の宮廻は、口で言うだけでは飽き足らず、手で俺の口まで塞いできた。宮廻の親指が俺の鼻をぐにゃんと曲げてきて若干痛い。

 なにするんだよ、と言おうと思ったけれど、その目があまりに真剣で俺はとりあえず話を聞こうと小さな声で語りかけた。


「……何があったんだよ」

「誰にも言わない?」

「うん」


 そう答えるしかないだろう。宮廻は観念したように溜息をつくと、前方をすっと指差した。


「あれ、見て。大声は出しちゃダメ」

「ん?」


 指先を辿って見ると、五十メートルくらい先に、これまた俺と変わらないくらいの身長……つまり小学生くらいの二人組が歩いていた。あれ、あの服って……。


「暁斗と……樫崎?」

「そう」


 厳かに宮廻は頷く。暁斗の服装が明らかにいつも河川敷とかで遊んでいる時に着てるやつと同じだったから、簡単にわかってしまった。

 樫崎の方は見たことがない感じのちょっとオシャレなワンピースを着ているから一見では分からなかったけど、アホっぽい歩き方と暁斗と一緒ってことで類推できた。

 俺が遊びに誘ったときは二人とも用事って言ってたけど、二人で何かするのか?


「あれ?どこ行くんだろ」

「二人で遊園地に行くんだよ」

「え?二人で、俺たち誘ってくれてもいいじゃん?なんで?」


 絶対四人で行ったほうが楽しいだろ。

 俺が不審に思っていると、宮廻が仕方ないといった顔で口を開く。


「……デートだから二人なの」

「そうか、デートならそりゃ……え、デート?!」


 自分の喉から素っ頓狂な声が出てしまった。


「もうっ、声が大きいっ!」


 宮廻が俺の口をまた手で抑えにくる。口を開いていたので、宮廻の人差し指が口内に入ってきた。うげえっ。

 流石に口の中に手を突っ込んだのは嫌だったのか、宮廻は瞬時に手をすぐに戻してそしてむうっとした顔で俺に注意してくる。


「声抑えてって言ったでしょ」


 いや、声を抑えられるかよ。だって、暁斗と樫崎がデートなんだぞ!?




いつもお読みいただき、ありがとうございます。


区切りを良くするために、短めになりました。


もしかすると今晩もう一話投稿できるかもしれません。

よければ感想等頂けると嬉しいです。



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― 新着の感想 ―
[一言] 小学生でデートか・・・おのれリア充。 さらっと追跡してるけど、これは確かに気になる。どうなるのか。 小学生時代とか異性どうのなんか気にしたのそれこそ卒業間近だった気がするなぁ
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