prequel1-土肥玲花の前日譚
評価2000ptのキリ番記念として書きました。
寄木が逆行する少し前のお話です。
四年生の三学期が始まったあたりの話です。
「土肥さん、その筆箱、あなわたじゃん?」
小野瀬さんたちのグループが、突然私に話しかけてきたのです。
そして、グループの一人の串田さんが私の筆箱を手に取りました。
「本当だ、シャボンの応募のやつだ。土肥さん当たったの?あなわた特製ペンケース」
「くしみー、あなわた好きだよね」
「うん!」
「この応募のためにシャボン五冊くらい買ったって言ってたもんね」
「それで当たらなかったの?えー可哀想」
「土肥さん、くしみーと筆箱交換してあげたら?くしみーの筆箱も悪くないよ」
「え、くしみーの汗ついてんじゃん」
「ひどくない?くしみーかわいそー」
「まーでも、あれだけくしみー欲しがってたしさ」
「交換してやりなよ」
「そうしようよ、ねえ土肥さん」
「……ごめんなさい」
嵐のような空間に戸惑いつつ、私はなんとか断りを入れました。
あなわた、こと『あなわた――貴女か私がお嫁さん!』は、とても好きな作品だったからです。
この作品を連載で追いかけるために少女漫画雑誌を買い始めて、雑誌の応募で筆箱が当たった時はとても嬉しくて珍しく大声をあげてしまったくらいに。
「え?マジ?」
「ドンマイ、くしみー」
串田さんはショックを隠しきれない顔になりましたが、すぐに「仕方ないよね」とその場を引き下がってくれました。
色々と言われてびっくりしましたが、何事もなく過ぎたので家に帰り、安堵したのを覚えています。
今から思うと、その日の夜の判断が私の運命を決めたのだと思います。
次の日の用意をする時に、私は筆箱を前のものに戻したのです。また串田さんや小野瀬さんに同じ事を言われると嫌だという思いでした。
でも、その些細な判断が原因で私の地獄は始まったのです。
「え。土肥さん昨日と筆箱ちがくない?」
「うわ、ホントだ」
三時間目が終わった直後のことでした。私の席の横を通りすがった小野瀬さんが、私の筆箱が変わっていることに気付いたのです。
「え、これ昨日ウチらが言ったせい?」
「取られるとか思ったんじゃね?」
「うっそぉ。酷くない?土肥さんウチらのことそんな風に思ってたんだ」
「くしみー泥棒扱いじゃん」
「ひっどお」
「土肥さん、くしみーに謝りなよ」
「早く謝りな?」
急な展開に、何を言って良いのかわからず、ワタワタとするしか出来ない私の上の頭上で言葉が怒りを含んだ飛び交っていきます。
「土肥さんがそんな人だと思わなかったわあ」
「ほんと、引くわ」
「くしみー、なんか言ってやりなよ」
なにがなんだか全くわからない中で、とにかく、私は何かを間違えてしまったことだけはハッキリとわかりました。
いつも応援ありがとうございます!
総合ptが2000を超えたので、普段の応援のお礼として書きました。(お礼がこんな内容で良いのかな……)
当初はこれより少し長い内容をアップしていましたが、思うところがあってある程度削りました。すみません!
読んだ後に、もう一度『1."トイレちゃん"・土肥玲花』を読んで頂ければ、色々感慨があるかと思います。よろしければ。
また次回もキリ番で短編を書くと思うので、その時は題材を募りますのでよかったらお題くださいね。
ブックマークや評価も、よろしければお願いします!
感想も頂けると嬉しいです!!
この時代は基本的に少女漫画のキャラもの文具くらいだと、抽選ではなく応募者全員サービスで貰うことができました。
おそらく、この話のように当たった当たらないで差ができないよう、配慮してくれているのだと思います。
この話だと全員サービスではありませんが、特製のペンケースで抽選になったということで。
疑問を持たれる読者の方がいるかと思い、念のため書いておきました。
しかし、現在だと、応募者全員サービスではなく付録として付いてくる方が多いみたいです。時代の流れを感じますね!
もう一つの連載作もよろしくお願いします(あとがき、長いな…。)