突然の転機
「それじゃあ、久々の再会に乾杯。」
「乾杯。」
「かんぱーい!」
それぞれがグラスをお互いにカチンッとぶつける。
俺の入れてもらったサイドカーは、ブランデーが少しガツンとくるものの、すぐにレモンの優しい酸味が口の中に広がる。
「そいえば、きーちゃん、お酒飲むんだね。てっきり、ノンアルかと思ったよー。」
斎藤が目を丸くして、如月に告げる。
「貸切にしたからねぇ、たまにはいいでしょ。」
「え、大丈夫なのか…?」
「大丈夫、大丈夫。そもそもここにお客なんて滅多に来ないし。それに、川島、何かあったから来たんだろ?」
「え…?」
「やっぱ、きーちゃんも思った?かっちゃん、凄い形相だったもんね!」
「そういう事。だから、この際、貸し切りにして、トコトン話を聞こうじゃないかと思ってね。」
「え、い、いや、俺はそんな大した事では…」
「かっちゃん、往生際が悪いよー!顔に出てるんだから、素直に言わなきゃダメダメ!あ、きーちゃん、おかわりー!!」
「はいはい。今とってくるから、少し待ってて。」
如月は、少し笑うと斎藤のグラスを預かり、席を外した。
相変わらずの飲みっぷりというか、分解力に呆れていると、斎藤が声をかけてきた。
「かっちゃん、まだあの仕事続けてるの?」
「まぁ、うん…。転職すぐにできると思ってないし、俺自身、仕事自体は嫌いじゃないんだ…。」
「じゃあ、人間関係?使えない上司がいるとか?」
「あー、まー、うん、そんなところ。」