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7-1. 動物園に遠足!


ストーリーの都合上、宮廻回の前に全体回を入れました。

次回の八話は宮廻の個人回です。

宮廻好きの方はお待たせして申し訳ないです。

今回の七話には宮廻の出番が結構あるので、お許しください。


 

「さあ、動物園に着きました!みんな、今日は遊びに来たんじゃなくて、遠足という学校の授業です。遊ばずにしっかりと絵も描きましょうね」


 そう言って横江先生は、空中に絵を描く動作を演じてみる。実に楽しそうでなんとなくイメージが変わる。落ち着いたイメージだったけど、意外とそうでもないのかもしれない。


「大丈夫かな?」

「「はいっ」」


 問いかけに大声で答える小学生たち。実に元気である。

 新学期が始まって二週間が経ち、四月も残り少なくなったこの日。俺達五年生は小学校近くの国道からバスに乗り、ここ、動物園へと赴いていた。

 俺達五年生、っていう言葉になんとなくもはや違和感を感じなくなってきている自分が嫌だな……。

 最近は自分の体の若さや周りのテンションのせいで、中身が三十路という自覚が若干薄れてきた気がして、ちょっとだけ危機感を持っている。

 しかし、遠足である。俺の中で小学生の行事といえば遠足と運動会なので、小学生に戻ってきたという感じがめちゃくちゃするんだよ。

 一昨日くらいに先生の口から遠足があると言われた時に「ああ、また俺は遠足に行けるんだ……」ってなんかすげえ感動したもん。

 

「では、今から自由行動になりますが、お昼ご飯はみんなでお弁当を食べるので、十二時には一度この広場に集まってくださいね」

「はい」

「じゃあ、解散!」


 わああ、という声があがりパタパタと人が散っていく。

 俺はまず暁斗や宮廻、そして樫崎の姿を探した。行きのバスでどの動物を見たいかを話していたし、こういう時には四人で回るのがいつもの流れだしな。

 ちなみにバスの中では俺たち四人は最後列に四人並んで座っていた。樫崎がバスのドアが開くまで目の前に待機していて、開いた瞬間にダッシュで乗り込み、席を確保して「いぇーい、ウチが一番乗り!席とったよ!」って俺たちを手招きしたので並んで座ることができたのだ。

 若干必死だなコイツと思いはしたけど、一緒に座れるように頑張ってくれたのは素直に有り難かった。一緒にあーだーこーだ話して盛り上がって、気付けば動物園についていたし。


 ちなみに羽鳥と土肥はクラス委員長と副委員長ということで席が決められていて、一番前で先生の真横の席に並んで座っていた。

 車中での土肥は何度かこっちを振り返って、目の合った俺にずるいというような顔をしてきたけど、先生の隣に座っているのはお前が副委員長なんだから仕方ないだろ。

 ていうか立候補した時に羽鳥に勝って委員長だったとしても、お前どのみち先生の隣だったぞ?


 出席番号順でバラバラだったけど、や行である俺はほぼ最後尾なので、皆をすぐに見つけることができた。

 まず宮廻を回収して、次に暁斗、そして樫崎の順にパーティを揃えていく。

 四人が集まった時には既に同級生の半分以上は広場を離れて、既に動物園を回っているようだった。

 じゃあ行くか、という雰囲気になったタイミングでふと思い出す。

 そういえば土肥はどうしているんだろう。


 ちらりと見回すと、ポツリと一人で立っている土肥の姿が見えた。

 一緒に遊ぶメンバーというわけではないから申し訳ないけど、少し意識から外れていた。

 最近はクラス替えのハイタッチ以来、俺以外のクラスメイトと話すこともちょこちょこ見かけはするようになったけど、それでも一緒に回るくらいに仲の良い友達はいないのだろう。

 もしかして、毎日一緒に帰ってる俺のせいなのかもしれないな……。

 まあとにかく、土肥を放置はできない。小野瀬云々とかではなく、土肥を一人にするのが純粋に嫌だからだ。

 でも、みんなは大丈夫だろうか。いつものメンバーに土肥が入ってきて。でも、放っておくわけにはいかない。

 俺と土肥の二人で回ることにするか、などと考えながら土肥に声を掛けようと息を吸った瞬間だった。


「おーい、土肥さん。あたしたちと回ろう」


 俺より先に宮廻が土肥に声をかけた、そして「こっちこっち」と言いながら土肥を手招きする。呼びかけられた土肥は一瞬、私?という顔になったけれど、宮廻が土肥に向かって手を動かしてアピールし続けるのを見て、とてとてと歩いてくる。


