6-2. ファンシーショップで誕生日を・土肥玲花
土肥と俺が向かったのは、学校から徒歩十五分ほどの、国道沿いにある"ストロベリー・ストロベリー"という名前のファンシーショップだ。
ここら辺で小学生女子が喜びそうなものが売ってるのは、多分ここだけなはず。
一応、橋を渡った先にはそこそこ大きな商店街もあるけれども、行き帰りで一時間半くらいかかるから、今日行くのはちょっと厳しい。
近場に駄菓子屋ならいくつかあるけれど、さっきの買いに行こうぜ!という流れで駄菓子屋にあるものを誕生日プレゼントにするのは土肥が可哀想に思えるしな。
そういう訳で、ファンシーショップのストロベリー・ストロベリーが行き先に選ばれたというわけである。
どうでもいいけどファンシーショップって言い方、逆行前の時代には既に半ば廃れてたっぽいんだよな。
会社の忘年会だったかで、俺より五つ下の後輩のかわいらしいスマホケースに「それ、ファンシーショップで売ってそうだな」と言ったら「ファンシーショップって何ですか?」と返されたもん。
狼狽しつつ「可愛い系のキャラグッズとか小物とかファンシーなものを売る雑貨店の総称だけど」と言ってみたけど後輩は全くピンとこない顔で「へえ、可愛い感じの雑貨屋のことそう呼ぶんですね」という反応をしてきたので、俺は最早何も言えなくなってしまった。
その後ネットで調べたら『ファンシーショップって何ですか?』と質問所で聞いてる学生の書き込みを何個も見つけてしまい、俺は自分の老いを感じたんだった……。
それはさておき、土肥の誕生日プレゼントである。
一応道中で土肥に欲しいものをヒヤリングしてみたけど、特にないようだったので出たとこ勝負になりそうだ。
俺も土肥の好きそうなものとかあまりわからないから、じっくりやっていくしかないだろう。
そんなこんなでパステルブルーとパステルピンクに壁が塗られた、実にファンシーな見た目の外観のストロベリー・ストロベリーに俺たちは到着した。
一階部分がピロティ構造の駐車場で、二階が店舗という、国道沿いによくある形の建物となっている。
制服で買い物するのが怖いのか、土肥は店内へと続く階段を登りながらチラチラと周りを確認していたけど、そんなに見られたくないなら走って店内に駆け込んだほうが見つかる可能性は低いと思うんだけどな。
まあ見ていて面白かったから、何も言わなかったけど。
プレーリードッグのようにキョロキョロしていた土肥も、店内に入ったら少しは落ち着いた。
ただ、依然キョロキョロは止まらず、何から見るか悩ましいようだったのでとりあえず提案してみる。
「土肥、まず一周回ってさ、色々見てこうぜ。んで気に入ったやつをいくつか見つけて、そこから選ぼう」
「うん」
まず一番最初に向かったのは、キャラものの雑貨コーナーだ。
ぐでーっとした犬とか、二頭身の猫とか、そういうキャラクターが所狭しと並んでいる。
「これ、かわいいね」
「ん?」
土肥が見せてきたのは、耳で逆立ちしてるデフォルメされた謎のウサギが描かれているマグカップだった。
土肥はウサギ好きだもんなあ。本人がウサギに似てるし、親近感があるかもしれない。
しかし冷静に見てみると、このウサギ可哀想じゃないか?耳で逆立ちしてるんだぜ?
ウサギの耳ってこう神経とか色々あって繊細な部分だと、飼育小屋掃除の時に土肥から聞いた覚えがある。
そんな大事な耳を使ってしかも逆立ちなんて頭に血がのぼるだろ。そう考えると顔も微妙に苦しそうなものに見えてきた。
「えっと……寄木くんこういうの嫌い?」
じっと苦い顔でマグカップを見つめていたのが気になったのだろう、土肥が俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。
「いや、逆立ちして耳が大丈夫なのかなと思って……」
俺の歯切れの悪い言葉に、土肥は不思議そうな顔になる。
「このウサギさん、本物じゃなくてキャラクターだよ?」
「はい、その通りでございます……」
あまりの正論に、咄嗟に敬語で返してしまった。
そうなんだけどさ、でも耳が……。いや、これは俺が悪いか。現実と空想をキャラ物グッズで混同しているのは無粋に過ぎよう。ちょっと落ち込む。
土肥はそんな俺の反応にくすりと笑い、
「じゃあこれはどう?」
ともう一つマグカップを渡してくる。
描かれていたのは、ポップな絵柄でこちらに向かって拳銃を構えているクマだった。
しかもフキダシに『お前を蜂の巣にしてやる』とか書いてある。
「え、なにこれ?」
「ギャンぐま太郎くんだよ?」
「こんな可愛い絵柄なのにギャングなの?」
「そうだよ。イタリアのマフィあるぱか郎くんとライバルなの」
土肥がもう一つマグカップを渡してきた。
同じくポップな絵柄で、中折れ帽を被ってブランデーグラスを片手に、椅子に座って足を机の上にドカンと乗せているアルパカが描かれている。
フキダシには『仕事の後の一服は別格だぜ……』ってあるけど、子供向けグッズで酒を飲んでていいのか?
「二人は子供の頃からのライバルで、お互いの組を潰しあってる永遠のライバルって設定なんだよ」
「ええ……」
なんというか、濃いなあ……。でも、商品化して店頭に並んでいるわけだから、人気はあるのだろう。
よく見ると、ギャンぐま太郎くんとマフィあるぱか郎くんのグッズは棚にけっこう置いてあって、割とメジャーなキャラクターらしい。マジか。
「こういうのは土肥はどうなの?」
ちょっと試しに、普通にポップでキュートな感じのキャラグッズをいくつか手にとって土肥に見せてみる。
あんまり可愛い可愛いしているのは苦手なのかな、とふと思っての行動だった。
「うん、好きだよ。えっと……寄木くんって、意外にかわいいものが好きなんだね。えへっ」
とりあえず疑問に思って選んでみただけで別にそんなに好きなわけじゃなかったけど、土肥があまりに楽しそうに笑うので言い出しそこねてしまった。
まあいいか。
十五分ほど色々な商品を見比べただろうか。ある程度キャラものの雑貨は見終えたので、俺たちは次のコーナーへと向かうことにした。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ファンシーショップって夢が詰まってていいですよね。
次回はまた、明日か明後日に投稿します。




