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ICY SONIC BOOM  作者: 津辻真咲
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政府専用機


 上空整備基地。機械の音が聞こえて来る。いつものように整備士たちは機体の整備をしていた。

「航、おはよう」

「おはよう」

彼は機体の翼の陰から顔を覗かせた。

「見ない航空機だね? 依頼されたの?」

 帆夏は彼に尋ねる。

「うん。政府専用機なんだって」

「え!? 本当に!? すごいね」

 帆夏は彼の話に驚いて、目を輝かせる。

「上空整備基地に昨日、依頼が来たんだ」

「そっか」

「今日はどこ?」

 航は尋ねる。そして、帆夏が答える。

「上空出入国ターミナルだよ」

「うん。分かった」

航は微笑んだ。

「じゃあね。行ってくる」

帆夏は航に手を振り返した。


次の日。帆夏は上空管制塔にいた。

「今日は大事な話がある。空木、白井。君たちには特殊な任務に就いてもらう」

帆夏はきょとんとして、稲津誠の話を聞いていた。

「今日は今から、政府専用機の警備をしてもらう」

――警備!?

「今日の早朝、この上空管制室に依頼が来た。この任務の主任は霜月だ。分かったか?」

「はい」

二人は返事をした。

「しくじるなよ」

文月が偉そうに二人へ言い放つ。

「分かってるよ」

帆夏はその嫌味に気付きながらも、かわして微笑み返した。

帆夏と結城は上空整備基地へと向かう。そして、それぞれの戦闘機へ乗り込んだ。ライン整備士が合図を送る。まず、結城が出発する。続いて、政府専用機。そして、最後に帆夏の戦闘機だ。結城が前、帆夏が後ろということだ。


ゴォォォ。政府専用機は太平洋を越えて行く。すると、飛行中、気象管理人工知能、葉月から連絡があった。

「空木、緊急連絡。飛行ルートにスーパーセルが発達している。避けて通れ。航空予定は変更しておいた」

「了解」

帆夏は返事を返した。そして、航空機材に送られてきたデータを確認した。

「結城、無線聞いてた?」

「あぁ、聞いてた。ルートの変更だろ? 了解」

結城は無線を切った。そして、変更ルートに沿って機体を傾けた。


スーパーセルを回避し、空には快晴が広がっていた。帆夏も一安心しながら、戦闘機を操縦していた。すると、軍事管理人工知能の文月から無線連絡があった。

「空木、緊急連絡。着陸予定地の電力が全てダウンしている」

「え!?」

「サイバーテロらしい。君たちは旋回し、政府専用機を引き返させてくれ」

「了解」

帆夏と結城は旋回して、方向転換した。

しばらく白い雲の隙間を越えて行く。すると、再び、文月から緊急連絡があった。

「空木、一応伝えておく。政府専用機のシールドが破られている」

「え!?」

「気を付けて。それじゃ」

無線は切られた。

――そんな!!

政府専用機もサイバーテロの餌食になっていた。すると。

「30秒前。29 28 27 26 …」

突然、戦闘機の航空機材がカウントダウンを始めた。

――え!? どうして!?

「空木、聞こえるか?」

「はい」

 再び、文月からだった。

「今、聞こえているカウントダウンは、政府専用機を撃墜しようとしているミサイルの到達時間だ」

――そんな。

「本当はこんな時、航空管理の霜月が指示を出すべきなんだろうが、あいつもこのサイバーテロに倒れて、人工衛星が使えない。だから……」

――だから。

「軍事管理の私が指示を出す。いいな」

「了解」

帆夏は返事を返した。

すると、ミサイルの本体がレーダーに映った。

――来た。

ミサイルは数本飛んできていた。

――こんなにたくさん。

「右旋回」

「了解」

文月が指示を出してくる。

「左旋回」

今度は左。ミサイルがニアミスで戦闘機のすぐ横をよぎって行く。

「あれは、政府専用機を狙っている。迎撃せよ」

「了解」

帆夏は迎撃ミサイルの発射ボタンを押す。迎撃ミサイルが推進する。そして、ミサイルを迎撃した。

「空木、もう一度、迎撃ミサイル」

「了解」

帆夏はもう一度、迎撃ミサイルの発射ボタンを押す。ミサイルが迎撃された。

「完璧。ありがとう」

文月の声が無線から聞こえてきた。珍しく、彼女はお礼を言っていた。帆夏は少し微笑んだ。


1時間後。政府専用機は無事、空港へと帰還した。帆夏と結城も政府専用機と共に空港へと着陸した。

「文月、無事、政府専用機を空港まで帰還させました」

「了解。よくやった」

文月はディスプレイで微笑んだ。

「今日の任務は終了だ。上空整備基地まで帰還せよ」

「了解」

帆夏と結城は、上空整備基地へと帰還していった。


「ただいま、戻りました」

帆夏と結城は管制室へと入って行った。すると、そこには稲津誠と葉月がもう既に待機していた。

「今、文月がサイバーテロの犯人を追跡しているの」

気象管理人工知能の葉月が説明をした。

「あれ? 霜月は?」

帆夏がきょとんと尋ねる。すると、稲津誠が答える。

「彼女は、謹慎している」

「え!?」

「彼女は今回、サイバーテロに巻き込まれた。しかし、どんなことがあっても、航空管理をしている以上、失敗は許されない」

――そんな。

「処分は私が決めるわけではない。だから、処分がどうなるかは私には分からない。助かるかもしれないが、解体処分になる可能性もゼロではない」

「そうですか」

帆夏は下を向いた。


午後5時。定時になり、帆夏の勤務終了時間となった。

――霜月、大丈夫かな?

帆夏は少し、思い悩んでいた。

「大丈夫?」

航が心配そうに尋ねて来た。

「うん。まぁまぁかな」

帆夏は苦笑した。

――解体されないといいけど。


次の日。帆夏は出勤する。まずは上空整備基地へ向かった。航の顔を見に行くためだ。

「おはよう」

帆夏はドアを開けた。すると。

「おはよう」

航が笑顔で出迎えてくれた。

「どうしたの?」

航がきょとんとする。

「挨拶しに来ただけ」

帆夏は笑顔で答えた。

「そっか」

航も微笑んだ。すると、次に彼は思い出して、帆夏に言った。

「あ、そうだ。早く、管制室へ行った方がいいかも」

「ん?」

「霜月さんの処分が決まっているかも」

「そうだね。分かった、それじゃ」

帆夏は航に手を振ると、管制室へ向かった。


「おはようございます!!」

帆夏は勢いよくドアを開けた。

「はい、おはよう」

稲津誠は驚きもせずに、淡々と答えた。

「霜月の処分は!?」

帆夏が尋ねる。すると。

「大丈夫だよ。彼女は続投だ」

帆夏の表情が明るくなった。霜月の続投が嬉しかったのだ。

――良かったね。

それを見ていた結城は口角を上げた。

「文月が政府に懇願したらしいよ。霜月を続投させてやってくれってね」

稲津誠も微笑んだ。

「サイバーテロの犯人も文月が見つけ出したし、一件落着かな?」

「はい」


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