「えと、良いのかな?」

「いーよいーよ、よろしくねー」

「うん、土肥さん」


 心配そうな面持ちで聞いてきた土肥に対して、暁斗も樫崎も笑顔で頷く。

 冷静に考えると俺たち四人が中心メンバーなだけで、休憩時間にしても秘密基地にしても普段から他の遊び仲間も入れて一緒に遊ぶことが多いもんなあ。心配は完全に杞憂だった。


「うん。よ、よろしくお願いします」


 どこかホッとした顔で土肥が笑った。


「うんうん」


 宮廻はむふっといった感じの表情で頷いている。

 ふと、目の端に羽鳥が見えた。どうやら羽鳥も羽鳥で土肥の様子が気になっていたようで、安心といった顔をしていた。


「じゃあ、土肥さん最初はどこから回ろうか」


 暁斗が無邪気な声で土肥に声をかける。


「えっと、みんなは何を写生するつもりなの?」


 土肥はそれに直接答えず、質問で返してくる。

 そう、この遠足はただの遠足ではなく、さっき横江先生が言ったとおり、絵を描かなければならないのだ。

 この遠足でスケッチした絵を元に、ここから図工の時間を何回か使って色を塗るから、しっかり下絵を作りましょうねとのことである。

 俺としては遠足を遠足として純粋に楽しめないから若干不満はあるけど、まあ仕方ない。


「ウチはなんでもいいかな。見てから決める」

「俺もそうかな。悟は?」

「何も決めてないから、出たとこ勝負だな」

「あたしも全然決まってない」


 全員が無計画を露呈させる。まあでも、わざわざ書きたい動物なんてそんなに居ないよな。


「そうなんだ」

「土肥は?」


 俺が聞くと土肥は一瞬考える素振りをして、一つ頷いて答える。


「えっと、ライオンさんかトラさんを写生しようかなって思ってて」

「ほおん」

「最初はウサギさんを写生しようと思ってたんだけど、でも学校でいっつも見てるしわざわざ写生……」

「あの、ちょっと土肥さん、こっちに来て……」


 ほんのりと顔が赤くなった宮廻が、ぽかんとした様子の土肥の服の袖をちょいっと引っ張って連れて行く。

 いや、俺も言おうかどうか悩んでいたから助かった。

 だって、そりゃスケッチのことを写生とは言うけどさ……しかも文脈でこっちも聞き間違えるタイミングじゃないけどさ、何度も連呼されると流石にちょっと聞いてて恥ずかしいというか……。

 俺が繊細なのかもしれないけど、宮廻だってちょっとそう感じているっぽいし……。

 宮廻と二言三言交わした土肥が宮廻とこちらに戻ってくるけど、何かよく分かってない感じだ。宮廻も「出来れば使わないほうが……」くらいに留めて説明はしなかったっぽいな。


「えと、さっき使ってた言葉って、あまり使わない方が良いのかな?」


 土肥が不思議そうに問いかけてきたので、俺は全力で頷く。

 そりゃ熟語として当然存在するどさ、公衆の面前で連呼はちょっと俺としてはやめたほうが良いと思う。


「そうなんだ……でも、教科書でも使ってる言葉なのに、不思議だね?」


 首を傾げて土肥が言う。


「ウチに言わせれば人生ってそんな理不尽ばっかだし。さっきもバスから飛び降りたら怒られたのとか、マジ納得いかない。みんなやってたじゃん?」


 樫崎がなぜかドヤ顔で答えた。確かに人生は理不尽ばかりというのは、その通りではあるだろう。

 今回の正しい言葉を使っても変な反応をされて止められるというのも、理不尽だとは思う。俺や宮廻が気にし過ぎなだけかもしれないしな。

 ただ悪いけどさ、お前は立ち幅跳びみたいに反動をつけて勢いよく飛び降りたせいで先生に激突しかけたんだから、怒られるのは理不尽じゃなくて当然だと思うぞ、樫崎……。そんな降り方したの、お前だけだぞ。見ててマジで危なかったからな。

 現場を見ていない土肥は樫崎の発言に「確かに……」と呟いてうんうん頷き感心した様子だったけど、事情を知る俺と暁斗と宮廻は、三人揃って呆れた顔をするしかできなかった。


 まあというわけで、俺達は五人で動物園を回ることになったのだった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


今回は遠足です。

タイトルは仮題ということで、また変えるかもしれません。

次回は皆で動物とたわむれる回です。


次回はまた、明日か明後日に投稿します。



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― 新着の感想 ―
[一言] 羽鳥土居宮廻の3人は、将来全く違うタイプの美人に成りそうだね。
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